アウトライン ぷちX/アセンブラージュ

1999年11月26日発売
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 ゲームとはまったく関係のない趣味を持っている人間にとって、それらの趣味をネタに使っているゲームが出てくると、それだけで何となく楽しめてしまったりするから、不思議なものです。扱い方があまりにも情けない場合であれば別ですが、割とマニアックなネタを比較的自然に出されると、それだけでニヤリとさせられるのは、これまで『星のささやき』(JANIS)の天文ネタで経験させられたのですが、今度は鉄なネタ。より「濃度」が高くなりそうなだけに、はたしてどんなもんかいな、と思いながら購入しました。

 ところが、プレイ開始間もなくゲーム中に出てきた「原因不明の事故」というくだりを見て、2000年3月8日、営団日比谷線で発生した脱線事故が頭に浮かび、プレイ初日はその時点でプレイを打ち切ってしまったという、いわくつきのゲームともなってしまいました。

 なお、「ぷちX」は、アセンブラージュの新ブランドです。それまで「ぷち」ブランドで発売されてきたゲーム群の中で、『冬虫夏草』系統のものと位置付けられているようです。

シナリオ

 主人公・鹿島真一(変更不可)は、大学での『鉄道同好会』メンバーの一員として、合宿という名の撮影旅行に出かけた。旅先で現れた謎の幽霊、櫻。そして、彼女の妹、あるいは彼女の生前の恋人などが登場するかの地に漂う、異様な雰囲気。主人公の眼前に現れしものの正体はいかに。

 

 ノリとしては、『SweeperS!』の軽さと『冬虫夏草』の重さとをうまく取り入れているという印象です。前者の「軽く不思議なお話」と後者の「ホラーを感じさせるストーリー」とをミックスさせたような印象。幽霊に襲われるとはいえ、サスペンス的なノリのお話になっています。イベントの出し方、そしてキャラクターの演じ方などはなかなかに巧く、プレイしていても飽きることはまったくありませんでした。シナリオに惹かれるというよりは、イベント配置による「引き込み方」に魅せられたという感じです。また、個別のイベントも、鳥肌が立つほどのインパクトを与えるモノではありません。いわゆる「感動」を与えるタイプのゲームではなく、地に足のついたストーリー展開を行っている、というのがわかります。

 ただ、「転生」というネタを扱うにしても、「生まれ変わりに時間は関係ない」という理屈で押し切っています。時系列に囚われる必要はない、というのには一理あるのですが、転生前と転生後の両存在がお互いを知り合って会話を交わすというのは、どう見ても不自然このうえないのですけれど。力技というにはあまりにも無神経でしょう。せめて、「幽体離脱して憑依」とか、「生者の魂」という使い方をする方がよかったように感じます。

 Hシーンの入れ方はものすごく御都合主義的ですね。Xゲームというのはこんなもの、といえばそれまでですが、「そんなことヤってる場合じゃねーだろ」というツッコミを入れたくなったのは今回も同じ(^^;) 安芸シナリオで出てくる「儀式」には大笑いしましたが(^^;) あと、「鉄」なら、車内での連結作業はご遠慮いただきますようお願いいたします…と言いたくなりました。

 

 主人公の位置づけのしかたはなかなかに巧妙ですね。描写自体はあまりにも平凡なのですが、プレイヤーが違和感を抱きにくい設定、あるいは行動にしている点は、まず高く評価できるでしょう。

 主人公視点で「謎」が明かされる形については、「ゲームデザイン」欄に譲りますが、個別のシナリオ内部で見た場合、それなりにうまくまとめていると感じます。これは、伏線を大量にドバッと出されることなく、少しずつ、そして主人公の行動結果(「選択結果」ではない)として「明らかになる」ことが、きちんと描かれている点に拠るものと思えます。主人公が一人で勝手に納得し、勝手に謎が明らかになっていくとか、あるいは敵役がべらべらと真実を語ってオシマイとか、そういう「締まりのなさ」をきちんとはねのけています。

 

 苦言を呈したい点としては、キャラクター配置が今ひとつであること。各キャラクターの「ストーリー展開上の意味」と「身分・立場」とのズレが非常に大きく、個別キャラが「どうしてそういう状況に置かれているか」について、説得力に欠けると思えることがたびたびありました。嘉悦が「櫻の死」をどう受け止めているのかという描写が決定的に不足しているとか、日向というキャラの実像や背景が一切不明であるとか、挙げていくといくらでもあります。伏線を消化し切れていない、というより、ヒロイン以外のキャラクターの取り扱いがおろそかになり、結果としてシナリオを動かすキャラが曖昧のままになってしまった、という印象です。希に至っては、シナリオ自体には意味があってもキャラとしてはほとんど無意味に等しいといってよいでしょう(別のキーパーソンが説明役になっているんではねぇ…)。キチンと描かれているのは、瑞穂と安芸の2人だけ、といっても過言ではないでしょう。シナリオ依存型ゲームであってキャラゲーではないのだ、という理屈は、キャラがシナリオのパーツとなっている以上、言い訳にしかなりません。

