き・ず・な アクトレス

1998年8月7日発売
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 「ザッピングシステム」なるものがどのような物語を示してくれるのか。さらに、近親相姦をも含めた「ただれた関係」をどう描いているのか。そんなことに興味を持ち、買っていたのが『き・ず・な』でした。その結果たるや…うぬぅ…。タブー性からエロティシズムへの昇華、というものを期待していただけに、大いに肩すかしを食らった観があります。

シナリオ・ゲームデザイン

 ゲームは、同じクラスに属する2人の高校生「友則」と「良」とのそれぞれが主人公となるシナリオを冒頭で選択するようになっており(初回プレイでは友則固定)、その両者の視点からシナリオが進みます。

 

 展開は、両シナリオにおいて登場人物を共有させるなどいう程度の「リンク」はかなり見られますが、実際には、いずれのシナリオを見ても、一方がもう片方に影響を与えることはほとんどなく、単に「それぞれの視点で進む」だけです。さらに、展開が早急かつ強引で、ただひたすら「ヤる」だけです。それも、ひたすら「主人公が悩む間もなく、主人公の都合の良い形で」進みます。都合がいいということは、要するに鬼畜なわけですが(^^;)、そこには「近親相姦」という重い素材を料理するだけの舞台が整備されていません。

 キャラクターを見ても、良側の女性に関しては、唯々諾々と「性奴隷」化していくのみで、そこに必要であるはずの精神的な描写が見事に欠落しています。なんのことはない、「鬼畜と、それにただただ従う女たち」という形になっています。鬼畜な行為そのものよりも、根拠のない無反抗人間というのを見ている方が何百倍も怖いです。

 もし、「性奴隷」に対する陵辱自体が、エロに対する味付けである、という認識があるなら、ここまで平板な描写に留まってよいはずがないのに、ひたすら安易かつ「鬼畜野郎にとって都合の良い展開」のみを眺めさせられるのは、苦痛でさえあります。

 確かにHシーンの数は多いものの、各シーンごとのCG数もさほど多くはなく、シチュエーション的にエロを感じさせる工夫がなされていません。アダルトビデオの手法をゲームでそのまま使おうとしたのでしょうが、これでは何のおもしろさも湧いてきません。

 

 また、良が「復讐する」といっても、友則エンドの一パターンとして出てくるだけで、良シナリオでは、良は全然復讐などしておらず、両者の世界に「噛み合い」が見られません。良という人間自身、単に「友則」の手中で踊っているだけです。悪党と比肩できるキャラクター足り得ていません。「ザッピングシステム」を取るのであれば、対応できる何らかのスタイルを取る必要があるでしょうに。

 

 さらに、全体的なボリュームの少なさも、挙げておく必要がありましょう。

 このゲームの中には、上記の「近親相姦」と「鬼畜」という2つの展開が、それぞれ「異なった」形で出されています。つまり、「鬼畜な主人公によって近親相姦というタブーに触れる」というのではなく、あれこれと色々な要素を別途に組み込んでいる、という感じです。

 ところが、1回のプレイでの所要時間はせいぜい数十分で、エンディングの数も決して多くはありません。単純に選択肢で分岐して行くだけなので、難易度もそう高くはなく、その気になれば一日で終わってしまう程度の量です。このボリュームの中で、上のように「色々な要素」を織り込もうとしても、それはできない相談です。

 何をテーマとして伝えたかったのか、よくわからないシナリオになっています。否、「テーマ」などというものを掲げる必要があるものではない、ということは可能でしょうが、それにしても万事が中途半端であり、何をウリにしているのかさっぱりわかりません。

 

 さらに、徹底してモノローグ調になっている文が、ひたすら「読む気」を削いだという点も指摘できます。1人の中で完結させようとした結果、描写の甘さが露呈した観があります。確かに、「頭の中で考えたこと」をテキスト化しようとすれば、このレベルのものになる、という見方も可能ですが、それなら、テキストを全画面表示のビジュアルノベルにした意義はなんだったのでしょうか。

不具合・修正プログラム

 特に不具合などはありませんが、アクトレスのWebサイトにあるファイルを使うことで、おまけシナリオを見ることが可能でした(2002年11月現在、存在を確認できません)。

操作性など

 操作は、マウスかキーボードで行います。

 メッセージの表示速度がかなり遅いのが非常に気にかかりますが、メッセージスキップは可能です(「メッセージ早送り」をクリック、またはエンターキー押しっぱなし)。

 セーブは1日ごとに可能という明快な仕様のはずなのですが、二重三重に出る確認メッセージは非常に鬱陶しいものを感じます。6個所まで可能で、ロードは任意の場所から可能です。

 CGモード・BGMモードはなく、替わりにHシーン再生モードがあります。各シーンごとにサムネイル表示されます。

サウンド

 BGMは、PCM再生です。特に印象に残るようなサウンドではありませんが、どうもループがうまくできていない様子で、曲の最後に行くと止まります。

 音声はありません。

グラフィック

 グラフィックの多くはHシーンのもので、あとは立ちCGです。つまり、Hシーン以外のイベントCGが存在しません(^^;)

 フルカラーをいかしているとは見えないグラフィックです。原画は悪くないと思うのですが、どうにも塗りが質感を感じさせないものになっています。Hシーンの数に比べてCGが少なく、テキストでひたすら引っ張っています。

 反面、通常画面にどことなく漂っている独特の暗さの方が、みごとと感じます。

お気に入り

 特にありません。キャラクター描写そのものがあまりにも希薄で、そもそも思い入れなどまったく生まれませんでした。

関連リンク先

 私のリンク先では、このゲームを取り扱っているところはないようです。

総評

 上述したとおり、何を出したかったのか、そのポイントがあまりにも霞んでしまったゲームと見受けられます。ただひたすら「ヤっているだけ」の展開で、内面的な暗さを出していくことができておらず、盛り込もうとした設定を出すヒマがなかったという感じに見受けられます。女性が何も言わずにひたすら言いなりになるという段階で、すでに「鬼畜」というより、「世界そのものがイってしまっている」という印象でした。

 全体的なバランスのまずさが何よりも目立っており、このゲームに対する評価を大きく下げています。シナリオのボリュームもさることながら、「示したいもの」を明確にしていく必要があると感じます。

個人評価 ★★★☆☆ ☆☆☆☆☆
1999年10月12日
(2000年10月22日、加筆・修正)
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