パンドラの森 フォア・ナイン/エクセレンツ

1994年4月16日発売
ご意見などは掲示板へどうぞ

 「GAOGAO!シリーズ」という名前は、私にとって、ゲームの中には「名作」という称を帯びるにいささかの不足もないと思えるゲームが確実に存在していることを実感させてくれる契機となったものでした。集大成というべき『カナン』、およびそこでの登場人物が最初に活躍する『ワイルドフォース』は、いずれも質量とも十分に満足できるゲームだったこともあり、その前作にあたる『パンドラの森』も、相応の期待を込めてプレイいたしました。

※このレビューは、PC-98 DOS版をエミュレータ「ANNEX86」でプレイして書いたものです。また『ワイルドフォース』→『カナン』→『パンドラの森』という順でプレイしております。

シナリオ

 時は近未来。バイオハザード(生態汚染)の結果発生した、人間が変異を起こしてしまうウィルスを隔離するため、人々は都市をドームとして自然から切り離し、ドーム都市内でのみの生活を送るようになっていた。

 主人公・ジャッキー(変更可能)は、幼なじみの少女・ルシアの住むアリスト・シティへと向かい、彼女と再会を果たす。ルシアは、以前悪者に暴行を受けたことを今なお心の傷として抱えていた。2人は街中を散策する中で、ハプニングに巻き込まれる。その後に発生した出来事から、2人の過去が次々と明らかになっていく。2人を取り巻く出来事の背景にあるものは何か、そして彼らの過去にはいったい何があったのか。

 

 このゲームで特筆されるのは、前半と後半とで、物語の雰囲気がまるで違っていることでしょう。

 前半では、とにかく主人公がひたすら情けない表情を見せるばかりで、あらゆることに及び腰、さらに登場するヒロインも悲惨な目にあう、など、ロクな面が見えてきません。主人公が「ジャッキー」という、何だか犬を連想させる名前も、これを後押ししているようです。主人公とヒロインとの漫才(?)も、おもしろいものというよりは、どんより漂う暗い雰囲気をなんとかその場その場でごまかしているという印象が強く、その面で滑稽さを出しているように感じたものです。なにせ、主人公のセリフの中には、

皆が知らない方がいいっていうんだから、そのほうがいいんじゃないの? どうしてルシアはそんなに事故のことが知りたいの?

というのがあったりします。オポチュニストを否定するわけではありませんが、主人公を「情けない」という設定にして、そこから何を引き出しているか、というと、よくわからないんですよね。

 一方、主人公とは対照的な行動を取るかに思えるヒロインにしても、けっこう不用意な行動を取ったりするので、「?」が重なることしきりでした。

 

 しかし、後半になると雰囲気は一変し、主人公は大して強くないながらも自分なりになんとか道を開こうと頑張っていきます。窮鼠猫を噛む、といった行動を破れかぶれに重ねているだけ、と見えなくもありませんが、「自分で使えるなにがしかの力を存分に振るっている」というわけではなく、開き直りの結果、身体が(下半身も?(^^;)自然に動いている、という風にも見えます。もっとも、このゲームのテーマは、決して「弱っちい主人公の成長物語」ではない(と思う)ので、この点を軸としてシナリオを評価するべきではないのでしょうが、プレイヤーを物語に引き入れるという役割を担っているのは主人公ですからね。

 

 ただ、シナリオ展開の中で、気にかかった問題点の中には、このように「エンターテインメントとしての「面白さ」の弱さ」のほかに、かなり重要と思えるものもあります。それは、展開の中で出されてきた非倫理的(あるいは「反=倫理的」とでもいうべきでしょうか)行動の主体が、単なる一人物の悪行に集約されているため、勧善懲悪的な雰囲気が終盤で色濃く浮き上がってしまい、メインテーマとなるべき人倫に関わる部分に関する話題が取って付けたような大仰なる装置として見えてきてしまうことです。

 詳細について踏み込むのは控えますが、このシナリオの中では、悪者を倒したところで、それは当面の「首謀者」をして筋を通さしめる程度のものに過ぎず、むしろ、タイトルが暗示するように、禁断の果実に手を出してしまった「人」という存在が、その将来においてつけなくてはいけないケジメをつけずに済ませてしまうように見えます。極めてうがった見方かも知れませんが、エンディングは「歴史がこれから始まる」ことを暗示しているだけに、若干居心地の悪さを感じました。

 

 さらに、上述のこととも関連することですが、悪党が正真正銘同情の余地のない悪人であることも指摘できましょう。後継作『ワイルドフォース』では、ラスボスも含め、悪役といえども決して骨の髄まで憎む対象とするべきどうしようもない悪人という連中はほとんどいなかったのですが、このゲームでは唾棄すべき嫌な連中が出てきます。これは困ったもので、どうしてこんな「嫌な奴」を相手にしなくてはいけないのか、と思うことしきりでした。

 

