Canvas 〜セピア色のモチーフ〜 カクテル・ソフト/F&C/FC01

2000年11月24日発売
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 1999年から2000年にかけてのF&Cのゲームには、どうしても「粗製濫造」というコトバがよくあてはまる…そう思わざるを得ない作品を多く目にしてきました。大外れだった『プリンセスメモリー』に引き続いて『きゃんばに6』など、いろいろと期待を裏切ってくれた作品をつかまされるにつけ、自然と手が離れつつあったのですが、この『Canvas』は、プレイされた方の評判も割と良いので、多少意外に思い、発売後しばらくたってからショップで探す…ものの、どこにも見当たらず(T_T) 探し始めてから1週間ほどたってから、やっとのことで入手することができました。

 パッケージサイズは、F&C標準で、箱の形も通常どおり。マニュアルの装丁なども基本的には従来のまま。どちらかといえば原色を多用して落ち着きに欠けるタイプのデザインが多かったF&Cとしては珍しく、ポワーッとした感じになっています。地味といえば地味なんですが、逆に「こういう絵だ」とわかりやすいですから、プレイをして「騙された!」と思うことはないでしょうね。 ただねぇ、パッケージ裏面の内容紹介の誤字脱字はいただけませんな(^^;

シナリオ

 主人公・麻生大輔(姓名とも変更可能)は、絵画で特待生入学しているが、自分の絵も学園の宣伝に使われているのみであると感じて絵筆を取れなくなり、このままでは特待生の資格剥奪が迫る、という事態になった。そんな彼の周りにて出会う女性たちとの、秋の物語は、彼をして再びキャンバスに向かわしめるのであろうか。

 

 シナリオは、宮村優・雨城弘明・トノイケダイスケ各氏の担当。3人の担当している各シナリオごとの雰囲気はだいぶん違いますが、矛盾が鼻につく、ということはありません。

 ヒロインは、一応5人(一応、というのは、ちょっと微妙なキャラもいるためです)。幼なじみ、義理の妹、体育会系努力娘、教育実習生、不幸少女(笑)といったところが揃っています。バラエティに富んでいるので、これだけいろいろいれば、それなりに萌える…かとは思いますが、実際には、見た目が幼そうでも芯は強いのかと思いきや本当に幼いとか、キャラの描き方が微妙にズレているような観のある人物もけっこういます。キャラとして立っているのは、恋&藍の両名じゃないかと思いますけれど、この判断は人それぞれでしょう。

 彼女たちの行動は、基本的にはオーソドックスなものですが、いろいろと思わせぶりな発言や行動をしてくれるキャラもおり、あれこれと考えながら何度もリプレイしたくなるシナリオもあります。その反面、キャラの特徴を過度に強調しているのがハッキリとわかるものもあり(天音が好例)、やや鼻についたのも確か。一歩間違えると「お前、何も考えてないだろ」とツッコミたくなる行動を連発されるのは、ちょっと参りました。

 ところで、「教育実習生」が派遣されるのは、小学校・中学校・高等学校・養護学校にかぎられていたと思うのですけれど。「高校生」という表現はXゲームのキャラでは不可、というのであれば、「教育実習生」が派遣されてくる学校に通っている彼ら・彼女らは、「ヤバい年齢」であることが確実なんですけれどねぇ(^^;

 

 印象に残ったのは、主人公の描き方がなかなかにいいこと。

 壁にぶつかって、今まで描けていた絵が描けなくなった、という、お世辞にも前向きとは思えない主人公ではありますが、こういうパターンとしては、『Rainy Blue』(R.A.N Software)のような例もあります(ただ、あちらは「恋人が突然…」という「衝撃的な出来事」の発生を前提としているので、漠然とした「壁」に突き当たったというこのストーリーとは展開がまるで異なります)し、これだけを見ればさほど目新しいことではないでしょう。

 ただ基本的に、誰に対しても悪ふざけをしたり誤魔化したりといったことはせず、非常に誠実かつ実直である点が、まず目を引きます。最近のゲームでは、日常の楽しさを演出する中で「主人公とヒロインとの漫才」という手法が使われることが定番化しておりますが、そういう手法はあえて取らず、主人公の心の動きを比較的わかりやすい形で出していた点は、非常に新鮮に感じました。

 

 さらに一部のシナリオにおいては、主人公は「絵が描けない」ことについて悩みながらも、その「悩み」の原因として「自分に嘘をつくことを極端に恐れる」という姿勢を取っているのが、私には非常に好感を持てました。

 この主人公が「嘘」と考えているのは、他ならぬ、現実から逃れること、と思っていいと考えられます。ところが、主人公は、過去の自分の行動それ自体に、この「嘘」が含まれていると考え、その結果、この「現実から逃れる」ことを単純に否定するというよりはむしろ、自分を律する基準として拒絶しているように感じられます。

