ゆきのかなた ルーン

2000年3月17日発売
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 ある程度名が売れたゲームに対し、そのスタイルの長所やシナリオパターンの方法を研究し、取り入れる、というケースはしばしば見受けられます。『ONE』(Tactics)→『Silver Moon』(R.A.N Software)などが好例でしょう。

 しかし、あまりにも既存のゲームにそっくりのスタイルを取り、さらにシナリオの展開や伏線の張り方などでも非常によく似ている…そんなゲームが、この『ゆきのかなた』。どことなくグラフィックが美しそう、というイメージで購入したゲームですが、ここまでよく似ているとパロディかいなと思ってしまったりしました(^^;)

シナリオ

 15年前に養子として高森家に引き取られた主人公・黒森嵩秋(変更不可)は、2年ぶりに家族のもとに帰省し、義理の兄や妹たちに温かく出迎えられ、のんびりと田舎町で1週間を送ることにする。その街で出会った不思議な力を持つ少女と関わることによって、謎の組織に嫌でも巻き込まれていく。主人公の過去にまで関わる謎の真実は、どこにあるのか。

 

 どこぞで見たような話だな、と思われた方は、それで正解です(^^;)

 なにせ、『』(Leaf)や『MOON.』(Tactics)の展開を、ほぼそのまま使っていること。さすがに「おかあさん」と「力の暴走」とを組み合わせてストーリーを作ってしまうのでは、「物真似」と言われても反論の余地がありますまい。しかし、それらの根底にあった「物語」といった装置は、この『ゆきのかなた』の中に見出すことは、どうもできそうにありません。

 

 まず、最大の問題点は、主人公とは結局何ものなのか、それがさっぱりわからないこと。

 主人公は何らかの組織から出て、その後に追われる、そういうスタイルを取っているようなのですが、その「組織」自体がさっぱりわけがわからず、動きにも要求にも、一貫性も合理性もありません。「組織」を指揮する人間の動機も不明。主人公がなんで巻き込まれていくのか、それがわからないと、「何か話が進んでいくんですけど…」と置いてけぼりになります。

 

 さらに、危機に追い込まれた後の展開があまりにも急に過ぎます。主人公の視点は、あくまでも「プレイヤーの視点」でもあるわけで、その乖離が大きくなってはいけません。しかし、『ゆきのかなた』では、ヒロインがピンチに陥る寸前になると、主人公が突然納得して安易に「彼女を助けないと!」となりますが、プレイヤーにすると「どうして?」と思わざるを得ません。訳のわからない状態に対して解決しようといった次元の姿勢ならまだわかりますが、とにかく「自分でなんとかしてやろう」と意欲満々になるさまは、「そうなるのだ」という天下り的設定で終えられるものではないでしょう。主人公が女性たちになつかれているのはいいとして、主人公がヒロインに対しどんな感情を抱いていたか、その描写がまったく欠落しています。豹変したというわけではなく、また人間として許せないというのでもなく、彼の置かれた立場と行動とに相関関係がないわけで。

 また、「謎」を解決せずに以降のシナリオで…という形式を取っているのですが、難易度自体がそこそこ高めなので、無限地獄に陥りなかなかクリアできず、ラストのトゥルーエンドに到達するころには最初の方のシナリオはきれいさっぱり忘れている、という形になりかねません(←私がそうでした)。『痕』では、各シナリオはそれぞれ「一定程度の」独立性を持っており、その一方で「一定程度の」共通基盤を残すことで、「進めるほどに新しいものが見えてくる」という形を実現させていますが、このゲームでは「謎は後に」という大原則だけを守りつつ、何か勘違いしているかのごとき「マルチシナリオ」の方法を取っている、としか思えません。

 

 それから、「超能力」という題材を用いていながら、その「意味づけ」がさっぱりわかりません。主人公が「力」を発動させるとリスクがある、それゆえに現在の悲劇が生まれた、ということですが、これが、トゥルーシナリオで明かされる「完全」の体現なのでしょうか。むしろ、主人公の周囲にいるもろもろの「超能力者」たちの方がはるかに「完全」でしょう。

 そして、天然「超能力」者が終結している空間自体も、何らかの理由づけが絶対に必要だと思うのですが、これも「ここにはそーゆーのがいっぱい」という以上の説明がなし。困ったときの超能力、では、『痕』の「鬼の力」や『MOON.』の「不可視の力」に瞬殺されますぜ。

 

