ワイルドフォース フォア・ナイン/エクセレンツ

1994年10月29日発売
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 現在ではなくなってしまったブランド・「フォア・ナイン」。DOSベースの時代(1997年初頭以前)以前からゲームに触れている方の中には、今なお根強いファンが多いのですが、現在の標準的な環境では、姉妹ブランド「アプリコット」の『夢幻夜想曲』程度しかプレイできないので、その実態はまったくわかりませんでした。『GAOGAO!三部作』シリーズの第3番目の作品です。

 そんな私にとって、この『ワイルドフォース』は、シナリオライターが『夢幻夜想曲』と同じ、という以上の情報をまったく知らないままながらも、幾ばくかの期待を抱ける作品として目に映っていました。

 実際にプレイしてみると、「めちゃめちゃ楽しい」。楽しさを演出しようとして上滑りになるゲームが多い(大半?)中、こいつは、プレイを始めると止まらず、結局徹夜プレイと相成りました。

※このレビューは、PC-98 DOS版をエミュレータ「ANEX86」でプレイして書いたものです。

シナリオ

 主人公、ウルフ・ウルフィ(変更可)は、狼族の変異体で、気ままに放浪を重ねる旅人。森の中で鉢合わせしたうさぎ族の女の子・ラビィとともに洞窟の中に落ち込み、その閉鎖空間の中で活路を見出そうとする。どうにかこうにか洞窟を抜けると、その先には、自分たちの知らない世界が広がっており、「闇食い」と呼ばれる凶暴な化け物が人を脅かしていた。異世界から来た勇者と勘違いされた主人公は、この世界でどんな活躍をするのか。ウルフィとラビィは、もといた自分たちの世界に帰ることができるのだろうか。

 

 冒頭でも書いたとおり、プレイを始めると止まらなくなります。場面の描写、そして展開のスピードなどが、実に憎いほど効いており、プレイヤーを引きつけ、掴み、離しません。

 少年少女向け冒険譚、という内容紹介をある方から受けたことがありますが、言い得て妙なり、と感じます。キャラクターたちが語り合うコミカルな会話、そして緊張感溢れる展開。この2つが、不自然な矛盾を含んだ形を取らず、不思議と同居、否、融合しています。不安や焦燥、孤独といったイメージを作りながらも、常に「楽しさ」を伴うことを忘れてはいません。

 

 シナリオの評価というものをする場合、その軸をどこにおくかは、人によって、ゲームによって異なってくるでしょう。また、テーマやスタイルに共通性のあるゲームをプレイしていた場合、それと比較する形になってしまうこともあるでしょう。このため、「シナリオのよいゲームは何か」と問われた場合、かなり高い確率で返答に窮してしまうのは、ゲームをある程度以上プレイした人が誠実に対応している場合、むしろ当然の反応といえるでしょう。

 しかし、ゲームをプレイしていて「楽しい」と感じ、そしてプレイ後に心地よい余韻を残してくれれば、それはその人にとって「よいゲーム」だった、といっていいはずです。これと同様の尺度で見れば、プレイ中、そしてプレイ後に「楽しい満足感」を残せば、それが「よいシナリオ」だった、ということは可能でしょう(逆は必ずしも真ならず、「“楽しい”とは少し異なる印象を残すような“よいゲーム”もある、それも確かです。念のため)。その視点で見た場合、このゲームは、まさに最高水準に近い「楽しさ」を見せてくれました。

 

 シナリオライターが三峰奈緒さんということで、『夢幻夜想曲』のような、静かなファンタジーものを期待していたのですが、まったく毛色の違う、まことに賑やかな展開。しかし、そこに流れるシナリオは、雰囲気の良さ、楽しさを十全に味わうことを可能としてくれます。

 

