RK −リバーシブルカルテ− BLACK PACKAGE

1997年11月14日発売
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 精神病院を舞台としたXゲーム。こういう設定を目にしたとき、そこから連想可能な設定はさほど多くありません。さらに、陵辱というものが絡んでくるといえば、なおのことです。しかし、そういった先入観をあざ笑うかのようなシナリオを見せてくれたのが、このゲームでした。

シナリオ

 将来を嘱望される若手の精神科医・京極和也(変更不可)は、名門・小田霧精神病棟にて患者と接する毎日。恋人を目の前で殺されるというドラマを目にした翌日以降、病院内では、不審な患者が送り込まれたり、女性が陵辱されたりといった事件が次々と発生し、さらに、自分も奇怪な夢を見るなど、不可解な出来事が頻繁に起こる。事件の正体は何なのか。

 

 ダークで淫靡な空間を予想していたのですが、発生する事件は事件として、実際には登場人物たちの言動は妙にほのぼのした感じを受けます。キャラクターたちの会話にも、それなりの色づけがなされているので、「あんた誰?」ということは、少なくともメイン級のキャラではありませんでした。また、キャラクターの配置、展開も意外と(失礼)的を射ており、中盤以降、退屈することはありませんでした。主人公視点での記述が多くなされていますが、基本的に「ヒロイン側から種明かし」という形になっており、その際のキャラクターの「表情」(グラフィック面に限らず)が、かなりきちんと出来ているという印象です。

 そして、このゲームのシナリオを語る場合、必ず触れなくてはいけないのは、最後の強引そのもののオチでしょう。最終的に、ゲームタイトルの由来としている「RK」なるものへ結びついて行くわけですが、このオチの付け方が、シナリオによっても異なりますが、まさに豪快そのものです。理屈を通すための手法を、プレイヤーに対し「壮大なストーリーを呈示」するという形を取らず、最後まで「地に足のついた力技」を見せてくれたのがポイント高いですね。

 

 しかし、テキスト描写となると、あまり洗練されていません。プロローグ自体がかなり長めなのですが、どうにも「説明的」であるという印象が拭えません。シチュエーションの理解にあたって説明口調で語るのは、小説の作法では避けるべき手法として挙げられると思うのですが、これがかなり長く続くのはマイナス要因でしょう。

 

 また、ツッコミを入れたくなる設定のズレは、両手で数え切れません。

 まず、「20歳の看護婦が精神科医の卵」(←働きながら医師免許って取れるの?)とか、「看護士が存在しない精神科病棟」とか、あげていったらキリがありません。病名や症例なども、医学とは縁もゆかりもない素人でさえ「…はい?」と言いたくなるような例が大量に出ます。精神病と神経症とが混同されているような感じを受けました。

 一番ひどかったのは、「現状保存」でしょう。プレイされた方なら、どのシーンかはすぐおわかりになるかと思いますが、操作での現状保存より人命尊重の方が先だろ、絶対(^^;)

ゲームデザイン

 ヒロインたちと会う回数、またその際の会話内容によってフラグが立ち、あるいは好感度が上下するタイプのアドベンチャーゲームです。病院内のマップ移動(キャラクターの顔がマップ上に出るのでお目当てのキャラのところに行くのは容易)と、会話時の選択(二択ないし三択)で進みます。

 しかし、通常のマルチシナリオタイプのゲームとは異なり、機軸となるテーマもなければ、また全体を包括的に覆う世界(あるいは世界観)というものもありません。あくまでも、精神病院という舞台、そして登場人物が同じというだけであって、シナリオによって、登場人物の役割はまるっきり異なってきます。サブキャラではどのシナリオでも大差ないのですが、メイン級の人物となると、各シナリオでの位置づけがそれぞれバラバラになっています。

 逆にいえば、単一のスタートを持つバラバラのシナリオを、キャラクターが「共通項」として束ねている、とでもいいましょうか。

 したがって、各シナリオ間には相互の「矛盾」あるいは「整合性」といった概念は存在しません。あくまでも、単一のシナリオの中で、「スタートからどう展開しているか」「そのシナリオにおけるキャラクターはどうなのか」だけです。したがって、各シナリオは独立したものとして扱われます。

