Rainy Blue 〜6月の雨〜 R.A.N Software

2000年2月10日発売
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 ゲームをプレイしたときにプレイヤーが抱く感想は、プレイヤーによってまちまちですが、いろいろな要素を中に取り込んだゲームとなると、その傾向は特に顕著でしょう。貪欲にいろんなポイントを詰め込んだにせよ、それを十全に表現できるゲームなど数えるほどしかありませんが、それでも「貪欲さ」を感じるだけで――すなわち、制作者の「意気込み」が感じられるだけで――そのゲームを好意的に見るという経験が、誰しもあるかと思います。

 前作にあたる『Silver Moon』では、さまざまな楽しい要素をふんだんに使うことでゲーム世界にプレイヤーを引き込ませる点で成功しながら、シナリオのもつテーマに関しては、モチーフにおいて先輩にあたる『ONE』(Tactics)を越えることがありませんでした。しかし、そこかしこに見られたポテンシャルに、「このチームの次回作は大化けする可能性が高い」と思い、発売日を心待ちにしておりました。

 実際にプレイして、例によってNIFTYにファーストインプレをアップ、次いで「これで終わったのだろう」と判断してレビューを書きましたが、実際には、まだ見ていないシナリオがあることをNIFTYで知りました。で、これをプレイして全貌がわかり、やっと最終的な評価をくだせそうになった、と考え、改めてレビューを記すこととします。

 なお、プレイ直前に、題材としてかなり近似している『Alive』(Witch)をプレイし、またそのレビューを書いたことを付け加えておきます。

シナリオ

 主人公・北山緋路(変更不可)は、美大志望の学生。幼なじみで、つき合っていた少女・蒼が、突然の交通事故でこの世を去ったショックで、絵を描くことができなくなり、胸につかえたものを感じながら、鬱々とした日々を送る。

 そんなある日、蒼の形見となったマスコット人形が、突然動きだし、主人公に語りかける。

 主人公は、他の女の子と触れ合っていく過程で、再び絵を描くことができるのだろうか。そして、蒼に対する気持ちを、自分の中でどのように位置付けることになるのだろうか。

 

 シナリオ担当は「眼鏡友の会/EC」氏。

 ひととおりプレイして感じたのは、シナリオ全体を通じての統一感のなさでした。ここでいう「統一感のなさ」とは、必ずしもバランスが悪くちぐはぐしている、という意味ではなく、種々雑多な方向を内部に抱え込んでいる、という程度の意味です。つまり、「目指す方向」を一義的にテーマとして措定することが非常に困難となっているわけです。

 具体的には、このゲームを語る際に構成している3+1のシナリオを見た場合、そこに貫徹しているのはただ1点、「恋人を事故で失った少年のその後」、ただこれだけといってもいいでしょう。

 こういった統一感のなさは、一歩間違えれば、単なる無秩序、そして交わる事なき直線が空虚に並ぶようなイメージになってしまいますが、『Rainy Blue』は、意図してか否かは不明ですが、実に巧妙にその罠から逃れ、個々のシナリオごとで独自メッセージを発することに成功しているように感じます。

 前作『Silver Moon』は、冒頭で記したとおり、「奇跡」というモチーフ(テーマに非ず)を用いながら、その意味づけにおいて『ONE』とは比較にならない浅い出来になっていました。それに比べて『Rainy Blue』は、オリジナリティがハッキリと出ていた、というのはもちろんです(2作続けて「模倣」はないだろう、という予想はしていましたが)。しかしそれだけではなく、各シナリオごとのテーマ設定が独自になされているうえ、そのシナリオの多くは「(ヒロインの)キャラクター設定」のみに依存することなく、主人公、あるいはヒロインのいずれかが、シナリオの中で強い意味を持っているため、シナリオ個別の出すテーマの重さが、前作以上の水準に達していると感じます。

