Essence Lost R.A.N Software

1999年11月10日発売
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 私は、「卒業」という言葉に対し、特段の感傷を持つことはありません。これは、学生という身分をやたらと長期間にわたって維持しているせいもありましょうが(同一の大学に9年もいればねぇ…)、そもそも「卒業による別れ」というものが切実さを伴わないことが第一の原因でしょう。しかし、「高校の卒業」となると話は別です。10代の時の友人と、大人になってからの知人とでは、重みがまるで違います。当然のように、人間関係の濃密さが嫌にならなかった純な時代を懐古したりもします。もっとも、男子校出身の私にとっては、華のある卒業式など別世界だったのではありますが(^^;)

 パッケージを開けると、いきなりフロッピーディスクが鎮座しておりました。いや〜んな気持ちになりつつ、無視してR.A.N.SoftwareのWebサイトに行き、即行で修正ファイルをダウンロード。何かバグが多いよなぁ…。

シナリオ

 卒業を控えた3月。主人公・哲郎(固定)の身体を、時折悪夢が襲う。今まで、仲間に囲まれ、気楽に生きてきた毎日も、そろそろ終わりを告げる。卒業までの1週間で、事態は急展開を迎える。日常は、どんな色を見せるのか。そして、どんな明日が、その先に開けているのか。

 

 基本的に、学校を舞台としたラブコメといっていいでしょう。卒業という「変化」を契機に、主人公の周囲が変わると、女の子と結ばれてハッピーエンドとなるわけです。

 ところが、途中の選択いかんによっては、「悪夢」と現実とが混合し、非常にダークな展開へとつながっていきます。

 この「明るい展開」と「ダークな展開」との双方を用意したのはいいですし、双方が対照的ではあるが連関がない、というのも、べつに目くじらをたてる必要はないでしょう。

 

 しかし、このゲームにおける基本設定に、主人公が「しばしば悪夢を見る」というものがあり、そこからゲームがスタートしていくのですが、「明るい展開」に行く場合には、そもそもこの「悪夢」が何だったのか、さっぱり説明されていない上、何ら意味を持たずに宙に浮いているのが問題です。ゲームの序盤から中盤に至るまで、基本的には「明るい展開」(以下、「表ルート」と呼びます)と「ダークな展開」(以下、「裏ルート」)とは共通のシナリオで進むのですが、そこで繰り返される「日常」、そしてはさまる「悪夢」とが併存します。そこには、同社の作品『Silver Moon』と同様の形態を感じることが可能ですが、「悪夢」の描写内容が「日常」に全く反映されておらず、張った伏線が消化されていないどころか、テレビ番組の間に挟まるCMのごとく、「本体とは何の関係もない間奏」とでもいった存在になっています。表ルートを進むとき、「アレはいったいナニ?」と思わせながら、それに対する答えはおろか、関連のある話がまったく出てきません。ゲームのスタイルから、表ルートを複数回プレイする必要があるのですが、何度プレイしても「悪夢」に関する話がないわけです。表ルートと裏ルートとで同じ設定を無理に使おうとして、大失敗を犯した、そんな印象があります。

 

 表ルートにおける「日常」は、本当に短い期間ながら、基本的に学園ラブコメとして描かれています。行動パターンはさほど多くはないものの、かなり難易度が高い(詳しくは「ゲームデザイン」欄にて)ため、ストーリーを追うのがなかなかに大変です。そのストーリーも、各キャラクターごとにそれぞれのイベントが用意されていながら、話の展開に寄与しているものがほとんどなく、「卒業」という大イベントを前に、なし崩し的に突き進んだラブコメ、そういう印象が否定できません。ラブコメである以上、2人がくっつく前の段階でナニがあったか、を描き、その過程がどの程度合理的なものか、あるいは劇的なものか、そういう描写が必要であるはずですが、みごとに描けていません。友香と百合香のシナリオがまだマトモですが、前者の場合、友香シナリオに入らなかった場合「なぜ彼女が主人公と結ばれなかったのか」という説得力がなさ過ぎ(要するに、スタート時点でラブラブモードになっていてもおかしくない)、後者では、クライマックスへと至るイベント間のバラツキがあまりにも大きい(要するに、いらないイベントと重要なイベントとのウェイト格差が極端)という難点があり、いずれもバランスのまずさを感じずにはいられません。キャラクター依存型のシナリオゆえ、薄味になるのは致し方ないのかもしれませんが、すでに『To Heart』(Leaf)という先達がある以上、もっと工夫を見せてほしかったものです。少なくとも、表ルートを見るかぎりでは、『To Heart』との(プラス面に働く)差異化はほとんどできていないと言ってもよさそうです。せいぜい、キャラクターのパターンを微妙に変えている程度でしょうが、それとて、パターン的なキャラ配置の枠を出ていません。典型例のキャラクターが舞台配置を黙々とこなしている、という感じがあります。

