デアボリカ アリスソフト

1998年5月28日発売
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 運命。この手垢にまみれた、そして紋切り型のイメージしか生み出すことのなさそうな抽象名詞は、その合わせ鏡として、ハッピーエンドの存在をも、暗黙のうちに用意してくれるような気がします。万象をメビウスの輪へと還元させることができない、それが人間の「弱さ」をストレートに表するものである、といえなくもありませんが、実のところ、「運命」などという観念も、超克できないものの存在をそこへと収斂させるためのターゲットに過ぎないのかもしれません。

 なお、このゲームのタイトルである『DiaboLiQue』は、おそらくフランス語の「diabolique」から取っているのでしょうが、原語は形容詞で、「悪魔の/悪魔的な」という意味です。「ディアブロ」と同語源であるのは言うまでもありません。

シナリオ

 無限の刻を生き続け、そして絶対的な力を持つ、デアボリカ。その中で、最強の階層に属するロードデアボリカの一人、アズライトは、何ゆえか記憶を落とす。彼は、ほかのデアボリカや、デアボリカが作り出した絶対的従属者たる凶(マガキ)が人間を無差別に殺すことに反発し、ほかのデアボリカたちを殺しながら流浪を続ける「同族殺し」であった。彼が探しているものは何か。そして、それまでの中に、何が彼の身に起こるのか。

 

 ゲーム設定を見るかぎり、そこにあるのは、「転生」であり、「流浪」であり、そして「異人」でしょう。しかし、実際には、完全な純愛ものとしてストーリーが貫かれています。そこには、壮大なスケールをもって用意された伝奇的世界が、その持ち味を生かし切れないまま、沈黙した状態で存置されているように感じます。伏線を消化しきれていないとか、展開が唐突であるとか、そういった指摘もできますが、それ以前に、「世界」の設定の仕方にズレがあると思えます。

 これは、アリスソフトがやはり「転生」をモチーフとして使った『AmbivalenZ』とは異なり、いわば「隠された設定」としてのラブストーリーが展開されているためでしょう。もちろん、このゲームが「恋愛ものであるという先入観を予め持った上で」プレイすれば、相応の評価をするべきでしょうが、出されているモチーフを素直に解釈する限り、貴種流離譚的な「神話世界」が、重要な背景として位置付けられていると考えるのが妥当です。この点で、「ゲームとしてのメッセージ表示」という方法が、うまくいっていない、と感じます。

 

 また、雰囲気を重視するタイプのゲームとしては、個別のシーンでのアクセントが弱い点も、指摘できましょう。『AmbivalenZ』では、キャラクター設定のバランスがうまく取れており、これがシナリオの流れを構成する「部品」としてうまく機能していましたが、この『デアボリカ』では、キャラクターの使い方がスマートに走り過ぎ、展開が進むとともにサッサと記憶から押し出されるような感じを受けました。

 

 このゲームのストーリー展開を評価するのは、非常に困難なことと感じます。これは、アリスソフトのゲームに相当部分共通して語ることの可能な特徴なのですが、ストーリーを「ただ追う」だけであれば、相当高水準のものであることは間違いないにも関わらず、像を結ぶ焦点が、ストーリーのスタイルとかけ離れているのが致命的でしょう。

 したがって、詳細を論じるのは避けます。

 

 ただ、「恋愛もの」としてみた場合は、キャラクターの内面描写を、それなりに明確に出しており、なおかつ、そこに訪れる転機(シチュエーションの転回点)を外すことなく押さえているため、しっかりとしたものに仕上がっている、そう表することは可能だと考えます、と付け加えておきます。

ゲームデザイン

 ほぼ一本道で、ラスト付近のエンディング決定で分岐するだけです。したがって、「ゲームとして」考える必要はほとんどありません。出現する選択肢はかなり多いのですが、ほとんどはコマンド総当たりを求めているだけなので、一つずつ選択肢を潰していけば大丈夫。戦闘で敗れるとゲームオーバーになりますが、これはCD-ROM同梱のドキュメントファイルを見れば回避できます。

 逆にいえば、ゲームをプレイする際に、よけいな手間を掛けていることにほかなりません。コマンド選択という方法には、旧態依然とした響きがありますが、むしろ「かったるさ」を味わわせることによって、ゲーム世界での独特の「間」を描き出すという効果を出す場合もあります(例:『夢幻夜想曲』(アプリコット)、など)。しかし、この『デアボリカ』では、ストーリー展開にかかる時間を長引かせる以上の効果は出せていません。めんどうなだけです。ほぼ同時期に発売された『ONE』(Tactics)あたりを引き合いに出すまでもなく、シナリオ分岐に関係ない選択肢は「あくまでも演出だ」と胸を張れるような状況において出してほしいものです。

 こう書くと、『AmbivalenZ』とほとんど変わっていない点に驚きます。違っている数少ない点としては、移動が楽になった(しかし移動するケース自体が少ないのであまり意味なし)、戦闘に負けてもやり直しが楽になったことぐらいでしょう。もっとも、この「戦闘」自体、あまりポジティブな意味を感じないのですが。

不具合・修正プログラム

 私の環境では大きな不具合はありませんが、CGモードの一部におかしなところがあります。また、インストールシールドがらみでのトラブルがいろいろとあるようです。『ぱすてるチャイム』では、再びインストールシールドを使わなくなったのは、これが原因でしょうか?

