Reborn's Day −月夜の出来事− ピンパイ

1998年5月29日発売
ご意見などは掲示板へどうぞ

 月夜の晩、今日こそ何かが起こりそうな気がする。月が人を惑わせるとはよく語られることですが、そこに、高校生特有の現実逃避願望とでもいうべきものが重なったらどうなるか。かくいう私は、高校時代、悪友とつるんで満月の晩に、ある公園でバカ騒ぎしたという記憶があります。そんなことを思いながら、幻想的な雰囲気にチョイと触れてみたい、そう思わせるゲームが、この『Reborn's Day』です。

 細かい話ですが、「reborn」というのは形容詞ですし、第一、名詞修飾には使わないと思うのですが(^^;)

シナリオ

 ある満月の晩、学校に残った主人公。彼は、月明かりの中で、日ごろ目にしているのとは違う女の子たちの姿を見ることになる。そこにある彼女たちは、自分が日常を送っている学園生活に多かれ少なかれ違和感を抱きつつ、日常の中で覆い隠してきた自分の弱さや欲望といったものゆえに、癒しがたい傷を負っていた。

 幻想的な空間の中で、主人公は彼女たちの傷を受け止められるのか、そして彼女の姿は主人公の目に何を残すのか。

 

 ファンタジーという言葉で評するのがもっとも適切でしょうが、1回目のプレイ時には、「表現不足」という言葉がまず浮かびました。主人公の置かれている環境に対して合理的な説明を付加する必要はないとしても、その舞台における各キャラクターの行動や位置づけの説明は、テキストベースで見ていくかぎり、ごく少量に抑えられています。

 しかし、この「説明不足」は、決してシナリオ評価に対してマイナス評価に働くものではありません。これは、テキストが徹底的に「主人公視点のモノローグ」で描かれており、一切の「客観的描写」が排されているからでしょう。すなわち、あくまでも「主人公の目に入った部分」「主人公が感じ取れた部分」以上のことは書かれていないわけです。したがって、形式的にはビジュアルノベルとはいえ、実際には「ノベル」という手法で描かれる結果として、テキストの妙味を感じさせるものではなく、あくまでも「モノローグ」が続くわけです。

 この結果、「満月の夜の学校」という、設定だけを見ればホラーなシナリオができ上がりそうな空間が、清冽で清澄感溢れる世界になり、なおかつ、その「非論理的な空間」における超然的な世界観を、「多くを語らずして」描くことに成功している、と感じます。そこには、通常の記号体系(文法体系といってもいいでしょう)に準じた世界構成を壊さないながらも、それの呪縛を軽やかに乗り切った巧みさを感じます。この手法が成功を収めている(と、私が思った)例としては、雰囲気こそまるきり違うとはいえ、『メロディ』がこれに近いでしょうか。謎が残る、ということは、シナリオ評価でマイナスに直結しがちですが、モノローグのみで綴られる場合、そこには「受け止め手側の解釈」という次元において完結していればそれでいいわけですから、これでいいと判断します。

 

 ただ、『メロディ』で感じられたような「詩的な世界」を作り上げられているかというと、必ずしもそうではなく、ストーリーとして高い評価をするのはやや苦しいようです。

 その理由としては、主人公が夜の学校を無目的に徘徊するわけで、その場に発生した諸々の事件が「刹那的・偶発的なもの」に留まっていることが、まずあげられます。そこに起こっている「何か」の理由づけを求める必要があるかどうかは措くとして、事件に遭遇した際の「主人公」、そして彼を取り巻く「環境」、この両者の関連づけがかなり弱い、という気がします。この結果、「何だかわからんけど…」という流れになりかねません。

 また、別の理由として、エンディングのうちのいくつかが、あまりにも美しくないこと。幻想的な満月の晩に比べる形で、日常という舞台を描こうとすれば、そこから「美しさ」を排するのはやむを得ないのですが、それにしてもアンマリだ、と言いたくなるエンディングが最後に出されては、ストーリーとして高い評点を与えることはできません。

 

