あすは恋して −Prime Beat Planet− アンバランス

2000年4月14日発売
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 買った第一の動機が、異常とも思える安値というのが、我ながらずいぶんさもしいものだと思います(^^; しかし、標準価格3,980円というのは、新作の一般PCゲームとしては破格の低価格であるのはまちがいありません。まあ、この程度の価格なら大して中身がなくても損することもあるまい、と気楽に手に取ったしだいです。ところが、ボリュームについてみれば価格不相応どころか、並のシミュレーションゲームを凌駕するようなものに仕上がっているのですから驚きました。

 もっとも、このゲームを買ったのは2000年夏で、コンプリートするにはそれから2年以上を要しました。これは難易度が高かったというのも1つの理由ですが、それだけではなく、1人をクリアするとしばらくの間は別のキャラに手をつけるような気力が起きなかったというのが実態だったりします。

シナリオ・ゲームデザイン

 主人公・歳三(変更可能)は、少年時代に住んでいた街に引っ越し、高校2年生として学校に編入した。彼が過去に忘れてきた思い出とはいったい何か。それを探す日が始まる。

 

 攻略対象キャラの数は12です。

 土曜日の放課後、学校内の移動画面で一定時間のフリータイムがあり、マップ上のチップで表示されるキャラと会話ができます。このとき、手持ちの「話の種」を使うことで、どんな話題を会話の中で使うかを選びます。この種の選択、そして会話中の選択肢によって好感度が上下し、これが一定になるとデートに誘うことができ、さらにイベントが発生することになります。どのキャラに対してどの種を使いどの選択をすればよいかは、一部は会話中に調べることができますが、半分以上はその場で特攻をかけるしかありません。ただしランダム性はないので、ひととおり調べてからリトライすることはできます。

 この種は、デフォルトではごく限られたものしかありませんが、イベントや会話を通じて増やすことができます。また、毎週某キャラから1つだけ話の種をもらうことができます(ランダム。もらえないこともあり)。

 また、種を多くのキャラに対して使う(さまざまなキャラに対して同一の話題を使い回す)ことによって、この種はレベルアップし、同一の話題を別の形で進めることができます。

 ただし、同じ話題を同じキャラに対して繰り返して使うと「その話もう聞いたよ」となって会話熱が下がり(レベルが上がった場合は別)、その後の進展に大きく響いてくるので、「どのキャラにどの種を使ったか」は丹念にメモを取っておく必要があります。初回プレイ時には「誰にどんな話をしたかぐらい覚えているさ」と思っていたのですが、さすがに12人相手にどの話をしたかを覚えるのは無理でした。トランプの神経衰弱ぐらい楽勝、という程度の記憶力は必要です。

 

 また、月初めには某キャラから「夢の草」をもらうことができ、これによって、忘れていた過去の思い出を一部回想することができます。これによって、その時点で好感度が高いキャラクターとイベントが進行するトリガーが引かれるので、その後の展開には注意が必要です。ここで失敗するとそのキャラクターの好感度が大幅に低下し、終盤近くでこれをやると攻略不能に直結します。

 特に「思い出の種」や「悩みの種」が出現した場合には要注意。「悩みの種」を早めに解決させないと、ターゲットが勝手に解決してしまい話が止まってしまいます。出現から解決までの期間が短いため、かなり工夫を必要とするので、ここがプレイヤーの勘の見せどころでしょう。

 

 ゲーム期間は1年間で、学校の授業がある期間を中心に「話す」ことでイベントが進行していきます。個別のヒロインごとのイベントの数はけっこう多いのですが、発生させるタイミングや好感度の上下などの条件が非常にシビアなものが多く入っています。大半のキャラにおいて、1プレイですべてのイベントを見るのはほとんど無理でしょう。ただしクリア自体はさほど難しくはなく、狙ったキャラを中心として、そのキャラと関係の深い(距離が近い)相手ともコンタクトを取るようにすればたいてい大丈夫です。エンディングにたどり着くだけならばそう難しくはないけれど、やり込むのは非常にたいへんであり、何度も繰り返してプレイする必要があります。シミュレーションゲームとしては非常にバランスの取れた難易度といえましょう。