 

 また、エンディングがやや寂しいのが残念なところでしょう。安芸エンドは確かに驚きましたが(^^;)、瑞穂など、「後日譚」がぜひともほしかったものですが。しかし、安芸エンドを見て、『冬虫夏草』の真琴ハッピーエンドを連想したのは私だけではないと思います。

 あと、タイトルの「アウトライン」とは、いったいどういう意味なのでしょうか。「プレイしても、理解できるのは概略だけなのだ」なんて意味じゃないですよねぇ、まさか(^^;)

 

 なお、このゲームに出てくる「ローカル線」は、車両の外観や「デハ24」といった記述から、和歌山県を走っていた「野上電気鉄道」と推測されます(現在は廃止され、会社自体も残っていません)。なんでまた、こんな渋くマニアックなところを(^^;) もっとも車内は、JR西日本・小野田線を走るクモハ42(現役の旧型電車です)にしか見えませんけれど(^^;;;)

 ただ、写真ネタに関しては、ちょっとヘンなところが散見されました。銀塩写真派であれば、デジタルカメラの評価は画素数ではなくレンズで決めると思いますし、使うフィルムがなぜか24枚撮り(通常は36枚だと思う)だったり。

ゲームデザイン

 マルチシナリオタイプのアドベンチャーゲームで、基本的に4つのシナリオに分かれます。分岐のフラグとなる選択肢はいまひとつはっきりしませんが、エンディングフラグ方式となっているようで、初回は強制的に瑞穂エンドとなります。また、バッドエンド直行となる選択もあります(CGが出るので1回は見ましょう)が、「さんざん引っ張っておいて救いのないエンディング」というのはなさそう。かなり鬼畜な選択をしても結果はほとんど同じだったりします(^^;)

 シナリオをクリアするごとにネタが明かされていくという点では、前作にあたる『冬虫夏草』をうまく継承していますが、初回の瑞穂で明かされるネタの量が割と多い上、「そして新たな物語がなお潜んでいる」という「前向きな気持ち」をさほど抱かせないような印象です。単に「先が見える」というのではなく、明かさない謎を次回以降のシナリオへと持ち越す点でかなり物足りなさを感じます(この点では、やはり『』が最高でしょう)。さらに、別シナリオで新たな伏線を用意するという面でも、結構粗が目立つものでした。

 全シナリオをクリアしても、トータルで1つの世界を作るでもなく、また1つの世界を異なる視点で見るでなく、やや「どっちつかず」という印象が否定できません。このあたりは、前作『冬虫夏草』でも感じたことですが、このスタイルで完成度の高いゲームを作り上げることがいかに難しいか、という結論に落ち着きそうです。もっとも、『冬虫夏草』では『痕』の影響を非常に強く受けていましたが、『アウトライン』では、完全に独自カラーを定着させているので、その点では前作以上に楽しめたのは間違いありません。

 私がクリアした順序は、瑞穂→ゆかり→希→安芸でしたが、おそらくこれがベストのパターンでしょう。瑞穂の次に安芸をクリアしてしまうと、ゆかりや希のシナリオが非常につまらなく感じられると思います。逆にいえば、ゆかり・希のシナリオが、それだけ薄いものに過ぎなかったわけで、このあたり、各シナリオごとのバランスの崩れは否めません。個人的には、ゆかりと希の両シナリオを統合した方がよかったのではと感じました。ラブラブになるのを見ていくゲームではないのですから。

 

 なお、これらとは別次元の問題として、シナリオ内部での不整合が非常に多いのは問題です。人形の取り扱いを変えてもその後の結果が同じで明らかに矛盾する、など、シナリオの根幹に関わる部分で不整合が強いのはどう考えてもよろしくない。各シナリオ単位で見た場合、特に瑞穂と安芸とのバランスが割と取れていると感じるだけに、もっとていねいに作ってほしかったものです。

不具合・修正プログラム

 私の環境では、特に不具合は起こっていません。一部、メッセージ表示の乱れなどがありましたが、プレイ自体に支障をきたすことはありませんでした。

操作性など

 インストール先ディレクトリは変更可能ですが、「OUTLINE」というフォルダが作成され、その中にファイルがインストールされます。インストールする際、HDの容量によって、3段階のオプションから選択可能です。また、実行プログラムには「DirectX版」と「通常版」とがあり、前者の方がやや画面切り替えが速くなるようです。なお、ゲームを起動する際には、必ずCD-ROMが必要です。