 主人公の視点で語られる以上、その語り手である主人公は徹底的に「透明なる存在」である必要があり、したがって彼の存在があまり強くなっていないのは必然でしょう。この点は問題ありません。「なんでこんな奴が…」という印象を抱いたことはありませんでした。

 また、ヒロインであるキャラクターの配置も、いつも遠くを見ている同級生、ボーイッシュな幼なじみ、高慢ぽい帰国子女、アタックをかけてくる下級生、ないすばでぃな保健教師と、ひととおり揃っています。そして、それぞれの「悩み」なり「傷」なりというものに関する「説明」は、先述のとおり、テキストベースで明確になされてはいませんが、「主人公がどう受け止めたか」に関する描写はなされているわけです。

 そうなると、各キャラクターのイマージュを「描く」ことが大事になってくるわけですが、ゲーム内に配置されている断片的なファクターは、そのイマージュを一義的に定義することを拒んでいるかのような印象を受けます。言い換えれば、「キャラクターの表象」が多岐に渡る結果、「キャラクターの多義的な性質」をうまく映し出している。そんな印象です。この印象を受けた原因を特定するのはかなり難しそうですが、現段階では、さほど多くはないイベント相互が、つかず離れず的な関連を保ちつつ、その間に受けて側のイマジネーションを「絶対的に」必要としている結果ではないか、と考えています。

ゲームデザイン

 ビジュアルノベル形式のテキストですが、コマンド選択でシナリオが分岐すること、次の選択肢が出るまでの時間が非常に短いことから、アドベンチャーゲームと捉える方が適切かも知れません。

 序盤で、各ヒロインごとのシナリオにまず分かれ、それ以降は、非常に激しい小分岐があります。エンディングの数は30数種類にも上り、これらのエンディングをすべて見るのは至難の業です。また、エンディングチェックがあるようで、あるエンディングを終えた後にリプレイすると、新しい選択肢が出たり、前回とは異なる展開になったりします。

 この激しい分岐は、雰囲気を楽しむという点ではかなりのマイナス材料と言えましょう。しかし、シナリオそのもののパワーがそれほど強くないこと、セーブ&ロードがやりやすいことから、さほど苦にはならなかったと言っておきます。バッドエンド的なエンディングになる場合もあれば、結局何も起こらなかったという一番寂しいエンディングに即行で走ることもあるなど、かなり危険が多いので、セーブ&ロード抜きでのプレイは、相当慣れないかぎり苦しいでしょう。蛇足ながら、私はこのゲームの攻略チャートを作ろうとして、挫折した経験があります(^^;)

 

 ヒロインごとのシナリオは、ボリューム的にある程度の差はあるものの、軒並みバランスが取れており、全キャラクターとハッピーエンドを迎えた後も、そのシナリオ内容を忘れることはありませんでした。ヒロインの数5人というのが適正人数だった、と判断してよいでしょう。

操作性など

 オートラン対応、インストール先ディレクトリは任意に変更可能です。

 基本的にマウス操作ですが、左クリック=エンターキーとなっているので、進めるだけならキーボードも使用可能です。ただ、カーソル移動はマウスを使わないといけません。

 画面表示は、全画面にグラフィックが表示され、その上にテキストが乗るというビジュアルノベルのスタイルを取っていますが、立ちCGがある場合は人物と重ならないようにテキスト表示され、また、イベントシーンでは、テキストは画面の下側に半透明ウィンドウの中で表示されます。

 メッセージスキップの機能は特に付いていませんが、エンターキーを押しっぱなしにすれば自動的にスキップされます。この際、選択肢が出た場合にカーソルと選択肢が重なった場合、問答無用でその選択肢を選ぶことになってしまうので、カーソルはなるべくはじの方に移しておくことをお勧めします。また、エンディングで表示されるスタッフロールは、エンターキー一発でスキップ可能です。

 セーブ&ロードは、任意の位置で7個所まで可能。どこでもOKというのは使いやすいのですが、先述のとおり分岐が非常に激しいので、7個所でも全然足りません(^^;)

