雪降る季節へ 〜想い、あなたに〜 Blue Bell/サイバーワークス

1997年12月5日発売
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 「普通」。この表現をもって事象を説明することがどれほど多いことか。自分の言説を後日省みて、自己嫌悪に陥ることがしばしばあります。何をもって「普通」なのかと言えば、その多くの場合、「自分が把握可能な事象を極力一般化した結果」ではなく、「自分なりに解釈した事象をあたかも一般的であるかのように見せる」というケースなのです。

 では、Xゲームで使われているような高校生の「普通」とは、一体どんなものか。主人公の設定に、「あらゆる面で平均的」などというものを適用しては、ドラマもへったくれも起こらないのでお話になりませんが、なるべく自然な「普通」を設定するものは結構あります。その結果として、その周囲に配置される装置が「普通」から逸脱しても、あくまでも「普通」をベースとした場合、そこにおける世界は、「日常の延長」というイメージを濃く帯びます。高校生が主人公ともなれば、毎日の生活のうち相当部分はさほど変化のない繰り返しであり、時折(「たまに」以上「頻繁」未満、でしょうか)何かが起こる、そんなもんでしょう。

 そんなことを、ふっと思い出させてくれるゲームが、この『雪降る季節へ』でした。もともとは、何となくCGが良さげなので手に取ったというものだったのですが。なお、ゲームCD-ROMのほかに、「ボーナスCD」が同梱されています。いろいろなおまけデータ類と、ゲーム中のBGMをアレンジしたCD-DAトラックとが収録されています。かつみこういちさんのCG入門講座は、Photoshopを手にしたての人間にはなかなか良かったデス(^^)

シナリオ

 主人公・沢木慎一郎(変更不可)は、誰にでもやさしく誠実な高校生だが、女心に鈍く、彼へ想いを募らせている女友達はいたものの、恋人と呼べる女友達はいなかった。そんなある日、主人公のクラスに、容姿・頭脳・運動神経に優れた才女が転校生として現れる。気さくな性格の彼女は一躍人気者となるが、主人公に気のある少女たちは焦りを感じる。また、転入生自身も主人公へ惹かれ始める。最終的に、主人公の隣にいるのは誰になるのだろうか。

 

 突飛な描写はほとんどなく、むしろ、ありきたりというものをどうテキストとして記すか、そこに注意が置かれているという印象です。また、キャラクター設定なども、「嫌みをもたせない」という点でかなり配慮されているという印象で、どのコもみんな可愛いのがいいですね。主人公の行動や言動も、あるシーンになると途端に豹変するということもなく、「優しく誠実」という設定がきちんとしているのが嬉しいところです。本当はシナリオの整合性という面で見ればきちんとしているのが当然なんですけれどね。

 パッケージには「純愛ADV」というフレーズがありますが、「純愛」というよりも、高校生の日常生活とほのぼの恋愛譚を、地に足がついた形で書いている、というべきでしょう。燃え上がるようなラブラブストーリーに期待したら、完璧にハズれます。バカ話のレベルまで日常の水準になっている、と書くと、ホメ言葉にはならないのでしょうが、私は大笑いできた個所が結構あった、とだけ書いておきます。

 どうでもいいけど、11月23日が通常の登校日というのは何だ?(^^;)

ゲームデザイン

 全画面にテキスト表示されるビジュアルノベルスタイルになっています。放課後の移動先選択によってイベントが発生するという、どこかで見たことがあるようなゲームシステムです(^^;)

 イベントの発生率はそう低くはなく、また同じセリフを使い回すということはまったくないので、「またかよ…」と感じることはありません。その反面、冒頭で記したとおり、「普通」に徹しているため、劇的なイベントというものはほとんどありません。それゆえ、非常に身近、なおかつナチュラルに感じましたが、人によっては単調に感じる可能性はあります。

不具合・修正プログラム

 私の環境では、特に不具合はありませんでした。Windows95用・Windows98用の修正プログラムが、それぞれBlueBellのWebサイトにアップされています。

操作性など

 インストールには妙に時間が掛かりますが、これは何故でしょうか(^^;)

 ゲーム操作に使用できるのはマウスのみですが、1回のプレイにかかる時間は大したことないのでさほどストレスが溜まることはないでしょう。

 セーブ&ロードは任意の位置で、16個所まで可能です。また、メッセージ速度は、遅い/速い/ノーウェイトで切り替え可能。ただ、メッセージスキップがないのはやや辛いところです。

 CGモードでは、1枚ずつ順に表示されます。達成率も出ます。また、BGMモードでは、曲名も表示されます。

サウンド

 BGMは、CD-DAで演奏されます。小粒な感じですが、なぜか直美のテーマが個人的に妙にツボにはまってしまい、一時期、作業中のBGMに多用していました。また、同梱の「ボーナスCD」所収のアレンジ曲も、なかなかいいですね。残念なのは、曲数が少ないこと。

 音声はありません。

グラフィック

 かつみこういちさんの原画。目がビー玉のような感じの、独特の雰囲気があります。特に、立ちCGで表情を少しずつ変えるのが楽しいですね。『ONE』のような豪快な変化はなく、デフォルメを多用していないのが、プラス方向に働いているように見えます。

 色の使い方が結構いいですが、妙に青色ばかり目立っていたように思えます。確かに、暗いイメージを出さずに陰影を使う方法としてはいいのかも。

 背景は、写真取り込みですね。阪急電車を見たとき、思わず固まってしまいました(^^;)

お気に入り

 雪間直美さん。やっぱり、一見優等生で、しかし抜けたところがある娘って、何かいいな、と。家を出たのが11時59分、というのには大笑いさせてもらいました(^^)

関連リンク先

 USGさんのサイト(閉鎖)、SHEOさんのサイトでレビューがアップされています。

総評

 日常のすばらしさを演出するには、非日常を取り扱うしかないでしょう。また、過去をノスタルジックに振り返れば、劇的で変化に富んだ過去の生活を「本当にあるかのように」書くしかないでしょう。しかし、そういったことに囚われず、淡々と「普通の過去(←大人から見た場合の過去、の意)の日常」を綴っているゲームとしては、非常にまとまっています。破綻はほとんどなく、退屈になることもありません。ボリューム的に物足りないのも確かですが、退屈にならない程度に抑えられている、という見方も可能でしょう。この手法は、実にリスクの大きいやり方であり、「何もない駄作」となってしまいがちですが、きちんとおさえるべき所をおさえているという堅実さを見せてくれた点を、高く評価したいものです。劇的なクライマックスに依存しない書き方の一例として良いかと。

 と、個人的には、かなり高い評価をしたくなるゲームなのですが、インストール後のディレクトリ内に「おまけ」フォルダが出来ます。この中の「KOUKI.TXT」ファイルを読んで、評価を思い切り変えることにしました(爆笑) いや〜、追いつめられた状態でゼロから作り上げると、肩の力の抜けた小粒な良作ができる、ということなのでしょうか?

 惜しむらくは、かつみこういちさんが原画を担当される作品が、この作品しかでていないこと。何となく好きな絵柄になってしまっただけに、再度、何らかの作品にタッチしてほしいものです。なにせ、この後継作にあたる『星降る海に』は、絵が好みでないためにパスしてしまったぐらいなのですから。登場キャラクターには連続性があるそうです。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
1999年9月7日
(10月11日、加筆・修正)
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