アルバムの中の微笑み CureCube/アセンブラージュ

1999年9月24日発売
ご意見などは掲示板へどうぞ

 大正浪漫、ということばを目にして想起するものというと、どんなことでしょうか。学校で身につけた知識でいえば、労働運動の活発化とか関東大震災とか、そういったイメージがどうしても先に立ってしまいますが、私の頭に浮かんだのは、都市の庶民はどんな生活をしていたのか、ということでした(なにせ、意外とこの種の史料って残りにくいもんで…)。そんなことを考えながら手にしたのが、この『アルバムの中の微笑み』、略して『アル中』です。登場人物はブルジョワジーばかりで、庶民的な生活とはほど遠いお話でしたが(^^;)

 新しいブランドですが、「ぷち」や「Euphony Production」などのブランドでゲームをリリースしてきた、アセンブラージュから出されています。地味ながらも固定ファンの多いソフトハウスで(私もそうだったりします)、「大外れはない」という安心感をもってプレイしました。

シナリオ

 主人公・間宮征一郎(変更不可)は、親の仕事の都合で、欧羅巴にて生活していたが、彼には、幼少の折、仲良くしていた初恋の女の子が日本にいた。学校の絵画教室担当講師として帰郷した征一郎は、彼が住まう家の息女である香川五月と出会うが、その初対面の印象は最悪なものであった。しかも、親同士の約束で、両者とも知らぬ間に婚約者とされてしまった。征一郎と五月との仲はどうなるのか。そして、メイドとして彼の身の回りの世話を甲斐甲斐しく行う霞との関係はどう変わっていくのか。さらに、学校に通うほかの娘たちも、しだいに征一郎に惹かれていく。舞台は大正、上流階級の令嬢を相手に繰り広げられる浪漫譚の行く末は…?

 

 主人公が妙にモテモテ状態になるのがこの種の(あるいは、アセンブラージュの?)ゲームの常ですが、免疫のないお嬢様方(1人例外あり)ばかりを揃えることで、こういった点が不自然にならないような工夫がされています。展開されるシナリオは、比較的淡々と進みます。ドキドキもののイベントが連続したり、大笑いできるような漫才シーンがあったりということはありません。したがって、やや単調さを感じたのも事実です。

 季節ごとのイベントが、「上流階級ならでは」という色合いを敢えて前面に出しながらも、それなりに地に足のついた形で出されていたのはマル。

 

 登場人物は、それなりにバラエティに富んでおり、性格別の描き分けもできてはいるのですが、ヒロインたちが主人公に惹かれる過程が、キャラによってかなり差があるように思えます。「こういう展開ならば惚れるのも無理ないな」と思わせる娘から、「おいおい、いきなりそーくるか?」というのまでありました。この「差」が各キャラクターの違いを説明する形で使われていたのであればかまわないのですが、単に「取り扱い形の精粗差の大きさ」に留まっていたのは残念。また、多くのイベントにおいて複数キャラが関わっているのはいいのですが、その結果として、存在感の濃淡がクリアに浮き出てしまっているという印象です。

 シナリオのベースにあるのが、あくまでも「幼な恋の実現」にあるのだとしても、ほかのエンディングがこのテーマと整合性を取っているようには、とうてい思われません。有力対抗馬(笑)である霞は別としても、ほかの「五月の友人たち」ともエンディングを迎えられるわけですが、この場合に必然的に経る「主人公の変節」が、あまりにも唐突という感は否めません。肌身はなさず持ち歩いていた五月の顔写真の意味は、トゥルーシナリオ以外ではどう説明可能なのか。何ら決着をつけないではっぴ〜えんどというのは、後味の悪さを残すと思うのですが。

 また、五月にしても、同居している主人公に対してツンケンしているのは別にいいとしても、そこからどう惹かれていくか、そして、主人公の正体がわかったあとの態度の変化などが曖昧このうえないのは、非常に残念です。女心は繊細にして難しいものだ、で済ませるのは容易ですが、序盤で「後会を約した間柄」ことを見せているのに、「変則的な再会」である方はかなりおざなりという印象。主人公の正体がわかる前の「惹かれ形」を見れば、彼女なりにかなりの悩みなり迷いなりを抱いているはずなので、ここをきちんと書き込んでいれば、シナリオにより深みが増したと思いますが。

