Voice 〜君の言葉に僕をのせて〜 Tinker Bell/サイバーワークス

1999年12月23日発売
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 Tinker Bellは、それまでの「Blue Bell」にかわる新ブランドとのこと。

 「シナリオ挿入型アドベンチャー」という、なんだかよくわからないジャンルに興味を惹かれながら、どうも癖の強い原画に手を出そうかどうしようか考えているうち、気がついたらワゴンセールに入っていたゲーム、それがこの『Voice』。どうせなら「Parole」とでもしてほしかったものですが、それだと意味がよくわかんないかも。もっとも、プレイしても意味がわからなかったという説もありますがヾ(^^;

 「手を縛られたまま犯されて目が虚ろな少女」のCGから「学園怪奇陵辱ゲーム」を期待して買ったという面も否定はしません(^^;)

 

 なお、このゲームのシナリオ冒頭部は、Tinker BellのWebサイトにて公開されています。ソフトハウスが作品紹介をするのは珍しくも何ともないですし、体験版やデモの作成もよくある話なのですが、冒頭部テキストのまとまった量を、それも原文そのままの形で呈示しているというのは、初めて見ました。

※:「不具合・修正プログラム」欄の記述は、別のゲームとの混同によるものであり、事実とは異なっておりました。申し訳ありません。(2000/4/16)

シナリオ

 ランガージュ(言霊)を操り、それを実行する行為(パロール)によって、現実とかけ離れた世界を動かす異能者、「言葉繰り」たち。彼らが多く集まる学園。そこにおいて繰り広げられる闘いと謎の多い現象。そんな中に飛び込んだ主人公・鳳薫(変更不可)は、過去に自分をやさしく受け止めてくれた、初恋の女性を追い求めている。さまざまなできごとをかいくぐった結末には、何が待っているのか。

 

 シナリオ担当は、前田あたり氏。

 まず第一に困ったことは、何に関心を持ちながらこのゲームをプレイしていくべきなのか、それが皆目わからなかった点です。ランガージュやらパロールやらといった概念をあえて持ち出し、そこに超能力などを織り交ぜることで超現実的な世界設定を出しているのは初めからわかります。しかし、その「世界設定」が出されている理由が、プレイしていてもよくわからないのです。そして、この「分からなさ」の要因には、主人公(=プレイヤーが座標原点として据える個所)の不明確さ、そしてゲーム世界と用語使用とのミスマッチ、この2点があると考えられます。

 

 世界を「見る」主体となっているはずの主人公の目。そこに映るものが「すべてを語る」はずはありません(少しずつわかっていく、というのが流れとしては自然でしょう)から、ゲームを進める段階で「よくわからない点」があることの意味自体を否定するつもりはありません。しかし、主人公が「何をわかっている」のか、そして「何を探っている」のかが見えてこないと、そもそも「さて、次はどうなるのか」という気になるはずがないのです。これでは、「次に起こる」こと(「イベント」といってよいでしょう)の意味が、プレイヤー側で合理的に解釈できません。

 主人公に特殊な能力を付与し、さらに「倦怠を愛する(Tinker BellWebサイトの紹介文より引用。それにしても変な日本語ですね)」というキャラ設定をしているのは、特に斬新なものではありません。しかるに、彼の行動基準の一切が不明瞭であるまま、「そうか、これが新事実なのだ」といった「新しさ」を受け止めよ、と言われても無理があります。彼の感覚が「常人とは異なる」ことからスタートさせている以上、彼の視点から描写するだけでは何もかもが不完全にしか見えてこないのは明らかなのですが、どうもこの点について、ケリをつけずに不明確にしたまま話を進めています。

 

 ゲーム世界を支える概念がいくつか出てくるものの、それは主人公が関わりながらプレイヤーに伝わる形で出されるのではなく、むしろ説明的に、天下り的に呈示されます。このため、ちょうど博物館の展示説明を読みながら進んでいるような感じなので、「ふーん」という声がひたすら続くような姿勢でのプレイにならざるを得ません。

 さらに、その「説明」自体も、ずいぶんと突拍子もない形で行われます。後述するように、キャラクターの行動や言動が随分とぶっ飛んでいることもあって、「突拍子もな」く発生するイベントが、単にキャラクター単体で(パーソナリティに依存して)発生するものなのか、あるいはゲーム世界の説明という意味を持っているものなのか、その区別がつかないのです。

 

 また、「学園」という、いわば「何でもアリ」の無法地帯を用いることで、逆に収拾がつかなくなったようにも感じられます。「いーじゃん、こーゆー空間なんだから何が起こったって」という説明で「ありのままを受け容れよ」というのは明快な方法ですが、逆にどんな点がシナリオの盛り上がりに関わっているのか、それが不明瞭になる危険があります。残念ながら、このゲームでは、この問題点がクッキリと浮き出る形で作用しています。

 学園内での生徒間のやり取りは、けっこうおもしろいものではありますが、それがシナリオとどういう関係にあるのか、そしてゲーム内でキャラがどう動いているのか、を説明しきれていないため、魅力半減という印象です。

 また、キャラクター配置が、ずいぶんと投げやり、あるいはいい加減という印象があります。シナリオを読ませ、プレイヤーを引き込んでいくタイプのゲームにおいて、個々人の行動や言動は、そのキャラクターがストーリーの中でどんな役割を担うのか、を語る必要があるはずですが、それがずいぶんと薄味になっており、単に「こういう性格を持ったキャラ」という説明的なものに留まっています。元気少女やら内気少女やら、あるいは筋肉脳やらといったキャラがいろいろ出てはきますが、そういったキャラクターのバリエーションは、シナリオの幅広さとはまったくリンクしておらず、単に「こんなのがいたらおもしろかろう」という流れで生み出されたとしか思えません。

