思い出アルバム トラヴュランス

2000年10月27日発売
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 どうもこの2000年という年には、『MoonLight』やら『果てしなく青い、この空の下で…』やらといった、「廃校」が差し迫っているという舞台を題材にした学園モノが目立ちます。世紀の区切りということから「リセット」への志向が高まっているせいなのか、実際に少子化が進行して廃校があちこちで進んでいるさまを浮き上がらせているせいなのか、はたまた単なる後追い的模倣なのか、そのあたりのことはわかりませんが。

 この「思い出アルバム」も、基本的にはその路線に沿った学園恋愛モノということで、さほど肩に力を入れず、気楽に生き抜き程度のプレイにいいかも、と思って、大した期待もせずに購入しました。

 ちなみに、私の高校卒業間際はといえば、進学の受験先がボーダーライン上だったため、定期試験も何もそっちのけで勉強していました。もっとも、第一志望しか受けなかった(受けられなかった)結果、落ちましたけどね(^^;)

シナリオ

 主人公・子安裕一(変更不可)は、亡き父親がそこに学び、そして今なおノスタルジーを湛える木造の老朽校舎が支える「桐沢商工」に通う3年生だが、彼が卒業するとともに、校舎が取り壊されることに決定された。愛着のある校舎を、自分たちの手で、形ある思い出にしたい、と思った彼は、卒業記念として作られるアルバムの作成委員に立候補する。仲間達との交流の中で、どんな物語が紡がれていくのか。

 

 シナリオ担当は「雅蜥蜴」氏。

 主人公とヒロインとの間の「恋愛」を描くというよりはむしろ、「学校」という舞台が今まさに失われつつあるという段階を用いることで「焦燥感」を喚起し、さらにノスタルジックな描写によって「懐かしさ」をも感じさせるというパターンになっています。

 また、ヒロインたちとのやり取り、あるいは同性の友人との与太話をはさむことで、「たわいのない日常」がそこにあることを思わせながら、紆余曲折を経ながらも、基本的にはなごやかに話が進んでいきます。

 

 このゲームの中では、「アルバム作り」という「共同作業によってまとまる連帯感」というものが仲間意識を支え、それがエンディングまで持続する、という体裁を取っています。このため、発生するイベントの数々(それが恋愛であれ何であれ)も、すべて「作業」との関係、あるいは摩擦というものを伴いながら進んでいきます。

 この手法は、各シナリオの流れが、主人公とヒロインといった2者のみの人間関係のみで済むものではなく、それに留まらない「他の仲間」も含めた形で綴られていくこともあって、少なくとも初回プレイではまったくだるさを感じさせない、という展開になっていたのは、よい点として挙げられましょう。反面、繰り返しプレイをしようとすると、先の展開がある程度わかるうえ、キャラ個別のイベントもキャラによってはわりと薄めなので、目新しさが急速に失われてしまうのは残念なところ。攻略可能キャラは3人だけ(優男もでてきますが、彼は攻略可能キャラではありませんので念のため(^^;)という「絞り込み」のため、このデメリットは表面化してはいませんが、リプレイに耐える作りにはなっていない、という見方も可能です。

 

 しかし、キャラクターの設定やプロットについてはいいものを感じさせる反面、各イベントのつなげ方に、かなり弱さを感じたのは確かです。もともと、重要なイベントは基本的にどのキャラクターとのエンディングでも同様に展開するため、それを「つなぐ」形で整合性を保とうとすれば、各イベントの一貫性が優先され相互の関係が弱くなるのは致し方のないところでありましょう。特に、中盤の山となるイベントは、誰とエンディングを迎えるにせよまったく同じ展開をたどることになるので、ここをクリアしたときにキャラクターとの関係がどう変化するか、のバリエーションが乏しくなるのは、避けられないものとなっています。

 また、仲間との関係が危機に陥ったり修復可能となったりする契機、あるいは展開の中に、「こういう障害を乗り越えて進んでいくんですマル」とでもいった「不自然さ」をいささか残していた点も、指摘しておく必要はあります。雨降って地固まるという「お決まりのパターン」を踏襲するのはいいのですが、その際には「パターン」自体の陳腐さを極力感じさせないような流し方があるはずなのに、「行き違い」の修復があまりにも簡単にすぎてしまったのは残念。ケンカする部分を長々と描写してもおもしろくない、というのはわからないでもないですが、「ヒロインが胸の内を開かしてオシマイ(=主人公は何もしない)」という定型描写のみでは、甘い、といわれても仕方ないでしょう。また、ヒロインたちがぶつかっている「壁」に関して当たり散らすさまも、基本的なスタイルが似たり寄ったりなので、ちょっと問題だと思います。もう少していねいに描き込まないと、ヒロインたちへの感情的反発を呼び起こすだけになるのでは、と感じましたので。

 

 キャラ設定は、優等生で融通の利かない娘(ストレートロング)、体育会系の元気娘(ショート)、読書好きの内気な娘(ポニーテール)と、定番どころを揃えています。いずれも、それぞれの設定から容易に類推できる程度のイベントを出しているため、意外性はない反面、それなりに安心してプレイすることができます。

 Hシーンは、終盤に各キャラとの告白シーン直後に1回ずつ、いずれも比較的ノーマル(あくまで比較的ですが)なプレイが用意されているだけです。Hシーンでの女の子の語り口が異様に多いのが不自然と感じたのは私だけかな。

 

