Once More Again アイル

2000年8月11日発売
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 人間誰しも「若い日に戻れたらこんなことをやりたい…」と思ったことはあるでしょう。今の「自分」が、記憶を残したまま高校生になったら、自分の行動はどういうものになるか、そして人生観や目標はどこへ向けられるのか。そんなことを思ったりします。もっとも、実際に私が高校時代に戻ったとしたら、学校の成績が多少よくなる(さすがに英語なんかは今の方がずっとマシだし(^^;)くらいで、何も変わらないような気がしますが、これって要するにこの十年間全然成長していないことの証なのでしょうか? 自分としては、「成長」することの意味を、多少の無理を込めてもプラス評価するということ自体に、若干の違和感を抱くのではありますが、それでも「経験」の蓄積という点で見れば、やはり亀の甲よりはナンボか上のものを矯めてはいる…はず…だけど……。まぁ、それはともかく、こういう「リセット願望」のようなものをどう実現させているのか、という面に、かなり期待したのは確かです。

 この『Once More Again』は、「たつろう」氏がプロデュースしているため「チーム・TATU」というクレジットが入っています。アイルのゲームとしても、複数ヒロインを擁して彼女たちとの恋愛物語…というパターンのものは初めてなので、上記のような期待とも相まって、わりと前から注目はしていましたが、どうにもグラフィックがあまり好きになれなかったので、購入は発売からしばらく経ってからでした。

 ちなみに「人生やり直し」という題材が使われているという点では、リバ原あきさんの『デュアルソウル』がありますが、あちらは一本道シナリオの中で進む主人公の内心にスポットが当てられていたので、そのイメージをある程度ダブらせながらプレイに臨んだのですが、そちら方面に期待したのは間違っていた、と断言しておきます。

シナリオ

 主人公・水沢正幸(下の名前のみ変更可能)は、四十代の、くたびれた冴えないおっさんであった。「やりたいこと」などとうの昔になくしてしまった主人公であったが、ある事件をきっかけに、一度体験した自分の人生の一時期に戻り、自らの記憶や経験を残したまま、再度やり直し人生を送ることとなる。パッとしないままに過ごしてきた元の生活から別れ、新たなる楽しい人生を過ごさんと、日々を過ごす。そして、やり直し人生の過程で出会った女の子と過ごす日々は、どういうエンディングを用意することになるのだろうか。

 

 シナリオ担当は、高田竜司・たつろう両氏。

 「人生やり直し」という題材を用いている以上、ヒロインよりも、(「人生やり直し」の主体である)主人公に注目してストーリーを追うのが当然でしょう。しかし、主人公を軸にゲーム世界を見ようとすると、主人公の行動や価値観が、自分のそれと大きなギャップを生むものであるため、どうにも戸惑いやもどかしさを感じながらプレイせざるを得ませんでした。

 

 冒頭でいきなり『脅迫』『真・瑠璃色の雪』のパロディが、それもHシーンとして出てきます。このあたりから、全体をギャグが貫く、ということを思わせますが、その通りで、主人公のぶっ飛び具合はすごいものがあります。ギャグのオンパレードというか、彼自身の行動原理が「ギャグの発信源」として自分を見せる、と考えるのがよさそうに思えるようになっています。

 ただし、主人公の言動などで用いられているギャグというものは、かなりの部分が何らかの元ネタをバックとしていると推測されるものとなっており、そのネタがわからないと大して面白いとは思えません。主人公の行動自体が、周囲(ほかのキャラ)とのバランスを著しく欠いている点は否定できず、ゲーム世界の中で、あたかもくるくると回転する独楽のごとく「浮いた存在」であることを示しているようにさえ感じさせます。この点、ゲーム世界内部において通底しているキャラの性格、あるいは世界内部における規範的な価値観として、新しいベースを備えた上でギャグを炸裂させている『Rumble』などに比べて、底の薄さは明らかです。上滑りの備え付け的なパロディは、「趣味」として同一の話題を見つけたときに盛り上がるための素材以上の役割を担うことはないと思うのですけれど。

