Campus 〜桜の舞う中で〜 エーテル/アセンブラージュ

1999年2月6日発売
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 アセンブラージュ系列の恋愛ゲームというと、『はぷにんぐJOURNEY』(Euphony Production)に代表される、見ている方が恥ずかしくなるようなベタベタストーリーのオンパレード、というイメージがありました。こんな奴らいるわけねぇ、とか、主人公も主人公なら女どもも見る目がない、とか、いろいろとツッコミを入れたくなるものの、それでもなぜだかプレイしてしまうという不思議な魅力があるのも確かです。

 新ブランド「エーテル」で出された本作品は、アセンブラージュの中でも、Euphony Productionとは異なった開発チームの手で作成された、という事前情報もあり、どんな違いがあるのか、と、期待を抱きながら購入。初回限定版には「キャンバス」ノートがおまけについてくる、というのには笑えましたが、学校や職場で使うのは抵抗がありますね(^^;)

 アセンブラージュの中でも、同時に購入した『META-DOLL AI』(ぷち)に意外と手こずったこともあり、インストールしたのは1999年秋、すなわち発売から半年を経過していました。そして、起動して思わず口から出た言葉は、

 「ひ、ひ、悲劇…」

そう、この年最高レベルの破壊力を誇る究極地雷『悲劇』(SAINT)と同じユーザーインタフェース。これを見ただけで、一気にやる気が失せました。しかも、発売日を見てみると、このいわくつきのシロモノとあまり変わらないことがわかり、なおさらプレイ意欲が削がれます。

 とはいえ、NIFTYの会議室を初め、そこここで、それなりの評判を目にするにつけ、「取りあえずやってみようか…」という感じで手をつけました。そうはいっても、難易度は思っていたより高めで、全員をクリアするのにはかなりのプレイ回数を要しました。

シナリオ

 主人公・高坂隆景(変更不可)は、数年前に両親を事故で失ったが、その遺産をもとに、今までは気ままな一人暮らしをしていた大学生。そこに、病弱な義妹・舞子が同じ大学に入学、同居することになる。悪友である省吾らとともに送るキャンパスライフの過程で、彼のまわりにはいろいろな女の子が出現する。

 

 各ヒロインごとのシナリオが独立して用意されている、マルチシナリオタイプのゲームなのですが、プレイしていて最初に気にかかったのが、シナリオ間のバラツキが多いことです。その「バラツキ」とは、シナリオの質的な濃淡差によるものではなく、完全に同一の物語世界におけるバリエーションとなっているもの、ほかのキャラクターから断絶しているものなどが同居(混在)しているのが問題、と思えます。

 具体的には、舞子と彩女とのシナリオを、同一の世界で語ることは絶対に不可能になっている反面、舞子と優夏などは、かなり密接な関係があるといってよいでしょう。こういう「性格の異なる複数シナリオのごった煮」感が、ゲームをプレイしていく過程で強く感じられます。その結果、各シナリオの受け止め方が、エンディングを1つずつ迎えるごとに二転三転します。これはこれで面白いとも言えますが、難易度自体が決して低くないこともあって、少なからず当惑させられたのも事実です。彩女狙いでプレイしているのに、優夏ちゃんの弁当イベントを見ても楽しくありませんし、奈穂ちゃんとラブラブになっていながら、高遠城の夢を見ても訳わかりません。各シナリオ間のリンクを取るのは難しかったのかもしれませんが、それならば各シナリオへの入り口となるフラグ立てをもっと明確にすればよかっただけのことでしょう。

 

 各シナリオごとに共通して見られる問題点としては、イベントの配置に工夫がなく、相互の関連が希薄であること。展開も、後半になってから唐突に進むというケースが非常に多く(麻由美など特に顕著)、個別のイベントに説得力がない、ということさえありました。このため、「恋愛」ものとして必要な「しだいしだいに盛り上がっていく」という展開が見えず、「とつぜんらぶらぶ」という状況に陥ります。「なんでやねん」という言葉がプレイヤーの口から出た瞬間、その「恋愛ゲーム」は、かなりの問題を内包していると断じてよいでしょう。残念ながら、『Campus』は、そういう作りになっていると言わざるを得ません。この点で合格といえるのは、ヒネリがなく直線的な奈穂シナリオぐらいじゃないでしょうか。

 あと、Hシーンが濃い…というか、シーンによっては主人公が突然外道と化すのも、ちょっとね(^^;)

 

 しかし、テキスト描写は、なかなかおもしろい工夫を凝らしていると思います。キャラクター間で交わされる会話は、その「場」をうまく出している上、ノリもよくなかなか楽しめるものでした。大学生の気楽な会話、として、さほど不自然と感じなかったのもマル。ただ、この会話では、特に省吾(声なし)とのやり取りなど、どちらのセリフなのか区別がつきにくくなることが多いなど、もうひとくふうほしいな、と思ったのは確かです。

 そして、このゲームシナリオで最大の特徴ともいえるのが、主人公の独白でしょう。会話としては絶対に表現し得ない文体を採用し、あたかも批評文のような修辞が用いられるケースが非常に多く出てきます。

