脅迫 〜終わらない明日〜 アイル

1998年12月17日発売
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 この『脅迫』を購入するまで、アイルのゲームといえば、『デュアルソウル』をプレイしていたのみでした。ギャグとシリアスとのバランスが崩れてはいたものの、なかなか見どころの多いゲームという評価をしていたので、その後、ダークなリメイク作品が出てきた、とあって、飛びつくように買ってしまいました。

 インストール作業中、明日香が妹にハリセンを喰らわせるアニメーションが出ますが、楽しいんだこれが(^^)

 初回限定版には、「LAMENTATION」(「悲嘆の声」の意)のシングルCDが同梱されています。なかなかいい歌なので、音楽CDに感心のある方はこちらを探すのが良いでしょう。

シナリオ

 クラスメートの神村良介に告白され、浮かれた気分になった主人公・秋山明日香は、シャワーを浴びながら自慰に耽ってしまう。翌日、登校した彼女を待ち受けていたものは、彼女の「その写真」と、「神村良介と付き合うな」という手紙、それの入った封筒であった。それ以来、彼女の生活の歯車は、大きく音を立てて狂いはじめた。彼女の、そして、彼女の周りにいる人たちの運命はいかに…。

 

 スタッフルームにもコメントがありましたが、このゲームをして「脅迫」と称するには、かなり苦しい感じがあります。「脅迫」したのち、ずるずるとどこまでも堕ちていく彼女を描く……そういうゲームであるのならいいのですが、ハッピーエンドに行き着くためには、アノ一線(一点? あるいは一枚というべきか(爆))を越えないという条件が必要で、そのぎりぎりのところでは、ただただ陵辱を受け続ける彼女が、ディスプレイに踊るわけです(若干のエンディングを除く)。これって、「脅迫」よりも、「処女を必死に守る明日香」とか「責め苦を受け続ける明日香」とか、そういった感じが中心になっている気がします。サブタイトルである程度フォローされている、といえばソレまでですが、どうもピンときにくいタイトルというのは、あんまり好きじゃありません。もちろん、いろいろと想像させてくれるタイトルはいいんですけど、これの場合、字面を素直に解釈した場合と、ゲームをプレイしてみた場合とで、けっこうな乖離があるように思われます。サブタイトル、「終わらない責め苦」なんかの方が、中身とは合っていたんじゃないかなぁ。

 

 シナリオは、かなり大きく分岐しますが、1つ1つは長いものではあっても、それほど中身のあるものではありません。ハッピーエンドへのルートをたどった場合、それなりの青春ものと言えなくもありませんが、分岐した結果「どう話が分かれているか」がわかりません。言葉を替えれば、選択肢によってシナリオを分岐させている意味をほとんど感じられませんでした。

 キャラクター設定についても、その心情と行動とが「考えられているな」と思えたのは、リメイクで追加された新キャラ・麗香だけで、あとは展開に応じて流されているとしか見えません。主人公の明日香が「極限状態で思考停止」というのもわからんでもないですが、ヒーローたる良介からして、些細な要素で行動が変わってしまうわけで、かなり違和感を覚えます。ダークなゲームとはいえ、精神的に「堕ちていく」過程がみごとに欠落していたので、非常に残念。

 女性を主人公にしたのも、斬新とは言えるでしょうが、特にメリットは感じませんでした。視点が陵辱「される」側にあるとはいえ、単に「おどおどしている」だけで、精神的に追いつめられていくという切迫感を感じなかったこと。また、「主人公」というスタイルを取っているため、プレイヤーサイドが「堕とすぜぇ〜」という気になりにくいこと。この2点が気にかかりました。

 単純なサービスゲームと割り切るのが吉でしょう。『デュアルソウル』的なものを期待して購入してはいけなかったようです。

ゲームデザイン

 選択肢によってストーリーが分かれる、マルチエンドタイプのゲームです。このため、エンディングによっては、まるっきり違うストーリーになります。

 

 選択肢分岐というゲームの場合、「基本的なシナリオは一本道で、時折、番外的なエンディングやゲームオーバー的なエンディングになる」または「一定程度独立したシナリオが複数存在する」のいずれかの形になる、あるいは、この両者が複合する形で作られているわけですが、このゲームをプレイすると、なんとも中途半端と申しますか、トゥルーエンドへの道のりがはるかに長いにもかかわらず、中途から分岐するエンディングも、すぐにゲームオーバーになるわけでもなく、だらだらと続くケースが多いため、違和感を感じたしだいです。

 このゲーム自体の「シナリオ」に深みがないことを考えれば、これだけの分岐をそもそもつける必要があるのかどうか。トゥルーエンドへいくルートは1つしかないわけで、これ以外には、派生的なルート、奈落の底へ転落ルートがわいのわいのとひしめいているわけですけれど、「基本的なシナリオは一本道」というわけでは、必ずしもないんですよね。各シナリオ間での矛盾はありませんから、全体として一本道といえなくもないんですけれど、派生ルートが中途半端に長いせいか、ゲームプレイもある程度を越すと、完全に「エンディング確認のためのルーティンワーク」として、フローチャート(S-Navi;後述)を見ながら、ただただひたすら、早送りを続けることを繰り返させられました。

