許嫁 ZERO

1998年11月13日発売
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 Xゲーム好きの方の中には、特に「シナリオ重視」を唱われる方がおられますが、それでもかなりの部分でゲーム評価を左右するパーツといえば、グラフィックでしょう。グラフィックとシナリオとのアンバランスさに関しては随一、とも評される作品、興味本位にプレイしてみました(^^;)

シナリオ

 主人公・高瀬修一郎は、地元の名家の御曹司。高校の剣道部に所属してそれなりの腕を持つものの、しょっちゅうサボって、幼なじみの「御堂巴」にしばかれる毎日を送っている。

 そんなある日、祖父から、突然「許嫁」として引き合わされた、「静川清花」と出会うことになり、彼の生活は大きく動き始めることになった。

 

 シナリオの骨格は非常に明確で、テンポもよく、オチもすっきりとした形で締められています。シリアスものというよりは、日常生活のコメディ的なノリをうまくまとめながら、クライマックスでの盛り上がりもきちんと演出している、というイメージでしょう。

 不条理な設定から始まり大団円的に終了するシナリオとはいえ、その全編を貫くさわやかな明るさ、楽しさは、あくまでも日常生活をベースとしながら、そこでふっと生じた“常識”の陥穽をうまく利用していることから生まれているので、実に嫌みがなく、コミカルで小気味のよい「ドタバタ劇場」が開陳されています。

 

 シナリオ全体を見渡してみると、おそらく「許嫁」という設定がまず第一だったと考えられますが、この「お家の一大事」を巡る描写について、全体的なバランスに、かなりバラツキを感じます。たとえば、「許嫁」によってなぜ問題が解決するのか、2日目以降は主人公が追究を諦めてしまうのはなぜか、など、決して「細部の書き落とし」とはいえない部分での描写不足が目立ちます。それにもかかわらずトータルバランスの悪さを感じさせないのは、先述の「ドタバタ劇場」が最後まで続くうえ、各エンディング間での致命的なズレがなかったためでしょう。この点、雰囲気的には通じるところの多い『With You』(カクテル・ソフト)とは、実に対照的です。

 ただ、テキストの細部での矛盾が、より気にかかりました。個々に挙げるのも興ざめなので控えますが、丹念に一文ずつ読んでいくと、「おいおい」とツッコミを入れたくなる個所が、けっこうあったのが残念です。

 

 また、この「ドタバタ劇場」の役者たる登場人物たちも、実に多種多彩な連中が揃っています。エンディング対象となるキャラクターはさほど多くありませんが、特に学校や部活といった舞台で、その妖しい雰囲気を遺憾なく発揮してくれるキャラクター。しかも、その登場人物は、約1名を除いて嫌な人間はほとんどおらず、諸悪の根元を除けばみな良いキャラクターばかりというのが、このゲームに対する印象を良くしている、ともいえましょう。

ゲームデザイン

 選択肢によるフラグ立てによってシナリオが分岐する、ビジュアルノベル。1回プレイを終えた後に選択肢が増える、という場合もあります。

 選択をミスすると即ゲームオーバーということはありません。というより、そもそもバッドエンドが存在しないので、実に気楽にゲームを進めることができます。しかし、実際のエンディング数や、分岐の拠点となる選択肢の数に比べ、ダミー的な選択肢があまりにも多いので、ちょっと戸惑ったことは確かです。まぁ、ダミー選択肢も、その直後のテキストにバリエーションの変化をもたらすための装置というとらえ方をすれば、これも一つの演出となりえますし、ビジュアルノベルという、ややもすれば単調な流れの中に埋もれかねないゲームとしては妥当な方法でしょうが、例えば『』のように既読・未読の判別ができないので、バリエーションの多さを気楽に楽しむことができないのは残念なところです。

操作性など

 販売を担当しているビジュアルアーツの標準スタイル、というのでしょうか。

 ゲームの場合、「操作の基本はマウス左クリック」というのは常識としていいのでしょうが、キーボード操作が一切できない(メッセージスキップのみは「Ctrl」キーが使用可能)というのは、長時間プレイしたいという場合には非常に苦痛に感じました。やはりビジュアルアーツが販売している『flowers』をプレイしたときと同様の印象を持ちました。特に「読む」ことに重点を置いたゲームである(という視点で設計されている)以上、操作はあくまでもシンプルかつ繰り返しに耐える方法に徹するべきだと思います。「マウス左クリック」=「エンターキー」という仕様は、そんなに難しいことなんでしょうか?