 別に、主人公の人格が高潔だとかいうわけではないのですが、自分への甘えそのものを嫌う結果、自縄自縛に陥りながら、しかし、他者(ヒロインほか)に対する度量はそれなりに広い、という姿勢をずっと保っています。

 ウジウジ悩む主人公、というのは今までも見たことはありますが、こういう「大人への成長」をしっかりと誠実に出している主人公を描ききったゲームというのは、ほとんど見当たらないように思えます。

 

 あるいは、主人公はパッとしないものの、ヒロインが挫折などにどう対処するかを(プラス方向に、あるいはマイナス方向に)示すことで、主人公が成長していく、というシナリオもあります。こちらでは、「精一杯」というニュアンスが、上記のタイプとはまた違った形でうかがえます。

 

 主人公が女性たちとのふれあいを通じて、再び絵を描けるようになっていく、というのが基本的なストーリー展開となっています。あくまでも学園生活が舞台となっていて、学校と無関係なキャラは誰もいません(主人公の父親や天音の母親など、姿も見せませんし…)。

 一部、ちょっと異様と思える発言をするキャラもいますけれど、まずは日常生活の枠からはみ出すことのない舞台設定になっています。主人公やヒロインが消えたり死んだり復活したり飛んでったり、ということはありません。

 基本的な流れは上の通りですが、大雑把にいって、主人公とヒロインとの関係は、大きく分けて「主人公先導タイプ(ヒロインが受動的で「待ち」に徹する)」「相互依存タイプ(主人公とヒロインとが共にたがいを求める)」「ヒロイン先導タイプ(ヒロインの行動や姿勢が契機になる)」とに分類できます。それぞれに応じて、主人公の行動の変化パターンが微妙に違ってくるのが個人的には興味深いものと感じました。

 もっとも、「あくまでも基本は恋愛ものなのだ」と見れば、上の区別には、大した意味はありません。上のパターンでの区別とキャラに対する印象とは、全然一致しなくても不思議ではありませんので。

 

 一方、恋愛モノとして見た場合、萌えられなければそれでオシマイ、という評価になる可能性も高いと思います。主人公が「絵を描けない」という設定と、主人公・ヒロイン間の関係(恋愛感情などなど)とのシンクロが取れているとはお世辞にも言えませんから、変化の乏しさで飽きてくることも考えられます。

 身も蓋もないことをいってしまえば、ヒロインは主人公の行動変化にキッカケを与えるための触媒にすぎないため、彼と彼女とがいてこその物語、にはなっていません。このため、各キャラの「味」(個性といってもいいか)を捨象すると、さほど惹かれるものはない、と思われる可能性も充分にあることを、あらかじめお断りしておきます。

ゲームデザイン

 昼休みおよび放課後に行き先を決定(行き先に誰がいるかはすぐにわかります)し、出会った相手との会話中に出た選択肢を選んで進める、というタイプの、オーソドックスな恋愛ゲームです。学園生活自体がルーティンワーク化してしまいがちになるのがこの種のゲームの宿命ですが、1回のプレイ時間がさほど長くないうえ、各キャラごとに用意されているイベントが「繰り返し」感を抱かせないようなものになっているので、ストレスなくプレイできます。

 1人に狙いを絞り、素直な選択をしていけば、さほど問題なくハッピーエンドに到達できるでしょうし、CGやイベントの漏れなどもないようです。難易度は低いので、自信がない、という方も心配ないと思います。

 ただし、エンディングフラグ方式が採られているようで、初回から任意のキャラを攻略できるわけではないようです。このため、あるキャラを最後まで終えたら、次のプレイはデータをロードせずに最初からやり直すことをお勧めします。スキップ機能(未読・既読判別可能)もありますし。

不具合・修正プログラム

 私がプレイしたときには、特に不具合などは発生しませんでした。

操作性など

 インストール画面ではフルスクリーンになって、天音が花に水をやる、という画面になります。インストールが終わったときの彼女の表情がなかなか(^^; そういえば『PALETTE』のインストール画面では、爆弾をぼけーっと恵理が眺めている、というのがありましたけれど、あれってインストール作業が終わっても爆発しないのがつまらん、と思った記憶があります。

 基本的な操作はマウス・キーボードの双方で行うことができますが、エンターキーを連打していると、選択肢が表示されたときに意図しない選択肢を選んでしまうことがあるので、マウスで進める方が安全ではあります。

 画像表示は、640×480とフルスクリーンとを切り替えることが可能で、下部に半透明のメッセージウィンドウが表示され、システムメニュー・クイックセーブ・クイックロード・メッセージスキップが可能です。メッセージスキップは、既読・未読の判別が可能です。

 セーブ&ロードは任意の位置で可能で、セーブ時にはゲーム中の日時と、セーブ時の実日時とが記録されます。また、オートセーブ機能があるので、誤って選択してしまった場合などはこれを使ってリカヴァーすることが可能です。