 

 テキストは比較的きちんと書き込まれていますし、時代考証に過度に囚われていない点はむしろ好感を持てました。もちろん、「この時代にソレはねーだろ」とツッコミを入れたくなる点はいくつもありましたが(大正時代にはタクシーは一般的ではなかったはず、などなど)、これはこれで楽しめるからよし、と思います。

 ただ、おそらくはエンディングと直接関係ないであろう選択肢を選んだ場合、シナリオの整合性が取れていない個所があったのは問題。「おいおい、そんなことした覚えないぞ」というのは、全体の流れに棹を差すとまではいかないにせよ、妙に気にかかってしまうので、もうちょっと練り混みがほしいところです。

 

 あと、「究極の鈍感王」的な主人公が、Hシーンになると突然豹変するのも、ちょっとやめてほしかったですね。急に肉欲の権化の如き言辞を並べるのはうんざり。最後まで「好青年」でいてほしかったものです。

ゲームデザイン

 中途の選択肢でフラグ立てをして進める、アドベンチャーゲーム。好感度のようなパラメータは関わっていないようです。選択の結果によってイベントが発生し、その発生したイベントがエンディングフラグとなり、最終的に「そのエンディングでよいか」というのがあからさまにわかる選択肢が出る、という形になっています。

 単純にいえば、基本は一本道で、中途で「このコのエンディングでいい?」という選択肢が出て、「ハイ」となればそれでエンディングに突入、最後まで回避すればトゥルーエンドへ、となります。

 買ったその晩にはCG100%になったので、難易度はかなり低い方でしょう。

不具合・修正プログラム

 選択肢が表示された個所でクリック不能となり、ゲームが進まなくなることがありました。「Ctrl」+「Alt」+「Delete」でアプリケーションを強制終了させた上で、Windowsを再起動してからプレイを続けました。

 この不具合に対処した修正パッチがアセンブラージュのWebサイトにアップされていましたが、発売当日にパッチが公開されるというのは、対応が迅速と褒めるべきなのか(^^;)

操作性など

 インストール先ディレクトリは変更可能ですが、「ALBUM」というフォルダが作成され、その中にファイルがインストールされます。インストールする際、HDの容量によって、3段階のオプションから選択可能です。また、実行プログラムには「DirectX版」と「通常版」とがありますが、どう違うのかはよくわかりません。なお、ゲームを起動する際には、必ずCD-ROMが必要です。

 操作の基本はマウスですが、『My Friends』で不評だった反省を踏まえたのか、キーボードでの操作が可能になっています。しかし、メッセージの文字送り(マウス左クリック)がエンターキーでなく「スペースキー」に当てられているのには驚きました。また、「F1」キーがスキップ機能に対応しているのも、なんというか…。慣れれば快適なのは確かなのですが。

 グラフィックは基本的に全画面表示され、下部に半透明のメッセージウィンドウが表示されます。テキスト表示は、いつでも消すことが可能です。画面は、640×480←→フルスクリーンの切り替えが可能。デフォルトでは、フルスクリーンとなっています。

 セーブ&ロードは任意の位置で行え、6個所までセーブ可能です。セーブすると、その状態が文字およびプレビュー表示されるのは便利なところ。

 速度表示は、「標準」と「高速」とから選択可能です。メッセージスキップに関しては、「Ctrl」キーを押している間スキップするほか、コンフィグ画面で「逐次選択(選択時に既読テキストスキップ)/全てスキップ(既読テキストスキップ)/無し」を設定した上で、「マウス両ボタン同時押下」または「F1」キーでスキップします。要するに、未読であってもスキップ→「Ctrl」キー押下、既読のみスキップ→「F1」キーを押す、という区別が可能という仕様です。いちいちコンフィグ画面を呼び出さずにこの両者が切り替えられるのは、非常に親切ですね。

 CGモードは、各ヒロインごとにサムネイル表示されます。また、Hシーンの回想モードもついています。BGMモードは、曲名つきで、音源を選択することが可能です。CGモード・BGMモードとも、プレイ中に確認することも可能(CG達成確認には便利ですね)ですが、Hシーン回想だけはスタート画面からのみ入れます。また、スタート画面からCGモードを見るときは、そのキャラクターがナレーションをしてくれるのが楽しいですね。なお、「シナリオ達成率」は、消えたようです(^^;) 無意味でしたからねぇ、あれは…。

