春風少女 アクアリウム

1998年10月30日発売
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 このゲームの第一印象はといえば、おそらく100人中99人の方が「白い!」だと思います。ちょうど、レースのカーテンの隙間から差し込む日差しのような、薄桃色のかったハイキートーンのグラフィック。目にはあまりやさしそうではありませんが、独特の雰囲気を感じます。これをプラスに取るか、マイナスに取るか。その段階で、このゲームに手を伸ばすかどうかが分かれると言ってもいいでしょう。

 なおこのゲームタイトルは「しゅんぷうしょうじょ」と読みます。

シナリオ

 主人公・背叉拓馬(せさたくま・変更不可)は、卒業を翌年に控えた大学生。ある日彼のもとに、異世界の少女・サイリが突然現れる。彼女は、拓馬に憑依した意識体を浄化するために現れたといい、その体勢が整うまで、ふたりは同棲することとなったが…急接近した2人は、いつしか相思相愛の間柄に。

 ずっと「友人以上恋人未満」であった大学の同級生、教育実習先で知り合った教諭や女子高生、さらに、サイリの友人である別の使者。彼と彼女たちの織りなす複雑な恋物語の行く末は…。主人公の、そしてサイリの未来には、どのような結末が待ちかまえているのか…。

 

 基本的に、最終章を除いて主人公とサイリとはらぶらぶ状態にあることが前提となっています。しかし、紆余曲折を経た物語の最終局面は、実に多岐にわたります。

 現実離れした舞台設定でありながら、プレイヤーには理解できない伏線(いや、伏線というより、初めから「謎のまま」とわかるようなもの)が無造作にばらまかれており、この結果、「シナリオをプレイヤーが精緻に組み立てる」ということは、最初から不可能になっています。「スラ=アル=スー」など、さまざまな用語がキーワードとなっているものの、それらの多くはシナリオ上で明かされることはありません。この方法は、シナリオを基盤としたゲームとしていいものではないと思えますけれど、これだけの題材を使って、まともな世界を構築しようとするのであれば、マルチシナリオにして、かつ、各世界のリンクを微妙に調整していく必要がありますが、たぶんそんなことは無理でしょう。トリッキーな方法だけに、多用はしてほしくありませんが、一応、好意的に受け止めています。

 さて、物語として見ると、途中に「小さな山」を適宜配置し、最後にクライマックスをドーンと出してくるのは、反則的とも言えるシナリオ演出でしょう。シナリオ自体の深みはあまりないのですが、その巧妙な演出のために、最後まで飽きることなく、一気にプレイを続けてしまいました。

 

 キャラ設定も、メインキャラについては、かなりきちんと描写されています。もっとも、登場人物が決して多くはなく、しかも長いストーリーの中で、キャラがいい加減に描かれていたら、目も当てられないと言う気もしますが…そーゆーゲームもありますからねぇ(--;)

 メインヒロインが異世界から来た少女、そしてライバルとして主人公の女友達、さらに異世界から来た少女にも友人があり、そして主人公が命を狙われることに。そういう設定なのですが、シナリオの濃淡バランスがよく考慮されていた点が、そっくりの内容である『や・く・そ・く』(May-Be SOFT)などと違う点でありましょう。

ゲームデザイン

 全部で12の章に分かれる、マルチエンド式のアドベンチャーゲームですが、シナリオそのものは一直線、中途で小分岐があるだけです。マップ移動などはなく、基本的に三択のみで進みます。

 マニュアルによると、最も親密になれたキャラクターとの最終話を終えたとき、ゲームはエンディングを迎える事になりますとあります。実際には、サイリ以外の女性とどんな関係になっているか、という、いわば「浮気度」が、エンディングを左右する大きな要因となっています。

不具合・修正プログラム

 製品版では、CGモードの登録漏れという現象が発生します。アクアリウムのWebサイトにアップされているアップデートファイルで修正されています。

操作性など

 もともと長いゲームなので、メッセージスキップなしでプレイすると、1プレイにけっこう時間がかかります。しかし、ひとつひとつの章ごとに、セーブするかどうかの確認メッセージが出ます。選択肢の上にカーソルを置くと、カンからピョコッと女の子が出てくるなんていう凝った演出もあります(^^)。マウス・キーボードの双方でプレイが可能です。

