V.R.デート 五月倶楽部 デザイアー

1995年8月25日発売(PC-98 DOS版)
1996年10月25日発売(Windows3.1/95版)
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 カクテル・ソフトの『With You』をプレイした後、18禁ゲームにおいて、「幼なじみ」とはどんな役割を負うものとされているのか、という話を、NIFTY SERVE(現・@nifty)に書き込んだことがあります。その時、とあるアクティブの方から紹介されたゲームが、この『V.R.デート五月倶楽部』でした。続編『五月倶楽部2』はすでにプレイ済みであり、「あえてプレイするほどのものではない」という評価を下していたため、かなり警戒感を抱きながら手にすることになったのですが、実際にプレイしてみると、非常に新鮮な印象を持ちました。地味なパッケージ、今ひとつパッとしないその装丁に不安は隠せなかったものの、小粒ながらもなかなかのシナリオを中に含んだ作品でありました。

 カタカナを使ってものすごい当て字を用いているのが面白いですね。当然ながら、「May club」と「make love」とは、発音が全然違いますけれど、そこはカタカナ表記の妙、ということで。

 

 なお、このゲームは、当初PC-98 DOS版が出され、後にWindows3.1/95対応版が移植されています。Windows版では、音源がMIDI(GM)のみとなっていること、不要としか言えない水準の音声が追加されている(オフにできるのが救いです)という違いがありますが、両者は基本的に同じです。以下、DOS版とWindows版とで異なっている個所については、別途記しておきます。

シナリオ

 主人公・工藤肇(変更不可)は、就職も決まり卒業目前の大学生。そんな彼は、仮想空間「五月倶楽部(メイクラブ)」へと、出逢いを求めに日々足を運ぶ。バーチャルリアリティの空間には、どんなキャラクターがいるのか、そしてまた、彼はどんな出逢いをするのか。

 

 シナリオ・スクリプト担当として「神山機械」「K-G23」「三浦みるく」各氏の名前がスタッフロールにあります。

 五月倶楽部という空間に入れる回数は限定されています。その限られた回数をうまく使い、意中の女の子と出会い、親密な関係になることを目的とするゲームです。

 シナリオは、各ヒロインごとに別々のものとなっています。そしてまた、ラストのイベント前までは同時攻略を進めることも可能ですが(日程には余裕がけっこうあるので)、最終的には1人を選び、そのままエンディングへと進むことになります。N股かけたあげく1人を選ぶという外道なマネはできません。

 各シナリオは、それぞれきちんと筋道の通った、安心してみていられる恋愛ものが基本ですが、必ずしも「王道」とはかぎらず、仰天させられるようなシナリオもいくつか存在しますし、「それはあんまりじゃないか?」というエンディングも少なくありません(^^;) それぞれの中身については、プレイしてのお楽しみ、ということで。

 

 主人公に嫌みがないのは、この種のゲームでは珍しく、非常に新鮮に感じました。確かに、主人公はスケベ心で行動しているわけですけれど、女性を食い物にすることのみに青春をかけているような主人公が多数派である中、分別のある行動を取ってくれます。これが本当に18禁ゲームの主人公か、と思うことも、(シナリオによりけりですが)一度や二度ではありませんでした。もっとも、五月倶楽部に行く以外には何の行動もしないで寝ているだけ(プレイヤーから見れば、「何の行動もできない」)という主人公には、かなり違和感を覚えるのも確かですが、あくまでも「五月倶楽部という空間」の中での行動を見る限り、主人公が非常にナチュラルな人物に感じられます。

 

 興味を惹かれたのは、仮想空間という舞台設定であるがゆえに必然的に(意図的に、ではありません)出てくる、人間の「素顔」と「仮面」とのギャップでありました。このギャップは、実生活でも(あるいは、このように通信という手段で情報をやりとりしているネットワーク上でも)大なり小なりあるわけですが、その「仮面」の緊張した状態が、興味深い形でプレイヤーに伝わってきます。人と人とのコミュニケーションにおいて、本当にすべてをぶつけ合うことが可能な機会というのは、そう滅多にあるわけではなく、「仮面」が伸縮を繰り返しながら接触・交渉をするのがコミュニケーションといえるわけですが、その「仮面」があればこそのコミュニケーションの妙味が、みごとに伝わってきます。そしてまた、自らの被っている「仮面」をどうコントロールしているか、は、その当人でさえ意識的に把握することは不可能(少なくともリアルタイムでの把握は不可能)であるがために、「仮面」を第三者的に眺めると、まことに興味深いものを感じます。

 「仮想空間」だからこそさらけ出せる自分は、逆に、「現実空間」において、自分を自分として支えているものを崩しかねない、危うい要素を備えている。冷静に考えればしごく当たり前ではありますが、この「当たり前のこと」を再認識させるシナリオは、メールやチャット、Webなどといった「仮想空間」(←この表現法に対し、個人的には若干の異論があるのですが、それはこの際措きます)がゲーム内で使われることも珍しくなくなった今日でさえ、そうそうお目にかかれるものではありません。「演じる」自分に対してさえ、自分として主体的な制御が可能であるといった、そんな「幻想」の上に安住している向きには「何のこっちゃ」という程度のものかもしれませんが、なんら力むことなく、この「演技する人間」の「仮面」をすらりと描ききっているシナリオが、それもさり気なく用意されている点には、高い評価をするべきでしょう。

