With You 〜みつめていたい〜 カクテル・ソフト/F&C

1998年9月11日発売
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 デモや広告のセンスの良さというものが、販売実績にどの程度の効果を上げるのか? 端的に語ることも、また分析可能となるための情報を収集することも、私にはできやしませんけれど、このゲームの発売日の騒ぎといったらありませんでした。まぁ、そんなことをいいつつも、しっかり買っていた自分については、一言もいえませんけれど(^^;)

シナリオ

 主人公・伊藤正樹(姓名とも変更可能)は、高校2年生の陸上部員。そんな彼の前にいるのは、6年振りに目の前に現れた初恋の女の子・真奈美と、いつもそばにいながら想いを口に出せない菜織という、2人の幼なじみ。彼女たちとの絆を深める過程は、そしてどんなラブストーリーが用意されているのか。

 

 ネタバレなしで語るのは事実上不可能なので、あまり細部には立ち入りませんが、基本的に、真奈美ルートと菜織ルートの2つシナリオに分かれています。しかしこの両シナリオのテーマには、まったくつながりがありません(^^;)

 ヒロインを2人と、「オンリーヒロイン」以外では最少の人数に絞り込んだ以上、両シナリオのバランスというものがなによりも求められると思いますが、こと、このゲームに関しては、完全に失敗しているといってよいでしょう。いえ、双方のテーマが微妙に違っていても、それらが統合可能な“テーマ”として集約可能であれば問題はありません。しかし、一方では「2人の世界」を築き直していくというシナリオで、もう一方では「恋心と友情との間で揺れる想い」が出てきます。これでは、「なぜ“2人”なのか?」という疑問に対し、なんら有効な回答を得ることはできないでしょう。

 シナリオ面で見た場合、情け容赦ないことをいえば、菜織シナリオは蛇足以外の何ものでもないでしょう。実際、菜織ルートで使われているCGの少なさ、そして、各章ごとのタイトルに合わせたかのような展開を考えた場合、本来は脇役だったのが、急造ヒロインとしてクローズアップされた、その結果としていびつな「ダブルシナリオ」になってしまったのでは、という気がします。

 また、真奈美シナリオだけで考えた場合、ネタの使い方という面で見ると、かなり納得のいかない点が多々あります。とにかく、物語展開を見ても、彼女の一人相撲といいますか、彼女の世界でストーリーが紡がれ、ギャラリーは不可解なまま話についていかなくてはいけない、という印象です。展開がお約束というのであればまだいいのですが、撒いた伏線が消化されぬままのたれ死にしているように見え、興ざめもいいところです。

 

 主人公の視点で見ても、不可解なシナリオという印象が、(どちらのルートに入っても)拭えません。まず、この主人公は、「2人の間で心が揺れる」という行動ではなく、あくまでも「ゴールにいるのは誰か」という考え方をしています。こうキッパリと割り切れるのは気持ちがいい、という見方はできますが、高校生程度の精神年齢で、そうすんなりと「先を見通した」感情を抱けるものでしょうか? 惹かれていく理由描写もかなりおざなりですし、「2人の中で1人」という以上、もう少し、揺れる想いが出てくる方がはるかに自然だと思うのですけれどね。

 さらに、妹キャラである乃絵美の扱い方も、非常に中途半端。特に、メインシナリオにおける彼女は、引き立て役を通り越して「刺身のツマ」程度のものなのですが、彼女がらみで主人公が、悪役(?)柴崎拓也と話をするシーンが出てきます。まぁ、こいつの感情がかなり歪んでいるのは確かでしょうけれど、柴崎の話の方が説得力があるんですけどねぇ。さんざん慰み者にしてポイ、というのではなく、「好きでなくなったのだからキッパリ別れた」というのなら、それは当人同時の問題でしょうが。主人公のシスコンぶりを出す、という意味で出した設定なのでしょうけれど、腑に落ちないなぁ。

 

 なんだかボロクソに書いていますが(^^;)、「シナリオに期待するゲームではない」というのが正解なのでしょう。しかし、「デュアルヒロイン」という形式、そして発売前に流されていた情報を見るかぎり、シナリオ面での練り混みがあるゲームだと期待するのは、そう無理なことではないと思います。それに、シナリオの「薄さ」だけでなく「無理さ」が先に気にかかってしまうため、どうにもこのゲームを高く評価する気にはなれそうにありません。

 

 しかし、キャラクターを立たせる、つまりキャラの魅力を出すという点で見た場合は、やはりなかなかのものだ、といえましょう。ヒロイン2人もさることながら、脇役の各キャラクターが、実に生き生きとゲーム中で動いています。それにしても、このゲームの主人公、男友達は誰もいないのか?(^^;)

