傀儡の辱めを君に 風露/アクアリウム

1999年9月10日発売
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 「風露」は、アクアリウムというソフトハウスの1ブランド。このメーカーが出すゲームは、『春風少女』のように、いろいろな試みを行った佳作もある一方で、どうしようもないと思わせるものまであり、その質的な幅の広さは半端ではありません。このため、ブランド買いするのは非常に危険ではあるのですが、その一方で、それなりの力も持ってはいる、そう思わせるところです。

 中でも、「風露」は、ダーク系のゲームを中心としているようです。前作『宵桜』では、その貧弱な設定・テキストに涙したものでしたが(^^;)、今回はどうか。なお、いつのまにか「メイフルハウス」が消えていますね。

 ちなみに、この『傀儡』は、「かいらい」と読みます。てっきり「くぐつ」と読むものと思いこんでいたんですけれどね。

シナリオ

 主人公・笠木達樹(姓名とも変更可能)は大学生。自分の行動に対して自信が持てず、いつも「誰かに何かをしてもらいたい」と思いこんでいる、消極的なタイプの人間。そんな彼の前に現れた謎の少女「サラ」は、退屈な生活を壊してあげる、と言う。人を思うままに操る力をサラから授かった主人公は、それ以降、自分を取り巻く人たちとの人間関係を、どのように変えていくのか。

 

 上のような導入から始まるストーリーは、そこの先に「思うまま女を犯っちゃるぜぐへっへっへぇ」という展開を安易に用意することが可能と推測できますが、さすがにそうはしていません(あからさま過ぎますね)。

 基本的に、何らかの悩み(あるいは、精神的に克服できていない課題)を抱えたヒロインたちが、主人公と接することで、その世界を変えていく、そういう話になっています。その際、単純に「力を使って心を癒す」という体裁を取らずに、各キャラクターの心境を少しずつ出し、そして状況を少しずつ見せ、「今、どうなっているのか」を地道に示しているのは、非常に好印象を持てます。単純な「超能力」シナリオではありません。

 かといって、各キャラクターの内面をえぐり出し、それをあたかも問いかけるがごとき重いシナリオが、プレイヤーを辟易させることもありません。やや暗めの話にはギャグの応酬が必ず伴う、など、全体に軽やかな空気が流れています。基本的に、ヒロインごとの「壁」をきちんと出す一方で、それを彼女たちが、主人公と出会うことでどう超えていくか、あるいは、どう突き破っていくかを書く、という形になっています。

 しかし、逆にいえば、それぞれの登場人物が、みな大なり小なりマイナス思考にとらわれており、そこからブレイクスルーしていくための突破口を探している、というシチュエーションになっているわけで、こういった設定に「中途半端な現実感」があるため、人によっては相当に拒否反応を強く示す可能性も高いと推測できます。この視点で考えた場合は、シナリオの評価は、謎の人物たる「サラ」を中心に行われるべきでしょうが、私自身は、「腰ひけ気味」という状況をすんなりと受容できてしまいました(^^;)

 

 各シナリオの詳細に立ち入ることは控えますが、全体的にボリューム不足という印象は否定できないものの、各シナリオやキャラクターごとのバランスは割とよく取れており、小粒ながらも「味」を感じさせる出来になっていると感じます。ただ、パッケージから連想できるような陵辱シーンについては、あまり期待しない方がいいでしょう。

 

 なんと表現すればいいのか、独特のテイストを帯びたテキストが印象的です。スマートな文ではなく、むしろ表現するのに悪戦苦闘しているのが明確にわかるような「苦々しさ」を感じさせるテキストなのですが、そこには、ゲームの中で出そうとしている設定や世界観を、どれだけ説得力のある形で「テキスト」へと翻案していくか、それを真剣に追究している姿勢を感じさせます。似たような内容の形容などが何度も繰り返し出され、正直言って「鬱陶しい」と思う箇所が非常に多かったのは確かです。しかし、設定をそのままテキスト化して「キャラクターAはBだ」と、何の工夫もなく垂れ流ししているテキストが量産されている現在、「叙述」を「方法として」手抜きなしに行っている点は、高く評価したいと思います。不器用だけど実直。

 ただ、例えば私がどうして走っていたというんだよ?やら私は、目覚めたときに見る顔じゃないとでも言いたそうだよやら、意味不明としかいいようのないテキストが、特に会話中で多く散見されたのも確か。姿勢はいいけれど技術がまだ、という感じです。

ゲームデザイン

 移動先選択型のアドベンチャーゲームですが、それぞれのシーンで選択できる移動先は2〜3個所程度と少ないうえ、その移動先に行けばどのキャラがいるかははっきりわかるので、攻略は非常に楽です。各キャラクターとのシナリオを成立させるためのフラグとなる選択肢を正しく選ぶ必要がありますが、選択肢は全て二択、しかもダミーの選択肢もほとんどないため、難易度は非常に低くなっています。ただ、最初からすべてのエンディングを見られるわけではなく、ボスキャラが1人います。これがトゥルーシナリオというか、ゲーム全体の説明となる叙述が最後に出てくるので、ほかのキャラをすべてクリアしないと攻略できないようになっているようです。