 

 また、ヒロインの方に目を向けても、主人公に対して興味を抱き、あるいは共感をもち、そして接近していくという過程がきちんと描けているケースもあり(そうでない無茶苦茶なシナリオもありますが)、恋愛ものとして見ただけでも、かなり細かい描写が誠実になされていると感じます。単に会う回数が増えていけば自然と好感度が上がる、という、いわばルーティンワーク化した「出会い」ではなく、毎度のやり取りに対して、確実に「意味」が付与されているという実直さは、昨今のゲームにはさほど見られないもののように感じるのは、私だけでしょうか。

 

 ただ、シナリオのタイプがあまりにも幅広く多岐にわたっているために、上のような印象も、プレイ次第では評価がまるっきり変わる可能性も充分に考えられます(^^;) アブノーマルなあへあへに走るだけといってよいシナリオもありますので。

ゲームデザイン

 仮想空間・五月倶楽部で、女の子と会う。そして、イベントを重ね、エンディングへと突入します。行動可能な日数、また、五月倶楽部へ行ける回数は限定されており、1日の期間は、午前・午後・夜の3パートに分かれます(画面左側のニワトリが時間帯を示しています)。現実世界での行動は「寝る/メイフィールド(=五月倶楽部)に行く」の2通りだけで、五月倶楽部での行動パターンによってキャラと出会い、話が進むことになります。

 オンリープレイに徹すれば、難易度はそれほど高くはないでしょう。CGをすべて埋めるにはちょっと手間がかかりますが、攻略だけであれば、そう手こずることはありません。「Ctrl」キー押下でメッセージスキップが可能なので、リプレイもさほど苦にはなりません。

 

 ナンパものといってしまえばそれまでですが、仮想空間という設定を活かし、そこにおいて「現実」と微妙な違いがうまれるという題材は、簡単なようでなかなか容易ではありません。

 実際、このソフト以降も、夢やらTV電話やらといったシステムを使ってのコミュニケーションを考えたゲームは結構あります。比較されることの多い『バーチャコール』(フェアリーテール)シリーズなど、まさにそうでしょう。しかし、登場する女の子の個性が生きており、さらに、「ナンパされるような空間に、わざわざ身を投じている」ことの理由づけがしっかりしているため、「何だ、寝る相手がいれば誰でもいいんじゃねぇか、この女どもは」といった気になることもありません。

 

 このゲームをリプレイして「憎いな」と感じたことは、仮想電脳空間という、かなり自在に使える空間を措定しているにもかかわらず、「恋愛ゲーム」としての枠を愚直なまでに守り、その枠内で、地味ながらも、きちんとした展開をもったシナリオを作っていること。こういう設定であれば、サイバースペースという面を強調して話を広げることもできるはずですが、広げた結果収拾がつかなくなり、「結局なんだったの?」と言いたくなる結果に終わる危険性も大なわけですが(続編は、まさにこの失敗を犯しているように思えるのが残念です)。

不具合・修正プログラム

 私の環境では、PC-98DOS版・Windows版の双方とも、特に問題点は発生していません。

操作性など

 Windows版では、Windows3.1・Windows95のそれぞれに対応するプログラムが別途用意されています。Windows95プログラムは、Windows95/98のほか、WindowsXPの互換モードでも大きな問題なくプレイが可能です。

 マウス・キーボードの双方で操作が可能です(キーボードのみですべての操作を行うことも可能です)。古いゲームということもあって、軽く、サクサク進みますが、Windows版の場合、CGやBGMはCD-ROMから直接読み込むうえ、ゲームの起動自体もCD-ROMがないと不可能です。ドライブへのアクセスが頻繁となるため、CD-ROMドライブによっては、かなりもたつきを感じることになります。この場合、CD-ROM内のデータをHDDにあらかじめコピーしておくことをおすすめします。

 基本画面は640×400ですが、Windows版の場合、縦横幅が維持されたまま強制的に画面切り替えが行われるため、縦:横比が4:3のモニタの場合、上下に壁紙がのぞくという、なんとも間抜けな姿になります。また、ハイカラー以上の環境でゲームを起動すると、自動的に256色に切り替わります。ただし、WindowsXPの互換モードの場合、640×400のウィンドウ表示となります。

 画像の表示画面はさほど大きくなく、Hシーンのみが全画面表示となっています。画面の右側にカードの残り回数(五月倶楽部に入れる回数)が表示されますので、これを見ながら、むだな行動はなるべくひかえるようにする必要があります。また、メイフィールドでは、画面右下に「VR」というロゴが表示されます。

