エンドレスセレナーデ 

1999年2月26日発売
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 オリジナルの同人ソフトが高い評価を得、それが一般の流通に載って市場に提供されたソフトハウスの処女作。そういう点から注目していた作品でした。パッケージには、メインヒロインの皐が横になっていますが……コンビニの制服、着ていないで身体の上にのせてるだけなんですね(^^;)。これをひっぺがせば、その下には、と、妄想をいろいろたくましくさせるパッケージは購買意欲をそそるのか……と、気づいたのはつい昨日のこと、これではあんまり効果ないかな。

シナリオ

 主人公・御影悠二(名前の変更は不可)の兄、亮一と、その婚約者・観音皐とは、共同コンビニを共同経営することを夢見ていた。皐に横恋慕する主人公は、屈折した感情を抱えながらも、2人の計画に協力を約束する。しかし、突然訪れた、兄の不慮の死。皐の経営するコンビニで、バイトに勤しむこととなった主人公だが、突然の人員不足のために、新入りのバイトの指導役を仰せつかった。彼らに指導しながら、夏休みの間、主人公はどのようにコンビニでのバイト生活を送っていくのか、そして、皐との関係は、どのようになっていくのか…。

 

 皐と、いかにしてラブラブな展開を描いていくか、それだけのお話、というわけではなく、その後のお話があります。詳細は省きますが、ヒロインと結ばれるのが「第一話」、さらに、第一話をベースとした別の次元でのお話としての「第二話」とに分かれています。

 「第一話」は、ラブコメといっていいでしょう。ヒロイン候補は何人か(人数を具体的に挙げるのは控えます)います。そして、その各ヒロインごとに、それぞれの「第二話」があります。「第二話」は、サスペンスとファンタジーとを足して2で割ったような感じ…うーん、少し違うな、ちょっと非現実的なドラマとでも言ったらいいでしょうか、そういったスタイルのお話です。

 

 この両者、設定のベースはまるっきり同じなんですけれど、話のスタイルはまるっきり異なっています。ちょうど、同じ山林の中で、東側に木が、西側に竹が繁っているような感じで、その相の相違には大いに驚かされます。ただ、まったく違うタイプのシナリオを、単一のゲームの中に入れた結果、全体としてのイメージを結ぶ像が、どうにも曖昧なものになってしまったという印象があります。

 

 「第一部」「第二部」の各シナリオ全体を貫徹する、ベースとなる世界は、要するに「ゲームによる人格制御」という実験によって、主人公たちが踊らされている……まぁそういったことだと思って良いでしょう。サブリミナルなる言葉がメディアをにぎわせることは今に始まったことではありませんし、実際、長時間にわたってディスプレイに釘付けになるゲームという素材を悪用すれば、そういったことが技術的に可能なのかもしれない、と、素人には容易に納得できそうな題材ですし、そこに、主人公たちが「巻き込まれた」という設定自体は、かなりおもしろいものであると感じます。

 しかしながら、「第一部」でのラブコメの結果培われた人間関係を、「第二部」に継承したうえで、上記の設定をうまくストーリーとして結実させたか、となると、あまり成功しているとはいえないと思います。

 その極端な例が、ほかならぬメインヒロインである、皐。いわば「仇討ち」とでも言える行動だったといえますが、その行動の動機づけに関する記述が、かなり希薄であったという印象は拭えません。主人公の行動がエンディングへと至る要因となる。これが、アドベンチャーゲームの基本ですが、その「行動」と「結果」との因果関係が、どうにもはっきりしないものがあります。機密が保存されていると思われる会社へ、単身乗り込むなど、どう考えても無理があります。状況が切迫しているとはいえ、相手に関する情報を大して集めもしないうちに、丸腰同然で飛び込むというのは、無茶苦茶でしょう。確かに、「仇討ち」の対象があまりにも異質である以上、ほかに採る手段はなかった、と見ることもできます。しかし、主人公たちは、身柄を拘束されたわけでもなければ、弱みを握られたわけでも、人質を取られたわけでもありません。あくまでも「攻め」の側なのです。にもかかわらず、あまりにも合理性を欠いた行動に出られてしまっては、サスペンスものとしては、最初から冷水を浴びせられたような印象を受けてしまい、ちっとものめり込むことができませんでした。

 では、「第二部」それ自体はどうだったのか、というと、これを単独で作り直せば、それなりのものになったと思います。個々のイベントでの盛り上げ方など、特に美姫シナリオの第二部などは、かなり成功していたと言っていいでしょうから。問題は、やはり、「世界」から、シナリオを派生させる、あるいは、シナリオの整合性を持たせるようにして自立させる、といったやり方の失敗にある、そういっていいでしょう。

 

 「試み」としては、悪くないと思います。私自身が、ビジュアルノベルの最高傑作と評価して止まない『』など、世界を統一しながら、各シナリオごとで微妙にストーリーをずらし、その共通点と相違点とを味わいながらプレイすることが可能なつくりになっているという例もありますから、元となる世界から、異なるシナリオを派生させて並列させる、という手法は、上手に活用すれば非常にすばらしいものができあがると確信します。しかしながら、まだシナリオの中身が、そこまで至っていなかった、と見るべきでしょう。「試み」が大胆であっただけに、空を切ったバットが豪快に音だけをたてている、そんな風に見えるのが、なんとも残念です。