 基本的に、非常にシンプルなゲームデザインとなっているので、シナリオにすんなりと入っていくことができます。ただ、経過時間の概念がないので、何だかわけわかんないうちに話が流れていく、という面があったのも、また事実。各シナリオの区切りを明確にするなど、もうひとくふうほしかったところではあります。

不具合・修正プログラム

 私の環境では、特に問題などは発生していません。

操作性など

 インストールの際には、最小/快適/最大から選ぶことができます。CD-DAでBGMを演奏したい場合は、「快適」以上が必要です。CD-DA演奏の場合、CD-ROMなしで起動すると、音は鳴りませんがゲームプレイ自体は可能です。

 ゲームプログラムは、「ASD4AVG」なる汎用プログラムを用いています。アリスソフトの「SYSTEM3.x」のようなものでしょう。ゲーム動作自体はやや重めのように感じますが、ユーザーインタフェースが非常にすぐれているのは、やはりいいですね。

 入力デバイスとしては、マウス、キーボードの双方が使用可能です。セーブ&ロードは任意の位置で可能。セーブは、なんと256個所まで可能ですが、そんなに使うことはまずないでしょう。セーブ&ロード画面では、セーブした実日時のほか、そのとき表示されていた画面が縮小表示されるうえ、そのシチュエーションのテキスト説明が加えられます。

 画面表示は、中央にグラフィックが表示され、下部にメッセージウィンドウが表示されるという、ごくオーソドックスなパターン。メッセージウィンドウは、スペースキーを押すことで消すことができます。

 メッセージ速度、マウス制御速度とも、10段階調整+ノーウェイトで設定可。また、メニューバーの「文章送り」をクリックするか、「Ctrl」キーを押しっぱなしにすることでメッセージスキップできます。

 CGモード・BGMモードもあり、ゲームプレイ中でも入ることが可能となっています。これは『春風少女』と同様ですが、少しアクションの回数が増えているのが残念と言えば残念。『春風少女』のように、プルダウン(いや、プルアップという方が適切か)メニュー方式が個人的には好きなのですが。CGモードは、サムネイル表示されますので、見たかどうかのチェックは非常に容易です。

 また、起動するたびに、前回プレイで攻略したキャラクターがトップ画面に出てきます。

サウンド

 音楽担当は、杉本倫孝氏。BGMは、CD-DA/MIDIから選択できます。かなりアップテンポの曲が多いのですが、曲数自体が少ない上に、シチュエーションごとの変化があまりなく、ゲームを続けていく中で「転機」を現す役割を果たし切れていない、そんな印象があります。このあたりは、むしろ『春風少女』のように、いろんなバリエーションを試してみる、という方法のほうがよかったのではないか、と感じました。また、効果音が皆無だったのも、非常に残念。

 音声はありません。

グラフィック

 原画担当は「園田逸明」さん。『宵桜』や『螢舞う夜』を担当された方です。

 立ちCGは、基本的にバストアップで、表情もそれなりに変化はしますが、大半のキャラは「斜めから見る」という視線になっているのが気がかり。特に、フランクに接するのが自然と思われるキャラクターが、こういう形で会話するのは、非常にひっかかります。

 一枚絵グラフィックでも、やはり、どうにも平板です。それにしても、Hシーンで「服を着たまま」というのがけっこう多いのは、作者のこだわりなのでしょうか(^^;)

 背景は、相も変わらず「でよーん」としたメリハリのないもの。もっと工夫してほしい、と思います。

お気に入り

 北条院瑠璃嬢ですな。跳ねっ返りのお嬢様という設定もさることながら、精神的に引きずっているものと真摯に向かい合うという姿勢を感じましたし、何よりも等身大の気楽さがあります。眼鏡とか巫女さんとか妹とか、ほかのキャラクターのように「設定負け」していない強さもありますしね。

関連リンク先

 私のページからリンクしているところでは、このゲームを取り扱っているサイトはないようです。

総評

 シナリオの質それ自体には、主人公とヒロインとが人間同士ぶつかり合う、という設定を正面に出して勝負しており、またそれを外すことなく地に足のついた展開を実現しているので、それなりに評価できる佳作と思われます。1回あたりのプレイ時間もほどほど、快適な操作性が保証されている点なども相まって、肩の力を抜いて楽しめました。

 その反面、グラフィックを筆頭に、演出面での貧弱さには目を覆うものがあります。『春風少女』のような「遊び」をもっと積極的に取り入れ、軽やかな雰囲気を保っていれば、より力のある作品になっていたと感じます。

 これまでにリリースされた作品群を見るかぎり、とにかくクオリティの差が非常に大きく、その内容を予想することが非常に難しいソフトハウスなのですが、今回もそうでした。この次はどうなるか。それ以前に、買うかどうか(^^;)

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
1999年12月7日
(2000年10月19日、加筆・修正)
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