 それに、サブキャラのHシーンが、取って付けたような印象があるのもマイナス。メイン2人以外のシーンは蛇足だったのでは。いずみなど、どう考えたらあれを挿入する必要があったと説明できるのか、理解に苦しみます。

 

 ファンタジーの霧中で描かれる少女、そして常に脇に侍する少女、この2人の間に主人公があることを考えると、シナリオのテーマは、おそらく、母性への姿勢を考え直す少年の成長…といったところなのでしょう。しかし、そのために「学園」を舞台にし、なおかつ、上のような叙述を取ったメリットは、どうも私には感じられませんでした。こういうテーマを据えていると考えた場合、周囲の人々の行動原理が説明できなくなるからです。

 テーマについて考える以前の段階で、そもそも「考えたい」という気を起こさせるようなシナリオになっていないように見えます。

ゲームデザイン

 大きな分岐はなく、小イベント程度の分岐が途中にあるだけのようで、最後のエンディングが数とおりに分かれている、というスタイルになっています。要するに、シナリオはほぼ単一のものであって、帰結としてのエンディングを最後に選択可能な形になっている、ということです。ただ、イベント発生条件、あるいはエンディング条件は、中途の選択しだいで決まるようです。

 3回程度のプレイで、全CGを見ることができます。なお、全CGを埋めると、トップメニューに「オマケ」が加わります…けど…ねぇ(^^;)

操作性など

 インストール先ディレクトリは変更可能です。操作の基本はマウスですが、キーボードでの操作も可能になっており、任意のキーで左クリック代替になっているようです。

 グラフィックは、基本的に640×480ドット全画面表示(High Color)で、下部に半透明のメッセージウィンドウ(ウィンドウカラー変更可能)が表示されます。画面は、ウィンドウ表示とフルスクリーンとの切り替えが可能。

 セーブ&ロードは任意の位置で20個所まで行え、セーブした時のプレイ実日時が記録されます。テキスト速度表示は、「遅い/速い/ウェイトなし」の切り替えが可能。メッセージスキップは、既読・未読の区別有無を選択可能です。また、早送りの速度自体も調整できる、読み返し機能搭載など、「読む」ことが快適にできるような細かい配慮がされている点は好感を持てます。また、フォント変更も可能となっています。

 CGモードは、サムネイル表示されます。Hシーン再生モードあり。BGMモードは、曲名をクリックするとBGMが再生されるという形になっています。

サウンド

 BGMは、CD-DAで再生されます。『雪降る季節へ』や『桜色の手紙』と同じく、西野尚利さんの担当。なかなかノリのいいサウンドは、個人的に好き。1曲の時間が短いのがちょっと残念ですが。

 音声はありません。

グラフィック

 原画担当は、鷹月のぼるさん。独特の目が、ゲームの「微妙にバランスの崩れた世界」をうまく出しているように思えます(皮肉でも何でもなく)が、逆にこの目ゆえ人を遠ざけたという可能性は否定できませんね。輪郭線がハッキリし過ぎていること、塗りにメリハリがないのが難点か。

 澪を見て、どうみても『To Heart』のマルチやんけ、と思ったのは私だけでしょうか。あと、制服の袖部分のデザイン、なんだか仕込んであるみたいで怖いんですけど(^^;)

 あと、塗りにメリハリがなく、どうも灰白色の空間が背景にどよ〜んと広がっているように見えます。「無機質な世界」という演出である、と言えなくもないのですが、これはやや好意的に過ぎる解釈でしょう。

お気に入り

 特にありません。それなりにいろんなキャラクターはいるし、ゲームのプレイ中はそこそこバリエーションを楽しむことはできましたが、終わってみると今ひとつ印象に残らないキャラばっかりだったもので。

関連リンク先

 横山堂さんのページでの論評が割と的確。ゲームとして語りにくいせいか、はたまた本当に売れなかったのか、発売からそれなりのタイムスパンを経ながらも、あまり見かけませんね。

総評

 シナリオを読ませるタイプのゲームである以上、このゲームに込められたメッセージを読みとって評価するのが本筋なのでしょうが、それ以前に、そのシナリオの骨格が非常に弱々しく、また本筋を読みとることがプレイ中は困難であり、エンディングを迎えてから「ああ、あの展開はこういう結果を導くための伏線だったんだな」と思い返す、そんな形になっているため、「読む」ことをあまり楽しめなかったのが、何よりも問題でしょう。快適な操作性という援護射撃があり、「読む」ことに集中できるスタイルのはずなのに、惰性でプレイすることを余儀なくさせられた以上、高い評価をすることはできません。エンディングの締め方自体は悪くないと思いますし、そこから遡ってみると、主要部分の設定もまずまずと思いますが、それをゲームの中で展開しきれておらず、プレイヤーを「エンディングまで付き合わせる」術で失敗しているように見受けられます。

 狙い方としては光るものも感じられるだけに、いろいろな面で「惜しい」ゲームである、と評しておきます。

個人評価 ★★★★★ ★★☆☆☆
2000年4月9日
(4月16日、「不具合・修正プログラム」を削除、一部加筆・修正)
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