星のささやき jANIS/ivory

1998年8月28日発売
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 「合宿」という言葉の響きに対し、あまりいい思い出のない私にとって、かわいい女の子がいっぱいいるなんていうのは理解の範囲を超えておりますが(^^;)、頭数だけでなく、それなりのシナリオをきちんと用意した、ある意味では基本に極めて忠実なゲームが、この『星のささやき』でした。

 大して話題になることもない、非常に地味なゲームだったのですが、このまま埋もれさせるには惜しい魅力を残していると感じます。

 CD-ROM2枚組となっており、うち1枚はBGM用のサウンドCDです。しかし、ミックスモードCDになっているのはなぜ? CD-EXTRAにしてくれれば、CDプレイヤーで気軽に聴くことができるのですが(聴く気になるサウンドかどうかは置いといて)。

シナリオ

 主人公・井上豊(姓名とも変更可能)は、天文部に所属する高校3年生。やや頼りなくて穏やかなちづる、陽気で元気でノリのいい雅美という2人の幼なじみとともに、いつも3人一緒であった主人公。しかし、子供時代のままではいられない、という意識がふと頭によぎった。そして、部の合宿で、高原に出かけることになる。3人の他に、先輩や後輩、さらにはペンションの一人娘と仲良く話をしているうちに、彼は自分を想う人に気付くことになる。

 

 粗筋を見ればおわかりの通り、『卒業旅行』をそのまま踏襲している部分が非常に多くなっています。イベントの展開やキャラクターの設定は、本当に瓜二つ。レズ、ペンションの娘、男もいるし(爆笑)

 ところが、このゲームよりも少し前(同じ年)に、『再会 〜卒業旅行98〜』というゲームが、SAINTブランドで発売されています。同じソフトハウスから出しているので、おそらくは意図的にやったものなのでしょうし、こういう手法も悪くはありません(別会社がやればパクリですが)が、『再会』との差別化を、どう図っているのか、さっぱりわかりません。販売戦略上、あまり賢明な方法ではないと思うのですけどね。この『星のささやき』が、個人的に非常にいい線いっていると感じるだけに、なおさら。

 

 シナリオは、イントロ+4日間(うち最終日には選択肢がないので、実質3日間)の合宿という流れになっていますが、イベントは比較的ちゃんと揃っていて、それなりに楽しめます。設定として、天文部というのは意表をうまくついていますね。天文のように理系の部活で女性が多いのも非常に不思議ではありますが、それはまぁご愛敬ということにしておきましょう。

 キャラクター設定は、まさに王道としかいいようのない配置です。しかし、そのベタなキャラクターをいかに動かすかという点で、かなり細かく考えられているシナリオは、非常に心地よいものでした。キャラクターは設定負けしておらず、主人公も含め、それぞれの味を実によく出しています。

 

 この種の「恋愛ゲーム」にありがちのように、女の子たちとのイベントはそれなりに楽しめますし、女の子たちが主人公に接近していくときの対応はけっこういいのですが、主人公サイドの心理描写が欠けています。ここの描写をていねいにやると、かなり濃いものになってしまい、逆に「ライトな恋愛もの」ゆえに手軽にプレイできるというメリットが薄れるともいえますが、これのために、「その他大勢」の中に埋もれてしまっている、という印象は否定できません。

 女の子側からのアプローチを見ると、例えばちづるなど、「こうくるか、反則じゃあ(^^;)」と言いたくなるような迫り方をしてきます。幼なじみというキャラクター設定に留まらず、何気ない行動や言動に、「三角関係というものを意識しながら」というのがよく滲み出ていて、非常に上手い描き方だと感じます。特に、ちづるシナリオで、雅美との関係の清算シーンは、見ていて非常にすがすがしいものでした。この部分に関しては、『With You』(カクテル・ソフト)あたりにも見習ってほしいものです。

 もっとも、盛り上げ方にうまさを感じさせる個所がある反面、どのシナリオでも共通となるイベントが多いため、不自然に思えた場面がかなりあったのも確かです。例えば「想いを遂げた」(笑)翌朝、ふだんどおりの顔でそのキャラクターがみんなと一緒に起こしに来るなど、かなり違和感を感じました。このように、「細部が練られていない」という印象があります。

 

 そうはいっても、ゲームをプレイしている間「退屈」することがなく「呆然」とすることもなかった点は確かです。伏線のないまま「お〜い、待たんかい」という状態になることはなく、先がかなり読めたとはいえ、それなりにテンポよくプレイできました。

 シナリオライター氏の趣味なのか、天文の知識をふんだんに入れています。私自身、安物とはいえ望遠鏡を持っていますし、変光星を追跡観測した経験などもあるので楽しめましたが、知識がさほどなくても、説明によるくだくだしさを感じさせにくいシナリオ描写になっていたと思います。

 季節的にも、夏という舞台によくマッチしたイベントとリンクしています。天体観測の旬となる季節というのは、夏や冬なのでしょうが(生粋の趣味人ならば「季節など関係ない!」となるでしょうけれど)、冬では「さっさと終えよう…」という雰囲気になってしまいますし。花火や肝試し、キャンプファイヤーなど、定番的なイベントもしっかり描けていました。エンディングがあっさりし過ぎているシナリオが多いのが残念でしたが、岬など、ラストシーンで完全にKOくらってしまいました(*^^*)

 さらに、テキストや会話も、非常に堅実です。多くのキャラと「ボケツッコミ」を繰り返したり、またビジュアル的にもそういったCGを「わざわざ用意」したりと、なかなか手が込んでいます。真樹さん「ハリセンですぱこーん!」の時は、大笑いさせてもらいました(^^) マッド入ってるいずみ先輩の怪しげなセリフでは、音声にも敢えて怪しげな言葉を織り交ぜるなど、テキストレベルだけでなく、演出面をも含めたギャグには、嫌みがなく、非常にスマートな印象を受けます。「日常の延長」であることをうまく出している点は、高く評価したいと思います。

