きゃんきゃんバニー・エクストラ カクテル・ソフト

1993年7月発売
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 F&C最高傑作と評されることが多く、またいまだに支持者の多いキャラクターをヒロインに据えるゲームが、『きゃんきゃんばにー・エクストラ』。同系統のシリーズものである『プルミエール』や『リミテッド』などはとうの昔にWindows移植が行われているにも関わらず、このゲームはまったく音沙汰なし。縁を取り持つ女神・スワティというキャラクターに興味を持って『プルミエール2』(これは最初からWindows版として発売)をプレイすると、スワティへのマイナスイメージがどうしようもなく刷り込まれる結果になりました(詳細は「語るね、俺」を参照のこと)。がーっ、なんなんだーっ。「世間の評価」を鵜呑みにするつもりは毛頭ありませんが、広く長く指示されるにはそれ相応の理由があるハズだ、と考え、長いこと「プレイ希望待機」を続け、やっとPC-98エミュレータを使ってプレイできたのは、1999年も暮れになってのことでありました。

 もっとも、私にとっては「きゃんバニシリーズにサワディあり」というイメージが非常に強いため、「サワディのいないきゃんバニシリーズなんて…」と思ったのも確かですが(^^;

※このレビューは、PC-98 DOS版をエミュレータ「ANEX86」でプレイして書いたものです。サターン版はプレイしておりません。

シナリオ

 主人公(姓名とも任意に設定可能)は、女性とはさっぱり縁のない寂しい大学生。溜息ばかりのある日、コンビニに降臨した女神・スワティを含む七福神と出会う。スワティは、そんな主人公に「女運」を授けてくれる、というのだ。意気込んで街へ繰り出し、今日も明日もナンパの毎日。しかし、「縁」が結ばれていくごとに、表情に翳りを見せるスワティ。彼女が秘める悩みとは何か。そして、さんざん女の子に声を掛けまくった主人公が、最後に選ぶのは誰なのか。

 

 このゲームをプレイしていてずっと感じていたのは、そのノリのよさですね。主人公のバカなノリは、作品の展開を考えれば容易に説明可能なのですが、それだけでなく、「このキャラクターならこういう展開になるだろう」と思うと、その展開をさらにパワーアップして出してくれる楽しさ。決して意外性があるわけではない(春菜シナリオを除く)ものの、その「ノリ」は、ツッコミを入れる余地(必要性)をあまり感じませんでした。香織と美沙生との「バトル」など、現実とはほど遠い描写がひたすら続いていることを百も承知の上で、シナリオ全体に「ドタバタ劇場」としての意味合いを持たせたものといえますが、これが憎いほど利いています。『リミテッド』のサワディにあたるようなツッコミ役がいないため、登場人物の暴走が利かず、各シナリオの序盤ではやや物足りなさを覚えるところもありますが。

 そして、Hシーンをクリアすることで各ヒロインのシナリオが一段落するわけですが、基本的にどのシナリオもメリハリが利いており、「寒いギャグがブリザードのごとく吹きすさぶ」ということもありません。もっとも、誤字・脱字がかなり目立ったので、間抜けさを感じたことも割とありましたけれど。

 

 ナンパゲーム、あるいは恋愛ゲームとして見た場合、現在ではもはやあまりにも陳腐化しているとしか評することのできない手法が多様化されており、ゲームのシナリオ自体には、新しい「魅力」をさほど感じませんでした。展開そのものが「お約束」というよりは、別のゲームにてアレンジされたパターンをさんざん見慣れてしまったせいでしょう。例えばエンディングだけを取ってみても、これより後に発売された『バーチャコール』が酷似した方法を採用していますし、「非−人間」と人間との関係、ということになると、もはや手垢がついたものと断じてもよいでしょう。発売当初は「感動的」と言われていた設定に「ああそうだろうな」と納得はいきますが、あくまでも「わかる」段階に留まっているのが実情です。逆にいえば、それだけ「研究される対象となってきた作品」である、ともいえるでしょう。

 

