ウェディング・エラントリー 逆玉王 グローサー

1994年12月10日発売(PC-98 DOS版)
1995年10月15日発売(FM-TOWNS版)
1996年4月20日発売(Windows版)
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 EP−ROMさんの「昔話・その13」で紹介されてプレイしたゲームです。このゲームの魅力の主要な部分についてはEP−ROMさんのテキストをごらんいただくとして(はじめてだなこのパターン(^^;)、意表をつく(決して「力業による意外さ」によるものではありません)しっとりとしたエンディングが用意されており、久々に「時間をかけただけの甲斐のあるRPGだった」と思える作品でした。どうしてこれがメジャーにならないままだったのか、よくわからないのですけれど。

※このレビューは、Windows版をプレイした結果をもとに書いております。なおEP−ROMさんの「昔話」はPC-98 DOS版がベースになっていますが、基本的には大きな違いはないようです。

シナリオ

 あらすじは、「昔話」のほうで書かれているとおりなので割愛いたします。

 

 シナリオ担当は、村越かすみ氏。

 序盤はひたすらばかばかしいノリの話が続きます。それも基本的には、主人公の弱っちさに起因するものなので、特に不自然さは感じられません(某イケニエの美少年はちょっと後味悪かったかな(^^;)。しかし後半になると、どんどんシリアスな展開になっていきます。

 そしてエンディングですが、必ずしも文句なしのハッピーで終わるわけではありません。敵キャラが抱えてきたもの、そして姫とそのキャラとを結びつけるアイテムの使われ方などを見ると、本当に切なくなります。具体的に語ることは控えますが、それぞれのキャラクターの想いをみなさまざまな形でしっかりと出しています。

 また、プレイヤーキャラクターの“試練”に重みをつけるために、酷い展開を無理に入れたりしていない点も好印象ですね。生身の人間にとって等身大の課題に立ち向かっているのであり、世界を揺るがす魔王との果たし合いを突然求められるような重苦しさがないのがけっこうなことです。

 

 主人公が切り開いたものは決して軽いものではありません。実際にダンジョンへと潜り始める決意を固めた動機は姫への恋慕だったわけですが(さらにさかのぼると、単に“おいしい思い”をしたいだけだったわけですが)、いろいろな事情を目にしていく過程で、この主人公が自分の目にしたこと、知ったことをしっかりと受け止めていくさまがきっちりと描かれています。そしてまた、主人公のライバルたちが彼のことをしっかりと認めていくとおり、主人公が冒険を重ねていくごとに成長していくさまが丹念に示されている点も大きいでしょう。ただ単に戦闘能力が上がっていくのみで、シナリオ内における主人公の立場は大して変わらないというRPGが多い中で、シナリオの展開とレベルアップとがきちんとつながっている、非常にいい例だと感じます。

 また、ヒロインであるレムリア姫自身、妙に生臭いところがあったり世の中を甘く見ていたりするうえ、サブキャラもそれぞれがいい味を出しているので、主人公が一人で滑っているという感じがありません。

 さらに、王女と結婚するということは将来の国王候補筆頭となるわけでしょうが、主人公がその任をしっかりと負っていると感じられるエンディングに仕上がっているのもいいですね。前途は多難になりそうですけれど、主人公がもたらしたものが“身丈にあっただけのもの”なのが好感を持てます。仰々しさがなく、あくまでも「逆玉王」のままで止まっているわけです。

 愛を求めるだの、真実を見極めるだのといった“お題目”が宙に浮いてしまっているゲームが数多い中、この作品では地に足のついたシナリオに仕上がっています。

 

 また、会話のセンスが微妙にズレているのが、また現実離れしているというか何というか(^^; 毎日三度三度食堂で与太話を繰り返すため、なんとも緊張感がなくなります。

ゲームデザイン

 ダンジョンを深く潜り、モンスターなどを倒して経験値を得てレベルアップしていきつつイベントを発生させるという、ごくオーソドックスなRPGです。ただしカロリーという概念があり、腹が減るとまともな攻撃ができなくなるほか、運動量と消費カロリー量に応じて体格が変わります。このため、カロリー補給=食事のメニューが非常に重要になってきます。イベントの発生などもさほど意地悪なものはないうえ、詰まりそうなところではヒントが出てきますから、コツをつかめば進めるのは容易でしょう。

 しかし、何をやってよいのか見当がつかない最初の段階では、そもそもいちばん初めに出てくる雑魚キャラさえ倒せずにゲームオーバーを数回繰り返しました。これには、食事のメニューで「お造り定食」を注文して素手で攻撃することで対処できますが、最初からこういった試行錯誤をノーヒントで求めるのは酷な話で、ここですでに諦めてしまった人も多いことでしょう。ここが、このゲームのバランスを大きく損なっています。