ゲームデザイン

 コマンド選択によってイベント発生・好感度調整が行われるタイプのアドベンチャーゲームです。フラグ立てもさることながら、好感度をマメに上げていくのはけっこう大変です。キャラクターによっては、ハッピーエンドを迎えるのはさほど難しくないものの、好感度が不足していると、Hシーンを一部飛ばされる場合があります。このあたり、例えば『はぷにんぐJOURNEY』(Euphony Production)のような楽勝ものと考えると、手痛い目に遭います。

 とはいえ、ゲーム期間がさほど長くないこともあって、複数回プレイもまったく嫌になることがないことをも考えると、難易度的にはかなりバランスが取れていると思います。

不具合・修正プログラム

 ゲームクリア後も、CGモードが埋まらないという不具合がありました。ジャニスまたはアイボリーのWebサイトに修正ファイルがアップされています。

操作性など

 インストールは、大小2とおりから選択可能です。フルインストールすると音源にCD-DAを選択可能です。

 起動すると、強制フルスクリーンになり、「Alt」+「Tab」も利きません。ここはちょっと疑問。

 操作は、すべてマウスのみで、キーボード操作は不可能です。ゲームの進行中、「右クリック」→「左クリック」というツーステップ操作は少しやりにくかったですね。セーブ&ロードは任意に12ヶ所まで可能で、これだけあれば問題ありません。また、タイトル画面に戻ることもできます。

 メッセージスキップは可能ですが、なんとか目で文を追うことができる程度のスピードなので、速度に期待するのはやめておきましょう(^^;)

 CGモードは、1枚ずつ表示されますが、「全体の枚数中何枚を見た、達成率何%」と出るものの、どのキャラのグラフィックか、といった表示はないため、CGの穴を埋めるのはちょっとやりにくいですね。たいていのキャラクターは、エンディングを迎えれば全てのCGが出ますけれど。また、Hシーン再生モードが、各キャラクターごとに用意されています。

 BGMモードはありません。

サウンド

 BGMは、基本的にMIDI(GM)、フルインストール時にはCD-DAを選択可能になります。特に印象に残る曲ではありませんが、それなりに雰囲気に合っている、という感じでした。なお、オープニングはヴォーカル曲ですが…最後まで聴くに耐えません(-_-;)

 音声(主人公を除きフルボイス)の水準は、思っていた以上のものでした。ボケツッコミのシーンからシリアスなシーンまで、シチュエーションに応じたキャラクターをみごとに演じています。惜しいのは、主人公の名前の部分が呼ばれないこと。名前をデフォルトのままにしてある場合は、そのままで読んでほしかった、と思うのは私だけでしょうか。

グラフィック

 あきふじさとしさんの原画。女の子がみんなかわいいし(男の子は却下(爆笑))、特に赤くなって下を向くちづる、元気に笑う岬など、それぞれの「表情」が、短いゲーム期間の中で存分に発揮されており、見ていて楽しかったですね。また、画面の左上や右下を一部切り取り、別の画像を入れることでメリハリを出していますが、これも非常にいい効果を生んでいたと思います。

 残念なのは、立ちCGで、かなりぼやけている上、ジャギーが目立つこと。このゲームは、画面が強制フルスクリーンとなるので、なおさら目にハッキリと映ります。グラフィック自体は味があって、個人的に非常に好きなのですが、これは残念。

 あと、ものすごく違和感を感じたのが、Hシーンで、「主人公だけ服を着ている」シーンが多いこと多いこと。野外での場合はともかく、ベッドの上で、しかも相手が初めてで服を全部脱がせて、自分だけは服を着ているというのは、どうにも不自然です。ここはどうにかしてほしかったものです。

お気に入り

 青山ちづる、小嶋岬の両名が横一線で並んでいます。どちらとも、嫌みがないキャラクターである上、表情が豊か、会話が楽しい、など、いろんな魅力を出してくれますね。さらに、ちづるは、彼女狙いでなくてもイベントが一番多いこともあって、他のキャラを攻略するのにちょっと心が痛んだりしました…。

関連リンク先

 一番うまくまとまってるのが、いっせいさんの「真夜中の超勤」でしょう。私の散漫な文よりおもしろいし(^^;) ただ、内容的にはあまり差がないのですけれどね。また、兄貴さんの、濃〜いレビュー(閉鎖)も楽しめます。

総評

 攻略対象キャラは比較的バラエティに富んでいていてキャラも立っていますし、それなりにシナリオの起伏も用意されています。ベタとしかいいようのないキャラクターの配置は、「これでどうやって勝負するのだ?」と、その「オリジナリティのなさ」をアピールするかのごときものでした。しかし、意表をつく設定を出しながら、「設定負け」して自滅しているゲームが非常に多い中、地道に王道をたどり、そこで、まさにキラリと光る星のように、地味ながらも味を出すという手法には、私はむしろ好意的な印象を持っています。見た目のベタさは、むしろ凡庸の極みという先入観をもたらし、かえって「売れ筋」から外れそうですが、シナリオはきちんと作られていますし、全体を見ても破綻はほとんどありません。

 基本に忠実な「恋愛系ゲーム」が好きな方に、お勧めしたい一品です。バランスの良さは非常にいいですし、ボリューム、難易度など、どこを見ても、致命的な問題点はどこにもなく、地に足がついている点を高く評価したいものです。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
1999年10月4日
(10月8日、加筆・修正)
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