 仕様で一番疑問に思えるのは、CGモードもエンディングモードもないこと。これでは、「まだシナリオが隠されているのかどうか」も判りません。複雑であり難易度もかなり高いゲームであるだけに、ヒントはなくとも指標となるものはほしかったと思います。

サウンド

 BGMは、CD-DAで演奏されます。ゲームの雰囲気を出す曲として、うまく機能していますね。素晴らしい曲というほどではありませんが、どの曲も、ピアノを上手に使っていたという印象があります。個人的には、トラック6(イヅタのテーマ)、トラック16が好きですね。

 音声は、どうもボリューム調整がうまくいっていないようで、Windows付属のボリュームコントロールでWAVEのボリュームを上げないと全然聞こえません(^^;) しゃべったりしゃべらなかったりする上、音声が雰囲気盛り上げに一役買っているとも思えないので、なくてもかまわないと思います。

グラフィック

 キャラ原画(KAZUTO氏の担当)は、質的なバラツキが非常に大きいように思います。また、塗りに関しても、キャラが画面全体の中でどうにも冴えないというものもあるかと思えば、美しい、で終えられそうなものまであります。具体的には、エンディング間際、白い光を背景にイヅタが教室から出ていこうとするグラフィックなど、思わずゾクッとくるほどのものでした。ハイキー調のグラフィックというのはどうも苦手なのですが、この絵を見た瞬間、画像をキャプチャして壁紙化してしまいました。人形のような、という形容詞を、褒め表現として使いたいと思います。ただ、イベントシーンでの画像、特に(保健室以外での)Hシーンで多かったのですが、あまりにも画面が暗いこと。背景などが全然見えません(^^;)

 その反面、立ちCGでは、きれいという表現を用いるのは無理ですね。モノトーンに近い背景でありながら、その場にキャラクターが立っているという印象ではなく、「キャラの写真がそこに貼り付いている」ようにしか見えません。ある程度の表情変化はありますが、これも雰囲気を演出するだけの力は持っていません。

 背景は、非常に渋いながら、いい出し方をしていると感じます。

お気に入り

 出田雪乃。彼女は絶対に髪を編まない方が似合ってると思うぞ…。

総評

 幻想的な雰囲気を全面に出し、そこに映じる独特の世界を描くという点では、かなり成功していると思います。しかし、そこに踊るはずのシナリオ自体のパワーとボリュームがいずれも非常に弱く、淡泊に終わってしまうというのは非常にもったいない話だと思います。

 モチーフとしては、リーフの『雫』に通じるものがありますが、ファンタジーの世界として組み直したものとしては、個別キャラクターの魅力を捨象した場合(『Reborn's Day』で「萌え萌え〜」となる可能性は低いでしょうから)、主人公の「受け止め」が浅く、そこから内省へという動きがなかったのが、パワー不足の原因でしょう。別に、世界崩壊の妄想に囚われなくてもかまいませんが、主人公自身が何らかの形で「非−合理」へ踏み込んでいるという姿勢がほしかったものです。

 また、各キャラクターに用意されているイベントも、それぞれのバランスが取れていた反面、量的に少ないのは確かなので、もっと書き込みがほしかった、とも思います。もっとも、全体的なバランスが崩れれば元も子もないので、難しいところでしょうが。

 ただ、グラフィックについては、不安定なことこの上ありません。パッケージ絵に代表されるように、美しいCGは本当に美麗なのですが、そうでなければあまりにも平板。ゲームの「顔」ともいうべきグラフィックには、相応の力を入れてほしいものです。

 

 しかし、ファンタジーを取り入れながら、それ自体では確実に成功しているゲームとして評価できますし、また、サウンドなど、演出でも個別に見れば非常によいものがあります。この作品だけで見た場合はアンバランスさが気になりますが、この路線のものを、再びリリースしてほしいものです。

個人評価 ★★★★★ ★★☆☆☆
1999年9月17日
Mail to:Ken
[レビューリストへ] [トップページへ]