 

 こういったタイプのゲームの場合、登場人物がどの程度魅力的に描かれているか、また、シナリオという舞台にマッチしているか、という点が重要になってきますが、全体を終えて振り返ってみた場合、個々のキャラクターがあまり印象に残っていなかったりするんですね(^^;) なんでやろ、と思って、改めて考えてみると、萌える要素に乏しい、イベントが薄味で印象に残りにくい、第一部と第二部とのイメージギャップによる困惑。こういったところが原因と考えられます。

 最後のヤツは、シナリオの全体的な構成が原因である以上いかんともしがたいと言ってもいいでしょう。しかし、恋愛ゲーム(ラブコメ)で「萌えない」のは残念。「萌え」られるような、印象的な仕草や行動、発言といったものが、あまり前面に出てこないのです。イベント云々も同様。

 結局、「ゲーム世界全体で見た場合、ラブコメではないのであって、木に拠って魚を求むるなどお門違いも甚だしい」という結論になるのでしょうか。しかし、それなら、あんなに多くのキャラを使う必要はなかったと思うけどなぁ。せいぜい、皐と七瀬ぐらいで十分だったのでは、という気が…。

ゲームデザイン

 「第一話」では、移動先を選択することで他の人物と会い、イベントを消化し、適当な選択肢を選ぶ、これの繰り返しです。『To Heart』的なシステムですが、誰がどこにいるかは基本的に固定なので、さほど迷う必要はないでしょう。なお、途中で出てくる選択肢は、あまり難しいものはありませんが、失敗した場合は直後の反応である程度成否の見当がつきますので、セーブ&ロードもさほど苦にはならないでしょう。なお、即行ゲームオーバーという選択肢もありますから、注意が必要です。

 「第二話」は、各ヒロインごとに分かれているとはいえ、基本的には同一の題材を、別々のヒロインごとに適用した、というスタイルを採っているので、シナリオそれぞれの中で、どうにもようわからん展開やら何やらが見えてしかたありませんでした。「木に竹を接ぐ」という戦術自体はけっこうおもしろいと思いますし、個々の「木」と「竹」との接合自体はある程度成功していると思うのですが、「竹」それぞれ、あるいは、「竹」同士を見比べた場合、まだら模様が気になります。

不具合・修正プログラム

 DISKDREAMのWebサイトに修正プログラムがアップされています。私は修正プログラムを当てた状態でプレイし、何ら問題ありませんでした。

※2001年4月現在、DISKDREAMのWebサイトの存在は確認しておりません。

操作性など

 基本的に、マウス・キーボードの双方で可能、また、既読文のスキップ機能、既読文高速表示機能、画面サイズ切り替え、画面表示速度設定など、基本的な機能はひととおり押さえられており、実にスムーズに操作できます。文章の読み直し機能はありませんが、回想したいと思わせるような入り組んだ表現が出てくるわけではないですから、別になくても問題ないと思います。

 ちょっと引っかかったのは、エンターキーを連打した場合、選択肢が出た個所でも情け容赦なく進んでしまうところ。ルーティンな文章はさっさと流したい、という場合など、何度か、意図しない選択肢を選んでしまいました。リーフのVNシリーズの場合、選択肢が出現するとカーソル位置が微妙にずれるという、味な方法を採ってくれたのですが。ここを改善してくれれば問題ないでしょう。

 

 一番の問題点は、ゲームのセーブデータ管理方法。リーフの『痕』と同じ方式です。すなわち、プレイする際には、「しおり」を選択する必要があるのですが、異なる「しおり」を選択すると、セーブデータは一切共有されません。すなわち、セーブした個所以外にも、テキストの既読・未読の区別、見たCGといったプレイデータが、完全に失われてしまうのです。したがって、一度コンプするまでは、単一の「しおり」でプレイする必要がありますので、セーブできるのは、事実上一個所だけといってよろしいでしょう。

 まぁ、スキップするスピードは非常に速いですし、一度エンディングを迎えたのちに最初からリプレイし直すと、新たな選択肢が生じたりということもありますから、初めから何度もやり直すのはさほど苦ではありませんが、この仕様はちょっとわかりにくいですね。ま、『暗闇2』(Melody)なんかの、妙なオートセーブ方式よりははるかにマシですが(^^;)

 

 グラフィックモードは、各キャラクターごとに、1枚ずつの表示です。それぞれに達成率が表示されるうえ、枚数がそう特に多いわけではないので、縮小表示はなくてもさして不便には感じませんでした。ただ、グラフィックモードにいったん入ると、そのキャラクターのCGを全部見ないと抜けられないのは、ちょっと嫌です。また、Hシーンの回想モード(「愛の思い出」というネーミングがついています)もあります。