 「雰囲気の良さ」をシナリオ展開の中で描ききるのに成功しているゲームとしては『メロディ』(Melody)という作品がありますが、『メロディ』は徹頭徹尾詩的なテキストを流麗に流し、あえてハーモニーを突き崩すことで微細なニュアンスを積み重ねるという方法を採っているのに対し、『ワイルドフォース』では、あくまでもリアリティを守りながら、テキストの流れを作るパーツとしてテキストを配置する、という手法を採っています。

 章の区切りも、実に効いています。各章の区切り方も、先へ行くとどうなるか、を気にさせるところで、うまくアクセントとして「切れ目」を挿入しています。

 コミカルな流れで一本道、最初は主人公とヒロインだけで、徐々に仲間が加わり、パーティも変わっていく…というあたり、『ランス3』(アリスソフト)に通じるものを感じますが、一つ一つのセリフが洗練されていることもさることながら、主人公のパーソナリティに依拠するのではなく、あくまでも「登場人物たち全員の力で叙述している」ため、より物語世界の広がりを感じます。

 シナリオライターの力量次第では、こんなゲームも作れるのだ。そんなことを思い、唸らされた次第です。

 

 徹頭徹尾明るい話が続くのですが、そこの過程においては、不可避的な運命に彩られた悲劇も、当然のように埋め込まれています。「魔女」エフェメラが、まず「運命の悪戯」の先頭に来ます。そして、ブルー。自分の運命を自分で認識し、未来を最後に主人公たちへと託すかのようなラストシーンは、敵役キャラの最期としては、まさに最強でしょう。さらに何よりも印象的だったのは、ラストで「光食い」たちに殉じた老闇食い、ミカヅキ。彼は、長生きという単なる「偶然」の結果、知識や判断力を身につけられたものの、自分たちの存在の「位置」を知っているがゆえに、最後であのような態度を取ることになります。

 こういった、ホロッとさせるシーンが非常に多く描かれています。それは、そこまで流れてきたコミカルな展開から矛盾なく引き継ぐことで、逆に、見かけの幸福とはコインの裏表のような関係の世界が確実に存在していることを、無言で語っているようです。しかし、「重く、そして暗い影が存在する」のは、いうなれば当然のことであって(明部のみの偽善的世界に安住すれば別ですが)、その「重さ、暗さ」を、綺麗に併存させています。

 

 さらに、印象的なエンディング。ラストシーンが明るく大団円、となると、そこには得てして「不自然な強引さ」がどうしてもつきまとってくるのですが、このゲームの場合、その底抜けの明るさが、エンディングを飾っているキャラクターたち自身によってキッチリと描かれており、それも、明確な未来志向をもった状態で締めているので、実に見事なものとなっています。過去に対する怒りや反省も、ストーリーの起伏を設けるには当然必要なことでしょうが、それをエンディングへ引きずることなく、「これから」を模索しようという主人公たちの描き方には、まさに脱帽ものでした。

 

 キャラクターを見ても、実に秀逸なモノを感じます。

 まずは、主人公自体が、単純突撃野郎ではなく、ストイックというわけでもなく、情けないヤツでもなく、ひたすら脳天気なバカでもないという、かなり「描きにくい」キャラになっていることが注目できます。こんなパターン、ファンタジーものではあまり見たことがないんですよ。行動原理が基本的に「おもしろそう」。これで徹底しているんですね。常に前向き、それでいてきちんと考えるべきは考え、情けに篤い。

 キャラクターの会話が、実に活き活きしています。緊迫した空間でもギャグが絶えない、という手法は、人によって好みが別れる可能性はありますが、戦闘シーンにおいては、現実感を過度に追究する必要はないわけですし、これはこれで十分に楽しめました。最強(^^;)の例が、どこまで存在意義があるのかよくわからないながら、決して退屈させないことだけは保証してくれる、双子の姉妹。大阪芸人のノリ(言葉も…)丸出しで、最初から最後まで大笑いさせてもらえました。また、パーティに参加している味方メンバーのみならず、敵についても、そのノリが変わりません。一番最初に出てくる強敵・エンザなど、見かけによらず、最後までギャグキャラの看板を掲げ続けてくれました(^^;)