 ゲームを進めるためには、否が応でも「食いまくり」をしなくてはいけないのですが、ナンパゲームということもあってか、主人公は、口説いてHして、を繰り返すことの大義名分などいっさい持っていません。『バーチャコール』にエンディング選択が付いた、とでもいえばいいでしょうか。『プルミエール2』では、「女の子を幸福にする」という大義名分がありましたし、『リミテッド』では、Hしても結局振られつづけなので、こういった点はそれほど気にはなりませんでしたが、キャラクターに思い入れができれば、これはかなり辛いのではないでしょうか。幸い、私が気に入ったキャラクターは、攻略順では最後になったので、こういった辛さを感じることはまったくなかったのですけれど。おそらく、『エクストラ』で欠けていた説得力を、後の作品ではフォローするような方向で動いたのでしょうね。

 

 さて、キャラクターについて語るとなると、メインヒロインであるスワティに言及する必要があります。

 彼女は、人間ヒロインたちとは一線を画した存在として振る舞いながら、主人公への感情をまとめきれていません。これは、単純に「鈍感なメインヒロイン」とか「超えられない壁」とかいったパターンで納めることはできないでしょう。スワティエンドの一連の流れを見るかぎり、彼女なりの複雑な(天界での)事情があるうえ、自分の考えや葛藤というものがあり、その熟考の末の行動結果が、エンディングを支えている、そう感じられます。

 しかし残念なのは、スワティのそういった「熟考」を感じさせる具体的な行動や会話といったものが明確に描写されていないこと。「(女)神」という「人間にとって架空な私達(スワティ談)」と人間との関係、それを必死にさぐっていくという姿勢は確かに感じられるのですが、そこには、最初から諦めの気運が色濃く出ており(運命に対する嘆きのようなものが現れています)、その反面、自分の心境を表現しきれないもどかしさといった描写が、徹底的に欠けているように感じます。

 この点、「主人公との関係」を、徹底的に悩み、考え、結論を主人公と2人で出そうと努力している『リミテッド』のサワディの方に、よほど人間くささを感じます。泥臭い努力こそが美しい、というわけではないのですが、「ひたむきさ」の厚みに物足りなさを覚えたのは否定できません。遠くて近きは男女の仲、と言いますが、「儀式」としての奇跡に留まらない「人間らしく苦悩するスワティ」が見えていれば良かったのですが、ちょっと私には優等生すぎる存在に見えました。『リミテッド』ラストシーンのセリフのようなものを随所に入れてくれれば、もっと味も加わったと思うのですけれどね。

 

 スワティ以外のキャラクターも、それなりにきちんと描けています。その中で、シナリオ的にもキャラクター的にも、気合いの入り方がまるで違うキャラが1人いるので、彼女以外に萌えた方にはバランスの悪さを感じた可能性が高いかと。

 さらにこの女性は、スワティが積極的に関与してくる唯一のキャラだったりします。『プルミエール2』では、やはり毛色の違うキャラクターが出てきますし、スワティが関与するのも同じですが、ここでの「ヒロインとスワティとの関係」が180度異なるため、ゲーム世界全体に残る後味がまるで違ってきます。人間キャラの設定というだけでなく、「人間ヒロインと女神スワティとの関係」を誠実に描いている点で評価できます。

 

 そうそう、隠れキャラとして、謎の宝くじ売りが登場し、うまくくじを引き当てると脱ぎます。いなくても大差ありませんが(^^;)

ゲームデザイン

 各女の子とのシナリオを1本ずつ進め、クリアし、ラストに1人をヒロインとして選ぶ、というスタイルになっています。その過程で、各女の子とのHするのは必須となっており、ここで失敗した場合、スワティが強制的に時間を戻してくれます。全体的にはそう難しいものではありませんが、一部Hシーンでやたらと難しいケースがあります。

 コマンド総当たりでイベントを発生させることになります。行き先を変えることで出会える女の子が変わってきますが、クリックポイントによってなかなか出てこない、というケースがあり、ちょっともたつく個所もあります。

 シナリオそのものは、各シナリオが直列的につながり、ラスト直前にセーブしておけば全エンディングを簡単に見ることができる、という設計です。スタイルとしては、『夢幻夜想曲』(アプリコット)と非常に似ています。もちろん、片や右脳全開直情径行ノリノリイケイケ、片やファンタジーと、雰囲気はまるで異なっていますけれど、女の子ごとのシナリオがある程度独立している(一部相関してはいても排他ではない)、最後に一人を選べる、シナリオ全体を統括するメインヒロインが超然的に存在する、など、類似点が多いこと多いこと。

