宵桜 メイフルハウス風露

1998年5月1日発売
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 ダークというと、ただひたすら人為的な鬼畜。こういうパターンが多い中、「人外存在による猟奇事件」というものに何となく興味を惹かれて購入したのが、この『宵桜』でした。怪談にもっともマッチする花をさりげなくタイトルに用いる、しかも漢字2文字だけでよけいな情報を使わない。そんなところにも好感を持ったものでした。タイトルもパッケージもブランドも妖しいもんで(^^;)

シナリオ

 主人公・菊池敬一(変更不可)は、路傍の草花に語りかけることの多い読書好きな高校3年生。春のある日、学校の中庭で友人や先生と花見のさなか、何ものかの視線を感じる。それ以降、彼に恋い焦がれる桜の精、人を毎晩のように襲う猫又が校内を歩き、さらに邪悪なものを退治することを宿命とした少女も現れる。桜がその姿を留めているのは、1週間。桜を初めとする人外の存在、あるいは彼のまわりにいる級友達の運命が、主人公の行動次第で決する。

 

 「猟奇事件」となると、まずは「背景」の設定が必要なのですが、その「背景」が、シナリオ中では全然使い切れていません。伏線を消化し切れていないというのではなく、設定された背景の意味づけが曖昧であること、キャラクターの行動や心理とまったくシンクロしていないことが問題でしょう。

 自然を愛でる内向的な主人公、それに恋した桜の精。これだけならいいのですが、この設定に「猫又」を関係させるのが強引極まりない、としかいいようがありません。もちろん、桜に非がない、うんぬんと説明することはできますが、らぶらぶ展開とホラー展開とを平行して描写、それも期間が短い上「マップ移動でのイベント発生」というスタイルを取っている(ゲームデザイン欄に詳述)ため、どう工夫したところで中途半端になるのは必然でしょう。

 また、「非日常」と「日常」との描き分けが全然できていません。死体を発見した次のシーンでは、脳天気なBGMと共に平然と校内を歩く主人公。なんなんだか…。

 さらに、主人公と女の子たちとの関係がほとんど書かれていません。さらに、主人公の友人たちがレイプされる(人間にです)というシーンがしばしば発生するのですが、そこでも主人公は覗いているだけで何もしません(^^;) ここで何らかの選択肢が出るかと思ったら、見てるだけ。しかも、このシーンを見ておかないとエンディングに辿り着かない、というわけのわからない展開。「陵辱シーンありき」では萎えるだけです。

 ラスト付近における、桜と猫又との関係に関しても、どうも釈然としないものが残ります。これは、この両者が完全に別個の存在であり、相互依存関係こそあれど一心同体ではないからでしょう。もし、両者が同一にして不可分という設定であれば、猫又が「主人公の周囲の人間を襲う」というシナリオに説得力が出てくる(←嫉妬の裏返しということですね)わけですが、あのままでは「なんか終わっちゃったんですけど」という以上の感慨がわきません。

 こんな状態なので、ハッピーエンドが存在するといっても、そこに到達できたからといって嬉しくないのです。桜や巴、吹雪とのエンディングはともかく、友人たちとのエンディングにはあまりにも無理があるような気がします。結局アレは何だったの?というものを残したままのエンディングですし、らぶらぶはっぴーという雰囲気にはなれません。

 

 さらに、シナリオを描写するテキストが、稚拙とかなんとかいうレベルではなく、その誤字の多さ(送りがなの間違いまで大量にありました)には唖然。プロが書いたとは到底思えないシロモノです。テストプレイして気付かなかったのでしょうか?

 

 やっぱり、一言書いておいた方がいいかとは思いますが、このゲーム、男×男のエンディングがあります(^^;) さらに言えば、Hシーンもしっかりあったりします(^^;;;) その手のシーンがお好みの方はどうぞ。

ゲームデザイン

 期間はシナリオ欄で述べたとおり、1週間(つまり、正味5日間)です。この間、放課後に校内を移動し、人物と会ってイベントを発生させます。放課後は、昼・夕・夜と時間帯が分かれており、発生するイベントも異なります。移動個所は26あります。ハイ、5日間の間にすべてを網羅するのは絶対に不可能な訳ですねっ(^^;)

 この結果、「何処に行っても誰もいない」とか「一度会ったらそれっきり」というパターンの連続。イベント発生のタイミングやコツは確実に存在するので、十数回プレイしていれば(数回では苦しいです)法則が見えてきますが、それまでにかかる手間がかなり大変。要するに、移動場所に見合うだけのイベントと期間が用意されていないのです。この「冗長」なプレイのため、エンディングに到達するまでにかかる手間が「作業」と感じられ、半ば義務的にプレイする羽目になりました。

操作性など

 マウス・キーボードの双方でプレイが可能です。セーブ&ロードは、任意の位置で可能です。また、メッセージ速度は11段階、マウスカーソル速度は12段階で変更可能(ノーウェイトも含む)。さらに、次の選択肢まで早送り可能、今まで見たメッセージの読み返しが可能、など、ユーザーインタフェースはなかなかよくなっています。しかし、画像の書き換えが非常に遅く、MMX Pentium200MHzでは、じりじりしながらのプレイと相成りました。

 CGモードでは、キャラクターごとに、一枚絵CGがサムネイル表示されます。また、Hシーンのみの回想(テキスト付き)モードもあります。BGMモードでは、曲名も表示されます。

サウンド

 BGMは、MIDI・CD-DAから選択することが出来ます。悪い曲ではないのですが、日常シーンの曲では気が抜けたような感じがします(^^;)

 なお、オープニングのヴォーカル曲は、「曲」としてはいいと思います、ハイ(^^;;;)

 音声はありません。

グラフィック

 でろん、とした感じのグラフィックですね。横顔の描き方に異様な感じを受けました。また、背景の塗りがあまりにも単調に過ぎます。

 それにしても、画面切り替えの遅さは、いったいどのような意図があったのか、さっぱりわかりません。

お気に入り

 吹雪。こういう、影を背負っていくことを運命づけられた存在というのに弱いんです。

総評

 シナリオで読ませるべきと思われるゲームであるだけに、そのシナリオに魅力がなくては仕方がありません。陵辱シーンが多いことを考えれば、むしろそういったシーンのグラフィックを見せる、という方向で徹するべきだったでしょう。何にせよ、どのような路線で何を見せたかったのか、それがさっぱり伝わってきません。

 おそらく、「猟奇」と「陵辱」との関連づけをうまく行えなかったのが最大の要因でしょう。陵辱はいいんですが、主人公も魔物もからんでこないシーンがやたらと多いので、結局ナニを描写していたのか、さっぱりわかりません。

 取りあえず作りました、そんな内容では困ります。この作品を見るかぎりでは、お勧めできる要素はほとんどないというのが結論です。ひとつあるとすれば、♂×♂があるのでその方面の方にはヾ(^^;

個人評価 ★★★☆☆ ☆☆☆☆☆
1999年9月7日
(12月7日、加筆・修正)
(2000年5月11日、加筆・修正)
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