 操作の基本はマウスですが、キーボードでの操作が可能になっています。しかし、メッセージの文字送り(マウス左クリック)がスペースキーに、「F1」キーがスキップ機能に対応しているなど、かなり変則的なので、注意が必要です。

 グラフィックは、背景CG+立ちCGの場合は、背景部分が写真のプリントという形になっています。また、下部に半透明のメッセージウィンドウが表示されますが、これもフィルムをかたどっているなど、いろいろと楽しめる工夫が見られます。さらに、メッセージウィンドウ左側には、別途フェイスウィンドウが表示されます。画面は、640×480←→フルスクリーンの切り替えが可能。デフォルトでは、フルスクリーンとなっています。

 セーブ&ロードは任意の位置で行えますが、8個所までというのはちょっと少ないですね。セーブすると、その状態が文字およびプレビュー表示されるのは便利。

 速度表示は、「標準」と「高速」とから選択可能です。メッセージスキップに関しては、「Ctrl」キーを押している間スキップするほか、「マウス両ボタン同時押下」または「F1」キーでスキップします。

 CGモードは、各ヒロインごとにサムネイル表示されますが、サムネイルはネガ表示で、マウスポインタを合わせるとポジ表示になるのもおもしろいところ。また、Hシーンの回想モードもついています。BGMモードは曲名つきです。CGモード・BGMモードとも、プレイ中に確認することも可能(CG達成確認には便利ですね)ですが、Hシーン回想だけはスタート画面からのみ入れます。また、HシーンでCGが分岐する場合がありますが、プレイ中では未見でもHシーン回想モードでCGを見た場合、CGモードに登録されるようになっているので、セーブデータをむだづかいせずに済むのはよし。

サウンド

 BGMは、MIDIで演奏されます。パッケージやマニュアルにはXG音源対応と書かれていますが、実際にはGMフォーマットです(コンフィグメニューで設定変更できないだけでなく、MIDIファイル自体が1種類のみ)。悪い曲ではないのですが、どうも地味で、あまり印象には残っていません。

 音声は、主人公以外はフルボイスです(男性も含めて)。アセンブラージュ系列ということもあり、まずクオリティでは心配無用です。

グラフィック

 てんざる・へりゃ・宏井増之各氏の手による原画。攻略対象キャラ(丸目系)とそれ以外(細目系)の違いがクッキリ出ていたものの、不整合による違和感は特にありませんでした。キンキンに突っ張っている髪がなんかすごいです。あと、希のヘンな髪型、何とかしてほしいものですが(^^;)

 塗りについても、なかなか綺麗にまとまっています。特に背景は、『冬虫夏草』に比べて随分と進歩したと感じます。これまでのアセンブラージュ系列のゲームというと、どうしても「写真取り込み」が多かったのですが、この作品ではきちんと描き込んでいます。

 また、弓を射るシーンや、瑞穂が人形を火中に投じるシーンなど、ちょっとしたアニメを使っている個所があります。

お気に入り

 島崎瑞穂、三倉安芸の両名が横一線ですね。表のヒロインと裏のヒロイン、とでもいったところでしょうか。性格的にはなかなか対照的ですが、それだからこそ、気のおけない親友といえるのかも。

 もっとも、実際にパートナーにしたいとなったら、瑞穂の方ですね。からかうと面白そうだしヾ(^^; 安芸って実は腹が据わりすぎていてけっこう怖いし(^^;)

関連リンク先

 そとみち.さんSHEOさんの両サイトを挙げておきます。もっと取り上げられていてもおかしくないと思うのですが、要するに全然売れなかったのでしょうね。『冬虫夏草』も、中古市場ではやたらと安くなっていますし。

総評

 やや小粒のマルチシナリオというゲームとして、なかなか楽しめる作品である、という結論です。パーツの配置が割と上手なので、引き込むだけのパワーがかなりありました。もっとも、(紋切り型の)感動と無縁というスタイルを貫いている結果、プレイヤーに対し印象を深く刻み込むというゲームにはなっていません。これ自体はマイナス評価の材料にはなり得ません(個人的にはむしろこういうスタイルは好き)が、市場への「ウリ」に背を向けている感じがします。

 また、『冬虫夏草』的なホラー系と受け止めると、かなり外します。真っ昼間の探索などは、むしろ『SweeperS!』のノリですしね。

 なかなかに味があるゲームだとは思うのですが、どうもNIFTYの過去ログなどを見るかぎり、あまり評判はよくなかったようです。個人的に「鉄ネタ」があったという追い風を差し引いても、『冬虫夏草』は(売れた売れないはともかく)評判がよかっただけに、どうも意外。「妹」も「幼なじみ」もおらず、「萌え」タイプのキャラがいなかったのが痛かったのでしょうか。

個人評価 ★★★★★ ★★★☆☆
2000年3月14日
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