 

 一方の裏ルートでは、ひたすらダークなCG、そしてシーンが出ます。しかし、それが「悪夢」の結末であるというのはいいとして、なんで「悪夢」がそういう形で現れたのか、何の説明もありません。主人公の中に潜む黒い衝動が表面化したと言えばそれまでですが、なぜ「卒業」がトリガーになったのか。シナリオ面で見せる必要はない、というのも一理ありますが、もう少し説得力のある展開にすれば、ダークさにも迫力が加わったはずです。ダークなCGというだけで説明づけるのは無理でしょう。

 

 キャラクター配置については、典型パターンを並べたという感じで、さほどの目新しさはありません。ただ、ここまで無気力な主人公というのもすごいですね。『To Heart』の主人公の口癖「しょーがねぇなあ」を、すべて「めんどくさい」に変換すれば、ほとんどそのまんまかも。

ゲームデザイン

 ゲームは、実質4日間という期間に、主人公の行動選択で結果が決まるタイプのアドベンチャーゲームです。行動選択は基本的に三択(場合によっては二択)となっており、行き先を選択してキャラクターと会い、会話選択が発生する場合もある、というスタイルとなっています。

 ゲーム期間が短いため、『Silver Moon』のように比較的簡単かと思いきや、思いのほかに難しく、キャラクターの登場パターンを把握するまでがまず一苦労です。さらに、表ルートと裏ルートとへの分岐フラグの見極めが非常に難しくなっています。あけすけに言えば、選択とストーリー展開との相関が崩れきっています。

 さらに、表ルートを1回クリアすると、2回目の表ルートプレイ時にはCGが新しく追加されます…が、イベントやエンディングはまったく同じなので、全然嬉しくありません。ゲームのリプレイを促すための工夫としては、単にプレイヤーへ手間をかけさせているに過ぎないものと感じます。むしろ、2回目になると、1回目とは異なる展開を見せるとか、そういった工夫こそが「繰り返して楽しい」と感じさせると思うのですけれど。

不具合・修正プログラム

 いろいろと不具合があるらしいので、R.A.N.SoftwareのWebサイトから最新の修正ファイルをダウンロードし、CD-ROMからゲームをインストールした直後に実行しましょう。パッケージにはすでに修正ファイルを入れたフロッピーが入っていますが、おそらくWebサイトで公開されているファイルの方が新しいでしょうし、新旧ファイル間でのセーブデータに互換性はありませんので。

 修正ファイルを使った後でも、「見た記憶のないCGをすでに見たことになっている」とか「既読・未読の判別ができておらずスキップ中よくとまる」といった不具合があります。

操作性など

 アクティブのプログラムならでは、というべきでしょうか、非常に快適にプレイできます。ただ、いろいろと不具合が多いのも事実なのが残念ですが。

 CD-ROMを挿入するとセットアッププログラムが自動起動し、インストールの際には、最小/標準/最大の3とおりが選べます。最大インストールをすれば、CD-ROMなしでゲームを起動することが可能となります。

 操作には、マウス、キーボード、ジョイパッドが使用可能です。マウスとキーボードとは、いずれも自由に使い分けることができ、画面上のクリックポイントやキーボードのショートカットキーが多数用意されています。

 画面は、640×480とフルスクリーンから切り替え可能です。基本的に全画面表示で、下部にメッセージウィンドウが半透明表示されます。画面表示は「標準速/高速/最高速」から選択できます。

 メッセージ速度表示の調整はなく、すべてノーウェイト表示。ただし、メッセージの自動再生機能があります(「F8」キー)。メッセージウィンドウの上側にあるボタンをクリックすることで、システムメニュー呼び出し(右クリックでも可能)・メッセージスキップ・メッセージウィンドウ消去・メッセージ読み返しが可能です。また、いつでもヘルプを見ることができます。メッセージスキップでは既読・未読を判別でき、既読文のみスキップ・強制スキップの別など、非常に細かいカスタマイズが可能となっており、リプレイがまったく苦にならない配慮がなされています…が、既読・未読の判別はなかなかうまくいっていないようです。

