純情学園アドベンチャー SPARK! Cat's Pro./ぱんだはうす

1999年12月3日発売
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 娯楽というのは、本来、気分転換のために楽しむというものであり、その基本はあくまでも「楽しむ」ことにある、この当たり前のことをついつい忘れてしまい、精神鍛錬をやってるんだかなんだかわかんない、そんな姿勢で「ゲーム」に相対することさえあるのが実情です。これは、ゲームの制作サイドが、「どのようにゲームを作れば売れるか」ではなく、「どのようなゲームを作れば売れるか」をスタートに据えていることが背景にあるような気がしてなりません。もちろん、納得のいくものを、商業的に可能な範囲で実現させよう、という姿勢を見せてくれるところもありますが、全体から見ると、その比率は随分と低い、という印象を抱くことが多いものです。

 その中で異彩を放っているソフトハウスが、ぱんだはうす。「Melody」と「Cats Pro.」という2つのブランドを掲げてはいますが、いずれも、ほかのソフトハウスが出している作品に対して頑と背を向け、我が道を進んでいます。それがよい方向に働くばかりではないのはいうまでもありませんが、常に「新しい方向」を開拓しよう、という意志が感じられるだけに、なかなか注目に値する作品を出してくるところです。

 そんな「異色メーカー」の異色ゲーム、『スパーク!』。文字通り、はじけんばかりの元気よさを見せてくれるゲームでした。黄色キラキラのパッケージからしてやたらと珍しいものではありました。

シナリオ

 主人公・近藤ハジメ(変更可能)は、新聞部に所属する平凡な学生だったが、「人界管理局エージェント」を名乗る謎の転校生の要請を受け、学園にまぎれこんだ天使をつかまえる役を担うことになった。そのためには、「キーワード」を集める必要があるので、そのために学園内を東奔西走するのだっ!

 

 シナリオ担当は「渡部雅弘」氏。

 上に書いたような粗筋を見ると、「天使とは何か」とか「天使をつかまえてどうするのか」とか、そういう方面にスポットが当てられそうですが、そんなもんは置いといて、とばかり、主人公もヒロインもみんな「ラブ&ピースな学園生活」を満喫しています(^^;) したがって、心理描写がどうの、謎解きがどうの、という方面で見れば、無内容と言い切っていいのですが、そういう尺度でこのゲームを評価するのはお門違いというものでしょう。このゲームに感じられるのは、何よりも、そのテンポのよさに支えられたノリ、これに尽きます。

 シナリオといっても、断片的にいろんな小事件がちょいちょいと起こるという程度で、その合間合間に見る「夢」が、何やら雰囲気だけを残して、ふわーっと全体にやさしく拡散していく、という感じです。この「夢」の描写も、「キーワード」がかなりその場その場でぶっ飛んだ使い方をされているなど、かなり八方破れなのですが、それでいて「楽しさ」を伝えるのですから、不思議なものです。

 ちょうど、別ブランドから出ている『メロディ』の詩的世界を断片化し、モザイク状に配置することで、不思議なリズムを奏でている、そんなところです。いろいろな世界を自在に行き来する、という点では、まさに『メロディ』と同じなのですが、『メロディ』の場合は、世界は変貌自在であっても、「視点」を持つ「人物」がいたわけですが、『スパーク!』は、そういった座標軸さえも投げ捨て、まるでジグソーパズルのピースを無秩序に寄せ集めた、そんな話になっています。

 そんなわけで、安心できる「秩序」(定型化した「カオス」も、ある意味では秩序でしょう)が何らかの形で示されないと落ち着かない、あるいは、近視眼的な作業が持つ爆発的なパワーに対して相容れない、そういう方は、まずこの展開を「楽しむ」ことはできないでしょう。そして、このゲームは「楽しめない」のであれば、まるで意味がないものと断定してよいと思います。

 あえて論理的に説明しようとすれば、ゲーム世界そのものが「夢」であり、そこにあるのは、合理性を超えた感覚(感情にあらず)によるパワフルな動きからなる連なり…あー、こんな分析してもつまんねーや、やっぱ省略ヾ(^^;

 

 誤解を招かないように一言。各シナリオには「統一感がない」わけですが、それと「不整合を感じる」こととは、まるで違います。このゲームでは、各シナリオの部分部分それ自体が「引き込む力」と「生み出す力」の双方を相持っており、プレイヤーを受け止める側面とそそのかす側面とを備えているように感じます。こういった器用な方法は、その中から滲み出る要素をどれだけプレイヤーが「各個人単位で」消化できるか、に依拠するものであり、非常に危険なものと思えます。NIFTYなどではほとんど黙殺されたに等しいほどの寂しい反応だったのは、こういう点が受けなかったのでは、と。

ゲームデザイン

 ゲームをプレイしながら、イベントを発生させて「キーワード」を集めていきます。エンディングは、どの女の子とHしたかで決まり、複数の女の子とHしている場合は、ラストで選択肢が出るので、1人を選ぶことになります。ゲームオーバーはありません、というより、誰かとHしないとゲームが終わりません(笑)

 基本的にゲーム内では時間制限はありませんが、誰かとHするとそれ以降はエンディングまで1週間しか猶予がないため、1回のプレイですべてのキーワードを集めることは不可能です。しかし、キーワードのほか、女の子の好感度などのもろもろのパラメータは、ゲームクリア後に次回プレイへと持ち越すことが可能となっています。『メロディ』のパラメータシステムとよく似ていますが、ある特定の数値を持ち越すのではなく、クリアするごとにデータが記憶されるので、何度リスタートしても、直前時のデータが使えるのは便利です。

