儚想(はかなひおもひ) 〜あねもね〜 パールソフトR

1999年7月30日発売
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 ブランド買いさせるようなソフトハウスの傾向というのはいろいろあるのですが、小さくまとまっていて、しかし地に足の着いた味のあるゲームを出しているところ、というものもあります。私にとって、『Sweet Days』をリリースしたパールソフトRは、まさにそんなソフトハウスでした。

 こういうソフトハウスが、長編あるいは大作に挑んだ場合、失敗するケースが経験的に多いというイメージを抱いているだけに、何やら複雑な設定と大仰なファンタジーという情報から、ひとまず様子見、と思っていたところ、そもそもほとんど評判になどなっておりませなんだ(^^;)

 そうこうしているうちに、このパールソフトR、解散していたそうな。うぐぅ、という心持ちで、それなら最後の遺作となったゲームはどんなもんかいな、と買ってプレイしました。

シナリオ

 主人公・神邑達矢(固定)は、早くから両親を失い、親代わりの祖母も1年前に失っていた。彼は、親戚でもあり親友でもある勇樹、その姉の智子、そして達矢に対して明確な恋愛感情を示す妹の優子たちと接しながら、平凡な日常を送っていた。しかし、時おり不思議な記憶が頭をよぎり、また自分のことを知っていると思われる幻のような少女が現れ、彼は次第に追いつめられていく。内向的で、すべてを自分の内部で解決しようとする彼の周囲は、しだいに混乱の度を高めていく。

 

 前世の記憶、という、すでに充分に手垢のついた観のある設定を持ち出しています。しかし、一言でまとめれば、まったく語り切れていません。

 序盤で、「日常」シーンを描いていますが、そこで「何かいわくありげな雰囲気」を出しています。しかし、その「いわくありげ」なものが漠然としたまま、ひたすらだらだらと長く続くので、飽きてきます。気が付くと、日常の延長としてちょっとしたハプニングなども出してはいますが、メリハリのないことといったらありません。プレイヤーに対してよけいな時間をかけさせるだけの「時間稼ぎ」としか思えない設計です。さらに、中盤から終盤にかけて、各キャラクターが担っている役割がしだいに明かされていくわけですが、盛り上がらないこと盛り上がらないこと。

 エンディングも、割と意表をつく形で出してはいるのですが、そこに辿り着くまでが長すぎ、「やっと終わった」というのが第一でした。それなりにおもしろいとも見えるのですし、謎が残ってどうのこうのというツッコミを入れることもできますが、そんな気力が残りません。

 また、Hシーンの挿入に関しても、展開としての違和感以上に、どうして主人公が女性と関係を持つのか、その「流れ」がまったく出ていません。ストーリーの流れとしては必要かもしれないけど、その「流れ」を作れないままに押し込んでいる、という印象です。

 

 キャラクター設定としても、かなりの違和感があります。メインヒロインからして、「幼い」というだけであればまだしも、言葉を換えれば「自分勝手」であり、なおかつ「頭が悪い」というのは、私にはどうにもダメ。判断力や行動力で一歩も二歩も抜けたものを持っていないといけない、などとはいいませんが、オンリーヒロインとして設定されている以上、「そのキャラクターだからこそ、すべてを受け止められる」という描写は不可欠だったでしょう。ほかのキャラクターも同様で、サブキャラとしての味というものを出すことができません。要するに、「名前を覚えてもらえない登場人物」がずらっと並んでいるだけなのです。キャラの性格自体もさることながら、「どうしてそういう価値観を持っているのか」が長いシナリオの中でわからない、というのは、やはり大失敗でしょう。

 しかし、キャラ同士の関係となると、これがなかなか興味深く書けています。兄妹間での確執など、なかなか微妙な展開を、キャラの行動パターン変化によっていぶり出すということを実現しています。

 キャラクターは、個別の絶対描写では落第、相互の相対描写ではそこそこ良し、といえましょう。

ゲームデザイン

 途中で何か所か選択肢こそ出てくるものの、完全に一本道のアドベンチャーゲームです。私は1回のプレイで全CGをゲットしましたので、特に迷うところなどもなく進むと思います。