 これ以降は、中ボスがやや固めであるものの、大半の試合では途中での撤退が可能であるうえ、地道にレベルアップしていけば十分で、むしろしっかりしたシナリオを楽しめるために過不足ない構成となっています。ただし、セーブがダンジョン内の任意の位置で可能であるうえ、順調にレベルアップしていくと敵キャラの攻撃がほとんどあたらなくなってしまうので、さほど緊張感を持てないのがやや難。また、戦闘中にいったんパラメータが低下すると戦闘能力がどんどん後退していくという仕様もなかなか困ったもので、序盤はこれにずいぶんと苦しめられました。

 さらに、RPGとしてのイベントの発生にはさほど意外性がない(特に終盤にいくほど)点もあり、ちょっともったいない気がします。プレイ中に「一本道だな…」と思ってしまったのが残念。各ダンジョンを潜っていくごとに中ボスが配置されていて、倒してイベントをクリアするとHシーンに突入、といったあたりもベタなものですし。ただし、最初が13歳というのは(以下略)

不具合・修正ファイル

 エラーメッセージが発生して起動できないという現象があります。通信販売では修正ファイルを入れたフロッピーが同梱されていますが、グローサーのWebサイトでは公開していません。この場合、実はF&CのサイトにあるADMの最新版を使っても正常に起動します。また、テキスト表示に妙な縦線が入りますが(文字の判読には支障ありません)、これはグラフィックカードに依存するものかもしれません。

デモ・体験版

 いずれも、存在を確認していません。

操作性など

 対応OSはWindows3.1/95ですが、Windows98でも問題なく動作します。また、サポート対象外ながらWindows2000/Meでも動作するようです(WindowsXPでは起動しませんでした)。CD-ROM1枚で、プレイ時にはCD-ROMが必須です。なお、マニュアルには「自動でセットアップ・プログラムが立ち上がります」とありますが、実際には自動起動しません(autorun.infが入っていません)。

 画面は中央部に背景表示、下部にメッセージウィンドウ、右側に装備およびステータスが表示されます。一部のイベントシーンでのみ全画面表示となります。なお、オープニングは必ずスペースキー押下で進めてください。マウスをクリックすると問答無用で飛ばされてしまい、その後の展開がまったくつかめなくなるので注意が必要です。

 メッセージ表示およびキャラクター移動表示を切り替えることができます。メッセージスキップは特にありません。操作はマウスおよびキーボードで行いますが、移動は基本的にキーボードのカーソルキーで行います(マウスではまともに行先を指定できませんでした)。

 ゲームを起動すると「ゲーム」「オープニング」「エンディング」「おまけ」が表示されます。

 セーブ&ロードは、ダンジョン内の任意の位置(イベントおよび戦闘中を除く)および1日の開始時に10個所まで可能ですが、確認メッセージの類はなくセーブ記録の表示もないので、しばらくたつとどのようなポイントでセーブしたかがわからなくなるのが残念。

 「おまけ」メニューからは「CGの鑑賞」および「BGMの鑑賞」を選択できます。「CGの鑑賞」は、実際のゲーム中では見過ごしたシーンも見られてしまうのですが、これはいいのか悪いのか。

サウンド

 サウンド担当は、あきら氏。BGMはCD-DAで再生されます。基本的にコミカルな曲が多いのですが、終盤になると気を抜けなくなる局面が多いだけに、やや場違いに思えることが多かったのが残念でした。

グラフィック

 キャラクターデザイン・原画担当は、メルバ氏。これといった特徴はなく、やや古い感じはするものの無難な感じでしょうか。特筆すべきことはありません。Windows版はベタ移植のようで、グラフィックは16色です。

お気に入り

 特にありません。

総評

 実際にプレイすると、「どうしてこんなゲームに光が当たらずに埋もれていたのだろう」と思ったしだいです。

 なるほど、最初がどうやって進めていいのかまったくわからずに何度も轟沈したり、万事古くささを感じさせるユーザーインタフェースだったりと、マイナス面を否定できません。しかし、最初は“中華鍋とお玉”で始まった主人公が、最後の独白でキッチリと締めるというバランスの良いシナリオは、RPGの中では非常に水準の高いものになっています。また、ゲーム世界に登場するそれぞれのキャラクターが、みなそれぞれの立場と考えを大事にし、そして限られた選択肢の中で精一杯にがんばっていることがよくわかります。

 名作と呼ぶには抵抗がありますが、埋もれてしまうのには惜しい作品です。こういう筋の通った作品は、なかなか見られないだけに。

個人評価 ★★★★★ ★★★☆☆
2003年6月30日
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