 結局、「多すぎるエンディングをフォローするために必要になってしまった」のが、S-Naviなのでしょう。

不具合・修正プログラム

 私の環境では、特に不具合などは発生していません。

操作性など

 マウスおよびキーボードで入力可能です。チップヘルプ表示が出るのは、便利というより楽しいですね。こういった「お遊び」機能がいろいろついているのはおもしろいところ。右クリックをいろいろな機能に割り当て可能です。

 アイコンの並んだ「操作パネル」が出ます。これは、プルダウンメニュー内のもののうち、よく使うものをまとめたもの、と思って下さい。消去も可能です。

 画面は、800×600が基本で、フルスクリーンモードとウィンドウモードとを切り替えられるほか、ビジュアルウィンドウを6段階に、テキストウィンドウは3段階に拡大・縮小可能です。大画面表示ができない場合は、これで調整してね、ということですね。

 セーブは、選択肢が表示された位置でのみ可能ですが、なんと、セーブ可能なのは100個所。しかも、セーブした実日時・ゲーム中でのシチュエーションのほか、その地点での縮小画像が表示されるため、「こういうところでセーブしたのだな」ということが一目瞭然、非常にわかりやすいものです。また、ロードはどこでも可能。

 また、「S-Navi」という、フローチャート自動作成機能があります。このため、どのエンディングを見たか、そして、どの選択肢でシナリオが分岐するかが一目瞭然です。というか、これがなければ最後までやる気になったかどうか、はなはだ疑問ですが(^^;)

 メッセージ速度は5段階で設定可能。しかし、音声が出ているときにマウスをクリックしても、次のせりふに飛ばず、最後まで音声が流れるというのは、少しイヤな感じ。あんまりあえぎ声ばっかり長々と聴きたくはないんだけどぉ、という時は、仕方がないので、先述の「マウス右クリック」のカスタマイズで、「メッセージスキップ」を設定するしかないでしょう。なお、マウス右クリックでの「次メッセージ」というのは、要するに、左クリックと同等の機能を持たせる、というだけのようで…。どうせなら、3ボタンマウス対応にしてほしかったなぁ、などと思うのは、私ぐらいかなぁ。

 CGモードは、キャラクターごとに、各CGのタイトル名をクリックすると表示されます。 まだ見ていないタイトル名はシャドウ表示され、選択できません。また、Hシーンの鑑賞も、CGモードと同様。BGMモードもあります。CD-DAが2曲、MIDIが全24曲ありますが、どちらも、ここから聴くことができます。各曲ごとに、スタッフのコメントが入っています。

 恒例(?)の「ヘア」のオン・オフは、今回も健在です。なお、「精液」はなくなった様子。まぁ、ンなもん興味ないからいいけど(^^;) おまけモードでは、スタッフロールのほか、「ベンチマークテスト」なんてものまで。

サウンド

 BGM(MIDI-GM基本・GM拡張・GS)から選択できます。ソフトウェア音源を使うとゲーム速度がみごとに落ちるというものが(特に古めのゲームでは)多いのですが、少なくとも私の環境(一号機)ではなんのストレスもありませんでした。少し陰のある感じの曲がいいですね。オープニングとエンディングはCD-DAです。

 音声あり。主人公が女性であることから、男性も当然話すと思いこんでいたのですが、話すのは女性のみです。しかも、主人公が声を発し、その話し相手は声を出さないのだから、なんだか違和感があります。演技そのものは、けっこういいと感じますが、もともとゲームそのものにはさしてのめり込めなかったうえ、「早く終わらせよう」といった感じで進めたため、後半では音声をオフにしていました。

グラフィック

 リバ原あき氏の原画。『デュアルソウル』でもけっこう好みだったので、文句ないです。誰が原画担当でも同じことですが、やはり「目」に特徴が出てくるものですが、キャラデザに関して言えば、少しおどおどした感じの表情を、実にうまく出している「目」が、個人的に好きなので良し(^^)

 陵辱シーンでの「エグさ」が、なかなかしっかりと描けています。

お気に入り

 特にいませんが、1人を選べと言われれば、珠美かなぁ。どうあがいても被害者という立場になっていることに変わりがないわけで。

関連リンク先

 USGさんのサイト(閉鎖)でレビューがアップされていました。

総評

 「ダークな作品」としての評価をくだす前に、「グラフィックの多さによるサービスゲームとして」評価するのであれば、充分に高い点をつけられると思います。しかし、「ダーク」というものに、精神的な追い込みの類を期待したり、また謎解き的なものを考えたりすると、おもしろくないことこの上ありません。Hシーンの数は非常に多いのですが、それぞれのシーンにはストーリー展開上の意味づけがほとんどされていないので、シナリオを「味わう」ことは最初から放棄するのが賢明でしょう。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
2000年5月25日
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