幼なじみ Prima

2000年10月13日発売
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 『幼なじみ』というと、キャンディソフトから出された同名のゲームでヒドい思いをした苦い経験があるのですが、懲りずにまた手を出してしまったのが、これでした。親の転勤の都合上、「何人かの幼なじみたちとともに遊んだ記憶」というものが非常に希薄な私の弱みをうまくくすぐってくれるタイトルだったということもあるのですが、発売後もさほどの反響がなく、ショップで安く売られていたのでなんとなく買ってしまった作品。さほど期待していなかったのですが…やっぱり中身もその程度でした。しくしく。

シナリオ

 主人公・拓也(変更可能)は、季節の変わり目に、小さいころともに遊んだ幼なじみたちと再会する。想い出を共有しつつ、そして現在をともに過ごしていく彼女たちと、主人公との物語が始まる。

 

 シナリオ担当は「とおつぐみ」氏。

 なんだかものすごく抽象的でそっけないシナリオ紹介になっていますが、具体的なことを書きようがありません。ネタバレになって困る、というのではなく、実際に要約して書けるだけの内容が実に少ないのです。

 シナリオは非常に単調で、しかも各キャラごとに短くなっています。ヒロインの数が5人と、まずまず通常の範囲内に収まっている反面、「主人公とヒロインとのストーリー」に目を向けると、あまりにも質量両面において物足りないものです。幼なじみという関係から恋愛へのステップアップ、というごく当然の過程を誰に対しても経る以上、ある程度以上の内容を求めるというのは、決して無い物ねだりではないと思うのですが。

 

 テキストが非常に特殊というか独特です。主人公の心境描写、ないしは観察描写をそのまま文字化し、その文字列が相互につながることを意識しながら、なおかつ一句一句が短い節をもったままで、連なっていきます。こういう書き方をすると、何やら高尚な文体のように思えるでしょうが、ばっさり言ってしまえば陶酔型ポエムでしょう。倒置法が多用され、「…て。」「…から。」といった文末表現が目につきます。こういった表現は、主人公が実際に何らかの行動を起こしたり心的な葛藤を経たり、はたまた環境の大きな変化に戸惑ったりといった場合にはいいのでしょうが、シナリオ自体が非常に単調なので、自分が出す言葉に酔っている人間を端から見ているだけ、という感じにさせられてしまい、見ているだけで疲れてきます。言葉がこのようにつらつらと流れていくのは、カイコガが糸を口から出しているかのような感じさえあります。

 さらに、こういった「クリスタルの中に閉じこもっているような主人公の独白」が連なると、ヒロインたちの行動も、主人公が「ウチ」から「ソト」を、あたかもスダレごしに眺めているように思え、キャラクター同士のコミュニケーションが生身で伝わってきません。キャラクターが「主人公のソトで動いているな」「主人公にアクションをかけているな」とはわかるのですが、その動きが、主人公を通じてプレイヤーに伝わってはこないのです。

 あたかも、「さぁ萌えてみろ」といわんばかりのキャラクターの配列ですし、また言動や行動のパターン化なども「狙い」がミエミエなのですが、主人公に対する接触が間接的なものに留まっているとしか思えないままにストーリー(と呼べるのかどうか)が流れていくため、観客たるプレイヤーは、主人公にもなり切れぬまま傍観者という立場に留まらざるを得ません。結局、「主人公を通じて、ヒロインのアクションを眺める」物語になってしまっています。

 これは、主人公の「心理描写」が、徹頭徹尾静態的に綴られているために、何らダイナミックな変化がなく、状況説明のみで推移しているからに他なりません。実際に詩を書いたことがある人ならおわかりでしょうが、詩という形式をもって変化を綴ろうとした場合、叙事詩という形式を使わないかぎり、それはかなり難しいのです。この作品では、その難題に挑んであえなく玉砕しているという観が拭えません。結局、主人公が直接関わらない世界での変動に対し、主人公がどのように呑み込まれていったかがただひたすら描かれるのみ。これでは、説明文を読まされているも同然であり、物語としてのおもしろさはほとんどないといっていいでしょう。

 主人公の性格とかヒロインのタイプとか、そういう以前の、致命的な問題です。かなり無理に考えれば、「主人公は積極的な行動をせず、しかしうじうじこだわってもいない、何も考えない姿勢を常に保っている、あたかも仙人のような人間」といえなくもないのですが、それならまわりのヒロインたちはハッキリいって邪魔です。だいたいそれなら、かわいい女の子たちを揃えて恋愛ゲームにする意味はないでしょう。