 コンフィグは、基本的にマウス右クリックのみで行われます。文字消去もキーボード操作で可能としてほしかったところですが、これ以外にもいろいろと細かい調整が可能です。あんまりいらない機能も多いのですが(^^;)

 セーブ&ロードは、任意の場所で16個所まで可能です。セーブした月日・日時のほか、そのシチュエーションも記されるので、非常に使いやすいですね。欲をいえば、20個所くらいのセーブができるようにしてほしかったところですが、まぁこれは贅沢な希望ということで。

サウンド

 BGMは、DirectSoundを利用したWAVE再生によって行われます。それなりに雰囲気に合ったテンポのよい曲が多いのですが、シリアスなシーンでの曲は全然印象に残っていません。というよりも、オープニングの脳天気なサウンドが耳について離れないだけかも(^^;)

 音声は、ヒロイン格はかなり上手な部類に入ると思いが、サブキャラはどうも冷遇されているという印象を受けます。さらに残念だったのは、男性キャラには音声がなかったこと。まぁ、ジジイの声などいりませんが(^^;)、萩原先輩など、実にいい味を出していただけに、もったいない気がします。

グラフィック

 キャラ原画はまぁ悪くないのですが、どうもゲーム画面ではあまりパッと見えないのはなぜなのでしょうか? アニメ的なキャラで、パッケージ画面では生き生きとしているのに、表情などの明るさに、どことなくかげりが見えるような顔ばかりに感じます。それ以上に問題なのは、やはり、肌のコントラストを過度に陰影を強調して塗っているのですが、マッシヴボディを見せつけるような感じで、ゲームの雰囲気にはまるでそぐいません。きれいでないという以前に「汚い」という印象です。

 背景画は、あまりパッとしたものではないですが、ところどころに「遊び」が見受けられて、なかなか楽しいですね。道場の「積極財政」とか(^^;)

 

 それとは別に、画面の表現手法というものには、大いに疑問を感じました。モノローグ部などは、多行一斉表示可能という、ビジュアルノベルならではの利点を十分にいかしていましたが、ノリのよい会話部分などでは、逆にもたつきによるテンポの悪さが鼻につきました。メッセージウィンドウ表示方式の方がよかった、と断じることはできませんが、日常生活で漫才的な掛け合いを楽しむシーンなどでは、ビジュアルノベルという方式はあまりよくないと思うのですが、どうでしょうか。例えば『ONE』(Tactics)では、「えいえんのせかい」の描写はビジュアルノベルで、主人公と七瀬とのドツキ漫才(笑)はメッセージウィンドウ方式で、と、分けた方がよかったのでは、と思っていますが、このゲームでも、シチュエーションに応じて切り替えるという方法が採られてもおもしろかっただろう、と考えています。なにせ「テキスト表示」→「テキスト消去」→「画像切り替え」→「テキスト表示」となるわけですが、この間に何秒かを要しています。ノリのよいテンポもブツ切れになってしまうわけで、もったいないことこの上ありません。さらに、1回に表示される立ちキャラは1人だけなのも悲しいところ。複数人数を同時表示すれば、この問題もある程度解決可能だと思うのですけれど。

お気に入り

 主人公の、高瀬修一郎でしょうか。偽善者でも鬼畜でもなく、Hシーンで突然人格が変わるということもない主人公というのは、それほど多くはありません。

総評

 シナリオ以外はすべて評価対象外(否、グラフィックなどはマイナスもの)でしょう。そのシナリオといえども、新しい方法を模索しているというわけではありませんが、基本に忠実なコミカル路線を堅実にたどっており、好感を持てます。エンディングをばっさりと大団円で収めていても、「御都合主義」というイメージになるよりはむしろ、「コミカルストーリー」に相応しいエンディング、と思わせる方向に働いているのは、シナリオの持つ地力といえましょう。かなり荒削りという面は否めませんが、充分に楽しめる水準でしょう。問題はやはり、お世辞にも「読ませる」のに適当とはいえない操作性や画面効果、さらに、「あの」グラフィックというべきでしょう。

個人評価 ★★★★★ ★★☆☆☆
1999年8月28日
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