卒業写真2 〜Raspberry Dream〜 jANIS

1996年11月22日(DOS版)
1997年12月5日発売(Windows95版
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 Windows版をプレイしてそれなりに気に入った要素があるものの、実際にはかなり問題点が多いというゲームがときどきあります。この『卒業写真2』は、まさにそういったゲームでした。『卒業写真2 for Windows95』では、ヒロインの一部がおそらく攻略不能になる(正確には、いまだに攻略可能という情報を得ていない)など、かなりの不具合があったものです。このため、PC-98版のものを、エミュレータでプレイしてみました。すると、不具合のかなりの部分が消えています。いったいアレは何だったんだ…(^^;)

※このレビューは、Windows版をプレイしたのちに、PC-98 DOS版をエミュレータ「ANEX86」でプレイして書いたものです。

シナリオ

 主人公・桂木陽介(姓名とも固定)は高校3年生。将来のことなど何も考えることなく迎えた夏休み、彼は街中をぶらぶらと無意味に歩く。義妹(血縁関係で見れば従妹に当たる)の操、その親友のひなた、幼なじみの恵子、その他もろもろのヒロインたちとの出逢い。夏休みが終わり、そして卒業式の当日、彼のフォトスタンドで微笑んでいるのは誰なのだろうか。

 

 エンディングが用意されているキャラクターは数が多く、そのキャラクターごとにシナリオ内容のばらつきもあり、一概にこうと言うことはできませんが、かなりバラエティに富んでおり、全体として高評価をつけてよいと思います。

 街中を歩いてヒロインと出会い、恋に落ちるという展開。各ヒロインとの間で紡がれるラブコメ。もはや「ありきたり」としかいいようがありませんし、ゲームの魅力は、原画とシナリオぐらいしかないといっていいのですが(^^;)、その柱の一つであるシナリオの魅力には不思議なモノがあります。

 各シナリオには、どこかで聞いたような話、すでに見たことのある設定など、お約束がひたすら散りばめられています。しかし、その「お約束」に、安心して身を任せていると、とんでもない展開がプレイヤーを愕然とさせたりもします。斬新さはないのですが、個々のパーツの連関がみごとに利いているうえ、(イベントを起こせれば)シナリオ展開のテンポも良いことが、こういった印象を受ける背景にありましょう。

 

 プレイヤーの感情移入や投影がすんなりと行われやすいシナリオになっているので、シーンによっては涙が止まらない、というケースもあります。「泣けるゲーム」といえば、『ONE』(Tactics)などが挙げられるケースが多いのですが、やるせなさや救いのなさ、そういったものを惜しげもなく呈示してくるこの手法に関しては、賛否が分かれるでしょう。しかし、私はリプレイしても感激が薄れませんでした。

 

 このパワーの根源を的確に突き止めるのはなかなかに困難な作業ですが、これを支える要素として挙げられるものには、「キャラの会話」の使い方、主人公自身が口ずさむ独白のうまさ、そして、複数キャラクター間の連関の巧みさといったものになりましょう。

 各キャラクターが口から発する会話は、単に「その時の感情を示す」に留まらず、ゲームの中で作られている小世界の中で、そのキャラクターがどのような状況に置かれているか、そして、どういう「記号」を帯びているかを、的確に示しています。ゲームをプレイしていると「会話の不自然さ」を感じるケースは少なくないものですが、このゲームでは、ほとんどすべてのセリフにおいて、彼ら彼女らを「説明する」ことを実直に成功させています。口癖などでキャラクターのイメージづけを刷り込んだり、あるいは何となく気にかかるような謎めいたものを帯びさせたりという、シナリオの中で「邪魔」なセリフが、ほとんどありません。これは特筆すべきことのように思えます。

 また、主人公は、移動のたび、イベントが発生するたびに、いろいろなことを口ずさみます。これ自体は別に珍しくもなんともないのですが、この独白の中で、主人公が置かれている環境、あるいは、主人公なりの「世界観」が、少しずつ出されています。大半は、ツッコミを入れたくなるボケた内容なのですけれど、主人公の「ものの見方」あるいは「彼なりの判断基準」が、きちんと出されている点が、何よりも好感を持てます。ナンパゲームの主人公であれば「いい加減」である面があるのは当然といえば当然なのですけれど、主人公サイドの「説明」が、さほど不自然でない形できちんと説明されているのが印象的でした。もちろん、見方を変えれば、彼自身の口にくどさを感じる面も否定できないのですけれど、マイナス面を補って余りある形でのテキストが並んでいたように思えます。まぁ、テキストそのものを取り出した場合、日本語としてはなはだ美しくないものが多く(会話文の文末に「。」ではなく「、」を使うなど標準的な日本語表記ルールの無視があまりにも多い、ひらがな表記をあまりにも多用しすぎる、など)、個人的にはかなり癇に障る文体なのですけれど、結果的にこれが表現手法として成功を収めていると判断しております。