 誤解のないように申し添えておきますが、主人公の「シナリオ内における意味」とは、必ずしも主人公がポジティブに行動するとか、あるいは存在感を持つとか、そういうこととは一致しません。主人公が何らかのアクションを起こす、あるいは刺激を受ける、それの「結果」がどのようにシナリオの中で説明されているか、という程度に受け取っていただければ幸いです。

 

 全体を通して、各シナリオがエンディングできちんとまとまり、強引な帰着で済ませていない点については、それなりに評価できると感じます。

 また、主人公の心理描写についても、ましろではかなり弱いものの、真黄シナリオや碧シナリオでは、むしろ「把握できない心境を持てあましている」さまをきちんと描いている点は評価できましょう。そして、蒼依というキャラクターを配置することで、ややもすれば自問自答を繰り返して勝手に立ち直っていく(ように見える)という安直な方法を取っていないのもよし。蒼依という「キャラクターの特殊性」を捨象しても、彼女が主人公とどのような関係にあったか(ここでは、「主人公と蒼との関係」はいったん切り離すべきでしょう)が、日常的な会話の中でたんねんに描かれています。逆にいえば、「蒼依」というマスコットを配置することで、シナリオの方向性から無用な惑いを排除できた、ともいえましょう。

 

 その反面、日常生活の描写に刺激が乏しく、どうにもおもしろみを感じません。『Silver Moon』では、画面効果と会話とが相まって、非常にテンポがよく、また楽しい「日常」が描かれていました。今回は、「(世界としての)日常」ではなく、「(人間関係が確固としてある)日常」の消滅がモチーフとなっている以上、楽しい世界を出してもコントラストとして機能しない、という見方も可能でしょう。しかし、日常の描写自体には、「面白さ」を積極的に排除しようとした痕跡は感じられません。単なる「欠落」と見る方がよさそうです。

 ゲームというエンターテインメントの媒体においては、「楽しく」プレイすることが必須であるはずです。確かに文章力は格段に向上しましたし、読みやすくもなったのですが、「面白み」が消えてしまったのも、残念ながら、また確かです。リプレイしていても、中盤までの会話の退屈なこと。辛うじて蒼依が気を吐いている、といったところでしょうか。

 

 さらに、リプレイを繰り返しても、やはりHシーンの入れ方には、大きな問題を感じます。単に「想いが通じた」を表現しているに過ぎない真黄シナリオと、「本当の別れ」を語る隠しシナリオ、この2つはいいのですが、碧とましろについては、唐突そのものです。特に、碧シナリオという、肉体関係を持つ理由が非常に重たいシナリオにおいて、それを挿入するタイミングを誤っているのは、やはり致命的といってよいでしょう。この点に関しては、ファン向けアイテムCD『ましろの宝箱』の中で、言い訳的なエクストラストーリーが付されることで「解決」されていますが、1つの作品内部で完結しない「唐突さ」の釈明には至っていません。

ゲームデザイン

 ゲーム期間は、6月24日から始まり、実質的に2週間の間にヒロインが絞り込まれます(絞れない場合はバッドエンド)。それ以降は一直線で進みます。バッドエンドの場合はスタッフロールが流れません。

 基本的に、毎日、2〜3程度の行き先選択肢が出てくるので、誰かがいそうなところに行けば大丈夫です。意外なところで出会う場合もあるので、一応セーブはお忘れなく。

 一見、難易度は高くなさそうに見えますが、実際には、「隠しシナリオ」が存在するため、コンプリートしたつもりになっていても実際には終わっていない、というケースが考えられます。イベントを見逃すと、その時点でアウト。ただ、各キャラクターを追いかけているだけだと、全てのCGを見るのは不可能です。また、キャラクターと会ったとき、ときどき選択肢が出ます(1人につき3回程度)が、直後の反応である程度わかるでしょう。ここで妙な選択をすると、ヒロインが絞り込まれても、エンディングで救いのない結果になります。