 キャラクター的にも、ずいぶんとむだが多いように思えます。攻略可能キャラはわずかに4人ですが、登場する女性キャラ全員のHシーン(一名を除き陵辱あり)があります。しかし、どうして「このキャラは攻略可能なのにこのキャラは不可なのか」、そういう説得力が皆無です。キャラクターの魅力でストーリーを引っ張ることも可能だったと思いますし、個人的には風見などに見せ場がほしかったし、キャラの魅力がシナリオ展開の牽引力となり得ることは、それこそ『痕』がさんざん見せてくれたことでしょう。ところが、登場キャラのうち、いかにもな燕はともかく、なぜ未殊やヒースが選ばれたのか。

 さらに、キャラクターの設定に「なんで?」と思わせるものが多すぎます。双子の姉妹など、巫女服を着ているんですが、その理由が「家のしきたり」って、何やねんそれは。結局ストーリーには何の関わりもなく、場合によっては不運な役を担わされるだけという、まったくもって理不尽この上ありません。何やら妖しげな雰囲気を出している以上、絶対に春夏秋冬4Pがあるは…ゴホン(^^;)、絶対に「神秘の力」を発揮する主体になるだろう、その時には2人で身体を合わせ…エヘン(^^;)、力を合わせて「秋兄さん」を助けるはずだ、と思ったのに、結局出番なし。もったいない。

 さらに、男性キャラの扱いがあまりにも粗雑。主人公の行動原理そのものがよくわからないのは上述のとおりですが、新城青嗣など、説明不足もいいところです。彼のようなキャラクターを持ち出す以上、過去におけるその行動を通じて何らかの「視点」が確保されているのだろう、と思った(『痕』でいえば、柳川にあたりますね)のですが、そんな役はもっていません。

 

 陵辱シーンでは、バッドエンドになるときに「主人公が傍観する」という形になるのですが、そもそも悪役がレイプをする理由がさっぱりわかりません。欲求不満が溜まった連中が1人2人というのならわかりますが、悪役はかなりの人数がいて、しかも組織的に行動しています。要するに「計画的にレイプ」しているのですが、そうする意味自体はまるでないので「何かしらんけど犯されている」だけ。犯す方にさえ一部の理がないのでは、ただただ嫌なだけです。こんなシーンはない方がいいでしょう。もちろん、能力を有するキャラが女性だけで、それも処女でないといけない、とでもいうのであれば(これはこれであまりにも都合のよい話ですが)まだわかりますが、主人公は男ですし、双子の姉妹は一般人ですからね。

ゲームデザイン

 初回プレイでは選択肢が出現せず、2回目以降、エンディングを迎えるたびに選択肢が増えるというスタイルのビジュアルノベルです。初回は画面を見ながらひたすらエンターキーを押すだけ。シナリオの展開が読めた時点で、だいたい先がわかってしまい、演出面で非常に物足りなかったこともあって、初回プレイではちょっと退屈でした。

 2回目以降になると、一気に選択肢が増えますが、これの見極めがずいぶんと難しく、ダミーのもの、分岐となるもの、バッドエンド直行のものなどが入り混じっており、かなりやりにくくなります。シナリオの展開が目に見えてハッキリと変わるわけではないだけに、複数回プレイはけっこう大変です。

 おまけに、セーブファイルは、単一の「しおり」を用いる必要があり、しかもセーブしたデータはそのたびにクリアされます。こんなシステムの合理性がいったいどこにあるのでしょうか。まぁこれは、『魄冬』あたりにも言えることですが。

不具合・修正プログラム

 特に不具合などは発生していません。推奨環境はかなりのハイスペックを要求しますが、実際にはそれほど複雑なものではないようです。

操作性など

 まず一言。マニュアルがトレーディングカードの裏に書かれているという訳のわからない仕様。いったい何を考えているんでしょうか。確かに、トレカが収集対象となっており、それが販売促進に不可欠な小道具であるのはわかります。しかし、マニュアルという「操作説明書」は、そのゲームを処分するまで絶対になくせないものであり、また(ゲームにかぎらず)いつでも見られる状態に保管しておくという性質のものです。それを、アイテム的な「散逸しやすい」形態にしているのは、いったいどういうことなのか。ソフトハウスの姿勢を疑います。幸い、CD-ROMの中にHTMLの「補足マニュアル」があるので、実害はありません(というか、こちらだけで十分)が、こんなことをするのであれば、CD-ROM内のHTMLあるいはテキストファイルをマニュアルとする方がよほどよいでしょう。ウケ狙いでやっているのであれば、再考を促したいものです。