 

 さらに、こういったシナリオを支えているキャラクターのバリエーションも、一見ティピカルなものを無難に揃えているように見えながら、その実、各キャラクターが「典型」の枠に留まらない「素顔」をちらりちらりと垣間見せてくれるため、彼ら・彼女らの「彼ら・彼女ららしさ」が光っているのが嬉しいところ。陳腐な言葉を使えば「個性が出ている」のですが、その「個性」の発露が、こういう個性でござい、という「ミエミエの嫌らしさ」を一切感じさせることなく、それとない挙措や言動の中に「見え隠れ」する形で描かれているのは、実に見事です。もちろん、記号的に分解していけば、それぞれが古典的な「記号」で収まっている、と見ることは可能ですが、その組み合わせの妙味は、他のゲームでなかなか味わうことができないと判断しています。ちょっと違った「物語」を出してくれるシナリオ、そう思っていいかと。

 

 イベントの発生タイミングや順序などに、実に無駄がないので、イベントを発生させられさえすれば、シナリオがまことにテンポよく進みます。もっとも、ヒロインごとのシナリオとなっているので、各イベント間で若干の矛盾が残っているのは残念ですが、基本的に、シナリオの中に込められたイベントの配置が絶妙と感じます。ナンパゲームは今までいくつもプレイしてきましたが、非常に高い水準にあるのは間違いないでしょう。

 しかも、それらイベントを構成している個別の会話をたんねんに見ていくと、それぞれのキャラクターが置かれている状況、あるいは心境というものが、明確な形で伝わってくるのがわかります。キャラによっては、プレイヤー側が置いてきぼりを食らうケースも確かにあるのですが、操や恵子、沙織や螢子などを見ると、彼女たちとの会話は、キャラクターの出自(というほど大げさではありませんが)と性格とのバランスを踏まえたうえで作られているのが、実によくわかります。そして、クライマックスまでの展開も、すんなりストレート一直線かと思いきや、少しひねりが加えられているのですが、会話が押し出すキャラクターの性格が見事に現出しているために、この「ひねり」の効果が相当に増幅されています。「お約束の展開」という場合もあれば、それをいろいろな形で裏切るなど、かなり凝った面も見られます。

 平たく言えば、会話の構成とテンポ、そして描写が卓越している。これに尽きましょう。

 

 一方、日常的なアホ会話に関しては、楽しいと思えるかどうか、やはり分かれそうですね。私は、紅茶館に行くたびに「ひなちゃん」を注文したりするぐらいなので、けっこうスキです(^^) テキストに半角カナを多用しているのも、人によって好みが分かれそうです。

ゲームデザイン

 『同級生2』(エルフ)の派生ゲーム、と評されることが多いようです。私自身は、『同級生』も『同級生2』も未コンプリート状態なのでなんともいいようがありませんが、「一定期間内に場所の移動を繰り返し、人と会ってイベントを発生させ、そのイベントをこなしたキャラクターとのハッピーエンドを迎える」というスタイルです。移動は、マップ上で行き先をクリックして行います。

 マップ上でのキャラクターとのエンカウント率は決して低くはないのですが、攻略対象キャラクターがかなり多いうえ、行き先もかなりあるので、無意味にぶらついていると、イベントはいろいろと発生してもタイムアウトは必至です。

 ただ、ちょっとした「むだ」が、あちこちに見受けられます。例えば、時間つぶしや睡眠コマンドを実行すると、ランダムで寝過ごします(それほど発生率は高くありませんが)。キャラとの遭遇など、通常のイベント発生に関してランダム性がないのはいいとして、キャラごとのイベントのバッティングを考えたり相互の関係を考えたりという作業が必要なので、イベント発生の順序を考えながらプレイする必要があります。多くのキャラクターは、中途まで複数同時攻略が必要となりますので、当初の数回プレイは、誰とどこでどんなふうに出会うか、それを見極めるための前哨戦的な作業になるでしょう(私はそうでした)。難易度はかなり高いゲームです。

 何も考えずにあっさり攻略できるキャラも約1名おりますが、彼女は後回しにしておく方がよろしいでしょう。攻略は楽でも、精神的な負荷が半端じゃないと思います。なお、Windows95版とはキャラクターの登場パターンが異なっているので、Windows版の攻略データはそのままでは使えません。

 ちなみに、複数同時攻略の末、最終日に1人を選ぶという外道プレイも可能です(^^;)