 全体の評価に直接関わる部分ではないと思いますが、オープニングから最初の部分にかけて、シナリオの流れに対し落ち着きを与えている感のある「亡き父親の存在感」は、個人的に大いに気に入っています。父の背中を追い、それを現在の自分を取り巻く境遇とオーヴァーラップさせるとい手法は、人によって受け止め方はさまざまでしょうが、主人公の行動原理を明確にするという役割を果たしているように感じます。

 その一方で、主人公の母親って一度も姿を見せていないんですが、いったいどこにいるのでしょうか? 別にお母ンの顔など見たいとは思わない、という声もありそうですが、ここまで徹頭徹尾出てこないのは不自然。父親の仏壇の前には毎日頭を下げている以上、最低限のバランスはほしかったと感じます。

ゲームデザイン

 行き先指定でヒロインと出会い、その出会いを重ねることでエンディングへと進むタイプのアドベンチャーゲームです。ヒロインは3人、行き先も基本的に3とおりだけ、そして出会った場合も、コンタクトを取るか無視するかという選択肢しかでないので、行き先選択の時にセーブ&ロードを繰り返せば、どのキャラも一発で攻略可能という程度の難易度です。後述のようにセーブ&ロードは自在に可能なので、さほどうっとうしさも感じません。音声がないこともあって、1回のプレイには1時間少々あれば十分でしょう。

 アルバム作成という共同作業そのものに深く関わるイベントは、3シナリオすべてに共通していて、各ヒロインごとのイベントがそこから派生する、という形を取っています。

 また、ちょっとした特徴として、1日の終わりごとに、その日に起こった出来事(特にヒロインが絡むイベント)の写真がアルバムに収まるというスタイルのアイキャッチが入ります。

不具合・修正プログラム

 私の環境では、特に不具合などは発生していません。

操作性など

 CD-ROM1枚です。

 操作はマウスのみで、キーボードは受け付けません。展開はごく単純なので、キーボード操作も可能にして欲しかったところですが。

 画面内で右クリックすると、ポップアップメニューが表示され、ここでシステムコマンドを実行することになります。プルダウンメニューはありません。

 画面は、640×480・フルスクリーンを切り替えることができます。画面下部にメッセージウィンドウが表示され、任意の位置に移動したり消去させたりすることも可能です。

 メッセージスキップも可能で、すべてスキップ・既読のみスキップを区別することができます。また、既読テキストの読み返し機能もあります。また、自動でメッセージが流れていく「TE-BURAモード」も装備されています(私は使っていないので実際の使い勝手はよくわかりません)。

 セーブ・ロードは、任意の位置で6個所まで可能となっており、ロードしたときの実日時が表示されます。

 このほか、ポップアップメニューから、オンラインヘルプを参照することが可能なほか、タイトル画面に戻ることもできます。

 一度クリアすると、タイトル画面に「おまけ」が表示され、ここから、「アルバム」(CGモード)・「思い出」(イベント回想モード;Hシーン以外のイベントも回想可能)・「音楽」・「デモ」(他ゲームのデモ閲覧)に入ることができます。「アルバム」では、全CGがサムネイル表示され、表情変化などのバリエーションも表示されます。音楽モードでは、3人のちびキャラが壇上で笛を吹いてくれます…が、ほかのタスクを起動するとゲームのプログラムが止まるので、BGMとして鳴らすことはできません(別途、CD-DAを再生するプログラムを用いることになります)。

 なお、「アルバム」や「思い出」への記録、あるいはテキストの既読・未読の判別は、そのシーンを見た時点で行われます。いちいちセーブする必要はありません。

サウンド

 BGMは、CD-DAで演奏されます。特に印象に残る曲があるわけではありませんが、落ち着いた雰囲気の曲は、なかなか悪くないな、といったところでしょうか。主題歌「思い出アルバム」はボーカル曲で、歌詞がヘルプファイルの中に記されています。

 意外にも、音声はありません。キャラの人数は少ないうえ、恋愛ものである以上、当然入っているものとばかり思っていたのですが。

グラフィック

 キャラ原画は、山根正宏さんの担当。一枚絵CGでのデッサンの狂いがかなり目についたのは残念。特に奈緒など、「たこやきを食べるシーン」では目・口・手の大きさがアンバランス過ぎますし、バットをフルスイングした後にバットと体の開く向きとが逆になっていたりと、かなり妙なシーンが多かったのは問題です。

 塗りはわりときれいに感じました。

お気に入り

 特に誰か気に入ったのがいる、というのはないのですが、取りあえず1人となれば、里浜螢かな。こういうキャラって孤立しやすいタイプなのですが、主人公を家に招待したときのシーンがなかなか微笑ましいので。

関連リンク先

 SHEOさんのサイトに感想がアップされています。雰囲気はいいけれど「悩み」の描写がまずく、また演出面でも寂しい、というご意見です。

総評

 ベタベタな恋愛もの、といってしまえばそれまでですが、むしろ各ストーリーの「軸」が「恋愛」とは別の形で用意されているため、さほどくどさを感じさせず、ふわっとした柔らかい調子でまとまっているのが好感を持てるところです。また、全体的にセピア調のカラーリングを多用することで、ノスタルジックなイメージを喚起するのにかなり成功しているとも思えます。

 あまり強い印象を植え付けることのない、かなり地味かつ小粒なゲームですが、全体としてのまとまりは決して悪くはないと感じます。ただ、やや「広がりに欠ける」点は否定できないので、もう少し各キャラごとの背景や展開を詰め、シナリオの長さを調整してくれれば、より良い作品になるのでは、と思ったしだいです。

 次は、音声つきの恋愛モノに期待…かな。

個人評価 ★★★★☆ ☆☆☆☆☆
2000年11月19日
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