 操作の際には、マウス・キーボードの双方が使用可能です。マウス左クリック=「Enter」キー、右クリック=「Esc」キーで、スペースキーで文字消去、「Ctrl」キーで既読文のスキップが可能です。

 グラフィックは、基本的に640×480ドット全画面表示で、その上に被さるようにやや太めのフォントでテキストが表示されます。1回に表示する文字数などは、なかなか計算されています。文字が出ているときには背景は暗くモノトーンとなり、背景(キャラCG含む)が切り替わるときには一時的に文字が消えて画面が明るくなる、といったスタイルを取っていますが、これもやはり『痕』をそのまま模倣したもの、といってよいでしょう。

 さらに、画面を右クリックすると、「セーブ/ロード/文字を消去/タイトルに戻る/ゲーム終了」という「文字列」が出ます。はい、これも『痕』ですな。

 セーブ&ロードは任意の位置で可能ですが、先述のとおり、エンディングフラグを管理しているセーブデータは個々別々になっているため、実際には1個所でしかセーブできません。また、エンディングに到達するとセーブデータがクリアされるため、セーブ&ロードでのプレイは不可能となっています。これは、『痕』以下(^^;)

 CGモードは、各キャラクターごとにサムネイル表示されます。テキスト付きのHシーン回想モードでは、各キャラごとに「夢」(主人公とのHシーン)と「悪夢」(陵辱H)とに分かれます。BGMモードもあり、曲名をクリックすることで再生されます。

サウンド

 BGMは、PCMとCD-DAから選択できます。曲自体は、単体で聴くとなかなかいいですし、オープニングやエンディングの曲もまずまず悪くないのですが、「シチュエーションにあったBGM」ではあっても、「盛り上げるBGM」にはなっていません。場違いではないけど、なくても実はほとんど同じという程度のものです。この点は、『痕』のように、展開によって大きくパターンを変えることで、演出面での効果を見せるといった工夫をまったくしていない、といってよいでしょう。

 さらに問題なのは、効果音がないこと。そういえば『MOON.』でも効果音はありませんでしたが…まさかそんなのを真似したわけではないでしょうねぇ(^^;)

グラフィック

 野々原幹さんのキャラ原画。かなりロリっぽいんですが、なんか好みです、こういう絵柄。個人的には「しじみ貝目」はあまり好きじゃないんですが、なんとなく「これは例外」といいたくなりました(^^;) もっとも、描き分けがあまりできていません。

 背景がモノトーン化されているのは、昨今の多色環境ではパッとしないの一言で片づけられそうですが、実はこういうのは個人的には大好き…とはいえ、立ちCGを引き立てるためのアングル選びなどがいまひとつで、『痕』のように「キャラを埋没させない程度に地味に」という配慮があまりなく、ひたすら同じような明るさが続いてしまうのが難ありです。また、妙なにじみがあちこち見られたのも確か。でも、こういう「渋さ」が嫌いでなければ、さほど気にはならないと思います。

お気に入り

 ツボをついたキャラといえば、ヒースでしょうね。ただそれでも、自分の行動に対して疑問を持つのはいいとして、「主人公」と「自分の立場」との板挟み、という感じがまったくなかったのが不可解ではありますが。

関連リンク先

 このゲームに対し、あまり好意的なご意見は出ていないようですね(人のこと言えないが…)。成瀬せりあさんのサイト(閉鎖)、そして九牙さんのサイト(「電脳雑記帳」欄に記述あり)を挙げておきます。

総評

 『痕』と『MOON.』の2作品を強く意識、否、模倣して作られた作品であるのは間違いありません。しかし、「模倣」の仕方が、モチーフという次元に留まっていないため、逆に問題点を多く残したうえ、オリジナリティを残さないという結果をもたらしています。

 何よりも、粗だらけとかなんとかいう以前に、何も訴えることのないシナリオが問題でしょう。「読ませてナンボ」というタイプのゲームでありながら、「読ませる」ことへの努力が見事に空回りしているので、ある程度覚悟する必要があります。

 シナリオと演出以外はわりといいんですが…それだけで「買い」になる人も、まぁいないでしょうか(^^;) あと、曲を「BGMとしてのみ聴く」のであれば、それなりに質は高いのですが、「ゲームのBGM」となると、これもイマイチですし。うーん、グラフィック以外でどっか褒めるところないかなぁ(^^;)

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
2000年5月8日
Mail to:Ken
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