 また、こういった「主人公のギャグ連続」の背景には、「やり直し人生」であることの「重み」を減じようという判断があったものと思われますが、むしろ主人公はまったく何も考えていないことを書いているだけのように見えます。主人公がバカであるというだけであれば別段気にしなくてもいいのですが、「何も考えていない」ことと「バカ」とは次元が違います。「やり直し」において「何も考えていない」ことを敢えて強調するのは、人間の浅さを喧伝しているようなものではないのでしょうか。

 さらに、主人公の思考・行動パターンが刹那的・享楽的なものであるとはいっても、それが「望んでいた新しい人生」そのものであるのなら、目くじらを立てる必要はないのかもしれません。しかし、「意義を感じられる新しい人生」といった物語設定の重さと、「何も考えない」主人公の軽薄さとのギャップがあまりにも大きすぎるのです。人生のリセットというものが可能である場合、限られし時間をどう生きるか、これはすべての人が考えてしかるべきテーゼではないかと思うのですが(「時間」は万人に共通の財産でありましょう…そう、「時間」概念を帯びている現代人であれば)、それをあまりにも軽く流しすぎていると感じます。カルク流していい話題とは思えません。もちろん、こういった「軽薄さ」を「軽く」流せるような、そういう「悟った」気持ちを主人公が持っているのであれば話は別でしょうが、回顧も反省も縁遠いような言動を重ねていくさまには、ただただもどかしさが募っていくのみです。

 こういったことを考えてみると、このゲームの最大の設定である「やり直し」については、全然いかされていないと結論づけるのが妥当でしょう。素直に学園恋愛ゲームとして位置付けておけば良かったものを、重い設定を使いながら、それがイントロ部分での小演出以上には役に立っていないのでは、羊頭狗肉と評されても反論できますまい。

 

 キャラクターの描き方については、まずまずといったところでしょうか。幼なじみ、妹、不愛想で取っつきにくい同級生、元気な体育会系の後輩など(まだいたけど記憶にナイ(^^;)わりと「定番どころ」をそれなりに揃えています。しかし、私がクリアしたシナリオを見るかぎり、主人公は、壁に突き当たって悩み苦しむヒロインたちに対する毅然とした態度を示すという点において(まさにその1点においてのみ)大人の度量といいますか、身の処し方に関して明確な姿勢を取っています。この点は、おそらく「主人公の精神年齢が必ずしも異常に低いわけではない」ということを示している、とも言える、かもしれません。

 主人公とヒロインとの関係は、基本的に無難かつ平凡なものといえますが、主人公がバカ丸出しなのに、よくこんな男についていくもんだよまったく、と思ってしまったのは、上に述べたような、主人公に対する悪印象のせいもあるのでしょう。ただし、ヒロインが主人公を「見直す」あるいは「頼りにする」シーンはわりといいものの、らぶらぶな展開などはごく薄いので、かなり物足りなさを感じたのも事実です。主人公自体、さほど魅力を感じさせるキャラとしては描かれていない(これは「失敗」ではなく、意図的に「格好悪い」と描いているように思えます)以上、もうちょっとラブコメの王道にそった形でいいから、関係をそれなりにまとめて欲しいものです。

 各キャラクターとのエンディング(のうち、比較的まっとうなものに限定した場合)は、パラレルというか、かなり似たりよったりした形で収めてしまっているのが、やや物足りないところ。後日譚をきちんと入れているのは好感を持てますが、私は晶→優羽と進めただけで「またこのパターンかい…」と思ってしまいました。

 キャラの中では、どうもの奈未に対して一番力が入っているようですが(^^;)

ゲームデザイン

 シナリオは大きく一部と二部とに分かれ、キャラクターによっては二部から登場します。このため、あるエンディングを終えると、二部からスタートすることも可能になります。一部と二部とは、時間の前後があるだけで、同じ世界なので、一部から登場するキャラクターは、二部になると少し成長した姿になります。もっとも、貧乳は貧乳のままですが(^^;)

 主人公は行動先を選択し、そこでヒロインと会う、これを重ねていくことになります。行き先の選択肢では、誰がどこにいるかが表示されるので、オンリープレイに徹する限り、まず詰まることはないでしょう。移動画面以外での行動を選択させるケースはほとんどないので、難易度はかなり低くなっています。

不具合・修正プログラム

 私の環境では、ゲームのプレイ中に何度も強制終了が発生して落ちる、ということがありました。アイルのWebサイトにアップされている修正ファイルを用いてもパターンによっては落ちる(再現性あり)ので、もう諦めています(T_T)

