Rumble 〜バンカラ夜叉姫〜 ペンギンワークス

2000年4月14日発売
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 1972年生まれの私にとっては、「番長」だのなんだのといった言葉じたい、身近なモノとしてはもちろん、過去の郷愁の延長としても受け止められるものではなく、マンガの類で定番的に出てくる「装置」としてしか見ることができません。これは至極当たり前のことなんですが、学ランで殴り合いを交わす汗臭い「男気」が飛び交う世界、となると、限りないバカバカしさとともに、現代の実社会ではまず存在しえない空間をいろいろと連想してしまいます。

 そういう「空間」の中に、シリアスとギャグとの双方を織り込んだゲームとしては『Only You』(アリスソフト)が有名ですが、この『Rumble』はさらにそのギャグを先鋭化させ、キャラクターの描写を実にうまく展開しています。真面目な顔してバカな展開を続けているキャラクターたちなんですが、「バカがバカゆえにバカをやっている」のではなく、「バカな世界であるゆえに誰もがバカをやっている」ように感じました。

 なお、「rumble」とは「けんか(米俗語)」の意味ですが、「夜叉姫」とは何でしょうか? まぁ、メインヒロインのことを指している、といえばそれまでなんですけれど(^^;)

シナリオ

 荒廃を極めた「学校」、そこは暴力が吹き荒れる無法地帯であったが、かつて力ある1人の「侠(おとこ)」の手によって平和がもたらされた。「鋼鉄番長」と呼ばれた彼の名が伝説と化して数十年、再び学校間の抗争が恒常化していた。そんな中、1人の奸計に長けた能弁な少女は、主人公・丈夫鋼(変更可能)の中に、新しい救世主たりうる素質を見出し、彼が覇道を進む手助けをすることになり、他校への進出を開始する。熱い拳と魂の響きが奏でる世界の果てに、何を見出すことができるのであろうか。

 

 シナリオ担当は「天城遼」氏。

 上のような粗筋だけを見ると、なんてこともないナンセンス熱血モノと見えるでしょうが、実際には「男の熱血的世界」という側面よりも、バカゲー以外のなにものでもない、といえます。

 

 まず、登場人物の名前が振るっています。主人公のデフォルト名がいかにも不自然ではありますが、これはまだしもまとも。ヒロインなどのキャラクターになると「月夜御名紗霧」とか「星北凛奈」という妙なシロモノになり、さらに脇役になると、最初に倒す現役の番長が猪乃健(デブ)、主人公の師匠が墨土羅ェ門(居場所が「藤ノ子神社」)、ボスキャラがビリィ・ゲイチュ(学校名が「システムフアンテー大学付属皇校」)ときています。

 さらに、キャラクターたちの掛け合いがいちいち大袈裟であり、万事ボケとツッコミが必ず入ります。アクションにも「金属バット」やら「釘バット」やらが平気で行き交い、ドツキ漫才が最後まで続きます。また、かなり濃いパロディが多用されてはいるものの、元ネタがわからなくても「何となく受けの取り方がわかる」ような描き方をしているので、わからなくても白けることはありません。

 もっとも、あまりの濃さに、かなり人を選ぶのは確かでしょうね。

 

 しかし、このゲームでは、ギャグがひたすら続くゲームという点よりも、むしろ、そのギャグが暴走する世界の中で、各キャラクターが実に持ち味をよく発揮していたという点を、まず評価したいと思います。オーバーアクションの結果、そのキャラが結局道化役以外の何ものでもない、というキャラも確かにいますが(弓子なんかは見せ場も少ないですし)、これでもかといわんばかりに、さまざまなシチュエーションごとで異なったパターンを出すことによって、単に「可愛いキャラ」あるいは「バカなキャラ」という以上のものを見せています。小悪魔どころか真性悪魔ともいえそうな紗霧など、まさしく見た目はラブリィ中身はガッデムぶりを遺憾なく発揮してくれます。彼女ほどではないにせよ、各シーンごとにいろんなキャラがいろんな素振りを見せるさまは、みごとなものだと感じます。

 ただ、主人公は、別に硬派でもなんでもなく、ごく普通のタイプですね。喧嘩には強いし、そこそこ男前ではあるんですが、別に頭の回転もよくはなく、どちらかといえば紗霧にどつかれる役(^^;)というのが一番適当でしょうか。主人公らしくない主人公ともいえますが、これがまた話にうまく合っていました。

 なお、基本的に男性キャラはさほど暴走せず、女性キャラが走り回っているのが基本ですので、『Only You』や『AmbivalenZ』のような「魅力ある男性キャラ」大暴れ、とはなっていません。