 メインヒロインは1人に固定されており、プレイヤーサイドで何らかの選択をすることはできません。したがって、その性質上、ストーリー展開にメリハリが必要でしょうし、またプレイを進めていくうちに「何が目標なのか」を薄々ではあっても察知させなければ、惰性でプレイを継続するだけになってしまいます。このゲームでは、こういった配慮が見事に欠落しており、シナリオのバランスが大きく崩れていて、どうにも様になっていません。一本道ゲームには相応の「読ませるシナリオ」や「楽しい演出」が不可欠なのに、これでは「付き合わされている」という気になってしまいます。

操作性など

 インストール先ディレクトリは任意に変更可能です。

 操作はすべてマウスで行い、キーボード入力は受け付けません。あまり数の多くない選択肢、そして一本道というゲームデザインからもわかるとおり、さほど複雑な入力が必要というわけでもないので、なぜキーボード使用不可という仕様なのかは不明。

 グラフィックは、基本的に640×480ドット全画面表示で、下部に半透明のメッセージウィンドウが表示されます(マウス右クリックで消去可能)。画面は、ウィンドウ表示とフルスクリーンとの切り替えが可能です。

 マウス右クリックを2回行うとメニューが表示されます。セーブ&ロードは任意の位置で20個所まで行え、セーブしたときのプレイ実日時と、ゲーム中の日付が記録されますが、一本道のゲームなので、そんなに多くのセーブを使うことはまずないでしょう。

 テキスト速度表示は、ノーウェイト・ウェイトありを切り替え可能。メッセージスキップは、メニューから選択し、再度右クリックすることで停止します。

 ゲームを一度クリアするとトップメニューに「オプション」というメニューが追加され、CGモードとBGMモードに入れます。CGモードはイベントCGがサムネイル表示され、見たCGを選択して実寸表示可能になります。BGMモードでは、曲名も表示されます。

サウンド

 BGMは、CD-DAで演奏されます。和風アレンジの曲はなかなかいい雰囲気を出しています。しかし、「草原」の導入部、『ONE』(Tactics)の「日々のいとまに」とそっくりに聞こえるのですが、気のせいでしょうか。

 音声はありません。

グラフィック

 Na-Gaさんがキャラクター原画を担当されています。前作『Sweet Days』よりも、特に髪の毛と目に特徴のあるキャラデザですが、なかなか魅力的で好みなので良し。こんなに前髪が伸びていると、ものを読み書きするとき鬱陶しいと思うのはよけいな心配というものなのでしょうか(^^;)

 ただ、背景のデッサンはかなり違和感を覚えるシロモノになっており、寝室にある障子の桟など、見事に歪んでいたりします。

お気に入り

 特にお気に入りキャラというほどのものはありませんでした。キャラクター描写はきちんとできているので、1人や2人、ツボにはまるキャラがいてもおかしくはなかったのですが。

関連リンク先

 兄貴さんのレビュー(閉鎖)が当を得ています。それなりに取り上げているレビューサイトはあるんですが、概して「原画はいいけどシナリオが…」といった論調が多いようですね。

総評

 シナリオの単調さ、これにつきましょう。シナリオが単調であっても、それを突き詰めた先に何らかのものがあれば。でも、そういう「引きつける」パワーが一切なかったのが致命的でしょう。

 不可思議な雰囲気だけで何とかなる、という勘違いがあったのでしょうが、「読ませる」ゲームであれば、それなりに「読もうという気になる」テキストを用意してほしかったものです。台本をテキストに書き写しただけのようなものに付き合わされては、たまったものではありません。

 すでに消えてしまったソフトハウスに対して注文もなにもありませんが、原画やサウンドはけっこう好きだったので、ほかの場所で活躍してほしいものです。

個人評価 ★★★☆☆ ☆☆☆☆☆
2000年3月27日
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