 かてて加えて、Hシーンへの導入など、「取って付けたよう」という言葉がこれほど当てはまるケースは珍しいとさえ思います。芸がなさ過ぎ。

 

 また、テキストが独特…というか、妙な文体を使っているので、読みにくいことも指摘できましょう。ポエムというのみならず、なんだか読みづらいことこのうえないのは、内省的な表現にしようとしながら、実際には空虚としか表現できない無内容の名辞を連ねているにすぎない個所が多いせいでしょう。たとえば、無表情な距離感の無さで、自分の位置をうまくつかめないでいる。だの夢で見るような、追い掛けられている時の奥行きに似ている。どこまで行っても何も変わらない焦りみたいなもの。だのと書かれても、意味わかんないんですけど(^^;)

ゲームデザイン

 途中に出てくる選択肢によってフラグがたち、シナリオが各ヒロインごとに分岐するタイプのアドベンチャーゲームです。選択肢のパターンから察するに、好感度といったパラメータは特になさそうな感じです。選択肢数はさほど多くないのですが、ヒロインの数やエンディングのパターンは結構多く、その分岐がわりと序盤から激しかったりと、コンプリートしようとすると意外にも手こずる、という程度の難易度ではあります。

不具合・修正プログラム

 佳苗の立ちCGが乱れるという不具合が発生するケースがありますが、ゲームの進行に大きな支障をきたすほどのものではありません。

操作性など

 基本的な操作は、マウス・キーボードの双方で行うことができます。マップ移動画面などはなく、中途で出てくる選択肢もキーボード選択可能なので、私はずっとキーボード操作で進めました。

 画像表示は、16bit/32bit、および解像度切り替えをかなり細かく設定することが可能です。下部に半透明のメッセージウィンドウが表示され、「Esc」キーまたはマウス右クリックで消去可能です。メッセージスキップは可能ですが、未読・既読の判別はありません。

 セーブ&ロードは任意の位置で、10個所まで可能です。セーブすると、セーブ時の実日時のほか、プレイヤーが任意のコメントを入力することもできます。

 また、プレイ中にもタイトルメニューに戻ることができるほか、表示画面を保存することもできます。

 ゲームを一度クリアすると、「おまけ」が表れ、「音楽」「回想」「CG」を選択可能になります。「回想」はHした女の子ごとにHシーンを再生し、「CG」はやはりヒロイン単位でサムネイル表示されます。

サウンド

 BGMはPCMで再生されますが、そう大した印象は受けませんでした。オープニングのボーカル曲はまずまずですが、そう何度も聴きたいなと思うほどのものでもない感じ。

 音声は、わりとよかったと思いますけれど、いかんせんキャラのセリフと主人公との距離とのために、素直に楽しむことができなかったのが残念。それ以前のテキスト自体にも問題があるのは間違いないのですが(^^;

グラフィック

 藤岡タマエさんの原画。確かに女の子はかわいいし、冒頭に出てくる「布団に干されてるあゆみ」など、いかにもほのぼの系恋愛ゲームに合ったタイプのグラフィックだな、と感じさせます。もっとも、特段グッとくるような美しいもの、といったシーンはなかったのですが。

お気に入り

 特にありません。

総評

 独特のテキストが特徴とはいえるのですが、結局のところ、主人公と、主人公のいる世界との間に壁を作ってしまう以上の効果をもたらしてはいないように思えます。女の子たちは絵的にはそれなりにかわいいのですが、ベタベタの恋愛ゲームである以上、濃厚なHシーンを求めるのはお門違い。そうであれば、キャラクターとヒロインとの「接近していく経過」が最重要になるはずなのに、そこでの描写がみごとに欠落しているので、ゲームの進行に何ら「進展している感触」が伴わず、ただ流れに身を委ねるのみになってしまい、退屈この上ありません。

 このゲームの中で何をウリにしているのか、それを見出すことは結局できませんでした。主人公の周りでピーチクパーチク囀っている女の子たちを眺めているゲーム、というだけでは、ゲームを続けていくだけのおもしろみも楽しみもわいてこようはずがありません。

 ストーリーテリングの基本ができていない凡作、と評しておきます。

個人評価 ★★★☆☆ ☆☆☆☆☆
2001年2月10日
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