聖魔大戦(一般版) AGREE/BAROQUE

発売日不明
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 18禁ゲームとしては異色の行動を取る、そして独特の世界を拓く主人公が魅力のゲーム『キャッスルファンタジア聖魔大戦』(Studio e.go!)。これとほとんど同じパッケージの全年齢対象版が別途出ているのは以前から知っていましたが、追加シナリオがあるという話を聞き、興味本位にこちらまで買ってしまいました。定価が4,800円と、18禁版に比べてはるかに安いので、手を出しやすかったという面もありますが(^^;)

※このゲームは、年齢制限のない一般ゲームです。

シナリオ

 インジェラ教国軍の武将、ヒューイ・エルザードは、軍略や戦機を見る才に秀でながら、教国軍随一の怠け者でもあった。邪神軍ルーシエラに進攻するための実働部隊として編成された「聖部隊」の一角を担うことになりながら、やる気などまるでなく手を抜くことばかり考えるヒューイ。そんな彼のもと、部下として彼の元に働き、そして敵として彼に対峙する人々には、どのような想いが去就するのか。歴史のメインストーリーには決してたち得ない人々の人生模様は、どのような綾を成すのであろうか。(以上、18禁版と同じ)

 

 18禁版の中で生きていた主人公の行動、そして彼の一挙一動の積み重ねが生み出す魅力は、一般版でもまったくそのままです。18禁版と異なっている点は、Hシーンがカットされていること(当然)、「裏ルート」でのシナリオが一部追加されエンディングも追加されていることの2点です。裏シナリオでは、エンディングがヒロインごとに多少異なるものの、基本的な流れは一本道、というのが18禁版でのスタイルでしたが、こちらでは2つのパターンになる(あるいは、1つだけ特殊なパターンがある、というべきか)という形を取っています。この「1つ」が、この一般版で追加されたシナリオになっています。

 追加されているシナリオの中で描かれている新規イベントは、ヒューイ一派の行動を肉付けし、また踏み進んでいく過程の中で非常に自然な形で処理されています。主人公であるヒューイが(公にではないにせよ)掲げている思想を体現するものとして、欺瞞を感じさせること甚だ少ない描写は、ここでも健在です。シナリオの全体的な流れとして見た場合、18禁版で用意されていた裏シナリオとかなり似てはいますし、特にエンディングはほかのキャラのパターンとほとんど同じですが、戦闘パターンなどを少し変えている上、パーティ外の人物との接触などのイベントも含まれています。

 その一方で、ヒューイ一派の行動を、歴史という「物語」の中でどう綴っているのか、という問に対しては、回答を一切避けているかのような姿勢を貫いている点も、また18禁版と同一です。

 ただし、18禁版での「問題点」として挙げた「各キャラクターの性格設定がまちまち」という点は、ある程度解消されているように感じられます。ハンナ、ティア、ルナールのお子様3人衆(ゲーム内では「3バカトリオ」と書かれていました)についても、軍隊組織とはあまりにもミスマッチな行動そのものが、積極的に説明可能な演出として用いられたり、また裏での新規シナリオの場合などは、顔こそでないものの(^^;)名前のある新しい男性キャラが、なかなかに印象的な行動を取ってくれたりします。18禁版でのキャラクターの使い方とは、少しだけ形を変えつつも、しかし別の魅力を放っていると感じます。

 

 しかし、18禁版をプレイしていないことを前提として考えた場合、はたしてどの程度まで追加シナリオの展開に説得力を見出しうるか、多少の疑問が新たに出てきた点も指摘せざるを得ません。

 追加シナリオに入った場合、登場するキャラの役割が微妙に違ってきた結果、パーティ内部での関係が18禁版とは異なるものになっています。そこでは、流される「血」の重みがさほど感じられず、「超然としたユートピアの存在」という雰囲気がつきまとってきます。18禁版では、裏シナリオの場合、必ず味方のうち1名が命を落としているのですが、一般版の新規シナリオにかぎっては、そうなってはいません。この結果、「過酷な現実」という雰囲気が、戦闘を背景とした緊張感以上のものにはなっておらず、ややもすれば「新しい世界を作ろうとした人物」の英雄的な話、という面に向かってしまいがちではあります。追加イベントの中では、これをフォローするような形で「過酷な現実」の追加描写がなされており、それが一定の効果をあげてはいますが、「ハッピーエンド」が準備されることが前提となっているかのような展開には、多少の戸惑いを覚えたのは確かです。