 また、後半のHシーンの多さはなんとかならないものでしょうか。先へと進みたい、と思っても、いきなり「愛の儀式」をおっ始めるもので、「あぁもぉ面倒…」と思ったことは一度や二度ではありませんでした。テンポの良さを削ぐ上に、「主人公、これでよく身体がもつなぁ」と思えるほどの頻度というのは考えものでありましょう。

ゲームデザイン

 完全に一本道のアドベンチャーゲームです。中途のシナリオ分岐等はまったくなく、コマンド総当たりで先へと進むことになります。Hシーンの回避が可能であればよかったんですけれどね。また、研究所内など、移動を含む個所でのコマンド総当たりは割と面倒くさいものがありましたが、こういうシーンはむしろ後継作『ワイルドフォース』よりは少なかったような気がします。

操作性など

 ゲームを起動すると、オープニング(マウス右クリックでスキップできます)「最初から始める/途中から始める/わくわくフォア・ナイン/DOSに戻る」が表示されます。「わくわくフォア・ナイン」を選択すると、「ごあいさつ/マニュアル補足/新作情報/回想モード/CGモード/名前変更/サウンドモード」が出ます。

 マウス、またはキーボードで選択肢を選びます。これ以外の操作は、基本的に必要ありません。

 メッセージスキップはありません。CapsLockをオンにすることでメッセージが高速表示されます。

 選択肢が出た箇所でのみセーブ&ロードが可能ですが、なにせ難易度はないに等しいので、そう多くてもあまり意味がないような(^^;) 各章ごとにセーブしておくのがよいでしょう。また、プレイ時の実日時と第何話かも記録されます。

 「わくわく…」から、主人公の名前は変更可能なんですが、これはわかりにくいですね。名前を変えてプレイした人っているんでしょうか?

 また、CGモード・Hシーン鑑賞モード(「回想モード」)・サウンドモードがあります。CGモードは、Hシーン限定なのが残念。サウンドモードでは、各曲名つきで再生されます。

サウンド

 98エミュレータ「ANEX86」にて再生しました(MIDI-GSにも対応)。やや静かな感じの曲、あるいは緊迫感のある曲があり、曲ごとの切り替えもなかなか良かったと感じました。

 個人的には、「樹海」「ハートビート」の2曲がお気に入りです。

グラフィック

 「御野眠」さんがメイン原画を担当。背景CGは比較的小さいのですが、立ちCGを極力使わず、会話に参加しているキャラクターはメッセージウィンドウ左側にフェイスウィンドウを配するという手法を採り、ゲーム画面の小ささを補っています。会話対象が画面内に出てくることもあります。

 下部に、キャラクターのフェイスウィンドウ+半透明メッセージウィンドウが、右側に選択肢が表示されるというスタイルです。特に背景画は、時代を感じさせる水準のもので、今から見ると物足りないのは確かでしょう。フェイスウィンドウの中でころころ変わるキャラクターの表情は、やはりこのゲームでも充分に魅力的なものですが、キャラの「動き」自体はさほど活発なものではなかったこともあり、「これを見ているだけで楽しい」というほどではなかった、というのも正直なところです。

お気に入り

 キャラクターたちの動きはみないろいろな面を見せてくれて楽しいのですが、後継作にあたる『ワイルドフォース』などに見られる破天荒なエネルギーは感じられないため、どうしても「やや重たい」雰囲気になってしまう点は否めません。そんな中で、一直線ストレートなライラが気に入っています。

関連リンク先

 SHEOさんのサイトで触れられていますが、レビューサイトなどでも取り上げられているところはさほどないようです。古いゲームですし、致し方がないのかも知れませんが。

総評

 現在となってはやや古くさい、という印象は、どうしても否定できません。また、シナリオ自体も、主人公が情けないとか、そのくせ立ち直りや成長はやたらと速いとか、ヒロインが悲惨な目に遭うとか、そして何よりも、単一の悪役が固まってしまい、その「非倫理性」の描写がどうしても上滑りになってしまっているため、弱さを構造的に内包しているといえ、完成度が高いものとはいい難いのは確かです。

 しかし、キャラクターのひた向きさという点で見れば、このゲームシナリオは「静かな熱気」を帯びていると見ることもできましょうし、要は受け止め方という「幅」の中に収まる点が多いのも確かでしょう。そしてまた、この「ひたむきさ」自体も、このシナリオ展開の中だけですべて好結果を直接用意するものではない(=この作品内部だけでは終わらない)ことを示している、と見ることもできましょう。テーマ的に見た場合、やや散漫という印象がどうしても否定できない『ワイルドフォース』よりも、こちらの方を高く評価するとしても、充分に説得力があると思えますし。

 とまれ、『ワイルドフォース』および『カナン』に対し、惜しみない賛辞を捧げる私としては、このゲームのプレイも、やはり推奨事項の中に入れておきたいと思います。

個人評価 ★★★★★ ★★☆☆☆
2000年8月25日
Mail to:Ken
[レビューリストへ] [トップページへ]