不具合・修正プログラム

 あるヒロインとのHシーンの後、特定の場所に移動するとまた同一のHシーンが繰り返されるという現象を確認しています。さほど致命的なバグではありませんが。修正ファイルの存在は未確認。

操作性など

 ゲームを起動すると、2回目以降は「オープニング/本編スタート/データロード」から選択できます。

 画面表示は、通常画面では、下部にメッセージウィンドウ、右下部に日時が表示されます。全画面CG表示時は、画面の下の方にメッセージウィンドウ(不透明)が表示され、マウス右クリックで消すことができます。

 使用可能な入力デバイスは、基本的にはマウスですが、移動画面以外ではキーボードも使用可能です。メッセージスキップだの何だのといった、気の利いたシステムメニューは、何もありません。シンプルなゲームなので不要と言えばそれまでですが…。ただ、マップ移動の際には、3画面を切り替えることになりますが、特に上下画面の切り替えがかなりやりにくい(さらに、気付きにくい)ですね。

 セーブ&ロードは自室のみで、それも、きちんとセーブできたかどうか、あるいはどんなシーンがセーブされているかといった情報がさっぱりわかりません(^^;) また、自室では時間を飛ばすことができ、また寝ることで8時間経過させる(場合によってはイベント発生)ことができますが、ランダムで寝過ごすのでご注意を。

 CGモードは、自室で「パソコンをいぢる」ことで、今までクリアしたキャラクターのCG(立ちCGも含む)を1枚ずつ見ることができます。達成率表示がないのが、ちょっと寂しいところ。また、一回CGモードにはいると、えんえんとそれを見なくてはいけない(途中で抜けられない)のはちょっと厄介。BGMモードはありませんが、BGMのパターンを切り替えることが可能です。

サウンド

 BGMは、特に印象に残るようなものではなく、まぁ平凡なものといって良いでしょうか。ただ、Windows95版と違って音が割れていませんし、各キャラクターごとで曲をきちんと使い分けているのに驚きましたが、これが普通なのだな(^^;)

グラフィック

 影崎夕那さんがキャラクター原画を担当されています。目が丸くてやや幼げな顔、しかし身体は発達してますぜぐひひひひ〜…的なキャラデザは、結構好みです。イベントCG、特に背景がやや暗めのシーンでは、非常に美しいグラフィックにうなりました。浴衣姿の操、螢に囲まれる螢子など、ゾクッとくるような魅力があります。

 それにひきかえ、背景のショボさは悲しいものがありますが、DOS版ということを考えれば、こんなもんかなぁ。ただし、時間帯が変化すると背景が明るくなったり暗くなったりと使い分けているのに驚きましたが、これが(以下略(^^;)

 なお、ゲームをクリアした後、数分そのまま待機していると、謎のCGが見られますが、ハッキリ言って不愉快です。これをオマケとして喜ぶと思うのであれば、製作者はなにか根本的な勘違いをしていると見るべき。

お気に入り

 櫻塚螢子ちゃん。1人挙げろといわれれば、彼女しかいません。何故かは、彼女のシナリオをクリアされればおわかりでしょう。ただ、彼女をクリアするのは、できれば後回しにした方がいいかと。ハンパでないショックを受けること確実ですから。

関連リンク先

 DOS版に関するレビューは、意外と見受けませんね。個人的には、名作と呼んでもかまわないほどの不思議な魅力を持っているゲームと思っているだけに、熱く語るページがあるのではないかと思うのですが。

総評

 シナリオ、というよりも、登場するキャラクターが実によく描かれています。私がはまったゲームというのは、『』や『Melody』など、演出効果が強力でシナリオとの相乗効果が生まれるというタイプのものが多いのですが、このゲームは逆に、原画とシナリオしか魅力がない(^^;)のに、人を惹きつけて離さないだけの力があります。一見荒削りなのですが、そのなんともいえない魅力を見せてくれる独特のテキストが紡ぎ出すシナリオの「味」は、ほかのゲームではいまだに味わえたことがありません。

 非常に高い難易度、お世辞にも使いやすいとはいえない操作性、イベントの矛盾、あれこれのバグなど、少なからぬ欠点も散見されます。しかし、それを超えるだけのものがあるゲームだと感じます。魅力的なキャラクターとの触れ合いがほしい、しかし「お約束」だけでは物足りない、そういう方が味わうには恰好のゲームといえましょう。

個人評価 ★★★★★ ★★★★☆
1999年8月21日
(8月31日、加筆・修正)
(11月15日、加筆・修正)
(2000年1月3日、Windows95版と分離し、加筆・修正)
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