MoonLight 〜おもいでのはじまり〜 Clear

2000年2月25日発売
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 あるものが「ある」ことを実感として認めるのは意外に難しいものの、それが「なくなる」となると、とたんに人はそれが「あった」ことを懐かしみ、それが「ある」ことをつかの間とはいえ味わおうとあたふたしたりするものです。「お別れイベント」の類に人が大勢あつまるのは、まさにそんな心境からくるものでしょう。

 あるモニュメントが「なくなる」結果、そこを軸とした人間関係がどのように変じるのか、そういうことに興味を持つ人間としては、「廃校」に始まるドラマ、ときけば、プレイしないわけにはいくまい、と購入。実際にプレイしたのは少し間を置いてのプレイとなりましたが…。

シナリオ

 間もなく自分たちの学校が廃校になってしまう、最後の学期を迎えた主人公。ありふれた、いつまでも続くと思っていた時間。それは、自分が、大切な人と一緒にいられる時間でもあった。失って初めてわかるもの、それを、なくなる瞬間まで大事にしたい、そう考える主人公・新貝光輝(姓名とも任意に変更可)の人間関係は、どのようになっていくのか。

 

 シナリオ担当は「秋津環」「さとぴぃ」両氏。

 「廃校」というシチュエーションですが、それが「別れ」あるいは「変化」といったもののメタファーになっているのは確かとしても、この設定は積極的な意味をもっていません。何かが「変わる」きっかけとして「廃校」があることにすぎず、今まであったものの集積が一朝一夕に消滅することに対して何らかのノスタルジーを感じる、といった描写はほとんどありません。なるほど、エンディングで、すでになくなった学校の跡地に立って回想する、というシーンも一部ありますが、転校とか卒業とか、そういった「変化」をしのぐほどの事件として「廃校」という衝撃が描かれているのか、となると、そういう手法が取られているわけではありません。それまでの対人関係を変えるための強制装置として考えた場合、かなり無理があります。なんで「廃校」なのか、それがまず気にかかったところ。結果として、最大のインパクトを与えるべき設定が、宙に浮いた観は否定できません。

 

 メインとなる設定をいかしきれてはいないものの、実際のテーマである「大事なものの認識」という面で見ると、主人公とヒロインとのラブストーリーは、それなりに地に足の着いた形で、地道に描けていると感じます。失ってしまうことが惜しい「毎日」の描写として、しつこいぐらいに繰り返されるドタバタ劇、そして、気のおけない友人たちとの接触。それが、外的要因による強制的な環境変化という契機によって、バランスを崩すかのように動きだしていくさまは、シナリオ間でかなりムラがあるものの、なかなか実直に出せていた点を、まずは評価するべきでしょう。

 また、主人公とヒロインとの関係という場合、そこに「ラブストーリー」が存在しないにひとしい香耶シナリオはさておき、ほかの4シナリオでは、いずれもヒロインが背負っているものを主人公がどのように受けいれていくか、というスタイルになっています。主人公にとって、ひたすら「都合のよいヒロイン」が多数用意され、それを追っかけていけばよい、というものではありません。各ヒロインごとに付された「記号」が、単に「典型キャラその1」「典型キャラその2」などなど、という形でハイおしまいにはならず、個別に見せる「顔」を明確化し、それぞれの「ストーリー」をくっきりと浮かび上がらせているのは、金太郎飴的なラブコメばかりが目立つ昨今、非常に気持ちよいものと感じました。

 ただ、シナリオの中で感じるインパクトは、基本的にクライマックス部分で明かされる「衝撃の事実」に依存する部分が多く、個別のキャラクターが、まさに「生き生きと」動き、考え、悩むといったダイナミックさを感じるには、迫力不足だった点は否めません。言葉をかえれば、キーとなるごく少数のイベントのみが話の核を構成しており、「展開」としての描写にはいささか力不足という印象があります。美姫シナリオなど、ヒロインの設定説明にさく部分がずいぶんと多くなる反面、主人公とヒロインとの関係に関する描き込みが不足していたのは、もったいないと感じます。

 また、主人公の精神的な幼さ、あるいはヒロインの精神的な脆さといったものの描写が、手抜きナシで書かれていた反面、これを描写として見せつけた結果、プレイヤーに「若い心情」の甘さと苦さとを覚えさせるため、どうしても反発を感じさせる可能性が高いと思われます。下手な逃げをうっていないので、姿勢としては十分に評価に値するとは感じますが、はたして感情的な反発なしにキャラクターを受容できるかどうか。私は主人公とさしてシンクロすることなく、「若い少年少女のすれ違い」と「突き放し」てみることができたため、逆にキャラをすんなりと受けいれることができ、これはこれでよいな、などと感じられましたが。