ゲームデザイン

 基本的に、真奈美、菜織両ルートからなるアドベンチャーゲーム。分岐は、ある特定の選択肢を選ぶケースが1か所ありますが、基本的には好感度の上下で分岐します。

 選択肢の結果、どちらよりの選択をしたかというのは一目で分かるので、非常にプレイしやすくなっています。

 なお、バッドエンドもある(特に終盤には多い)ので、注意してください。ゲーム自体の難易度は、かなり低めです。

操作性など

 プログラムは、ADMではなくなりました。CD-ROMをドライブにセットすると、インストーラが起動しますが、インストール終了後、画面表示設定、用いるCD-ROMドライブの選択(複数接続の場合)が可能など、かなりきめ細かい設定が可能です。

 セーブ&ロードが任意に変更可能、ボタン一つのクイックセーブ&クイックロード、メッセージスキップ、そのほか、挙げていけばキリがないほど、至れり尽くせりのユーザーインターフェースが用意されています。用意されているメニューが多すぎて把握できないという気もしますが(^^;)、とにかくプレイのしやすさはみごとなものです。

 難点を挙げれば、日付が変わるとメッセージスキップが止まってしまう点。これはちょっと。

 なお、ドラマチックモードというものがあり、テキストが表示されず、音声と画面切り替えとが連動します。Hシーン必須モードか(^^;)

サウンド

 BGMは、MIDIで演奏されます。しかし、なにせ初回プレイでBGMオフ(ソフトウェアMIDIではきつかったのです)だったので、どうにも…。その後聴き直してみると、そう悪い曲ではないですが、特に強く印象に残るほどでもなかったですね。

 音声は、やはり安心して聴けますね。主人公を除きフルボイスですが、話させたくないキャラは除外させることが可能です。

 一番疑問なのは、初回限定版添付の「サウンドトラック」。そこに書かれている「警告」が振るっています。「警告」の「CDプレイヤーでトラック1は絶対に再生しないでください」。あのぉ、これ、音楽CDぢゃなかったのか? 

 どうやら、ゲーム中に使われているサウンドファイルを、CD-DAではなく「MIDIで」収録し、ヴォーカル曲のフルバージョン・カラオケバージョンのみがCD-DAとなっている、ミックスモードCDになっているようです。これには絶句。トラック1を再生できない場合、CDプレイヤーで「気楽に」聴くことなどできませんし、しかも、CD-DAファーマットの曲がほとんどない、となれば、ありがたみは半減です。

 一定程度以上のMIDI音源を持っていなければありがたみのない「音楽CD」など、やめていただきたいものです。データトラックを収録するのであれば、CDエクストラという方法もあるわけですし。

グラフィック

 プレイした当初は、98年のベストグラフィックゲームという印象を受けました。オープニングで度肝を抜かれ、そしてその後も、惜しげもなく出されるヴィジュアルの数々。見事の一言につきます。キャラの原画を担当されたのは、橋本タカシさん。目のくりくりした女の子は、実にいきいきとしています。逆に、男性キャラの目が活きていない感じを受けましたけれど(^^;)

 ただ、背景原画の取り込み方は、なんとかしてほしいですね。「国際便が発着する空港に向かう電車」に向かって主人公が走るシーンがあるのですが、このシーン、どう見ても「新宿駅、中央本線、特急あずさ(orかいじ)」。ビジュアルファンブックには、「鉄な人にも楽しめるように」なんて書いてありましたが、新宿駅を利用していれば一目でわかるような妙なウケ狙いは、興が削がれるからやめてほしいものです。

 18禁なシーンは、もはや「エンディング到達のごほうび」以上の意味を持っていませんね。「簡単に取り外しできます」というセッティングに見えます。

お気に入り

 後藤田刑事…という大ボケはさておき、やはり菜織かな。ずっとそばにいてくれたコを見捨てることは、私にはできません。

総評

 手堅くキャラ萌え依存スタイルのゲームに徹すれば良かったのに、シナリオ設定に色気を出して自爆した、という印象を受けます。これを、野心的な試み、と評価することもできるのでしょうが、何よりも「中途半端」という印象があって、いただけません。

 グラフィックの美しさは文句ないですし、便利な操作性もいい(ちょっと凝りすぎですが)のですが、これ以外では、特に誉めるべき点が見当たらないように思えます。シナリオに期待しない、ということを前提としたかぎりでは、悪くない作品でしょう。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
1999年8月27日
Mail to:Ken
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