操作性など

 入力デバイスとしては、マウス、キーボードの双方が使用可能ですが、画面指定位置クリックという操作が入るので、マウスは必須です。

 セーブが要所で可能、プレイ中にもロードが可能となっており、気楽にプレイ可能です。もっとも、選択肢では難しいものはほとんどなく(途中ではさまる日本史のクイズも簡単だし)、セーブは5個所まで可能とはいうものの、私は2つで間に合いました。セーブ時の説明などがないのは残念。

 画面表示は、中央に小さめのグラフィックが表示され、下部にメッセージウィンドウが表示されるという、ごくオーソドックスなパターン。一枚絵CG表示の場合は、メッセージウィンドウがフロート表示されます。

 メッセージ速度やマウス速度の制御、メッセージスキップなどはできません。

 1回以上クリアすると、「スワティの部屋」に入ることができ、ここから、CGモード(ヒロインごとに1枚ずつ表示。ヒロインごとの達成率も出ます)、BGMモードのほか、「Extra Stories」に入れます。これは、各ヒロインごととの後日譚で、Hシーンもあります(ただし、スワティのエクストラストーリーはありません)。

 あと、姓名は任意に設定可能なのですが、漢字入力ができないのが困ったところ。『リミテッド』や『プルミエール2』では姓がなく(^^;)名前だけなので問題ないのですが、もし本名を入れた場合、セリフの中に「さとう」だの「たかはし」だのといった姓が、カナ表記で出てくるわけです。日本人の姓の中で、漢字を使わないものが存在するのかどうかは定かではありませんが、猛烈な違和感を覚えたのは確か。これが単に「ケン」とでも出れば、別に気にはならないんですけどねぇ。

サウンド

 BGMはFM音源で演奏されます。エミュレート上での再生なので、音質についてのコメントは控えますが、ノリのいい曲が良さげ。担当は、後に『Melody』を担当したMUSEです。

グラフィック

 現在の水準で語るのは控えますが、まずまず悪くはない、といったところでしょうか。特にこれという印象はないのですが、ギャグシーンでの目玉ぐるぐるがなかなか笑えました(^^;) また、いろいろとアニメするシーンがあるなど、それなりの工夫が随所に見られます。

お気に入り

 ヴィスナー、じゃなくて(^^;)、坂本春菜で決まり。守ってあげたいという気になる反面、甘えさせてくれる面があり、頑固でしぶとい反面、自分に対する自信の弱さをも見せてくれるなど、実に多彩な表情を出してくれるキャラクターとして。描写それ自体も、ロシア正教とカトリックとをごちゃまぜにすることで、いらんツッコミが入ることを巧妙にかわしているあたり、憎いと感じます。サターン版では、なぜか「巫女」になっているそうですが、あの服で「巫女」(神道でなくても呪術に関わるはず)は無理でしょう。エクストラストーリーについてもかなり深い…というより、ネタとしてはけっこうデリケートなのですが。

 ちなみにスワティについては、「悪いイメージは取りあえず消えたし、今でも人気があるという理由はそれなりに納得がいくものの、お気に入りと呼ぶにはほど遠い」という状態です。

総評

 トータルバランスの良さは問題なし、名作に限りなく近い佳作、と判断しています。

 このゲームの中で、「恋愛ゲーム」の装置として用いられている手法は、現在ではもはや定番と化しているものが多いため、比較的新しいゲームから入ったプレイヤーが「感動」へ直結する可能性は高くないと思います。したがって、無理にでも入手して、というほどのものではないでしょう。古さを感じさせない完成度に感心はできますが。

 しかし、『プルミエール2』では、かなり胸にしこりを残してしまう可能性が高い(日奈緒が気にならなければ問題ありませんが)ですし、『リミテッド』のエンディングにおけるスワティのつぶやきも単独では意味不明ですから、この2つのゲームをプレイされておられる方は、なんとか入手してプレイされることをお勧めします。

 

 ちなみにサターン版では、『プルミエール2』の環と日奈緒も出ているそうな。シナリオ的に「その後のフォロー」が絶対に必要な日奈緒はともかく、もう1人が環とはちょっと意外。有紀の方が人気がありそうなんですけどねぇ。

個人評価 ★★★★★ ★★★☆☆
2000年1月1日
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