 

 さらに、シナリオの展開じたい、単にストーリーだけを追ってみた場合は「べつだん大したこともない」シロモノなんですが、話の出し方、進め方は実に楽しく、まったく飽きることがありません。気がついたらのめり込ませる、妙な魅力があります。これは、上に書いたようなギャグの連続攻撃、キャラの持ち味といった要素もあるんですが、イベントの配置自体も非常に巧みなんですね。イベントそれぞれが全体の中でどんな役割をもつのかということは一切関係なく、どんどん進んでいく目標の1つとして「只今進撃中」というノリで突進していきます。展開自体は意外性を感じさせるものではないのですが、どんなキャラが出てくるのか、あるいは登場済みのキャラがどんな本性(^^;)を発揮してくれるのか、そう期待しながら進めることができます。

 

 これとは別に、テキスト自体にも、不思議な魅力があります。うちのお兄ちゃんはバカです(←音声つき)といった単純な文から、バカじゃねえかと思ったが、敢えて言わずとも、みんな解っていることだと思ったので言わなかったといったヒネッた文まで、身も蓋もない表現のオンパレードとなっています(^^;)

 さらに、漢語を多用しているにもかかわらず、誤字や用法の間違いが非常に少ない点も評価できるでしょう。本来は「あってはならない」要素なのですが、難しい言葉を無理に使おうとして自滅しているゲームテキストが氾濫する中、意図的にズラして書いていると思える部分以外でのミスはほとんどないのは、よかったと思えます。ただ「降伏」と「降服」とが入り混じるのだけはカンベンしてほしかったものですが(どちらでもいいんですが、一方に統一するべきです)。

 ただ、各センテンスが長く、また上に書いたとおり漢語を多用しているので、人によってはややくどいと感じる可能性も充分にあります。文体自体も演出としていい効果を出していたと私には思えましたが、ここは人それぞれになると思います。例えば、紗霧が足下にあった石を手に取ったときなど、『持っていても捕まらない』『割と何処でも調達可能』と良いことずくめの石コロは、他の凶器の羨望の的だというぐあいです。このテキストが示す「情報」は、量的にも質的にも大したことはない(要するに「この石を凶器として使おうとしている」というだけのこと)のですが、こういったマシンガン的な怒濤の文が流れていく点で、人を選ぶ可能性もあると思えるしだいです。

 

 最後に、Hシーンの入れ方ですが、レズありレイプありとメチャクチャです(^^;) Hシーンがあるキャラは、基本的に主人公とのハッピーエンドが用意されているキャラクターだけのようで、バリエーションはわいといいのですが、「ラストに結ばれてムフフ☆」という王道パターンであるのは実は全体の半分以下だったりします(^^;) 特に、盾子のHシーン(初回の方ね)は非道いでしょ、ありゃ。いや、シナリオ的にひどいのではなく、主人公が「非道」い、というのがよくわかりますデス。Hシーンが終わった後の反応など、すっかり鬼畜ずれしていたプレイヤー(not「主人公」)には、なんだかものすごく新鮮に感じたと付け加えておきます(^^;)

ゲームデザイン

 途中の行動選択の結果、5人いるヒロインとエンディングに到達することができるというタイプの、ごくオーソドックスなマルチエンド式アドベンチャーゲームです。中盤でシナリオが分岐しますが、終盤になるとまたシナリオは1つに収束し、エンディングだけが分かれる、という形になっています。中盤での分岐はわりとパターンが多く、さほど複雑ではない設定の中で、バリエーションが意外と多様に用意されている点は注目できます。

 戦闘シーンなどで失敗すると即ゲームオーバーになりますが、初回の戦闘開始直前に「心得」が出てきますので、そのパターンに従えば問題ありません。アドベンチャーゲームの中で戦闘シーンを織り込むのは手順を増やすだけ、というケースが多い(『AmbivalenZ』など)ものですが、このゲームでは戦闘シーンでもいちいちオーバーにならない程度のアクションが入っていたので、なかなか楽しめました。

 基本的に、シナリオの分岐やバリエーションなどのバランスはわりと取れています。中途の選択とエンディング結果とのつながりがやや薄いと感じたケースがあったのも事実ですが、無意味な選択で人を惑わせるというケースはほとんどなく、むしろ選択肢の総当たりに取り組んでみたぐらいです。選択肢の作り方というのは、アドベンチャーゲームでは非常に重要なことなのですが、ここがきちんとできている点を高く評価したいと思います。