 トップメニューの「OPTION」を選択すると、CGモード・BGMモード・Hシーン鑑賞モードに入ることができます。CGモードでは、各ヒロインごとにサムネイル表示され、立ちCGも表示されます。

 なお、F&Cのマニュアルは毎度のコトながらなかなか凝っていますが、今回は比較的オーソドックスで、キャラ紹介、プレイ方法、スタッフコメント、原画資料といった内容です。デザインセンスがわりとよく、好感を持てます。目を引くのは、やっぱり充実した原画資料でしょう。しかし、メインの原画担当である☆画野朗さんって、原画のワキにいろいろコメントを書き込むのがお好きみたいですね。

サウンド

 BGMはMIDIですが、例によって複数フォーマットに対応しているので、環境によってどうぞ。別段印象に残ってはいないのですが、悪い曲ではなかったと思います。

 音声はわりといいとは思うんですが、以前のF&Cレギュラーメンバーはさほど多くないのがちょっと残念。それよりも問題なのは、主人公の名前部分(性が固定で名だけ変更可能です)が無音になること。これでは萌えも何もないので、せめてデフォルト名の時はその名前で呼んで欲しいなぁ。名前に「お兄」と入れて天音シナリオをプレイすると面白いかも…と思ったら、同趣旨のことがマニュアルに書いてありました(笑)

グラフィック

 原画担当は、☆画野朗・魚・ぽん酢各氏。F&Cの以前のゲームでは、原画家ごとにキャラがまったく違って違和感バリバリ、というケースがかなりありましたが、『Canvas』では、特にそういうことはありません。

 ボワーッとした感じのグラフィックですが、全体的に穏やかで包み込むような雰囲気を感じさせます。ゲームタイトルはここから取ったのではないか、と思わせるようなソフトフォーカシングで仕上げられた独特の塗り、そして背景画像の輪郭は、ゲームに独特の雰囲気を出させることに成功していると感じます。

 キャラデザは3人の方が担当されていますが、違和感はそれほどなく、みなそれぞれいい味を出しています。ただ、天音が正面を向くと、やっぱり「フィーリア」(『プリンセスメモリー』のヒロイン)に見えてしまうなぁ。個人的には、制服姿の恋立ちCGが好み。

 ただ、問題点としては、イベントCGが非常に少ないこと。どのキャラもそうだ、と言い切ってしまってもいいぐらいです。キャラ描写やシナリオは充実しているし、グラフィックもクオリティではまず問題ないだけに、量的な不足はちょっと残念です。藍ちゃんに一枚絵CGがないのは急造キャラの宿命かも知れませんけれど、メイン級であっても「こういうイベントシーンではこういう絵が出てくるだろう」というところで何もない、というのは寂しいことこの上ありません。

お気に入り

 誰がなんと言おうと、やっぱり藍ちゃん可愛いですわ(*^^*)

関連リンク先

 私は、このゲームの主人公の「悩み方」に対し、その真摯な人間くささに少なからず好感を抱いたクチですが、Web上での評価においては、「ただの拗ねたガキ」とか「自意識過剰な主人公がひたすら自分の思いに閉じこもる」とかいったものもありますので、主人公が悩んでいるという姿勢それ自体に関して、人によって評価は分かれるのでしょう。かの三島由紀夫は、「太宰治の苦悩など、鉄棒をやればふっとんでしまう」と喝破したぐらいですから…ちょっと違うか?(^^;

 私のリンク先ページでは、SHEOさんのサイトで取り上げられています。

総評

 まずは、わりと雰囲気が良く、キャラをうまく使って実直にまとめた佳作、といった評価をしたいと思います。その中軸には、主人公の描き方と、主人公とヒロインとの関わり合いとが、斬新ではないながらも結構シッカリできている点にあります。

 恋愛ものとしてみると、キャラ萌えがしやすい幼いヒロインを、パターンに従って揃え、シナリオの質量ともそれなりのものにおさえ、また大きく引っかからせることなく、素直にプレイできるようになっている作品と思えます。ただ、「萌えという毛針で釣り上げるんだ文句あっか」と開き直っている作品では決してなく、主人公の描き方、またヒロインの態度の示し方など、地味なところでかなりこだわって作られているという印象を受けます。

 シナリオ重視派を自称される方に対してお勧めできるかどうか、となると、ちょっと自信を持てませんが、単に「萌え」だけだ、という作品ではないだろう、と思っております。実際、私は、特に誰に対して萌えたわけでもなかったのに、それなりに気に入ってしまいましたから。もっとも、あくまで「ラブストーリー」として捉えると、かなり薄目なので、その点はご了解のほどを。

個人評価 ★★★★★ ★★☆☆☆
2001年2月5日
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