 しかし、シナリオの質量ともに、かなり格差があるのも、また事実。メイン級のキャラがヒロインとなる場合はそれなりに豪快さを発揮してくれますが、サブ級ヒロインだと単純なオチで終わってしまいます。

不具合・修正プログラム

 選択肢によって、エラーが発生して落ちる個所がありました。BLACK PACKAGEのWebサイトに修正プログラムがアップされています。

操作性など

 キーボード・マウスの双方が使用可能です。ユーザーインタフェースは非常に洗練されており、これだけきちんとした操作性を保証してくれればケチのつけようがありません。

 セーブ&ロードがいつでもできるのは便利ですね。また、アンインストールする際に、セーブデータを待避したり、あるいは既存のセーブデータを復帰させたりすることができる(セーブファイルだけでなくレジストリ情報も含めて)のは、非常に親切な設計です。ロードすると少し前の部分から始まるので、最初は戸惑いましたが、もともと軽いので気にもなりません。

 メッセージスキップ機能もあり、マウスまたはキーボードの双方で可能なのはいいですね。『エクドラード』ではCGが書き換えられるとストップするというわけのわからない仕様でしたが、これは解消されています。

 CGモードは、全CGにそれぞれ「××A」のように番号が付されているので、「どのCGが未見か」は一目で分かるのがいいですね。また、エンディングを迎えたキャラクターごとに、そのキャラクターが語る形で回想モードが入っているのも嬉しいところ。

サウンド

 BGMは、CD-DAで演奏されます。個別の曲もそれなりにいいのですが、何よりもシーンの展開にインパクトを与える点で、非常に効果的に使われていました。バリエーションがかなり豊富で、全体的な統一感はあまり感じませんでしたが、むしろパターンの多さが雰囲気の切り替えに役立っていたと判断しています。個人的には、「道化師の嘲笑」が気に入っています。

 音声はありませんが、個人的に、かじゅやぁと呼ばれたくなかったと言ったら嘘になりましょう(自爆)

グラフィック

 大越秀武さんほか3人の方が原画を担当されていますが、出来具合いにかなりバラツキがあるような印象を受けます。各キャラクターごとの差異化というプラス方面に働くよりは、「このキャラはどうも…」という方向に働いてしまったのは残念。また、立ちCGが、一枚絵CGに比べて、かなり印象が弱いのも確かです。杏子などの表情変化もそれなりに工夫してはいるのですが、やはり腰から上しか描写がなかったのが残念ですね。『エクドラード』のCD-ROM内に収められていた画像では、メイン級キャラの全身グラフィックがあったので、期待していたのですが。

 背景がかなり貧弱なのは悲しいところです。

 イベントシーンでは、フルカラー・256色どちらでもOKで環境に応じて選択できるので、軽く動作するのはいいですね。

お気に入り

 習志野真理で決まり。正確には、「真理シナリオのヒロイン」と表現しておきましょうか。「お兄ちゃん」と呼んでもらえるから、というのではなく(←ツッコミは却下(^^;)、どのシナリオでも慕ってくる姿勢に差がないのがいじらしいので。シナリオ的には、香澄シナリオが一番しっかりしていると思うのですけれど(というか、コレを膨らませて玲子シナリオになったのでは?と思ふ)、キャラ的には真理ちゃんの方が上。

総評

 ここまでさんざん書いてきたとおり、かなり強引な展開がシナリオのすべてだ、といっていいでしょう。シナリオをメインとしたゲームではありますが、そのシナリオには、精緻な構成というものを豪快になぎ倒しながら、問答無用で突っ走るパワーが満ち満ちています。その結果、「感心する/批判する」以前に、むしろ「笑い」を先に引き起こすような、そんな魅力を持っています。

 また、シナリオは独立したもので、そのシナリオごとにキャラクターの役割が大きく変わる、という手法は、キャラクターへの感情移入を難しくするというリスクを背負いながらも、全体のバラエティを膨らませる手法であり、この野心的な姿勢を、個人的には高く評価したいと思います。

 反面、そこには「構成」が欠如しているという面は否定できません。万事「ま、それはそれとして」という言葉を多発させるという手法は、一見シリアスな展開を用意しているが如き「看板」との相違を際立たせています。また、オチそのものが強引であるのは確かなので、その強引さを笑いとともに受容できるかどうかが、このゲームに対する姿勢を左右させる決定要因となりましょう。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
1999年9月23日
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