サウンド

 BGMは、CD-DAで演奏されます。まぁ悪くはないんですが……なんというか、まったく好みではありませんでした。最初のうちは、それでもBGMを流しながらプレイしていましたが、どうにも神経に触る感じの曲だったので、それ以降はBGMをオフにしてプレイしました。BGMのない『痕』なんておもしろみ半減ですが、このゲームの場合、そこまでウェイトが高いわけではないとは言えるかと思います。でも、所詮は「好き嫌い」というレベルでの判断である、ということを、念のために付け加えておきます。

 テキストと若干ズレがあるのは、マニュアルにも書いてあるとおりですが、まぁ演技力ではそこそこの水準に達していると思います。この「ズレ」については、文語での表現では不可能とも言えることを「音声」にまかせようとした結果取った手法である、と解釈可能ではありますが、逆にいえば、「音声」の伴う「会話」という部分に、「ビジュアルノベルという形式を墨守」しつつ「文語では不可能な(直接的な)リアリティを求めさせる」という、絶対に相容れないことを無理にやろうとした結果に思えます。

グラフィック

 人物原画はそれなりにしっかりしていますが、ちょっと表情の表現に物足りなさを感じます。確かに、皐など、表情のバリエーションそれ自体は多いのですけれど、心境を表現する手段として機能しているか、そして、何よりも表情に「生き生きとした感じ」が出ているか、となると、少なからず疑問はあります。まぁ、さほど気にするほどのことではないですが。

 

 それよりも、色の使い方、塗り方が、どうにも美しくないことが、何よりも気にかかりました。

 まず、あまりにも、画面全体が赤っぽ過ぎること。マゼンタが過度に強いのは、「夏」を意識した結果なのかもしれませんが、どうにも不自然です。さらに、陰となる部分が赤黒くてやや潰れた感じになってしまっています。確かに、夕陽をバックに逆光で絵を描けばそういった感じになるのだ、と強弁されればその通りですけれど、シチュエーションから考えるとどうにも妙です。

 さらに、肌の色、妙に陰影を意識して塗るのも、ちょっと考えものです。『許嫁』(ZERO)ほどひどくはありませんが、やはり、肌から質感というものが伝わりにくい感じがします。塗るときに、コントラストをそんなに意識する必要はないと思うのですけれど。

 

 話が進んでくると、次第にキャラがズームアップしてきます。しかし、演出として「この当たりでズームアップ」というものが計算されているわけでは必ずしもなさそうです。もうちょっとズームアップをうまくいかせば、より「楽しい」ものになったと思います。なお、実際には、好感度ではなくフラグ立てによって決まってくるようですし、かなり話が進まないとアップしてきませんから、あまり心配する必要はないでしょう。

 

 あと、Hシーンの描写は、なかなか「濃い」です。グチュグチュという淫猥な効果音も後押しして、エロエロな空間を見事に作りだしています。

 テキストは、一画面に最大18行表示されます。しかし、話す人物が切り替わるたびに一瞬止まるので、どうにも落ち着きに欠けます。完全なアドベンチャーゲームとなっている第二部はともかく、移動を基本としたラブコメである第一部については、メッセージウィンドウ方式の方がよかったのではないか、と思います。

お気に入り

 特になし。

関連リンク先

 SHEOさんのサイトの論評が、ゲーム全般にわたって丁寧でいいですね。また、私とはまったく違った視点に切り込んでいる兄貴さんのサイト(閉鎖)や、ゲームに対する独自イメージの抱き方を示している成瀬せりあさんのサイト(閉鎖)も必見。

総評

 「第二部」の存在が、「結ばれた2人が愛を深めていくお話」というのであれば、全編がすんなりまとまったでしょう。要するに、『とらいあんぐるハート』の世界です。また、どのシナリオも、基本的にはベースとなる世界に完全に重なっており、各ヒロインごとの違いは、ヒロインとの会話内容や個々のイベントの相違に帰着できる、という場合であっても、「全体」と「個別」との関係が大きく破綻する危険度は低くなりますから、やはりうまくまとまった可能性が高いと思います。『ONE』に近いタイプですね。

 しかし、「全体」と「個別」とをあえて切り離し、「個別」相互をかなりの程度別個のものとして扱い、すべてを読んで初めて「世界」をイメージ可能とさせる、そういった「目論み」は、残念ながら成功とはいえないと思います。

 シナリオ描写のやり方を、非常に難しい形で行っているというチャレンジャースピリットには敬意を表しますが、形式的な奇を衒っているのではないか、という懸念も多少抱いています。もしそうであるなら、消化しきれないシナリオの山がうずたかく積み上げられるような作品にもなりかねません。

 もう少し、ボリューム的にコンパクトなシナリオにした方がいいような気がします。個別シナリオの完成度は決して低くないのに、全体のバランスが崩れて興ざめ、というのが、コンプリート直後の(そして、現在でもほとんど変わっていない)印象です。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
1999年8月26日(NIFTY SERVE FCGAMEXにアップしたものを編集)
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