 セーブ&ロードは、自室(現実空間)でのみ、4個所で可能。セーブ時の情報などはロード画面に表示されないため、しばらく時間が経つとどんなデータだったのかさっぱり見当がつかず、どうにも使いにくいものがあります。

 また、CGモード(CGのみのものと、テキストつきの回想モードとに分かれています。達成率も表示されます)、BGMモード、エンディングチェックも装備されており、かなり古いゲームにもかかわらず、実にしっかりとした印象を受けます。ただ、CGモードに一度入ると、最後まで抜けられないのはちょっと難アリ。

サウンド

《PC-98DOS版》

 BGMは、FM音源/MIDIで演奏されます。私はFMステレオ音源で再生しましたが、テンポの良さもさることながら、各シーンごとの切り替えタイミング(秋穂が豹変するとBGMが変わる、など)が非常に良いため、ポップな音色も相まってなかなかの演出になっていると感じます。

 個人的には、#11「永遠(とわ)の迷宮」が、大のお気に入りです。

《Windows版》

 BGMは、MIDIで演奏されます。CD-ROMには、ソフトウェアMIDI再生用として、シェアウェアのWinGrooveが同梱されています。ソフトウェアMIDIをゲームBGM再生に使用すると、パフォーマンスが著しく落ちるものが多いのですが、初回プレイ当時(MMX Pentium200MHz、ソフトウェアMIDIはYAMAHA S-YXG50C)でも、何らストレスを感じませんでした。

 MIDIファイルは、CD-ROM内にある拡張子「.M」のファイルです。拡張子を「.MID」に書き換えれば、Windows付属のメディアプレーヤーなどで聴くことも可能です。

 BGMは、非常にテンポのよい曲が多く、ゲーム世界をよく盛り上げてくれます。基本的にDOS版と同じ曲ですが、Windows版のMIDIの方が、DOS版のFMに比べて硬質な印象を受けます。

 実は、このゲームは主人公をのぞきフルボイスなのですが、どうやら全員を同一の方が演じておられるものと思われる上、基本的に棒読みなので、到底聴く気にはなれませんでした。これのWAVEファイルが、CD-ROM内にバラで転がっています(^^;)

グラフィック

 キャラ原画は、複数の人が分担しています(スタッフロールによると、「奥間まさみ」「たいらひとし」「田無栄造」「魔紀那夢Joe」「MERCY RABBIT」各氏)。

 グラフィックは16色です。塗りは悪くはないのですが、DOS版からの移植作品でしばしば見受けることながら、妙にオレンジ色がかって見えます。シアンが弱いようですが、モニタの仕様上の変化などがあったのでしょうか。

 そしてなにより、立ちCGでの表情の変化。これはかなり有名なところで、その点がこのゲームの売りだ、ということは前々から耳にしていましたが、期待を裏切ることのない出来でした。特に、秋穂の表情がころころかわるさまは、見ていて本当に楽しかったですね。また、きららの姿勢の変化を示すのも、非常にうまく描かれていたと判断できます。

 ただ、キャラ原画が、基本的にどうもロリっぽいですね。作品登場キャラの実年齢よりも、何歳か年下に見えて仕方ありません。

 背景画像が貧弱なのは、今となっては致し方ないのかも知れませんが、主人公の部屋の生活感のなさったら一体(^^;)

お気に入り

 篠原秋穂でしょうか。シナリオ的には「お約束」的な流れといえなくもないのですが、転回のタイミングが絶妙であるなど、シナリオ面での評価も、個人的には一番です。何よりも、「自分」の「弱さ」から目を背けていないところがいいです、ハイ。

 これに次ぐのが、美里、圭子の両名です。

関連リンク先

 鷹月ぐみなさん、蓼原シュンさんのサイトに、それぞれこのゲームに関する論評があります。

総評

 古くささは否定できませんが、現在に至るまでいろいろなナンパゲームをプレイしてきた中でも、相当上位にくる出来になっていると感じます。難易度はさして高くないので、イベントシーンを存分に楽しむことができ、シナリオへの没入にも、BGMが実にいい助けをしています。また、そのシナリオのバリエーションも、実に多岐にわたっており、「恋愛ゲームの幕の内弁当」的な印象も受けます。

 ただ、今後、このソフトがリメイクして出ることはおそらくないでしょう(※)。年齢的に、かなりヤバいキャラがいますから(^^;)

 もっとも、肝心カナメの販売元であるエクセレンツが瓦解してしまったので、文字通り「隠れた作品」のまま、その息の根が止められてしまった観もあるのが、何とも残念です。古いとはいえ、このゲームが持っている魅力そのものは、決して古ぼけることなく、今なおキラリと輝くものを残していると感じているだけに…。

※その後、後継ブランドの覇王からリニューアル版「V.R.デート五月倶楽部DX」がリリースされました。(2001年5月28日注記)

個人評価 ★★★★★ ★★★☆☆
1999年8月20日
(8月21日、一部改変)
(2000年11月24日、加筆・修正)
(2001年12月29日、「操作性など」を加筆・修正)
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