 なお、3ヒロインのエンディングを見ると、おまけシナリオに入ることができます。さらに、全シナリオを見ると、今度は「隠しシナリオ」に入れるようになります。こういった仕様を設けるのも1つの方法ではありますが、「シナリオ」欄で書いたとおり、その「隠しシナリオ」がトゥルーエンド的な内容であり、なおかつそう簡単には気付かない(ヒントもなければ、CGモードなども発見できません)という意地悪さには、首を傾げます。

不具合・修正プログラム

 致命的な不具合は見つかっていません。ただ、CGモードで、碧のグラフィック表示が乱れる個所があります(上から3行目・左から4列目)。また、CD-ROMをドライブに入れたままでエンディングを迎えた場合、なぜかエンディング曲でなくオープニング曲が流れます。

 R.A.N SoftwareのWebサイトに修正ファイルがアップされているので、これを使うのがいいでしょう。

操作性など

 アクティブのプログラムならでは、というべきでしょうか、非常に快適にプレイできます。ゲームデザイン自体もシンプルなのですが、ユーザーインタフェースのよさでは、Xゲーム多い中でも、やはり最高水準であるのは間違いないでしょう。

 CD-ROMを挿入するとセットアッププログラムが自動起動し、インストールの際には、最小・標準・最大の3通りが選べます。最大インストールをすれば、CD-ROMなしでゲームを起動することが可能となります。

 操作には、マウス、キーボード、ジョイパッドが使用可能です。マウスとキーボードとは、いずれも自由に使い分けることができ、画面上のクリックポイントやキーボードのショートカットキーが多数用意されています。

 画面は、640×480とフルスクリーンから切り替え可能です。基本的に全画面表示で、下部にメッセージウィンドウが半透明表示されます。また、画面中に表示されているキャラ以外が話す場合は、小ウィンドウの中にそのキャラクターの顔が出ます(主人公含む)。画面表示は「標準速/高速/最高速」から選択できます。

 メッセージ速度表示の調整はなく、すべてノーウェイト表示。ただし、メッセージの自動再生機能があります(「F8」キー)。メッセージウィンドウの下側にあるボタンをクリックすることで、システムメニュー呼び出し(右クリックでも可能)・メッセージウィンドウ消去・メッセージ読み返し・メッセージスキップが可能です。また、いつでもヘルプを見ることができます。メッセージスキップでは、既読・未読を判別でき、既読文のみスキップ・強制スキップの別など、非常に細かいカスタマイズが可能となっており、リプレイがまったく苦にならない配慮がなされています。

 セーブ&ロードは、任意の位置で10個所まで可能です。また、プレイ中、オートセーブが行われるため、ゲーム中で見たテキストやグラフィックは自動的に記憶されます。セーブを「F2」キー、ロードを「F3」キー一発で可能というのも嬉しいところ。また、オープニング画面に戻ることもできます。

 冒頭の「おまけモード」では、「美術室に行く」とCGモード、「神社に行く」とBGMモード、「病院に行く」とスタッフルームに入れます。また、クリアしたヒロインのプロフィールを聞くこともできます。

 CGモードは、ヒロインごとにサムネイル表示されます。回想モードはありません。BGMモードでは、各曲(曲名あり)ごとに簡単なコメントがあります。ただ、『Silver Moon』のように、キャラクターが解説してくれる楽しさがあまりないのはちょっと寂しいところですね。

サウンド

 BGMは、PEEK-A-SOULの担当。BGMは、DirectSound/DirectMusic/MIDI(GM)から選択可能です。私の環境では、DirectMusicでの再生がもっとも高音質に感じましたが、マシンパワーなどの影響もありそうです。

 前作『Silver Moon』でサウンドを担当したアーティスティックコンセプツのBGMとは異なり、曲そのものの自己主張がさほど強くはないように感じましたが、音声付きという効果も考えられましょう。蒼依のテーマである「I'M ALIVE」が、個人的には非常に気に入りました。また、オープニングとエンディングはボーカル曲です。ただ、CD-ROMをドライブに入れてエンディングを迎えると、なぜかオープニング曲がエンディングで流れますので、「最大インストール」をしたうえで、CD-ROMをドライブから取り出しておくことをお勧めします(CD-ROMがなければエンディング曲がちゃんと流れます)。