操作性など

 CD-ROM2枚組で、インストール方法は「標準/最大」の2通りです。「最大」でないとBGMが流れないという仕様には、ちょっと疑問あり。音声不要という人はいるかもしれませんが、BGM不要という人ってほとんどいないと思うのですが。ゲーム起動の際には、必ずCD-ROMが必要です。

 マウスのほか、キーボードでも操作可能となっています。おもしろいのは、マウスのスクロールボタンを動かすことでメッセージ送り/読み返しが可能、という仕様。アイルのゲームの常として、かなり細かいカスタマイズが可能ですが、実際にどこまでの機能が必要なものなのかはまた別次元の話(^^;) また、HTML形式のヘルプファイルが同梱されており、ゲーム中いつでも参照可能です。

 画像表示は、640×480とフルスクリーンとを切り替えることが可能で、基本的には全画面表示、下部に半透明のメッセージウィンドウが重なるというスタイルを取ります。ちなみに、「HELP」または「END」キーでウィンドウが最小化されるそうなんですが、「HELP」キーって何?(^^;)

 メッセージ表示は5段階から選択可能で、画面上の「SKIP」左クリック、または「Ctrl」キー押下でメッセージスキップ可能です。既読・未読の区別はありません。また、画面上の「BACK」左クリックで、メッセージの読み返しができます。また、「AUTO」左クリックによってメッセージ自動表示にも対応しています。メッセージウィンドウの透過調整も可能ですが、通常はデフォルトのままでまず問題ないでしょう。

 セーブ&ロードは、任意の位置で200個所(!)まで可能で、セーブの際にはセーブ時の実日時と見ているシーン名が記録されます。また、セーブ時シーンが縮小表示されるので、見やすくなっています…が、『真・瑠璃色の雪』などのようなクールな形式の方がよかったのでは。

 トップメニューの「おまけの部屋」を選択すると、「シーンモード」(CGモード)「BGMモード」「スタッフルーム」「ベンチマーク」「インストールモード変更」「アンインストール」が出てきます。シーンモードやBGMモードなどは、一度何らかのエンディングに到達していないと入ることができません。シーンモードでは各ヒロインごとにCGがサムネイル表示されます。なお、イベントの回想モードはありません。BGMモードでは、各曲名をクリックすることでBGMが再生され、また作曲者のコメントも同時に表示されます。これら各モードでは、司会役の女の子がボイスつきで話します。

サウンド

 BGMは、CD-DAで演奏されます。割とポップな感じの曲が印象的ですね。個人的には、「SILENT VOICE」(晶のテーマ)が割と好み。

 音声は、女性のみフルボイスとなっています。例によってというか、男性のボイスもほしい、と思うことしきり(主人公以外の男性キャラも出てきますから)なのですが、こういう声はやはり少数派なのでしょうか。

グラフィック

 キャラ原画は、中釜康一さんの担当。ツリ目がきつさを感じさせる上、どことなくピンピンと張りつめた感じの印象を与える女の子の顔は、個人的にはあまり好みではありませんが、キャラによってはわりと良いかも、と感じます。柚など、怖さ万倍ヾ(^^;

 塗りは非常にきれいで、背景もていねいに仕上げられていますね。

お気に入り

 よくあるパターンといえばそれまでですが、肥山晶ですね。笑えばかわいいから…って、それだけかい(^^;)

関連リンク先

 USGさんのサイト(閉鎖)にレビューがアップされています。

総評

 何をウリにしたつもりで作ったゲームなのか、それが全然わからないゲームです。

 「18禁ゲーム」である以上、プレイヤーのかなりの層において大なり小なり共感を抱かしめることが可能な「過去を美化した上でのリセット願望」をかなえる、そんなゲームになろうとしつつも、結局は単なるドタバタ学園恋愛モノ以上のものにはなっていない、というのが、本作の問題点でしょう。プレイヤーはあくまでも「大人」である以上、「大人」が「回顧」する際の姿勢をある程度考えた場合、ここまで「やり直し」に対してクールな対応を取っていいものとは思えません。

 学園ラブコメとしてキャラをもっと掘り下げていく、という点に注力するのであれば、キャラの描写自体は悪くないだけに、もっといいものができるのではと思います。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
2000年11月21日
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