メモワール:第1回

痕(Leaf)

2004年8月22日

 最初に手にしたり取りかかったりしたものに対して、それが忘れ得ぬものとして長く記憶に残るというのは、誰しも心当たりがあることでしょう。私がゲームにのめりこむきっかけとなったのは、Leafの『痕 〜きずあと〜』でした。

 私が自分のPCを購入したのは、1997年3月のこと。CPUがMMX Pentium200MHz、ビデオチップがS3 Virgeの4MB、CD-ROMドライブが平均13.5倍速、ハードディスクが3.2GBというスペックでした。このテキストを書いている2004年8月では「これで何をすればいいのよ」というシロモノですが、当時は“何でもできる魔法のハコ”に思えたものです。日記をワープロソフトで書きつづったり、出納帳を表計算ソフトで作成したりといったお決まりの行動はもちろんのこと、当時はまだたくさんあった付録CD-ROMのあるPC雑誌を買ってカスタマイズするなど、いわゆる“初心者”の割には、PC操作に関してどっぷり取り組んだものです。

 ただし、パソコン通信やインターネットへの接続は、PCをある程度使いこなせるようになってからと考え、先送りとしておりました。

 そんな雑誌の中に「ゲームをプレイするようになってからPCを使いこなせるようになった」という記述がありました。とうてい信じてもらえないかもしれませんが、私はそのころまでゲームにはまったく縁がなく、ゲームといっても「息抜きにやるマインスイーパ」程度しか頭に浮かびませんでした。

 そこで、ゴールデンウィークが明けたころだったかと思いますが、新宿の某量販店に足を運び、適当にいくつか見繕ったしだいです。格闘モノ、パズル、フライトシミュレーション、ロールプレイングといったあたりのPCゲームを買ったのですが、どんなタイトルのものだったか、まったく覚えていません。最後まで続いたものもなかったので、まあ、つまらなかったのでしょう。しかしこの中で、単なる助平心で買った『痕』が、その後の私の生活パターンを大きく変えてしまうことになったとは、そのときは知るよしもありませんでした。

 その当時の私は大学生だったのですが、勉強そっちのけとはいかないまでも、自宅にいる間はひたすら『痕』ばかりに取り組む日々が、たっぷり10日ほどは続いたと記憶しています。テキストそのものはお世辞にも洗練されたものとは思えませんでしたし、マニュアルに書いてある「美少女」というフレーズにも「そうとは思えんが…」などとうそぶいていたのですが、テキスト表示、グラフィックの切り替え、サウンドといった各種効果の組み合わせの妙に、すっかり取り付かれてしまいました。

 エンディングフラグだの、セーブ&ロードだのといった、ゲームをプレイするに当たっての“常識”など、まったく知らない状態でプレイを重ねたため、通常以上に楽しむことができたという面もあるでしょう。しかし、このときに抱いた印象はまことに強烈で、「あの感動をもう一度!」とばかり、ゲームにハマるようになっていったしだいです。

 ゲームに手を出した結果、購入したPCにプリインストールされていたWindowsをさまざまに使いこなせるようになった、とはいえるでしょう。バイナリエディタの活用など、ゲームに触れることがなければ最後まで関わることがなかったであろう経験を積むこともできました。

 そのいっぽうで、ゲーム、それもPCでプレイ可能なゲームが、主要な趣味として堂々と定着してしまったのですから、そういう意味で『痕』は、やはり私にとって、偉大な存在であり続けるのでしょう。その後、レビューサイトを開設していろいろと書き留めることが習慣化してしまいましたが、現在でも最高の評価点を与える際の基準は“『痕』に匹敵する感動を受けたもの”となっています。

 そんな『痕』も、WindowsXPでは満足な動作を期待することができません。リニューアル版がリリースされたものの、当時とはグラフィックが様変わりしており、どうにもなじむことはできなさそうです。やはり、思い出は美しいままにしておくべきなのかもしれませんね。

written by Ken