 セーブ&ロードは、任意の位置で10個所まで可能ですが、分岐する場所を見つけるのが大変なので、10個所ではとてもたりません(他のアクティブorラン・ソフトウェアのゲームでは考えられないことですが…)。また、プレイ中、オートセーブが行われるため、ゲーム中で見たテキストやグラフィックは自動的に記憶されます。セーブを「F2」キー、ロードを「F3」キー一発で可能というのも嬉しいところ。また、オープニング画面に戻ることもできます。

 冒頭の「おまけモード」では、CGモードとBGMモードに入れます。また、「スタッフのコメント」を見ることができるほか、オープニングロゴを変更することが可能です。

 CGモードは、ヒロインごとにサムネイル表示されます。回想モードはありません。BGMモードでは、各曲(曲名あり)ごとに再生できます。

 また、テキストおよびCGの情報については、トップメニューで初期化が可能となっています。1回目でないと見られないシーンといったものがあるわけでもないので、必要性は別にないと思いますけれど。

サウンド

 BGMは、『Silver Moon』同様、アーティスティックコンセプツの担当。ゲーム全体に漂う気だるい雰囲気にマッチした曲が多いような印象を受けます。個人的には、「Fuzzy Terms」(優のテーマ)、次いで「intelligent breakthrough」(友香のテーマ)が割と好みではありますが、メロディがずいぶんと単調なので、曲単体としての印象はずいぶん薄いものに感じられます。それにしても、MIDIより、PCM(DirectMusic)の方が音質がいいように聞こえるのですが、気のせいでしょうか?

 音声は、なかなかうまくハマっていると思いましたが、特筆すべきは主人公の声でしょう。いかにも「かったりぃ」という雰囲気が声の間から漂ってきます(^^;)

グラフィック

 『GONE』(Active)のキャラクター原画を担当された、しぃけんしゃるさんのキャラ原画。女の子の立ちCGはそれなりにかわいいですし、またデフォルメCGもなかなかに楽しいのは相変わらずですね。ただ、ほのかやしとみなど、すぐに顔を赤くするのは、感情表現過多でしょう。表情パターンの多さ自体はいいとして、使うべき「場所」をきちんとわきまえてほしいものです。あと、詩子の「緑の髪に丸い鼻眼鏡」はちょっと(^^;) 某有名ゲームの某キャラじゃないんだから…。

 彩色となると、あまりきれいという印象はなく、特に一枚絵のイベントCGなど、先述の『GONE』と同じ人が原画を担当したとは思えないような水準に感じられます。『Silver Moon』では、光線を巧みに使い分けて非常に美しいシーンを演出していたのに、これはどうしたことか、などと思ったりもしました。

 個人的に印象に残っているグラフィックといえば、美羽「先輩…ボクの裸、見たくない?」 理性が急速に溶けて流れていきます(^^;)

お気に入り

 誰か1人、となれば、楠原友香でしょう。典型的なキャラとはいえ、ベタベタしてくるでもなく、不自然に天然が入っているわけでもなく、ゲーム途中でも嫉妬を隠さないなど、個人的に好みのパターンに入ったもので。表情変化とシーンとのリンクが一番スムーズだったように感じた、という面もありますね。

関連リンク先

 私のサイトからのリンク先では、特にこのゲームを取り上げているところは見当たりません。ゲーム自体の狙いや位置づけが中途半端にすぎ、結局セールスポイントを明確化できなかった点に問題があったのではないかと感じます。

総評

 ひと味違う恋愛ものを出そう、そういう意図は感じられるのですが、結局は「表と裏と、一粒で二度美味しい」以上のセールスポイントがほとんど見いだせないシロモノになっています。さらに、シナリオの分岐となるフラグの見極めが非常に大変であり、なかなか気楽にプレイすることができません。ユーザーインターフェースがよいにも関わらず、CGがなかなかうまらないうえ、あまりリプレイする気にもなれないゲームです。

 もっと素直に、序盤で明確に分岐するタイプのゲームになっていれば、小粒ながらも悪くはない作品になっていたと思うのですが。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
2000年2月17日
(10月19日、一部加筆・修正)
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