Bless −Close your eyes, open your mind.− BasiL

2000年9月8日発売
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 このゲームが発売された日は、『AIR』(Key)を筆頭に多くのゲームが発売された激戦日ともいえる日だったのですが、そんな中で発売前からずっと注目していたのが、この『Bless』でした。新規ブランドの処女作ということで実績も前歴もなかったのですが、事前の雑誌掲載情報などから、グラフィックでかなり期待できそうである上、なかなか姿勢も野心的で、面白いものが望めるのではないか、と考え、『AIR』以上に期待を込めていました。

 ところが、実際にプレイしてみると、後述するように、ちょっと感心できないような不具合があれやこれやとたくさんあり、作品としての完成度はあまり高いものといえないのが残念なところになってしまっています。なにせ、アンインストール・インストールを5回繰り返させたゲームは、これが最初です(最後になってほしいものです)。

 パッケージデザインなどは非常にすぐれており、これは、と思わせるものなのですが(ちょっと気恥ずかしい感じのデザインであることも事実ではありますが)、見た目で選ぶのも良し悪しだな、と思わせる作品ではあります。

シナリオ

 主人公・仲原秀晃(変更可能)は、10年前まで住んでいた土地に再び戻り、幼い日に助けを求めていた幼なじみを探すべく、『Masquerade』という出会い系チャットに参加するようになる。喫茶店でのバイトをこなしつつ、彼女の姿を求める彼の前に現れるのは誰なのか。

 

 シナリオ担当は「あごバリア」氏。

 主人公が「幼なじみ」を探す過程で現れた女の子たちとの恋物語、という展開かと思っていたのですが、どちらかというと幼なじみというのは、特定のシナリオを除けば、出会い系チャットに姿を出すための方便として使われているという印象が強く、実際にはさして関係なかったりします(^^;) ただそれでも、やはり「幼なじみ」という設定が最初にあったことをうかがわせるのは、実際に「幼なじみ」が出てくるシナリオが、他シナリオよりもやや内容的に濃くなっているという点にありましょうか(他シナリオが薄い、という見方もできますが…)。

 全体的に、ゲームのテキスト自体は割と軽妙で読みやすく、気楽に進めることができます。大仰な物語を展開するといった雰囲気はなく、特にプロローグ終了からヒロインたちとの顔見せあたりまでの部分はテンポが非常に良いので、気持ちがいいですね。

 

 ゲームをプレイしていく上で、中盤までは、割と雰囲気良く流れていくような感じでプレイできるのですが、後半になると、だんだん問題点が浮き彫りになっていきました。その「問題点」とは、大雑把にいって、以下の3点にまとめられましょう。

 第一に疑問に感じたのは、各シナリオにおいて、ヒロインが抱える「悩み」が設定され、そこでいったん紆余曲折を経る、というプロセスが、あまりにも単純化され過ぎているのではないか、という点です。どのヒロインも、心にさまざまな傷を背負い、その結果臆してしまい行動に対して慎重になってしまうという点では共通しているんですが、その「傷」の描き方、そして主人公への対処の戸惑い方などを描こうとする反面、主人公とヒロインたちとの関係が進展していく過程で、そういった「傷」を主人公がいかに癒していくのか、そしてなぜ主人公が癒し得たのか、そういった部分の書き込みが決定的に不足しています。雪乃関係のシナリオなどはまだいいのですが、特に華蓮シナリオなど、中盤までの展開と終盤の流れとの間に断絶が存在し、一個のラブストーリーとしては破綻しているとさえ言っても過言ではありません。いやしくも男と女とが一対一で結ばれていく展開を描く物語であり、なおかつヒロインが「支え」を求めるということが前提となっている以上、主人公とヒロインとの関係描写に唐突な展開は厳禁であるはずです。内面的な「悩み」といったものを、素材としてあまりにも軽く取り扱っている、という印象があります。

 第二に問題として考えたいのは、上記の指摘とも重なるものなのですが、主人公とヒロインとが接近する契機も展開も、中途半端かつ急速に過ぎること。Hシーンへの流れが唐突と感じるシーンもありましたが、それ以前に、ヒロインが「この男性ならば…」と思ったのであれば、そう思うまでのプロセス描写は必須でしょう。しかし、出会って間もなく、そしていつの間にか惹かれていた、という、恋愛ものとしてはある意味では定番とも言うべき御都合主義的な都合よさが、このゲームシナリオの中でもまかり通っています。しかし、このゲームのテーマに、ヒロイン側の心の救済という重たいものがある以上、このゲームではそういう都合よさを気楽に採用できるとはいえますまい。この点でも、やはり、力の入れ方にムラがあり、シナリオ全体としてのまとまりを大きく欠いている、という感が否めません。