 キーワード集め自体は、何度もプレイをしていくうちに集まっていきますが、すべてもれなく要領よく、となると、けっこう大変です。特に、トゥルーエンドともいうべきエンディングに進もうとすると、すべてのキーワードを集める必要がありますが、わずか数回のプレイでキーワードを全制覇するのは不可能なので、何度もプレイするのが吉でしょう。

不具合・修正プログラム

 明確な「不具合」というほどのものではありませんが、ロードしてもなかなかそのデータ画面が表示されず、かなり長いこと待たされるケースが多いのが気にかかります。某『悲劇』(SAINT)のように「ロードできない」ということはありませんが。

操作性など

 インストール先ディレクトリは変更可能です。操作の基本はマウスですが、キーボードでの操作も可能になっています。

 グラフィックは、基本的に640×480ドット全画面表示(High Color)で、下部に半透明のメッセージウィンドウが表示されます(スペースキーで消去可能)。画面は、ウィンドウ表示とフルスクリーンとの切り替えが可能。デフォルトでは、フルスクリーンとなっています。

 セーブ&ロードは任意の位置で20個所まで行え、セーブした時のプレイ実日時と、ゲーム中の状況が記録されるほか、任意にメモを入力できます。同時攻略を狙う場合などは、いろいろとうまく活用することができます。

 テキスト速度表示は、「普通/速い」の切り替えが可能。メッセージスキップは、「Ctrl」キー押下で可能です。また、「演出速度」を3段階で調整できるというのは、このゲームならではといえましょう。

 CGモードは、各キャラクターごとに1枚ずつ表示され、達成率などは出てきません。Hシーン再生モードあり。BGMモードも、当然のようにあります。また、これまでに収集した「キーワード」の一覧表示もあります。

サウンド

 BGMは、CD-DAで演奏されます。PANDA氏/MUSEが担当。とにかくノリのいい曲が多く、まさに「スパーク」な世界にぴったりとマッチしています。物語の中に一貫性をうち立てることを拒否するようなこのゲームには、こういう花火が輝くような元気いっぱいのサウンドが一番でしょう。何よりも、オープニングのボーカル曲『SPARK!』が最高。頭の中を空っぽにできるノリのよさは最高です。

 あと、選択するたびに「Yeah!」という効果音が入ります。最初はうっとうしかったのですが、プレイしているうちに、これがないとこのゲームじゃない、などと思うようになってしまったのだから不思議なものです。

グラフィック

 福永ユミさんの原画担当。アニメ調のグラフィックで、登場人物の着ている服がみんなバラバラ、など、まさに無秩序ぶりをいかんなく発揮してくれます。上手、とはいいませんが、なんか味があってよし。

 塗りは、とにかく派手ですね。色数の割にメリハリがないという気がしないでもないですが、むしろ質感のあるていねいな塗りを見せられると、その時点でゲーム世界がスタティックな次元へと収束してしまいますから、こういう方が結果的にはよかったと思います。パッケージデザインのようなカラーリングが全編にわたって貫かれているので、買うかどうかは手にとって判断するのが吉でしょう。

 また、画面がぐりぐりと動きまくります。DirectXを用いて画面上のパーツを動かすというゲームは珍しくもなんともありませんが、ここまで盛大に「動く」ことにこだわりを見せたものはほかにないでしょう。1日の始まりには、「○月☆日 おはよう!」とデカデカと出るわ、「授業中」という垂れ幕が右から左へ流れるわ、登場人物も横にざざざっと豪快にスライド移動するわ、楽しいのなんの。画面演出のパワーをここまで出してくれれば、もう飽きる余地はありません。

お気に入り

 ………う〜、困るぅ〜………。「お気に入り」キャラが出るようなタイプのゲームじゃないんですよね。キャラのイメージはシナリオの中で描かれるというより、夢のような空間で個別に作っていく、という感じなので。そういうわけで、今回はパス。

関連リンク先

 兄貴さん(閉鎖)、らまひすとさん(閉鎖)のページで取り上げられていました。評価ポイントが人によってばらばらマチマチになるのは目に見えているゲームですから、断じて私のレビューだけで衝動買いしたりなさらないように。冗談抜きで。

総評

 楽しいことを積み上げる、という、いうならば「アバウトさゆえに持っているパワー」をうまく料理したゲーム、といってよいでしょう。ギャグのオンパレード、といった次元で受け止めることも可能ですが、それよりも、起承転結といった、組成の照応からスルスルと抜け出している「軽やかな楽しさ」に、得もいわれぬおもしろさを感じたものです。

 ただ、「楽しさ」のみならず、こういった手法は、クリエイターの職人芸的なものに依存するので、類似作品が出ることはまずないでしょうし、出たとしても非常に高い確率で駄作の生産という結果になると思われます。しかし、こういう「勇気ある冒険」を実行し、なおかつ、その実行を裏打ちするだけのセンスのよさ、そして、センスをそのままダイレクトにぶつけることそのものに、まずは喝采を送りたいと思います。

 ひとまず、『メロディ』が「わけわからん」という理由で合わなかった人は、避けるべきでしょう。逆に、もっと詩的な「空隙」を増やして自在さを広げたい、という方には、文句ナシにお勧めできましょう。

 また、このゲームを「バカゲー的なノリのギャグ満載ゲーム」と見ると、これまた外すと思います。「えっ、何ソレ?」と思われるかも知れませんが、実のところ、個別のギャグはそれほどおもしろくはないんです。ただ、そういったギャグが平気な顔で行き交っている世界、それが楽しい、というコト。このあたり、やはり『メロディ』的な「ギャグの使い方」を、より徹底しているのですが、こういったギャグに関する扱い方がわからずにプレイすると、痛い目にあうかもしれません。

個人評価 ★★★★★ ★★★☆☆
2000年3月27日
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