桜色の手紙 Blue Bell/サイバーワークス

1998年4月10日発売
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 季節感を味わえるゲームといえば、その多くは夏や冬に集中しているように見えます。しかし、なぜか浮かれることの多い季節といえば、やはり春でしょう。その春の象徴たる桜という樹には、一種独特の雰囲気があります。ほかの樹ではまずないことですが、「桜の精」などが棲みついていたりするわけで…。

 なお、前作『雪降る季節へ』と同様、ボーナスCD同梱となっています。ただ、CDの中身は、前作の「OMAKE」と似たような感じですが(^^;)

シナリオ

 主人公・鹿野駿二(変更不可)は、大学合格を機に、幼なじみの千春に告白しようと思っていたが、あえなく不合格。落ち込む彼のもとに、遠縁の親戚である八代瑞穂から、招待状が届く。千春とともに八代家を訪れる主人公。不思議な出来事を目にする彼をめぐる物語の行く末は?

 

 いまむらこういちさんの担当。前作のおまけフォルダの中に、「今村光一(かつみこういち)」とあるので、前作で原画を担当されたかつみこういちさんの別PNのようですね。

 メルヘンの入った味のあるシナリオです。夢の中に不思議な娘が出てきたり、桜の木の下に謎の少女が立っていたりと、雰囲気を出すためのお膳立てがいろいろとなされています。ほのぼのとした、温かい感じのシナリオが続きますが、テキストは主人公主体のモノローグ的に綴られていきます。

 

 シナリオを無難に手堅くまとめようとしたのはいいのですが、盛り上がりに欠けるままに収めてしまった、という印象は拭えません。ストーリーとしての始末はついているのですが、クライマックスの描写がどうにも弱いですね。メルヘン調のシナリオ展開とはいえ、『メロディ』(Melody)のように詩的な文章で綴られているのではなく、徹底的に平叙文で貫かれている以上、現実と夢とのクロスロードを明晰にしてほしかったものです。

 それに、なんといっても、シナリオ自体が短かったのも問題でしょう。シナリオにもよりますが、謎の明かし方が最終段階に集中しているため、かなり窮屈な印象を受けます。

 シナリオの中では、過去というものが関わってきますが、「現在」と「過去」とのリンクをそれなりにきちんと絡めているのはいいのですけれど、「過去」がいかにして主人公へ伝わったのか、そこの詰めがみごとに欠けています。この結果、過去のインパクトが非常に希薄なものとなっています。

 

 キャラクター設定としては、ステレオタイプ的なバリエーションをうまくつけていると感じます。

ゲームデザイン

 パッケージには「ビジュアルノベルアドベンチャー」とありますが、テキスト表示は全画面ではありません。その替わり、「小さいフォントで八行表示」「縦書き」という、他のゲームではお目に掛かったことのない形式を取っています。これが意外といい味を出していたりするから不思議なもの。やはり、縦書きのほうが読みやすいのは、日ごろからそういった文を読んでいる日本人ならではのものなのでしょう。

 進行の過程で出てくる選択肢によってフラグ立てがなされ、各シナリオへと分岐していくタイプのゲームです。しかし、どの選択肢を組み合わせればよいかが意外と見極めにくく、選択肢の数の割にはやりごたえを感じます。ヒロインごとにシナリオが用意されています。

不具合・修正プログラム

 Windows98環境でフルスクリーンにすると、表示がおかしくなるという不具合があります。BlueBellのWebサイトに修正ファイルがアップされています。

操作性など

 インストールに必要なHD容量は50MB強です。

 操作はすべてマウスで行いますが、一プレイにかかる時間は大したことないのでさほどストレスが溜まることはないでしょう。

 セーブ&ロードは任意の位置で、16個所まで可能です。また、メッセージ速度は、遅い・速い・ノーウェイトで切り替え可能です。また、前作とは違って、メッセージスキップも装備されていますが、既読・未読の別がほしかったところ。CGモードでは、1枚ずつ順に表示されます。達成率も出ます。また、BGMモードでは、曲名も表示されます。

サウンド

 BGMは、CD-DAで演奏されます。前作に引き続き、西野さんの担当。オープニングの「風と桜」など、しっとりとした独特の雰囲気を帯びている曲が多く、地味ながらも好感を持てます。前作よりも、全体的なバランスも取れているようですね。

 音声はありません。

グラフィック

 旅人さんの原画担当。独特の雰囲気を帯びた原画ですね。霞がかった春に合いそうな感じの絵に見えたのは私だけでしょうか。ぬっぺり、とした感じの塗りが、これまた独特で、特に肌の色合いがなかなか良いと思います。

 また、画面表示で表されるグラフィックが正方形に近い形で出るのは、非常に印象的です。もちろん、イベントシーンでのCGはフル画面になりますが。

お気に入り

 う〜ん…特になし、としかいいようがないですね。雰囲気に浸ることはできましたが、エンディングでやや腰が引け気味になったキャラクターが非常に多かったもので(^^;) ま、一人挙げるなら、からかうと楽しいさくらで決まりかな。

総評

 かなりいい線行っているゲームではありますが、欲がなさ過ぎるといいますか、小さくまとめることが先に立っているのが残念。ゲームのコンセプトとして、手軽にプレイできるものを、という意図はわかるのですが、素材を見るとセンスの良さを感じるだけに、練りこんでしっかりとした作品を作ることもできたのでは、と思います。

 しかし、話を組み立てるに際しての素材選抜のほか、サウンドなど、かなりのクオリティを持っていることは確かだと思います。絵的に問題なく、ふんわりとした軽めの話が好きな人向け、といったところでしょう。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
1999年10月11日
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