 

 ただ、この手法は、「諸刃の剣」ともいえます。確かに楽しいのですが、一歩間違えると、「目の前の目標」を追うことばかりになり、「当面の目標」さえ失ってしまうことになりかねません。このゲームの場合、どんなに楽しくても、ゲーム内の最終目標であるボスキャラを追いつめるという点が「どっかに消える」ということはなかったのですが、一般水準より上という程度のシナリオライターでは、「枝葉を繁らせ過ぎて幹がまったく見えなくなる」という可能性もあると感じます。その点、枝葉をすごい勢いで繁らせながらも、それらが根幹部分で幹に繋がっていることを絶えず忘れさせない三峰さんの手法には、本当に参りました。

ゲームデザイン

 完全に一本道というアドベンチャーゲームです。分岐もほとんどなく、せいぜい場所によってHシーンに突入する・しないを選択できるという程度です。私は毎回躊躇なく突入しましたけどね(^^;) 全体は8つの章からなり、それぞれにタイトルがついています。

 基本的に、コマンド総当たり方式になっています。個人的にはこのタイプは「引き延ばし」がミエミエということもあって好きではないのですが、ひとつひとつの会話内容そのものが楽しいので、苦になりません。街でアイテム収集にいそしむのにはややかったるさを感じましたが、最終局面が近づいてくると、「行ける場所には全部行って全部のコマンドを試す」のも苦にならなくなってきたから、不思議なものです。それだけ、雰囲気に飲まれてしまったのでしょうか。『夢幻夜想曲』では、コマンド総当たりそれ自体が「雰囲気を演出する」役割を演じているように感じたものですが、こちらはそれと対照的、という印象です。

 ちょっと残念なのは、Hシーンが多すぎること。時間的に「そろそろくるかな」と思ったら、やっぱり始まる、という感じです(^^;) 余計だ、ンなことやらんと先に進みたい、と思っても、一発やっておかないと話が進まない(^^;)ので、仕方がないのですが…。『夢幻夜想曲』のように、明白に「存在自体が邪魔」というシーンがなかったのはいいんですけれど。

操作性など

 ゲームを起動すると、「最初から始める/途中から始める/わくわくフォア・ナイン/DOSに戻る」が表示されます。「わくわくフォア・ナイン」を選択すると、「ごあいさつ/マニュアル補足/新作情報/回想モード/CGモード/名前変更/サウンドモード」が出ます。

 マウス、またはキーボードで選択肢を選びます。これ以外の操作は、基本的に必要ありません。

 メッセージスキップはありませんが、会話がなにせ楽しいので、私はほしいとは思いませんでした。こんな経験、ほとんどないのですけれど。CapsLockをオンにするとメッセージが高速表示されます。

 選択肢が出た個所でのみセーブ&ロードが可能ですが、なにせ難易度はないに等しいので、そう多くてもあまり意味がないような(^^;) 各章ごとにセーブしておくのがいいかな? セーブの時にコメントを任意に書けるのはよし(書かなくてもよい)。また、プレイ時の実日時と第何話かも記録されるので、使い勝手はいいですね。

 「わくわく〜」から、主人公の名前は変更可能(デフォルト:ウルフィ)なんですが、これはわかりにくいですね。名前を変えてプレイした人っているんでしょうか?