 第三に気にかかるのは、各シナリオ内部における、イベント間での連関の欠如でしょう。チャットと実生活という2つの面で話が進んでいき、特に実生活でのイベント展開によって話が進んでいくわけですが、実生活で配置されている個別イベントの意味づけがあまり明確ではなく、イベント発生が単なる「通過点」にしか思えない上、そのイベント量自体も、話の展開から考えるとずいぶん少な目という点です。要は、イベントが少ない上にぶつ切れに近いわけです。

 このように、ヒロインとのラブストーリーとして見た場合、かなりの問題点があり、雰囲気の良さだけで許せるものではないという状態なのが実情です。

 

 本欄の冒頭で記したとおり、「幼なじみ」の取り扱い方がかなり軽めなので、ゲーム冒頭に出されている、やや重ための「夢」云々という設定は、あまり気にしない方が良いでしょう。こういう手法自体が気に入らない、という方も少なくはないでしょうが、強引に「再会」を劇的なものにしようとした場合、ファンタジーを織り込んだ強引な力技がどうしても必要になってきますが、このゲームでは徹頭徹尾「現実の幸福」にこだわっているのであり、それが整合性をもった結果、こういう形になっているので、私はこの手法は成功していると思います。

 裏を返せば、ゲーム内で使われている「現実の幸福」にこだわるという姿勢は、主人公の中に潜むロマンティシズムをやんわりといさめ、それを実際に出会うヒロインたちの「現実の悩み」に直面させる、という方向を狙っているのかも知れません。まぁ、考え過ぎかも知れませんけれど。

 基本的に、救いのないエンディングはないのも、この「現実」を背景にしているため、不自然さは特に感じませんでした。

 

 チャットを間に含む、というスタイルは、時折見掛けるようになったスタイルのゲームですが、私自身はチャットの経験はありません(リアルタイムで文字でのやり取りをするというのがどうも苦手で…)ので、自然なのか不自然なのか、といったコメントはできません。しかし、このゲームの中で展開されているチャットを見ると、楽しそうだな、とは思います。

 Hシーンは、さほど濃くはありませんが、シチュエーション的に割と凝っています(^^;) シナリオによってはやり逃げ同然というものもありますが。

ゲームデザイン

 現実世界でのヒロインたちへの対応と、チャットでの対応とによって話が分岐していくタイプのアドベンチャーゲームです。ヒロインの分岐は、基本的に序盤で起こるようで、それ以降はコースアウトするかどうかのようなので、難易度的にはさして高いものではないでしょう。なお、チャットでの選択は基本的に二択のみですが、関係するキャラを絞り込むには非常に重要です。何度かプレイしていくと、チャットでの対処法や注意人物(爆)もすぐにわかるでしょう。

 エンディング対象キャラクターは6人ですが、ハッピーエンド対象キャラは5人だったりします(^^;) この差については、実際にプレイしてのお楽しみ、ということで(別にネカマエンドとかいうオチではありませんので、ご安心を)。

不具合・修正プログラム

 非常に多くの不具合があります(ゲームの途中でフリーズする、チャット画面で抜けられなくなる、などなど)し、またそういった不具合はかなりの程度環境に依存するようですので、必ずしも一定の方法で対処可能というわけではなさそうです。BasiLのWEBサイトに修正ファイルがアップロードされていますが、私の場合、これを用いただけでは不具合(雪乃関係のシナリオで無限ループが発生する)は解消しませんでした。結局、アンインストール・再インストールを数回繰り返し、やっとプレイできるようになりましたが、ここまでプレイ環境が不安定なものにならざるを得ないのは、『悲劇』(SAINT)以来です。商品としてリリースする以上、もっと安定したソフトウェアを供給してもらわないと困ります。なお、修正ファイルを使用した場合、最初のファイルとはセーブデータに互換性がないそうなので、プレイ前に修正ファイルを当てておくことをお勧めします。

