Hello Again アクティブ

2000年5月26日発売
ご意見などは掲示板へどうぞ

 学校、幻想、超能力、過去…そういったキーワードをつなぎ合わせれば、いとも簡単にもっともらしいシナリオというものはできあがるものなので、この『Hello Again』を最初に手に取ったときも、シナリオ面については大して期待することがありませんでした。ただ、パッケージ表紙に踊る女の子の顔が奏でるさわやかな感じが、私を引き込んだというにすぎません。そんなゲームですが、選択の結果は、吉と出たのか凶と出たのか。

シナリオ

 主人公・行平東吾(変更不可)は、1学期の途中という半端な時期に自主退学を余儀なくされ、ほかに受け入れ先もなかったことから、特殊能力「DA」を持つ生徒を抱える瀬戸際学園へと編入する。学園紹介のホームページで見かけた女子学生が妙に気になる主人公。寮であてがわれた彼の部屋は、3人の娘たちが遊び場として占拠しているなど、初日からてんやわんやの騒ぎとなるも、それなりに順応していく彼の夢には、その女性が頻繁に出てくるようになる。彼の学園生活はどのようなものになるのだろうか。

 

 シナリオ担当は「枕流」氏。

 冒頭で書いたとおり、このゲームのシナリオにはあまり期待していなかったのですが、実際には思いのほか(失礼)きちんとした描写がありました。

 学園恋愛ものといえば、何となく主人公が女の子に気を遣うようになって、女の子の方の素振りは傍目から見ていても「いかにも」というシロモノ、というものが大方のパターンでしょうし、このゲームもそういった通常のパターンを踏襲しているものだとばかり思っていたのですが、そうではありません。主人公の心の中には、「あの女子学生」が必ず沸き上がっていて、ヒロインの側は、その「つかみようのない状態」に対して、やきもきする、という状態になります。つまり、ヒロインは「主人公を振り向かせる」という存在になっているわけです。さらに、折々、ヒロイン側でのセリフなども挿入されるため、否が応でもヒロイン側にプレイヤーが感情移入しやすくなっています。

 特定のヒロインとのハッピーエンドは5とおりあり、それらの中でも「ヤる、仲良くなる、以上終わり」という身も蓋もないものは確実に存在しているので、全体を評価しようとすると過大に語ることはできませんが、おそらくメインと設定されているであろう泉深、そしてサブ格の中では第1位といえる扱いを受けている真沙魚(まさお、と読みます…このゲームのキャラ名は妙なのばっかです(^^;)に限った場合、ここが実にうまく書かれており、決して「あぁはいはい、こういう2人がこうなってこう終わるんだな」というわけではありません。それでいて、意外な展開が次々と起こって見る者をわくわくさせる、というのではなく、展開自体は比較的おとなしく穏健であるのに、退屈とは感じにくい書き方ができています。

 泉深の場合で見ると、主人公への対応は「つっけんどん」「態度がデカい」「口が悪い」といった類の言葉が最も似合うという状態が最後まで続くのですが、そのぞんざいな対応は、彼女自身が主人公に対して決して無関心ではいられなくなっていること、そして彼女の心境と行動とに対し、ほかならぬ彼女自身がうまく説明できない状態に陥っていることに起因しています。最初は「態度がかわいくない女」にしか思えないのが、いつしか、プレイヤーサイドにも「無理している」と映ってくるようになります。この流れが非常に自然で、「急に惚れて急にくっついた」という不自然さを残していません。彼女は、ラストで涙ながらに主人公に想いをぶつけるのですが、このシーンが実にいきているのは、この「流れ」が自然であるゆえでしょう。やせ我慢の美しさ、なんていうのはすでに時代遅れの化石にすぎないのかもしれませんが、彼女の行動にはそんなことを思ったりしました。

 真沙魚の場合も、ふだんの対応自体が「最初からちょっと気にかけている」と勘ぐらせるギリギリのラインをうまく書き、いくつかの小イベントを契機に彼女が主人公へと猛烈にモーションをかけることが、自然になっているのが好感を持てます。普通、裸エプロンで迫ってきたりしたら、発情した牝犬にしか見えないのですが、彼女の場合、主人公を振り向かせようとする気持ちが不器用ながらに表出している、というのがきちんと出ているので、嫌らしさがないんですね。主人公に対するモーションは、一歩離れてみるとかなりしつこいものがあるのですが、実際にプレイしている間は、ヒロイン側にはひたむきさというプラス面を感じこそすれ、しつこさというマイナス面を感じることはありませんでした。折に触れて、彼女が溶けているシーンがうまく挿入されているのもプラス材料でしょう。

 