サウンド

 BGMは、MIDIで演奏されます。非常に穏やかなBGMは、ゲーム全体に漂うのんびりとした雰囲気に合っていますが、特に演出として際立っているという印象はナシ。例によってボーカル曲も収録されていますが、声優さんに唱わせるのも例の如し(^^;) 音源は、GM・GS・XGから選択可能です。コンフィグ画面では「CD-DA」も選択可能ですが、CD-ROM本体にサウンドトラックが存在しません(^^;) 上記修正ファイルを適用すると、これは選択できなくなります。

 音声は、女性のみフルボイスで、音声を出すか出さないかを選択できるだけです。私は男性にもボイスありというオプションがほしい、と思うことがけっこうあるのですが、このゲームでは男性キャラに大した奴はいないので、なくてもいっこうに問題ナシ。アセンブラージュのほかのゲームと何ら遜色ないクオリティを発揮しています。最初から最後まで音声を迷うことなくオンにしました。

グラフィック

 キャラ原画は、逸架ぱずるさんの担当。女の子の顔のかき分けがきちんとできているのはいいのですが、メインヒロインである五月の髪型に、どうも違和感を覚えます。ほかの女の子がみな「自然体」を素直に出せているので、やや浮いている感は否定できません。特に、イベントシーンで怒っている表情など、かなり戸惑いました。でもまぁ、かわいいからいいか(爆)

 立ちCGの表情変化の他に、メッセージウィンドウ左部分にも現れる顔CGもそれなりに変化を出せているのがいいですね。『My Friends』ではこの部分はまったく目立たなかったのですが(変化はありましたが)、『アル中』では非常に高い効果を出しています。一見地味ですが、細かいところまできちんと手を入れているのがわかり、好感を持てます。

 背景グラフィックも非常にきれいですね。全体的にハイキートーンが印象的で、光の使い方がいいと感じました。

 Hシーンでも、なかなかのものを感じましたが、最初から「痛いけれど感じるモード突入」なのはお約束でしょうか(^^;)

お気に入り

 逢沢彩菜。サバサバした、竹を割ったような性格に加え、よく考えている割には行動が過激だったりと、非常に楽しいので。いきなり桜の木の下で…というのは驚きましたが。見つかったらどーすんだ、あんな時代に(^^;)

関連リンク先

 そとみち.さんのサイトの評価が、非常にツボをおさえていて良いと感じます。アセンブラージュというソフトハウスの作品傾向から、「徐々に相手のことを好きになっていくという描写が要求される本作品には不向き」という指摘はみごと。また、SHEOさんのサイトでは、設定と描写とに関するコメントがあります。

総評

 シナリオもそれなりに楽しめ、グラフィックがきれいで、音声は二重丸。「ひとまずのライン」はすべてクリアしており、やはり「安心してプレイできる」ことは確かでした。

 しかし、その「シナリオ」に目を向けると、「ほのぼの」感については、セールスポイントにはなっていません。これまでのアセンブラージュ作品のような「穏やかな楽しさ」をきちんと描けているか、というと、むしろ、弱いと感じます。心理描写の甘さはシナリオ欄で書いたとおりですが、それだけではなく、「日常」を実感できるような「毎日の生活」部分が少なかったのが弱かったように感じました。五月と霞以外は、あくまでも「教師と生徒」なので、当然といえば当然なのですが、街中での行動などが非常に少なかったのが、こう感じられた要因のように思えます。

 ベタベタの恋愛ものという色合いでないため、狙うべき焦点がぼけてしまっているというのが、最大の問題点だったのでは、と感じます。設定は悪くないのですが、もう少し「狙い目」を明確にすれば、かなりのものになったのではないか、と。

 アセンブラージュのゲームの中では、『Graffiti』や『はぷにんぐJOURNEY』など、今でも折を見て起動することの多いゲームがあるのですが、『アル中』からは、そこまでのインパクトは受けなかった、というのが、コンプリート直後の印象です。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
1999年9月25日
(1999年11月16日、加筆・修正)
(2000年5月11日、加筆・修正)
Mail to:Ken
[攻略ページへ] [レビューリストへ] [トップページへ]