操作性など

 CD-ROM2枚組となっており、一方がインストール用ディスク、もう一方がプレイ時に必要なディスク(BGMがCD-DAであるため)となっています。操作はマウスオンリーで、キーボードは受け付けません。

 画面は、640×480ドットの強制フルスクリーンとなり、修正ファイル使用前ではタスクの切り替えもできません(修正ファイルでは「Alt+Tab」で可能)。画面下部にメッセージウィンドウが表示され、その右端部にあるボタンを押すことでメッセージスキップとメッセージ読み返しが、右上部にあるボタンを押すことでシステムメニュー・セーブ・ロードが可能です(ただし、これらはいずれもチャット中には機能しません)。メッセージスキップは、既読・未読の区別はありません。また修正ファイルを当てる前では、選択肢に到達しても止まらないので注意が必要です(修正ファイルでは改善されています)。セーブ&ロードは、チャット中以外の任意の位置で10ヶ所まで可能で、プレイ中の実日時が記録されますが、どうにも今ひとつ使い勝手がいいとは感じなかったのは、マウスクリックの反応の鈍さ、そして、ビジュアルデザインに機能面でのデザインがまったく追いついていない点にあるように思えてなりません。

 スタートメニューから入れるおまけモードでは、CGモード・BGMモードがあります。CGモードでは、見たCGがサムネイル表示されます。ヒロインごとにサムネイル表示されます。

サウンド

 BGMは、CD-DAで再生されます。曲数が多いのはいいのですが、ちょっと1曲あたりの時間が短い気がします。BGMにもそれなりに期待してはいたのですが、キャラやシーンの雰囲気とうまく合致していたとまでは思えず、どちらかといえば「無難な作り」の曲、という印象です。なお、OP/ED曲にはヴォーカル曲が収録されており、どちらも曲はなかなかのものなんですが、ヴォーカルが余計なおまけになっていて、聴くに絶えません(^^;) こういった例は『Eye's』(エスクード)のような例もありますが、へっぽこヴォーカルはないほうがずっといいのに。

 音声はありません。最近の複数CD-ROM構成恋愛ゲームとしては珍しいのですが、チャットという特殊な舞台を用いている以上、現実世界での「音声」を取り入れても良かったのでは、と思います。

グラフィック

 原画担当は、西又葵さん。とにかくキャラデザは非常に気に入っており、表情変化なども実に巧みですね。人物CGを見て「キレイだな」とインパクトを受けたのは、おそらく『Piaキャロットへようこそ!!2』(カクテル・ソフト)以来だと思います。光の使い方が上手である上、女の子が照れているときの表情がまたいいんですよ。立ちCGがかなり大きいので、実際の距離感から考えると違和感がないでもないですが、女の子が可愛いからまぁいいでしょうか。

 背景も非常に丁寧な彩色で、言うことないと感じます。

お気に入り

 矢野原まきえですね。彼女自身の境遇もさることながら、自分の考えや行動の見せ方、そして主人公や友人との関係などをきちんと示してくれたことが、気に入った第一の理由です。

関連リンク先

 SHEOさんのサイトで取り上げられています。基本的に、私と似たような感想ではありますが、どうも私ほど不具合関係で悪戦苦闘された方も少なかったようで(T_T)

総評

 シナリオ面でかなり辛辣なことを書いてきましたが、それはさほど大きい問題ではないと思います。それよりも致命的と思えるのは、やはりこのゲームがそのままでは到底正常に動作しない、というシステム面での問題が存在しているからです。グラフィックの美麗さという、本来であればそれだけで大きなアドバンテージになりうる長所をすべて食いつぶしているのは、他ならぬこの欠点のためである、と言わざるを得ません。この不具合もまた環境に依存する可能性が高く、プレイできてもそれは紙一重の状態ともいうべき経験を考えれば、動作確認ができない状態でこのゲームを購入するのはかなり危険である、と言ってもよいかと思います。グラフィックは何処に出しても通用する水準のものですし、シナリオもプラス面でのこだわりを感じる以上、磨けば光るだけの要素は十分に備えているのですが、素材が良くとも商品足り得ないのでは話になりません。

 裏を返せば、システム面での改善がなされれば、それだけで大きく化ける可能性もある、と見てよいでしょう。現状では、シナリオ面でもやや物足りなさは残りますが、もうちょっと「製品」としての完成での高さにこだわってほしい、それが何よりの要望です。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
2000年9月27日
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