家元 ZERO

2000年2月4日発売
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 私は「日本の伝統」という言葉と「格式」とを直結させるのが大嫌いなのですが、その背景には、自分が「格式」というものと無縁に育ってきたことがあります。また、無条件に「日本」という言葉をもって「日本国」をあらわすものと見なすのも嫌いだったりします。にもかかわらず、「格式」という言葉で縛られるような習慣の中に、「日本」的なるものを見出すケースは、確実にあります(その「日本」が、近代以降において確立した概念であることを念頭に置かないといけないのは言うまでもありませんが)。

 さて、振り返って18禁ゲームに目を向けると(振り返りすぎだってば(^^;)、こういう「格式」をスタートとして、あるいはその呪縛を逆手にとって何らかのストーリーを紡ぎあげる、というゲームは、ほとんどお目に掛かったことがありません。旧家の狂気、という次元であれば、例えば『お兄ちゃんへ』(Guilty)のように、メインシナリオがワヤになっているという事例がありますが(^^;)、このゲームのパッケージからは、「何か一癖か二癖ありそうだな」という程度の印象しかありませんでした。ZEROのゲームといえば、今まで『許嫁』しかプレイしたことがなかったので、はたしてどんなもんかいな、と思いつつ…。

シナリオ

 主人公・鳳凰寺倉ノ介(姓名とも変更可能)は、華道の名家である鳳凰寺家の次男で、二十歳を迎える大学生。立花に非凡な才を見せるも、兄への気後れなどのために家から離れていたが、余命幾ばくもない父の申し出を受け、兄と次期家元をめぐる決戦に参加することになる。その決戦とは、女体を花器として用いる「裏神仙流」の勝負をもって決める、というのだ。期間はわずか1か月、その間に彼は、満足できる「花器」を作り上げることができるのだろうか。

 

 「これが伝統であり格式なのだ」という問答無用の設定には、思わず笑ってしまいました。狂気がはびこる空間とか、人が目の前で死にかけているとか、本当ならば神妙かつシリアスな展開であるはずなのに、そのあまりにもばかばかしく反論の余地がない設定は、まさに「笑って済ませろ」というものでしょう。「なんでやねん」とツッコミを入れてしまうと、そこでこの話はオシマイです。まず、無理で無茶な設定から始まることを受け容れられるかどうか、そこが最初の分かれ道でしょう。

 さて、「花器」となる「女体」の選別、と称して、「候補」を選んで「育て上げる」わけですが、そもそも「茶器」とするのに、どうしてそういう「修行」が必要なのか、よくわかりません。「花器」という「物」を「作り上げる」際に信頼関係が必要だ、というお題目は、こういうゲームでは必然的に出てくるでしょうからそれはいいのですが、ヤってることはほとんどその「信頼関係の具体的な構築」ばっかりです。主人公はセンスがあるとはいっても、もともと「器」に対する造詣がどの程度あったか、というくらいの説明はあってしかるべきでしょうが、実は何も語られていません(^^;) さらに、その過程を見ても、実は親父に惚れてる娘が不埒なことやってたりとか、途中で壊れた娘が土壇場で復活するとか、もう滅茶苦茶です。

 これをギャグと見なすことはできますが、なにぶん設定そのものが力技で、さらに各ヒロインごとに用意されている設定は根幹部分に食い込んでは来ないので、1人ずつゆっくりプレイしていると、すぐに飽きます。サクッとお手軽にプレイするべきでしょう。要するに、個別の設定が練られておらずチープなわけです。

 

 さらに問題なのは、ハッピーエンドとバッドエンドとが用意されているにも関わらず、そのハッピーエンドがなんら意味を持ち得ないこと。調教するタイプのゲームといえば、『女郎蜘蛛』(PIL)という作品がありますが、あれは、あくまでも「女体」という「対象」を調教することが念頭にあり、その過程と結果とのリンクが実に巧く描かれています。その点、この『家元』は、行動結果は「ハッピーエンドとバッドエンド」という結果にしかなりません。しかも、シナリオの前提に「もう、笑うしかない」という設定が用意されていますから、ハッピーエンドに到達できても、何らカタルシスを感じることもできません。「ふーん、よかったね」、これだけです。あの「修行」で死に体のジジイに認められても、嬉しくなんかないです(^^;)し、さらに、なんで「修行」の結果、ああいう形で「幸せ」になるのか、説得力皆無、これではおもしろくなれ、という方が無理というものです。

 その一方でよかったのは、バッドエンドがなかなかに怖く描けていること。エロシーンなどあまり印象に残っていないのですが、バッドエンドは本当にキます。これも、中途の選択とのリンクが切れているという点では、やはり誉められる物ではないのですが、それでも、展開中に張られた伏線はこちらのためにあるのではないか、と思わせる終え方になっているので、こちらの方がよく印象に残りました。後味の悪さもほどほど程度になっているので、見たら最後その晩は眠れない、ということもないでしょうし。特に、淀のバッドエンドは、このゲームのトゥルーエンドに近いといっていいでしょう。