 また、CGモード・Hシーン鑑賞モード(「回想モード」)・サウンドモードがあります。CGモードは、Hシーン限定なのが残念。サウンドモードでは、各曲名つきで再生されます。

サウンド

 PC-98エミュレータ「ANEX86」にて「ステレオFM音源」で再生しました(MIDI-GSにも対応)。メロディラインはなかなかに気に入った曲が多く、ゲームの雰囲気を非常によく出すのに効果を発揮していたと感じます。日常の脳天気さから、ロマンチックなシーン、戦闘シーン、シリアスシーンなどの切り替えは絶妙で、FM音源といえども侮れない、と感じたものです。

 個人的には、な〜んとなくですが、「CAN☆CAN☆CAN」が気に入ってしまいました。あと、「ミラクル☆ガール」もマル。

グラフィック

 輪月伽吉巳さんがメイン原画を担当。背景CGは比較的小さいのですが、立ちCGを使わないという手法を採ることで、ゲーム画面の小ささを補っています。会話対象が画面内に出てくることもありますが、基本的に、パーティを組んでいるメンバーは画面内に出てはきません。下部に、キャラクターのフェイスウィンドウ+半透明メッセージウィンドウが、右側に章名・選択肢が表示されるというスタイルです。特に背景画は、時代を感じさせる水準のもので、今から見ると物足りないのは確かですが、何よりも楽しいのは、フェイスウィンドウの中でころころ変わるキャラクターの表情です。特に変化が激しいのはラビィでしょう。怖がる顔、脅える顔、照れ顔、スネる顔、泣き顔、その他諸々の表情が本当に楽しく、何度見ても飽きません。

お気に入り

 キャラクターはみなそれぞれ、いきいきとした顔を見せてくれますから、1人に絞るのは本当に難しいですね。主人公のウルフィをはじめ、災厄引き受け係(^^;)ラビィ、豪快なイリア、はにゃ〜っとしたニース、心を閉ざしたエフェリア、運命に悩むブルー、そしてミカヅキ…。そんな中で、敢えて挙げれば、やはり双子の姉妹でしょう。どんな意味を持っているのかよくわからんキャラではありますが(実際、いなくても展開にはほとんど影響なさそう)、こいつらがいることで話の軽やかさがより際立ったような気がしますので。

関連リンク先

 古いゲームということもあって、取り上げているサイトはさほどありませんが、SHEOさんのサイトを挙げておきます。また、鷹月ぐみなさんのサイトには、単独の感想と、GAOGAOシリーズを総括した解析とがあがっています。

総評

 シナリオで勝負する、というゲームの場合、その多くは、舞台となる世界設定に一癖も二癖もある、というものでしょう。もちろん、「世界設定」の中でも、ファンタジーとしての設定そのものが優れているもの、何らかのメタファーとして設定が生きているものなどがありますが、いずれにせよ、「テーマ」という次元へ深化し、そこでの評価が最終的に高くなる、というケースが多いとみてよいでしょう。

 ところが、この『ワイルドフォース』は、ゲームの表層部にあたる部分で、すでにプレイヤーを引きつけて離しません。その結果、「世界観が曖昧になる」という難点がないとはいえません。しかし、プレイ中に少し胸に痛みを残すシーンも適宜配置し、ゲーム全体が軽くうわずってしまうのを防いでいます。

 「シナリオで魅せるゲーム」の魅力を、改めて感じました。

 しかし、『夢幻夜想曲』とは異なり、Windowsへの移植は行われていませんし、その噂も聞きません。『サンクチュアリ 〜少女達の聖域〜』という長期にわたっての未発売作品もあり、あまり早々に期待することはできそうにありませんが、Windows移植をしてもそれなりに受けそうだと思うのですが。CGを塗り直すぐらいで間に合うようにも見えますし。

 

 今や入手はずいぶん難しくなっていますが、「楽しいゲーム」が好きであれば、まず問題はないでしょう。そして何より、名作『カナン 〜約束の地〜』の下敷きとして、ぜひともプレイしていただきたいゲームと思います。

※2002年10月現在、GAOGAO!シリーズのWindowsリメイクシリーズ「ミューティアクロニクル」は、第1作『シルバー・ジーン』のみが出ています(『ラジカルシークエンス』に対応)。

個人評価 ★★★★★ ★★★★☆
2000年2月21日
(2月24日、「サウンド」欄を加筆・修正)
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