 もちろん、裏シナリオ全体が、新規シナリオにそのまま置き換えられ、エンディングのみを18禁版と同じというスタイルであれば、こういった違和感は出てこなかったでしょうが、裏シナリオの中で「なぜ1つだけが違うのか」という問が出た場合、これに対して説得力のある回答を出せるかどうか、疑問が残ります。不整合や矛盾というものがあるわけではありませんし、「取って付けた」という印象もないのですが、1つだけを「特殊なシナリオ」と感じさせてしまうスタイルにしたのは、いったいなぜなのか、と思えます。

 

 さらに、「別次元の問題」として18禁版のレビューで取り上げた、マニュアルの記述などには、改善点はいっさい見られません。これはなんとかして欲しかったところです。また、誤字などもそのまま残っています。

ゲームデザイン

 選択肢と愛情度とでシナリオやエンディングが決定し、また戦闘中のハート獲得数で愛情度が上がるというのは、18禁版とまったく同じですが、分岐条件はやや異なっています。表ルートと裏ルートの分岐となる選択肢も違っていますが、それ以上に、18禁版では、裏ルートではエンディング決定は選択肢によるもののみだったのに対し、この一般版では、裏ルートでも愛情度が関係しているようです。このため、かなり早い段階からリプレイしなおさなくてはならない上、(特に裏ルートでは)Hシーン代替となる決定的なキャラ別イベントが途中で用意されているわけでもない(ごく小さなものがはさまる場合はあります)ので、誰のルートに入っているのか、プレイ中はさっぱりわかりません。最終戦を終えた時点で、やっと誰とのエンディングになるかがわかる、という状態です。

 18禁版で、このようにエンディングが最後の最後でやっと分かれる、という仕様にはかなり疑問を感じていましたが、一般版では、この違和感がさらに強くなってしまいました。序盤から何度も何度も類似のシナリオを繰り返させられることを考えると、全エンディング制覇などは、初めから考えないほうが精神衛生上良さそうな仕様と感じます。とにかく、18禁版と似ているものの、18禁版の攻略情報をそのままでは使えないことは確かです。

 戦闘パートは、18禁版とまったく同じです。戦闘パターンも、終盤の一部を除き、18禁版とほとんど同じです。

不具合・修正プログラム

 18禁版とは異なり、私の環境では何ら不具合は発生していません。

操作性など

 18禁版とまったく同じなので、省略します。なお、Hシーン回想モードはありません(当然)。

サウンド

 これまた18禁版とまったく同じなので、省略します。

グラフィック

 キャラクター原画は、山本和枝氏。基本的に、18禁版のグラフィックをそのまま流用していますが、Hシーンがカットされている反面、新規CGを用いたイベントCGがいくつか入っています。18禁版での一枚絵CGが226枚だったのに対し、こちらでは182枚と、ボリューム的には物足りなくなってはいます。なお、単調な背景は相変わらず。

お気に入り

 18禁版同様、やはり主人公のヒューイが一番ですね。また、18禁版のレビューで挙げた人物たちのほか、(おそらく唯一の)新登場キャラであるアウトレットがいい味を出しています。

関連リンク先

 これを書いている時点では、まとまったレビューを掲載しているWebサイトは見当たらないようです。

総評

 もともと18禁であることの必然性が極めて乏しいゲームであっただけに、18禁シーンがなくなったところで違和感が解消されこそすれ、マイナス方向には働いていないというのが、第一印象でした。コストパフォーマンスという点を差し引いたにせよ、シナリオを一部追加することで全体の幅を広げながら、矛盾を拡大させたり、取って付けたような印象を抱かせたりはしていないことを考えると、やはり18禁版よりもこちらの方をお勧めしたいと思います。CGの枚数だけで見ればボリューム的にやや減退しているとはいえますし、効率の良いプレイがしにくくなったという点を差し引いても、新規シナリオ分のプラス点が十分にカバーしていると感じます。

 しかし、恋愛要素に乏しく、特定ヒロインとのエンディングになったところで「それで?」と思ってしまう点は変わっていません。エンディング自体の軽さ自体は、それなりの意味も持ってはいると思うので、別段気にはなりませんが、「萌え」を求めるとまず確実に空振りするであろう、とは言えましょう。

個人評価 ★★★★★ ★★★☆☆
2000年6月27日
Mail to:Ken
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