 さらに、日常の会話を重ねていくテンポがよく、そのノリも大仰すぎず滑稽に走らずというところをキープしているので、ゲラゲラ笑うというよりは、ほのぼのとしながらやり取りを眺めることができます。いうなれば、穏やかな流れの中でのんびりとなごむことができる、とでも言えましょう。中盤以降になると、会話の主体が主人公に限定されず、女性そのほかの別キャラクター視点で語られるケースも出てくるので、やり取りのバリエーションに幅が広がり、なおかつ「あっちったりこっちったりの不可解感」を覚えることもないなど、よくバランスが取れていると感じます。

 個別のセリフを見ても、特にパニクったときのあわあわした声など、音声付きゲームの利点をうまくいかしており、間の置き具合なども軽妙で、非常に好感を持てます。

 

 ただ、「超能力」という題材を使い、さらにそれをシナリオの中でかなり組み込んでいるケースが多いにも関わらず、それが決定的にシナリオを左右することはほとんどなく、また上記2シナリオに関しては、少なくとも主人公やヒロインたちの「能力」はほとんど発揮されることはありません。一応、それなりに説明をつけようと思えばつけられる設定ではあるのですが、看板倒れという印象がないでもありません。

 否、「超能力」自体は、中心的な題材ではない、と見ることも可能でしょうが、他にも、「過去と現在」そのほかいろいろと意味深な雰囲気を漂わせる設定を埋め込んでいる一方、それらの大半がさほど料理されないままになっているため、どうにも惜しいというかもったいないというか、肝心のところが空虚といったイメージを抱いても無理からぬことでありましょう。やり取りは非常に楽しいだけに、こういった設定を「演出」の中で昇華することさえできていないのは、どうにも残念です。

 

 人間関係にも、かなり不満が残っているのは事実です。例えば真沙魚シナリオの場合、いけ好かない野郎がかなり関わってくるのですが、この野郎の処遇に関して、すっきりさせない形で終えてしまい、そのまま幕を引いているのは、あまり気分がいいものではありません。悪は必ず滅する、とまではいかないまでも、せめて悪役には悪役なりの場を見せてほしかったものです。憎まれっ子世に憚る、では、物語として起伏も何もありません。悪役ヅラした人間が、実は頼りになるキャラ、というのは悪くないんですが、ホンモノの悪役も確実にいるもので。

ゲームデザイン

 ヒロイン5人に対してそれぞれのエンディング、そして誰とも結ばれないエンディングの、合計6つからなるアドベンチャーゲームです。ヒロインとのイベント回数に応じてフラグが立ち、それに応じてどのエンディングに到達するかが決定します。各シナリオ間のボリューム差はかなり大きく、特に某メガネっ娘など、「シナリオ」と呼ぶに値するほどの内容はなかったりします(^^;)

 学園恋愛ものでは、1日を規則的に区切ってその時々の行動パターンによってイベントを発生させ…というのが定番パターンでしょうが(『To Heart』ほか事例多数)、このゲームでは行動選択のパターンを微妙にずらし、また中盤から終盤にかけての話の変化に際して、背景となる出来事をうまく本筋と並行させることで、時間の流れを単調なものに納めることなく、うまく引き込んでいきます。さらに、個別のイベントのひとつひとつを小さい独立ユニットとしてまとめており、展開とイベントとの間の妙なギャップに白けることもありません。このあたり、簡単なようで実はなかなか難しいことをスマートにやってのけている、という気がします。

不具合・修正プログラム

 私の環境では、特に不具合などは発生していません。

操作性など

 アクティブおなじみのすぐれたユーザーインタフェースは、このゲームでも健在です。

 CD-ROMを挿入するとセットアッププログラムが自動起動し、インストールの際には、最小/標準/最大の3とおりが選べます。最大インストールをすれば、CD-ROMなしでゲームを起動することが可能で、BGM・音声ともオンにできます。

 操作には、マウス、キーボード、ジョイパッドが使用可能です。マウスとキーボードとはいずれも自由に使い分けることができ、画面上のクリックポイントやキーボードのショートカットキーが多数用意されています。

 画面は、640×480とフルスクリーンから切り替え可能です(デフォルトではフルスクリーン)。基本的に全画面表示で、下部にメッセージウィンドウが半透明表示されます。画面表示は「標準速/高速/最高速」から選択できます。

 メッセージ速度表示の調整はなく、すべてノーウェイト表示。ただし、メッセージの自動再生機能があります(「F8」キー)。メッセージウィンドウの上側にあるボタンをクリックすることで、システムメニュー呼び出し(右クリックでも可能)・メッセージスキップ・メッセージウィンドウ消去・メッセージ読み返しが可能です。また、いつでもヘルプを見ることができます。メッセージスキップでは、既読・未読を判別でき、既読文のみスキップ・強制スキップの別、ファンクションキーを用いての一発操作など、非常に細かいカスタマイズが可能となっており、リプレイがまったく苦にならない配慮がなされています。