 

 別の面で見ると、シナリオ間でのバラツキが、室・量ともに激しかったのは問題でしょう。大雑把にいって、悠里および彼女が関係する2人のシナリオは、わりとバランスがよいのですが、汐音に関しては、ほかのシナリオとのリンクが皆無であるため孤立しているという印象が強く、香耶などむしろいらなかったような気さえします。このような印象を抱いたのは、何よりも「廃校」というスタート部分での設定が「とりあえず」出され、そのままになっている結果なのでしょう。悠里周辺の人間関係は複数シナリオにまたがって実にきちんと描かれていただけに、なんとも惜しい気がします。

 異なるシナリオ間で、各キャラクター間の関係がきちんと描けており、なおかつ、シナリオごとにキャラが豹変したりしない、という点では、『卒業写真2』(JANIS)以来の好印象を持った点も、付け加えておきます。

 

 シナリオというか、このゲームの中でもっとも楽しさを感じられたのは、会話を実にていねいに作り上げていること。決して、リアルな「日常会話」ではなく、あくまでも「ゲーム」という「フィクションの中における自然さ」を保ちつつ、それでいてプレイヤーを引き込むものです。キャラクターの行動や言動のパターン化もほどほどに抑えられているので、キャラクターがシナリオの中で暴走することもありません(香耶はちょっと例外)。キャラゲーに留まらず、なおかつファンタジーの力技にも頼らないシナリオには、非常に好感を抱くことができます。ただし、ラブストーリーの作り方――「手法」としては、『To Heart』(Leaf)や『ONE』(Tactics)といった先達の後追いという印象は否めず、やや古めかしさを感じたのも事実。決して模倣には留まっていないのですが、ややパワー不足と思えます。すでに味付けの濃い「過剰な物語の消費」が染みついているプレイヤーにとっては、淡泊にすぎるように思えたのですが、はたして一般的にはどんなものでしょうか。

 あと、用語の間違いをちらほら見受けたのも、ちょっと残念。誤字程度ならさほど気にはなりませんが、Hシーンで

すっかり俺の膝の上にまたがる格好となった氷沼は、そのまま深い嘆息を洩らす

と出てきました。「嘆息」というのは、なげき悲しむときの動作であって、喜びに転じる場合に使うのであれば「ためいき」で充分のハズ。無理に漢語を使うからこうなるんだ、と、こちらが嘆息してしまいました。盛り上がるシーンに冷水をぶっかけてはいけませんです。Hシーンでの描写がなかなかに濃いだけに、こういった点はずいぶん気になりました。

 

 メッセージウィンドウに収まるテキスト分量になっていて読みやすかった点は、評価できます。文章を一覧できないという困ったゲームが多いものですが、その心配はありません。

ゲームデザイン

 前半で各シナリオごとへの振り分けが行われ、後半でハッピーエンドになるかバッドエンドに直行するかが判定されるタイプのアドベンチャーゲームです。

 前半ではフラグ立てが順調に進んだキャラクターのシナリオに突入します。各イベントはそれぞれ排他イベントを持っているので、それ以降の同時攻略は不可能となっています。誰のフラグも立たない場合は、自動的に中途半端なバッドエンドとなります。悠里などは楽にフラグが立ちますが、汐音あたりはずいぶんと苦労させられます。後半では、正解であればシナリオ続行、不正解であればその時点でバッドエンド直行と、非常にシビアです。また、バッドエンドのパターンも、シナリオによっては複数のパターンがあります。特にCGはありませんが、ゲームをコンプリートするためには見ておく必要があります。後半では、汐音あたりが楽勝である反面、沙祐璃が非常に難しく、何度も泣かされました。なお、全エンディングを見ると、「回ります」。どういう意味かは、すべてのパターンのエンディングを見たのち、タイトル画面をよくごらんください。

 シナリオ間のバランスについてはやや難あれど、相互でのキャラリンクがなかなかよし…というのは、「シナリオ」欄で詳しく書いたので、省略。

不具合・修正プログラム

 美姫シナリオで不整合がある、などの不具合があります。ClearのWebサイトに修正ファイルがアップされていますので、ダウンロードして修正してからプレイしましょう。