 音声は、「全て有り/主人公以外は有り/女性のみ有り/女性と主人公は有り/なし」から選択できます。主人公の声がやや高くて不自然な感じ(女性の方が吹き込んでいるのでは?)でしたが、ほかはまずまず悪くない、というところでしょうか。キャラ萌えさせるタイプのゲームではないこともあり、声でぐいぐい引っ張るわけではありませんが、これも蒼依の声が一番印象に残ります。

グラフィック

 『Silver Moon』の雨音 颯(前作では「FOJY」)・CHO_Bit両氏の原画です。やや面長の顔やドングリ目が印象的ですね。美しい、というよりも、表情がころころ変わるタイプの女の子で真価を発揮されるようで、前作の忍や真琴で感じたインパクトはほとんどありませんでした。碧など、前作の真琴をショートにしたらほとんどそのまんまなのですが、表情変化が少ないキャラの場合、物足りなさを覚えました。

 CGの表情変化はそれなりに楽しいのですが、前作のようなパフォーマンスが影を潜めただけでなく、画面を分割して動きやシチュエーションに変化を出すといった工夫がほとんど見られなくなり、結果として、ゲームの流れを活性化させる役を果たしていません。『Silver Moon』の忍の「亮ちゃん〜(^^)」のような、魅力たっぷりの演出を期待していたのですが。例外が、いつもちゃかちゃかしている蒼依。彼女が一人(?)で頑張っているような感じさえします。

 光線を使った夕暮れ時のグラフィックは、非常にきれいですね。

お気に入り

 蒼依で決まりです。このゲームにおける最大のキーパーソンであり、また、主人公が立ち直るきっかけを作り続けた彼女なくして、このゲームを語ることはできないでしょう。コンプリートして、なおその印象が強くなりました。特に、碧シナリオで、涙ぐみながら緋路に訴えかける蒼依の姿は、碧よりもさらに印象的です。

 他のキャラクターも、「黒髪の大和撫子」とか「陰のある無口な娘」とか、なかなかに心惹かれそうな設定になっているのですが、彼女の前にはすべてが霞んでしまいます。

関連リンク先

 悪くはない、という評価が一般的といえましょうか。SHEOさんのWebサイトなどで取り上げられています。

総評

 「死」に直面したキャラクターの心情描写にとどまらず、主人公、そしてヒロインという2人の関係にまで踏み込んでいるシナリオは、非常に高く評価できるでしょう。前作では、模倣の中で独自性を出そうと図りながらも結局見せることのできなかったオリジナリティが、この作品ではそれなりに作られています。テーマ自体が一般受けするものかどうかは大いに疑問ですが。

 ただ、それ以前に、シナリオの組み立て方、そしてゲームバランスそれ自体の問題が非常に大きく、シナリオの魅力を大きく損なっています。特に、前作に比べて、プレイの中で「退屈さ」を感じる時間が遥かに長くなったのは、非常に残念です。シナリオ重視のゲームとはいえ、シナリオそれ自体はあくまでもゲームの一要素なのですから、シナリオを「読みとろう」という気にさせるような「足場」をしっかりと固めて欲しいものです。

 

 購入前の時点では、シナリオ面でアクの強いものよりは、クライマックスに至る演出面において出色の作品が誕生するのでは、と期待し、場合によっては『』(Leaf)のように、シナリオと演出との連関が見事に決まった作品になるかも、と思っていたのですが、予想に反し、シナリオ面でのポテンシャルを特に強く出しながらも、演出や構成については、『Silver Moon』と比べて、一歩も二歩も後退した観があります。今後、どのような作品を出してくるのか、かなり不安があります。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
2000年2月12日
(2月15日、別稿をアップ)
(10月19日、新稿をベースに2稿を統合)
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