 セーブ&ロードは、任意の位置で10個所まで可能です。シナリオ数などを考えれば妥当な数でしょう(というより、アクティブのゲームでは標準仕様ですが)。また、プレイ中、オートセーブが行われるため、ゲーム中で見たテキストやグラフィックは自動的に記憶されます。セーブを「F2」キー、ロードを「F3」キー一発で可能というのも嬉しいところ。また、オープニング画面に戻ることもできます。

 冒頭の「おまけモード」では、CGモードとBGMモードに入れます。「アクティブメンバーズ」の中で、寄せられたユーザーの意見とスタッフのコメントなどを見ることができます。また、エンディング確認をすることも可能です。

 CGモードは、通常CGとHシーンCG、人物パーツ(立ちCG)、背景CGとに分かれ、それぞれサムネイル表示されます。回想モードもあります。BGMモードでは、各曲(曲名あり)ごとに再生できます。また、テキストおよびCGの情報については、トップメニューで初期化が可能となっています。1回目でないと見られないシーンといったものがあるわけでもないので、必要性は別にないと思いますけれど。

サウンド

 BGMは、PCM(DirectMusic)/MIDIから選択できます。ポップな感じの曲がそれなりにいい感じではありますが、特に印象に残るほどのものではありません。学園ものとして可もなく不可もないといった線を維持している、といったところでしょう。

 音声は、なかなか各キャラの雰囲気をよく出しています。全員音声あり・主人公のみカット・男性カットなど、いろいろオプションを選択できるので、好みに応じてゲームの彩りを変えてくれるのもよいところでしょう。ところどころ、テキストの読み間違いなどが耳につきましたが、演技自体は非常にいいと思います。

グラフィック

 原画担当はセンキチロオさんという方。この人の絵、『くすり指の教科書2』などでおなじみの、風上旬さんと非常によく似ているんですよね。最初に広告絵(パッケージ絵と同じです)を見たときには「風上さんの絵がいくぶんスマートな感じになったかな」という印象だったのですが、どうも雰囲気を非常に似せているような感じです。

 立ちCGでは、キャラクターがやや無表情に突っ立っているだけなので、かわいくない(特に泉深)というのが一番の問題でしょう。立ちCG自体のバリエーションはそれぞれさほど多くないものの、フェイスウィンドウで各キャラクターの表情をフォローしています。ニコニコ笑っている真沙魚の立ちCGはなかなか好きです。

 一枚絵CGは、どの娘もかわいく描けているので、通常画面から切り替わると「この娘、誰?」と言いたくなったことがありました。後ろから抱きすくめられて身を固くしている通常シーンの泉深、結婚式やけっぱちモード泉深の両CGがけっこう好きです(^^)

 背景CGのパターンがあまりないため、特に序盤では、展開がどうなっているのかを把握するのがやや辛かったという点も付け加えておきましょう。

お気に入り

 真沙魚が一番ですね。告白を決意したときにきゃーきゃーしているさまが非常に女の子女の子していて、それでいてそれ以降の行動も頑張り屋さんであることを示していて、非常にいいです。だから……あの、逃げないで!というセリフに撃墜されました(*^^*)

 2番手にくるのが、泉深。エンディング間際で涙ぐみながら主人公へ詰め寄り、思いのたけをぶちまけるシーンは、必見ものです。

関連リンク先

 らまひすとさんのサイト(閉鎖)に、詳細なレビューがありました。また、SHEOさんのサイトにも感想があります。

総評

 意外な当たりゲームだった、というのが、何よりも正直な感想です。購入動機はといえば、そのさわやかな表面という、いわば表ヅラだけだったのに、中身がわりとしっとりした、それでいて涼やかな雰囲気をよく出している佳作だった、というところでしょう。

 もちろん、シナリオ自体にも、設定をいかし切れていないとか、荒削りなところがかなり残っており、このゲーム自体の完成度という点で評した場合、まだまだと言うべきところもあるのは事実です。しかし、それだけに留まらないあれこれの魅力、特にキャラクターのやり取りや心情描写という、キャラゲーとしてプリミティブな部分をしっかりと固めている点で、高い評価を下すに惜しくない作品である、と考えています。また、気持ちの裏返しとして散々憎まれ口を叩いたり、はにゃ〜と溶けてしまったりする娘が好みであれば、それで問題ないでしょう。

個人評価 ★★★★★ ★★★☆☆
2000年8月28日
Mail to:Ken
[攻略ページへ] [レビューリストへ] [トップページへ]