操作性など

 動作対応OSはWindows95/98ですが、WindowsXPでも問題なく動作します。

 CD-ROMをドライブに挿入すると、そのドライブウィンドウがオートランで開くものの、セットアッププログラムが起動しません(^^;) Autorun.infの記述が間違っているという、あまり笑えない事実をいきなり目にして、イヤ〜な予感をしながらプレイしましたが、実際にはなかなか快適にプレイできました。

 インストール先ディレクトリは変更可能です。起動後、しばらく何もせずに放っておくと、オープニングデモが自動的に始まります。CD-ROMなしで起動・プレイすることも可能ですが、BGMがCD-DAなので、BGMが出ません。

 操作の基本はマウスですが、キーボードでの操作も可能になっています。左クリック=「Enter」キー、右クリック=「Esc」キーとなっています。

 グラフィックは、基本的に640×480ドット全画面表示で、左上部に月日表示がなされ、下部に半透明のメッセージウィンドウが表示されます(スペースキーで消去可能)。画面は、ウィンドウ表示とフルスクリーンとの切り替えが可能。

 セーブ&ロードは任意の場所で25個所まで行え、セーブした時のプレイ実日時と、ゲーム中の日付が記録され、合わせてセーブ画面がプレビュー表示されるのが親切ですね。25個所というのは、十分と見るべきか少ないと見るべきか、このゲームの選択肢数から判断すると微妙なところではあります。

 テキスト速度表示・ウェイト設定は、かなりきめ細かく変えることができます。また、文字表示は、Windows標準設定の他、影付き、アンチエイリアス(デフォルト)を選択できます。メッセージスキップに関しては、「Ctrl」キーを押している間スキップします(やや遅い)ほか、「一度見た文章を速く」にチェックを入れておくことで、既読メッセージを高速で飛ばすことが可能です。

 CGモードは、キャラクターごとにイベントCGがサムネイル表示されますが、個人的には立ちグラ表示がほしかったところ。Hシーン再生モードは、各キャラクターの各シーンごとに選択できます。また、BGMモードもあり、曲名ごとに表示されます。

サウンド

 BGMはCD-DAで演奏されます。比較的ほのぼのとした感じの曲がわりとよかった、と思いましたが、あまり印象に残るものではありませんでした。嫌みのないしっとりとした曲が多いようです。オープニングとエンディングには、ヴォーカル曲「陽の当たる橋」「映す 想い 過去」(Vo.:寺田はるひ)が流れます。

 音声はありません。この種のゲームで音声なしというのは、ずいぶんと珍しい、という気がします。

グラフィック

 キャラクター原画担当は「Rけん」氏。なかなか変化の大きいグラフィックは、見ていて飽きませんでした。キャラによっては表情を持てあましている、という感じの場合もありましたが、悠里や汐音は楽しかったものです。

 一枚絵CGもなかなかきれいで、またHシーンのグラフィックにも、なかなか気合いが入っていました。特に、結ばれた翌朝のCGが、どのキャラクターも非常に綺麗ですね(1人だけなかったけど…)。ただ、ClearのWebサイトにも掲載されている悠里のシャツのボタン、どう見てもヘンです(^^;)

お気に入り

 誰かキャラクターを1人、となると、悠里になりますね。悠里シナリオでもさることながら、ほかのシナリオでも、実にいい味を出していますし。

 シーンでは、観覧車の中の悠里かな。

関連リンク先

 割とよくまとまっているところとして、SHEOさんのサイトを挙げておきます。

総評

 何よりも、このゲーム全体を貫く「愚直なまでの誠実さ」を、まず挙げたいと思います。自家薬籠中のものとできずに設定を持てあましているゲームシナリオが多い中、地道な描写をひたすら実行している点は、まず評価できましょう。また、複数シナリオ間でキャラクターがきちんとリンクしている点も評価したいと思います。

 その反面、このゲームにしかないものは何か、と問われると、非常に困惑するのも、また確かです。シナリオづくりの姿勢は非常に好感が持てるだけに、もう少し何らかの「差異化」を図ってほしいものです。2作目にはそれなりの期待をしたいとは思いますが、ブレイクできるかどうかは正直なところ不明。キャラクターの作り方がしっかりしているので、パターンにやや飽きた新しい「萌え」を求めるには格好の材料かも知れませんが、キャラ依存にとどまらない骨太のシナリオを作れるポテンシャルを感じた、と述べておきます。

個人評価 ★★★★★ ★★☆☆☆
2000年3月26日
(2002年4月14日、「シナリオ」を一部修正)
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