喪失感と未来に対する絶望感、もう、普通ではないという意識は周囲の人間に対する見えない壁をつくり、自らを閉じこめ、寂寥感と孤独感を募らせ、やがては激しい自己否定へと進んでゆくのだ

 ゲームに採用するテキストとしては、あまりにも饒舌という印象が強いものですが、その分量は、きっちりとメッセージウィンドウの中に収まっています。かなり評価が分かれるとは思いますが、かなり内向的な主人公の心象を実に丹念に出していると感じます。心境が混乱しているさまを、抽象的な概念の多用によって「自分をなんとか説明づけようとする状態である」と表現しているわけで、シナリオライター氏の文章力はなかなかのものと見受けられますが、それだけでなく、「表現手法」として、敢えてこういった「くどい」文を用いた効果が、単純に明るい、脳天気なシナリオだけではないことを、よく物語っているといえましょう。もっとも、恋愛系ゲームを求めるプレイヤーから見ると、こういう密度の高いテキストが歓迎されるかどうかは疑問でありますし(さらっと読むにはあまりにも重いので)、そして「抽象名詞=説明用語」という程度にしか受容しないプレイヤーが少なくない現状では受けいられにくいのも確かではありましょうが、有効な手法の1つとして評価可能と考えます。どちらかというと、ビジュアルノベル的なテキスト、といえるかもしれません。

 ただ、苦言を呈したいのは、テキストの量が「むだに」多い上、その結論づけが性急と思えること。類似した内容を、言葉を変えつつ何度も繰り返して表現し、さらに、勝手に納得して終始するケースが非常に多いのですが、こちらの見苦しさの方がよほど気になりました。テキストの「使い方」に関しては非常にアラが目立ちます。

 

 キャラクター設定には、一見、定番どころ(義妹、男勝りの幼なじみ、世間知らずのお嬢様、元気な後輩、巫女さん)を無難におさえているように見えながら、各キャラクターごとに背負っている記号(背景設定と言ってもよい)にヒネリが利いているのが、実に憎いところでしょう。見た目そのまま、というキャラクターもいますが、度肝を抜く設定になっているキャラクターがかなり多いのが特徴といえます。それも、『とらいあんぐるハート』のように、非現実の世界を日常ベースで語るという方法を取らず、設定を真面目にいかしているのは、高い評価に値します。従来のアセンブラージュのゲームで一般的であった、第一印象がそのまま最後まで続く、というパターンからは、大きく進歩しています。

 

 細かい点として、タイトルそのものにも問題があるように感じます。「キャンパス」という以上、学校を舞台とした恋愛劇が連想できますが、彩女・舞子両シナリオは、これに適合しません。一方、サブタイトルの「桜の舞う中で」はもっとひどく、これにあてはまるのは彩女だけ、あとは桜のサの字も出てこないのです。「通常の恋愛シナリオ」+「ファンタジー」という形で納めようとしたのでしょうが、サブタイトルはメインタイトルを「補完」する役割を担うものであり、相異なるものをつなぎ合わせるのはよろしくない、と思えますが。

ゲームデザイン

 マルチシナリオタイプのアドベンチャーゲームです。シナリオ分岐は選択肢によって、また発生させるイベントや好感度をもとにトゥルーエンドとなるかどうかが決まるようです。シナリオによっては、1回バッドエンドを見ないとトゥルーエンドが見られない、という仕様になっているものもあります。しかしバッドエンドも、それぞれエンディングがきちんと作られているものが多いので、これは特に問題ないと思います。ただ、エンディングチェックが、プレイヤーサイドで確認できるようにしてほしかったところ。なお、各キャラクターとのエンディングには、「TRUE END」「COMMON END」の2種類があり、TRUEは各1通りずつ、COMMONはキャラごとに何とおりかずつあります。

 シナリオ欄でも記したとおり、シナリオ分岐以前に発生する各ヒロインごとのイベントがバラバラであるため、そこに至るシナリオの統一感がまるで取れていないのが残念。また、なぜそのシナリオに入るのか、という、「選択の結果」の必然性がどうにもハッキリしないことも問題でしょう。各シナリオのボリューム(質はさておき…)はそこそこ立派なので、この「不統一感」はなおのこと目立ってしまいます。特に、複数キャラのイベントが一定程度同時に進んでいった場合など、「なんでここからこの娘に傾くのか」という説得力皆無の展開に直結するケースがあります。

 難易度以前の問題として、他キャラのシナリオが中途半端に入ってくるのを防ぐためにも、あらかじめ攻略データを見ながらプレイした方がよいかもしれません。

操作性など

 インストールの際に必要なHD容量は16MB程度ですが、ゲームをプレイする際にはCD-ROMが必要です。

 セーブは任意の位置で可能。また、セーブファイルは、作成の都度、名前を付けて単独のファイルとして保存可能なので、HDやMOなどに無尽蔵に作成できます。さらに、このファイル名は、自由につけることができます。この点は非常に便利です。ロードも任意の位置で行えます。