 セーブ&ロードは、任意の位置で可能。50個所までセーブできます。セーブした日時のほか、セーブ時の画面まで表示されるので、セーブ時の状況がわかりやすく便利です。

 また、メッセージ速度は11段階、マウスカーソル速度は12段階で変更可能(ノーウェイトも含む)。メニューバー中の「SKIP」をクリックすることで、次の選択肢まで早送り可能、メニューバー中の「REWIND」をクリックすることで、今まで見たメッセージの読み返しが可能、など、プレイの際にはほとんどストレスを感じません。

 さらに、CGモードでは、各章ごとに、一枚絵CGがサムネイル表示される(セーブしなくても見ただけで記録されます)上、このCGモードとBGMモードは、なんと、メニューバーから呼び出すようになっており、ゲームをプレイ中でもCGモードやBGMモードにはいることが出来ます。

 総じて、非常に親切なユーザーインターフェースが実現されています。アドベンチャーゲームに求められる操作性は、ほぼ極限にまで突き詰められているといってよいでしょう。

サウンド

 オープニングのボーカル曲の出来はまずまず。いきなり興を削がれるようなシロモノが流れてくる心配はありません。ちょっと録音が乱れている個所があるようですが、これは意図的なものなのでしょうか?

 BGM(CD-DAがベスト)は、多少悪ノリの過ぎるようなものもありますが、シリアス調の曲はけっこういい線いっていると思います。ただ、いろいろなサウンドの効果を試したい、という、サウンド担当の野心がかなり見え、その結果、力強さがある反面、全体的なバランスが取れているとは言い難いのが、やや残念。ゲームをしていないときのBGMとするには、バラエティに富んでいていいのですけれど(^^;)

 そうはいっても、98年度下半期のゲームサウンド中では、最高水準に近いだけの迫力を感じました。

グラフィック

 くまだがお氏の原画。目が大きく、少し幼い感じのする登場人物たちですが、女の子たちには意外と違和感を抱くこともなく、むしろ物語世界によくあったキャラデザだと思いました。それより主人公が、全然男に見えない…ピンクと紫との中間の色(色の名前は知りません)という髪、女の子に劣らないヤワっちい感じのスタイル…完全に女の子たちの中に埋もれてしまっています(^^;)

 塗りも、非常にていねいで、ソフトでやさしい感じに仕上がっています。一枚絵CGのほんわかとしたハイキー調は、シチュエーションによっては場違いと感じられるところもありましたが、総じて好結果を生んでいると判断していいでしょう。また、おちゃらけ画面でのデフォルメCGもけっこう笑えましたが…人によっては鼻につくでしょうね。

 なお、HシーンのCGは…見る人しだいですが、私自身は、なかなか新鮮かつ刺激的な印象を受けました。ただねぇ、やっぱ、主人公が全然男に見えないというのが、なんとも…。

お気に入り

 ミノス。ニヒルなキャラゆえのボケぶりがなんとも(^^)

総評

 長いシナリオというものは、えてして「中だるみ」しがちなのですが、このゲームでは、単なる起承転結的な展開にとどまらず、いわば「小さなクライマックス」的な話を挟み込む、シリアスなシナリオとコテコテのギャグシナリオとを見事につなぎ合わせる、といった工夫がこらされているので、まったく飽きませんでした。まあ飽きたとしても、メッセージスキップはあるし、そう支障はないのですが、「まだ続くのか……げっそり」ということは、何度リプレイしても感じることはありませんでした。こういった、「ほどよい緊張感」を持たせてくれるだけの展開力は、みごとと思います。

 主人公とサイリとの仲、そして、その行く末に待ち受けた運命を描写したシナリオは、すべてを語ってくれるわけではありません。むしろ、中間色で彩られたCGと同様、ぽわんとした空間の中にぷかぷかと浮かんでいる真実、それでいいんだと思います。徹底的に主人公の視点から見た場合、解決されない謎がそのまま残る、という手法も、それが致命的な失敗へと直結しているとは思いません。

 しかし、このままで収められても気味が良くないので、次回作に期待したいところですね。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
1999年8月19日
(8月25日、一部加筆)
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