火焔祭(ほむらのまつり) ソルシエール

1998年8月1日発売
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 このゲームの設定には、「日本の伝統的雰囲気の中で展開する妖しくも哀しい物語」なるコピーがあったそうな。「日本の伝統」という、あたかも「そういったものがあるんです」という表現は個人的に気に入らないことおびただしいのですが(普遍的に「日本」において「伝統」という用語を使っていいものは実はさして多くない、と思っているため)、これが逆に気を引くきっかけになったのですから、コピーの威力というのは不思議なもの。

 …まぁ、それ以前の次元だったんですけどね、シナリオは(--;)

シナリオ

 フリーライターの主人公・桜庭賢吾(変更可能)は、寂れた温泉町に取材に訪れる。そこで出会った旅館を経営する4人の姉妹たちは、彼をあたたかくもてなしてくれる。しかし、この町には、なにか異様なことがあり、姉妹たちも、訪れた主人公のことを、単なるよそ者ではない、独特の来訪者として迎えてくれる。いったい何が隠されているのか、そして主人公は、どのような結末を迎えることになるのか…。

 

 設定の素材は、それぞれバランスをよく考えていると感じます。現代では失われつつある風習という「秘め事」的な香りの漂うものを軸に、4姉妹のキャラクター設定も悪くはありません。また、不可解な事象を織り込んで興味を惹かせようというのもわかります。手法的には、『』(Leaf)にならったものといえましょう。

 しかし、『痕』は、そういったゲーム内に配置されたさまざまな要素を有機的に結合させることに成功しているのに対し、この『火焔祭』では、要素が丸裸のままで、何ら料理も加工も加えられていません。「ああなってこうなった」というアバウトな展開がまずあって、それに沿って要素を「置いただけ」にしか見えないのです。

 後述するように、1つのシナリオが極端に短いのですが、これに加えて、「こういう設定なんですよ」という「説明を読まされている」という印象を拭えない記述の方法。そこには、「盛り上がり」というものが、思い切り欠落しています。

 止めをさすように、キャラクター描写自体が薄っぺらで、ここでプレイヤーを引きつけることもできません。こうなっては、ただ惰性でプレイするのみでした。

 ほぼ同時期に、『冬虫夏草』(ぷち)という、『痕』ライクな作品が別会社から出ていますが、こちらは「よく研究している」というのがうかがえて好印象を持てただけに、この『火焔祭』に関しては、「やっつけ仕事」という感さえあります。

ゲームデザイン

 コマンド選択式のアドベンチャーゲームですが、シナリオをクリアするごとに選択肢が増えていきます。このため、到達可能なエンディングは、最初は1とおり、次いで2とおりになり、…という手順の繰り返しになっています。そして、エンディングは6通り存在します。増える選択肢は一目瞭然なので、攻略性は皆無。

 これだけを見れば、あたかもマルチシナリオタイプのゲームであるかのように見えますが、実際には、「シナリオA」と「シナリオB」とは、キャラクターを入れ替えただけでシナリオが全く同じ(イベントCGの構図まで同じ…)という体たらくで、「マルチ」な展開など望めません。要するに、キャラクターの人数分だけ、とりあえずエンディングを作りましたよ、というだけで、シナリオのバリエーション足り得ていないのです。

 ちなみに、私が1エンドクリアに要した時間は、30分。さらに、メッセージスキップなどを使えば、本当にすぐ終わってしまいます。

不具合・修正プログラム

 私の環境では、特に不具合などは発生しませんでした。

操作性など

 インストール作業は不要で、なぜか「\Program Files\SORCIERE」というフォルダが勝手に作られ、そこにセーブデータが置かれます。このセーブファイルは、基本的には10個所まで可能ですが、「拡張セーブ」を使用すれば、ディスクの空き容量の限りセーブファイルを作ることが可能です。もっとも、このゲームでは、デフォルトの8個でも充分に余るのですが。

 ゲーム操作はマウスが基本で、エンターキーなどでのプレイは不可。

 画面は、640×480とフルスクリーンから選択可能です。グラフィックの下部にテキストが表示されますが、メッセージウィンドウを消すことができないのは問題でしょう。それに、画面切り替え自体が妙に遅く、特に立ちCGの切り替えはもっとテンポよくしてもらわないと、雰囲気を壊してしまいます。

 「Ctrl」キーを押すことでメッセージスキップ可能、選択肢が表示されると自動的に止まります。また、CapsLockによって、メッセージが高速表示されます。

 CGモード(達成率表示あり)、音楽モードあり。

サウンド

 BGMは、MIDI(GM)で演奏されます。しっとりとした感じの曲が多く、曲としては悪くありません。しかし、あまり印象に残っていない(^^;)

 音声はありません。もっとも、このシチュエーションの場合、ない方が良かったとは思いますが、シナリオがそれ以前のレベルだったからなぁ…。

グラフィック

 キャラ原画はそう悪くありませんが、CGの塗りが甘く、特に立ちCGでは、背景に埋もれているようにも見えました。背景の方がよりまずいというパターンであれば救いがあったのかも知れませんが(例、『朱鷺色の末裔』)、幸か不幸か背景画の質感はそれなりに出ていました。

 一応フルカラーということなのですが、本当にフルカラーを使い切っているようにも見えませんね。

お気に入り

 特にありません。キャラクターへの思い入れが出るようなシナリオではなく、そういった「惹きつける」設定も使われることがありませんでした。

関連リンク先

 私のページからのリンク先では、このゲームを取り扱っているところはないようです。

総評

 ソルシエールのWindows95ネイティブ第一弾だったそうですが、ゲームをプレイした後、徒労感に襲われました。ゲームのコンプリートまでに要した所要時間は非常に短かったのですが、何も得るところがなかった、そう感じたのです。

 一言でいえば、「薄い」。そう、何ら「使われ方」が考えられていない素材が野ざらしになっています。いったいどのような意図でゲーム世界を作ろうとしたのか。怒りを通り越して悲しくなってきます。

 救いといえば、バグがなかったこと。同一ソフトハウスのゲームを3つ以上購入していながら、バグと思われる不具合が一度も出ていないのは、ソルシエールだけです。しかし、そもそもゲームそのものに、何ら魅力を見いだせない以上、このゲームをプラス方向で評価することはできません。

個人評価 ★★☆☆☆ ☆☆☆☆☆
1999年10月6日
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