 速度調整機能がなく、強制的にノーウェイト表示となります。メッセージウィンドウの中にテキストが表示されるので、さほど気に留める必要がない、といえばそれまでですが。「自動的にテキストが流れる」オートスキップというのがありますが、あまり速くないので、私は全然使いませんでした。「F1」キーでスキップ、「F2」キーでストップします。

 マウス・キーボードの双方が使用可能となっています。カスタマイズはあまりできませんが、基本的な機能は揃っていると見ていいでしょう。ただ、インストールの際にはフルインストールができないため、音声やグラフィックのデータをいちいちCD-ROMから読み込むので、なんとも間が空きます。インストールの際、HDの空き容量に応じてオプション設定が可能ではありますが(インストール後、CD-ROM内の「OpSetup.exe」を実行する)、ちょっと不親切。また、画面サイズは640×480ですが、フルスクリーンにはなりません。

 CGモード・BGMモードがあります。CGモードでは、見たCGが、キャラクターごとにサムネイル表示されます。BGMモードでは、曲名をクリックすると再生されます。いずれも、ゲームとは別のプログラムとなっており、ゲームのプレイ中にも入ることができます。

サウンド

 BGMは、MIDIで演奏されますが、アセンブラージュのゲームにしては珍しく、あまり印象に残っていません。しかし、トゥルーエンドの際に流れるボーカル曲「BELIEVES YOU」は、なかなかいいですね。彩女を担当した声優さんが唄っておいでです。

 音声は、やはりアセンブラージュ、安心して聴くことができますが、声を発するのは攻略対象となっている女性キャラクターのみというのが淋しいところ。省吾にも声をつけてほしかったところです。これまでのアセンブラージュのゲームには、男性も声ありだったのですが、不評だったのかなぁ?

グラフィック

 キャラ原画担当は、きみづか葵さん。グラフィックは非常に美しく、特に背景は鳥肌が立つほどの美麗さといっていいでしょう。

 キャラは、やや繊細に過ぎる感じで、個人的嗜好には合いませんでしたが、女の子を「かわいく」描くことに成功しているのは確かでしょう。表情のパターンがやや少ないのが残念です。

 それよりも、こちらは明確に「問題点」と言えると思うのですが、背景原画の数が少ないため、背景とシチュエーションのミスマッチが多く見られます。室内、道路、校内、駅前、公園、神社などの基本パターンは揃っているのですが、舞台が多少違っても、その基本パターンの内部で使い回しています。この結果、学食や部室での会話も、校舎前の広場がバックになっているなど、「おいおいっ」というシーンがやたらと目立ちます。「量より質」とはいっても、これは行き過ぎ。

 また、グラフィックでの演出やメリハリがほとんどないのも、今どきのゲームとしては、やや寂しいものがあります。画面が切り替わるときに、砂状の変化がありますが、あまり美しくないのも残念。

 そういえば、『はぷにんぐJOURNEY』のヒロイン・夕季のポスターが主人公の部屋にあるほか、なぜかラブホテルにも夕季の写真が(^^;)

お気に入り

 初めは彩女、次いで奈穂、更には優夏と、どんどん変わりました。結局、1人に絞るには時間がかかりそうです。「うあきもの」の誹りを受けること必定ですが、キャラクターに対するイメージが、彩女を除いて、毎回毎回、ぐらりぐらりと揺れ動くので、1人に決められるものではないのです。プレイされた方なら、ある程度おわかりでしょうが。

 何度もプレイを重ねた結果としては、彩女と奈穂がほぼ横一線、といったところでしょうか。前者は、からかうと面白いキャラ。後者は、見てるだけで楽しいキャラ。

関連リンク先

 まずは、九牙さんのサイト。私のレビューと似ているようで微妙に切り口が違います。また、兄貴さんのサイト(閉鎖)が、キャラクターの見方で一見の価値あり。

 このほか、蓼原シュンさんのサイトも。

総評

 特にシナリオ面で、野心的な試みを大胆に取り入れているという印象です。素直な恋愛ゲームとして取り組んだ場合、その期待に応えてくれるシナリオはごく一部です。しかし、シナリオの狙いの深さは相当なもので、これから大いに期待できそうです。

 しかし、あちらこちらでバランスのほつれや崩れが目立ち、この作品それ自体をとった場合、佳作と評するのは難しそうです。特に、シナリオでは、そのバランスのまずさがどうにも目立つのは否定できません。トータルで見て、プラスとマイナスとを比較、という判断はしたくないので、プラス面を伸ばす意欲を保ちつつ、マイナス面を修正していく、そういう姿勢で次回作が作られることを望みます。キャラクターの作り方は、アセンブラージュ本家(?)を凌ぐだけのものを感じますから、モノによっては相当な作品がリリースされる可能性を信じたいところです。

 あと、個人的要望として、『悲劇』と同じユーザーインタフェースはやめてほしいですね(^^;)

※エーテルは、第二弾『好きだよっ』リリース後、解散が決定したそうです。今後の発展を期待できそうな潜在的魅力を備えていると感じていただけに残念ですが。(2000年6月19日)

個人評価 ★★★★★ ★★☆☆☆
1999年11月21日
(2000年2月28日、加筆・修正)
(2000年6月19日、加筆・修正)
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