 ただし、毎回のプレイでメモ取りが事実上必須であること、イベント発生の見極めが難しいわりにセーブ&ロードがやりにくいなどユーザーインタフェースに芸がないこと、ヒロインごとのシナリオパターンが似ていることなどによって、繰り返しプレイがやや苦痛であるのは問題でしょう。また、無関係なキャラをダシにする(種を育てる)ことで話が進むといった“イヤなテクニック”が通じるのもちょっと残念……というのは、そういうプレイスタイルをついつい取ってしまうプレイヤーのスタンスに問題があるのでしょうか(苦笑)。

 

 最後の最後に誰に告白するかをキーボードで入力します。この際、見当違いな名前を入力しても「告白できません」と表示されますが、場合によっては妙な反応が返ってきます。どんな名前を入力すればいいかは、CD-ROM内に同梱されているテキストファイルをご覧ください。

 

 ゲームデザインはなかなかおもしろいのですが、ストーリーはどのキャラに対しても“王道”の枠をでるものではありません。上述のとおり、何度も繰り返すのがだんだんかったるくなってきたのは、このせいもあります。各ヒロインが抱えている“悩み”も、だいたい見た目でパッとわかってしまう範囲内ですし。

 そして何より、主人公のヒロインに対する姿勢が、特に序盤ではかなりいい加減です。最初に出てくるヒロイン候補に対するあいさつの時点でいきなりすごい態度を取るので「こいつと打ち解けるのはたいへん、というところから始めるのかな」と思ったら、すぐに仲直りしてすんなり進みます。このほか、某テニス部のほうをじっと見ていたりしては、ただちに嫌われることはないにしても「スケベ野郎」の烙印を押されかねないでしょうに、それもなし。このように、イベント内容がその後の会話へとあまり反映されず、また会話がイベントへフィードバックへされることもほとんどありません(「悩みの種」などでない汎用的な会話の場合)。要するに、会話内容が単発勝負に終始していて、ストーリーとのつながりがうまくできていないのです。

 また、個別の会話にしても、相手の反応をみながらコミュニケーションを取っていくといった姿勢が希薄で、話題という手持ちのカードをいかに繰り出すかというゲームに終始していて、どのキャラに対しても「よし、この選択OK! 次いこう」となり、会話そのものがあまり楽しめません。そして何より、同じ話題を同じキャラに対して2回以上続けることができないため、たとえ会話内容が気に入っても1プレイにつき1回しか見られないというのももったいない気がします。会話そのもので楽しませるのであれば、会話内容そのものをもっとアバウトなものにしたほうが楽しめるのではないかと。

 さらに、テキストがどうにも妙で、会話文とは思えない妙な結びが入っていたり、間投詞がヘンなタイミングで入っていたりします。会話のテンポをテキストが止めてしまっていることが多々あったのは残念でした。また、話題そのものも時事的なモノが妙に多いので、タイミングを逸すると「……?」となってしまいます。

 

 総じて、意欲的に作られたゲームデザインに比して、それに支えられているシナリオがあまりにも薄いため、どのキャラをプレイしていても、「この種を使うとどうかな…」という方面にしか関心が向かなくなってしまいます。このシステムそのものが苦手と感じられれば、種使いの作業は非常に負担が大きいので、もはやプレイできないでしょう。シナリオの問題点を逐一指摘する以前に、ゲーム性だけで押し切ろうとした点に失敗があるように思えます。

 そもそも、こんなに「気楽に会話のできる娘たち」をデフォルトでたくさん集める必要があったのかどうか、とも思いますが、このツッコミは禁句でしょうか(笑)。

不具合・修正ファイル

 ほかのタスクに切り替えたり、スタートメニューに戻ってロードしたりすると、動作が重たくなったり不安定になったりします。プレイしているだけなら問題は起きませんが、ゲームを中断した場合にはWindowsを再起動させるのがよいようです。