操作性など

 アリスソフトの他のゲームと同様、「SYSTEM3.x」がベースとなっていますが、このゲームでは、インストールシールドでインストールします。

 操作には、マウスとキーボードのほか、ジョイパッドを使うことも可能。ただ、選択肢が出るごとに、カーソルが自動制御されるのは問題。使いやすいだろうという配慮なのでしょうが、『ONE』のように「微妙にズレる」ような配置にしてほしかったものです。テキストを読み進めながらマウスクリックやエンターキー押下を続けていると、嫌な選択を知らないうちに行うというケースがありました。コマンド選択式なので致命的なミスにはなりませんが、気分がいいものではありません。

 画面は、640×480とフルスクリーンから切り替え可能です。メッセージ速度表示の調整はなく、すべてノーウェイト表示。また、メッセージスキップも可能です。

 セーブ&ロードは、選択肢が出た位置で、9個所まで可能です。また、システムメニューの中には「辞書」という項目があり、これを選択することで、わかりにくい読み方を知ることができます…が、読み方よりも概念説明の方がありがたいと思ったのは私だけでしょうか?

 CGモードは、「顔CG/背景CG/ビジュアルCG/スプライトCG」に分かれ、それぞれサムネイル表示されます(「スプライトCG」のみ、1枚ずつの表示)。BGMモードもあります。

 どーでもいい話ですが、このゲームでのアリスが、個人的には一番好きですね。『闘神都市2』などのオーソドックスなスタイルのほか、『学園King』の女教師とか『かえるにょ・ぱにょ〜ん』の魔法少女とか『戦巫女』の巫女さんとか『ぱすてるチャイム』のセーラー服姿とか、いろいろ印象的なコスチューム(笑)が多いのですが、『デアボリカ』のアリスは、なかなか恰好いいです。

サウンド

 BGMはCD-DAで演奏されます。曲の数はそれなりに用意されているのですが、どうにも印象に残りませんでした。雰囲気と合っていたのは確かなのですが、展開を的確に盛り上げるだけのパワーを感じられませんでした。単体で聴いても、さほどパッとした印象はなく、埋もれてしまっているというイメージがあります。

 音声はありません。

グラフィック

 グラフィックは非常にきれいですね。ソフトフォーカスを用いたような、柔らかい雰囲気のCGは、ややもすればとげとげしくなりがちなゲーム世界を、丸くしてくれる効果を感じます。

 さらに、グラフィックの量たるや、ハンパではありません。クリアした後にCGモードを見直してみると、その量の多さに、改めて圧倒されることは必至です。

 ただ、その割に、ゲーム中での「グラフィックの効果」は、一枚絵に限定されていたという印象が強いのも、また事実。その原因は、おそらく、表情パターンのメリハリが欠けていることにあるように思えます。

お気に入り

 キャラクターごとに論じるゲームではありませんが、やはり、凶アリアでしょうね。菜の花畑でのレティシアとの会話。「凶」という設定にある彼女がたどる運命、その後に用意されている展開は十分に見当のつく内容であるにも関わらず、グッとくるだけのパワーを秘めていたのは確かです。

どうして、私が、主のそばに立っていないの!?

 これを、このゲーム随一の名台詞としておきます。

関連リンク先

 SHEOさんのサイトそとみち.さんのサイト蓼原さんのサイトなど、多くのページで取り扱われているのは、アリスソフトというメジャーブランドの強みなのでしょうか。渋いゲームではありますが、視点の相対化のためにも、他のご意見もご覧になることをお勧めします。

総評

 「存在の不確かさ」から、まさに魔術的な力技によって、生き生きとした「顔」を伴いつつ「生」を現出する。そういった「ダイナミックさ」が、この『デアボリカ』には、決定的に欠落していると感じます。

 もちろん、こういった論は、「たかだかXゲームというレベルに、あたかも小説を批評するような姿勢を取るのは大人げない」という批判を受ける可能性が非常に高いでしょう。しかし、この『デアボリカ』において出されているものを忠実に解釈するかぎり、ロジックとしての「Xゲーム的物語」とは明確に異なる次元でのメッセージを発しているように考えられます。エロかどうかという些末なことではなく、ゲームシナリオが壌出する雰囲気をも含め、出されているメルクマールを考えると、どうしたって、定住/放浪、顕/隠といった軸をバックとした、説話論的な構造を感じるのが自然な解釈といえましょう。

 スタッフルームで、「『アンビ』でやり残したことをこれで実現した」というくだりがありましたが、少なくとも「プレイヤー(=受け手)」から受容した場合、その共通項としてあるものは、「転生」という装置においてのみ、と思えます。

 あまり売れるような作品ではない、というのは、作成者側も十分に割り切っているのでは、と思うような内容(パッケージデザインもそうですが…)。そこにある構造を等並みに扱っているのが、どうにも残念です。作り込みが足りない、というのではなく、「狙い方」の絞り込みがやや中途半端であり、その結果、かなり一面的な評価を暗黙のうちに要求するような、そんな作品になってしまっている気がします。

個人評価 ★★★★★ ★★☆☆☆
2000年5月25日
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