 シナリオの展開がエンディング直前で一気に動く、というのも、全体のバランスが甘くなっている原因のように見えます。

ゲームデザイン

 序盤でヒロイン候補を3人選び、1人ずつ選んでいき、中途に出てくる選択肢によってラストがハッピーになるかバッドエンドになるかが決まるという、ごくオーソドックスなアドベンチャーゲームです。難易度はさほど高くありません。基本的に、鬼畜な選択をすればバッドエンドになります。

不具合・修正プログラム

 私の環境では、特に不具合などもなく、非常にスムーズに動作しました。また、問題が起こったという話も耳にしていません。

操作性など

 インストール先ディレクトリは変更可能ですが、「IEMOTO」というフォルダが作成され、その中にファイルがインストールされます。最小インストールの場合に必要なHD容量は2MB(セーブデータのみ)で、CGやシナリオデータ、BGMデータ、音声データなど、インストールしたいデータを細かく設定できるのはよし。ゲームを起動する際には、必ずCD-ROMが必要です(CD-ROMなしで起動すること自体は可能ですが、音声が出ません)。もっとも、セーブファイルが2MB以上の巨大ファイルというのは、なんとも理解に苦しみます。圧縮しないとフロッピーに入らないサイズって一体(ちなみに、ZIPで圧縮すると6KBに…)。

 操作の基本はマウスですが、キーボードでの操作も可能になっています。左クリック=「Enter」キー、右クリック=「Esc」キーと単純明快なのがいいですね。

 グラフィックは、基本的に640×480ドット全画面表示で、下部に半透明のメッセージウィンドウが表示されます(スペースキーで消去可能)。画面は、ウィンドウ表示とフルスクリーンとの切り替えが可能。デフォルトでは、フルスクリーンとなっています。

 セーブ&ロードは任意の位置で16個所まで行えますが、分岐が激しいわけではないので、そんなに使うことはまずないでしょう。セーブした時のプレイ実日時と、ゲーム中の日付とが記録されます。

 テキスト速度表示は、かなりきめ細かく変えることができます。メッセージスキップに関しては、「Ctrl」キーを押している間スキップしますが、既読・未読の区別がないのが残念。また、フェード設定や音量設定、音声設定など、かなり細かい設定変更が可能です。

 CGモードは、サムネイル表示されますが、CGモードを開くと一瞬すべてのサムネイルが現れ、その後に未見CGが隠れるという、凝った方式になっています。BGMモードはありません。

サウンド

 BGMは、PCM(DirectSound)で演奏されます。オープニングがボーカル曲ですが、なんかイメージがちょっと…その…逝っちゃってマス(^^;) 全体的に、「和風」というイメージを強く前面に出しています。特にコレという印象はないのですが、まずまずの曲ではないかと。

 音声は、わりと上手なのですが、個人的に癇に障るようなキャラが多いので、基本的にオフにしてプレイしました。

グラフィック

 原画、デッサンがかなり狂ってます。さらに、頭の大きさに比べて首が異様に細いため、出てくるキャラがみんな「ぬらりひょん」に見えて(^^;)

 塗りはまずまずですね。なにげに「汁」の描き方になみなみならぬこだわりを感じたのは私だけでしょうか(^^;)

お気に入り

 そういうキャラが出るゲームではないのですが(^^;)…う〜ん、やっぱり書きようがないですね、コレは。

関連リンク先

 まだ比較的新しいゲームだからなのか、はたまた誰も見向きもしなかったのか(^^;)はわかりませんが、私のリンク先や行きつけのページでは見たことありませんデス。

総評

 「暗めのバカゲー」とでも言えばいいのでしょうか。斬新な取り組み、というよりは、エロシーンをどんな風にぶっこんでどんな風にバリエーションを多く入れられるか、と考えた結果、こういう形になったように思えます。真面目な顔してバカをやる、というのはありますし、設定がバカでも登場人物の大半はそれなりに真面目(『許嫁』のパターン)というのもありますが、暗い顔してバカをやるのは初めてでした(^^;) これはこれで、1つのスタイルとして評価したいと思います。

 ただ、出発点がバカなノリ、過程もバカなノリで、エンディングだけすっきりくっきり、では、どう見てもバランスが良いとは思えません。バカゲーとするには、エンディングで一気に話がシリアスになってしまい、木に竹を接ぐような印象が強くなってしまいます。もう少しバランスがよければ、それなりに好印象を持てたのでしょうが、この作品では、結局何をウリにしたいのかが見えてきません。

 セールスポイントをもっと明確にしないと、立ち枯れてしまうのではないか、という気がします。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
2000年3月21日
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