デモ・体験版

 いずれも確認していません。

操作性など

 対応OSは、Windows95/98/Meです。なお、WindowsXPではタイムゾーンを「グリニッジ標準時」にすることでインストールでき、インストール後はもとの時間に戻してプレイ可能だそうです(M1号さんの情報による)。なお「特殊仕様システム手帳型パッケージ!」とやらになっていますが、デカいだけで置き場に困るんですけれど(^^;

 メディアはCD-ROM1枚で、初回限定版には別途ミニサイズ音楽CDが付いています。インストール時に必要なHDD容量は約60MBで、プレイ時にはCD-ROMが必須です。

 画面は600×480表示で、強制フルスクリーンとなります。上述のとおりプレイ中にはメモ必須というスタイルなので、ウィンドウ表示で他タスク切り替え可能というスタイルのほうがプレイしやすいのですが。下部に半透明のメッセージウィンドウが表示されます。一応メッセージスキップはありますが、ほとんど意味がありません。画像切り替えのタイミングが鈍く、操作性はお世辞にもほめられたものではありません。

 セーブ&ロードは、週の終わりにのみ10個所で可能です。しかし、次週での行動(デートの申し込み)を決定したのちにセーブとなるのでやりにくく、またロードも週1回しかできないため、セーブ&ロードでの試行錯誤が非常にめんどうです。

 CGモードは各キャラクターごとのサムネイル表示、イベントシーン回想モードが用意されています。それぞれ、個別のクリアしたキャラごとに見ることができます。逆にいえば、クリアしなければどんなイベントがあるかはわからないので、一応ネタバレに配慮されている…といえるのでしょうか。ただし「想いでアルバム」という表記はセンスないですね(^^;

サウンド

 BGMはPCMで再生されます。特に印象に残っていません。また、ボーカル曲が入っています。

 音声はパートボイス方式となっているため、しゃべったりしゃべらなかったりで違和感がどうしてもあります。会話のバリエーションがウリのゲームであるため、音声パターンすべてを収録するのは非常に厳しいのはわかるのですが、どうせなら音声なしのほうがすっきりしたのではないでしょうか。実際私は、途中から音声をオフにしてプレイしました。

グラフィック

 かわいい系の女の子、といえばいいでしょうか。ファッションなど、かなり漫画的なデフォルメが強いのですが、“この種のゲームヒロインはかわいいことがイチバン”と考える人なら問題ないでしょう。どの娘もアップになったときの顔がなかなかいいのです。ただし塗りがけっこう貧弱なので、パッと見たところ野暮ったさがつきまとうのが残念。

お気に入り

 特にこの1人、というのはいないのですが、あえて挙げるなら水葉。展開がミエミエですけれど、嫌みがないという点では一番です。

印象に残った特定のシーンはありません。

関連リンク先

 さすがに2000年発売、それも一般ゲームとなると、語られることはあまりないようです。難易度の高さ、というより面倒さのために、攻略サイトはけっこう充実しているのがなんとも。

総評

 ゲームの作り方はなかなかおもしろく、ランダム性がないという安心感がありながら適度にリスクを背負いつつ話を進める、という点のバランスは非常にすぐれています。うまくいったときの達成感がいまひとつであること、ユーザーインタフェースがお世辞にもよろしくないことを差し引く必要はありますが、かなりいい線いっていると感じます。

 その一方で、会話のバリエーションが多い割に堪能できるほどの中身がなく、しかもそれがストーリーとうまくつながっていないため、個別の会話そのものが「単発のものがずっと続く」という形になっています。このため、種集め・種育てそのものが目的であり、女の子と「会話をして楽しみながら恋をはぐくむ」ということが二の次・三の次になりかねない(私はそうなりました)点は、非常に大きい問題でしょう。

 取り組みとしては非常に興味深いものですし、また価格設定からは予想もつかないだけのボリュームを盛り込んである点は評価できますが、最後までやりとおすにはかなりの努力を要します。会話(というより話題探し)だけで終えるにはもったいないものであり、個別の会話そのものを有機的につなげていれば、立派な大作になっただろうに…と思わせる、そんな作品です。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
2003年4月21日
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