操作性など

 動作対象OSは、Windows95/98です。WindowsXPでは動作しません。

 『歪んだ赤い糸』や『百花繚乱』など、日本プランテックからリリースされた「書籍シリーズ」と同様のプログラムを用いており、操作性もこれらに準じています。

 インストールの際には、最小・標準・完全の3とおりから選択でき、完全インストールするとCD-ROMなしでプレイ可能となります(私の環境では642MB使用)。

 基本的にマウス操作で進みます。通常の進行では、マウスをクリックするだけで、キーボードは受け付けません。「読む」だけなので、マウス左クリック=エンターキー、という仕様がほしかったところです。

 画面表示は、640×480ドット表示が基本で、全画面表示/ウィンドウ表示の切替が可能です。下部にメッセージウィンドウが半透明表示され、「Esc」キーで消去可能です。

 特定のセーブポイントのみでセーブ可能ですが、セーブ可能なのは5個所のみと、ゲームのプレイ時間やエンディング数、シナリオの分岐数、そして後述するように回想モードの類がないことなどを考えると、圧倒的に不足しています。しかも、この「特定」のポイントが、選択肢を選んだ直後に出てきたりするのが困ったもの。セーブすると、プレイ時の実日時が記録されます。

 速度表示は3段階から選択できますが、あまり速くないです(^^;) また、「Shift」キー、または「Ctrl」キーを押すとスキップしますが、画面表示の切替中、あるいは左クリックした直後でないとスキップしませんので、注意が必要です。また、既読・未読の区別といった洒落た機能などついていないことも付け加えておきます。

 CGモードやBGMモードなどはありません。なんでこんな意地悪な仕様にしているのか、理解に苦しみます。数分ではとうてい終わらないプレイ時間、マルチエンドというゲームデザインということを考えれば、単に「実用」目的に留まらず、各キャラクターとのシーンを後から見直したりイベントの見落としをチェックしたりという作業は当然のようにやりたくなると思うのですが。

 書籍シリーズなどとは比較にならないボリューム(シナリオ・CGの両面において)になっているだけに、なぜ同一のユーザーインタフェースにしているのか、はなはだ理解に苦しみます。操作性が悪いためにリプレイがかなり苦痛であるというのは、このゲームで最大の問題点とさえ思えます。

サウンド

 BGMは、MIDIで演奏されます。ややチープな感じの曲ですが、どことなくレトロっぽい雰囲気を出しているという面もあるんで、これはこれで悪くないかも、と思います。

 音声は、主人公以外の全キャラクター(男性含む)がフルボイスという豪華な内容で、非常に水準が高いものと感じます。こういうテンションの高いギャグが続くと、どこかで無理が出てしまいがちなものですが、不自然に感じる点はほとんどありませんでした。

 また、効果音がなかなかうまく使われていた点も特筆できましょう。ツッコミを入れるときに「ブブー」とブザー音が鳴ったりするのは、この種のゲームでは初めて耳にしましたが、これが絶妙です。

グラフィック

 キャラクター原画は、大藤玲一郎さんの担当。アニメっぽい感じのグラフィックですが、女の子が目を細めるところなどがなかなかかわいいですね。立ちCGの表情変化もバリエーションに富んでおり、会話とのリンクもきちんと取れているのが良し。キャラの描き分けがあまりできていないので、慣れないと「これ誰?」と思ったのもまた確かですが、さほど気にすることではないでしょう。

 ただ、(書籍シリーズでもまったく同じ印象を持ったのですが)塗りがかなり甘くてぼやけたような印象があり、グラデーションなどかなり手抜きのように感じます。特に一枚絵CGで、その傾向が顕著というのは、ちょっと困ったもの。

お気に入り

 江里盾子(双子妹の方)が一番好みです。このゲーム中唯一のまともなキャラで、周りが変な連中ばっかりであるために、かえって引き立っています(^^;) 反応も素直ですしね。

 2番手にくるのが、金剛多華女ですね。顔を赤くして目の下までエプロンを持ち上げているグラフィックが可愛いです。……揉んで…。のセリフに「うんっ!」と言いそうになりましたヾ(^^;

関連リンク先

 らまひすとさんのサイト(閉鎖)での感想がなかなかよいと思います。

総評

 いわゆる「バカゲー」の1つである、といえばそれまでですが、やたらとテンションの高いギャグ、そして独特の味のあるテキストは、かなり人を選ぶでしょう。しかし、このゲームからは、キャラクターの「魅力の出し方」が、「萌え」という言葉で語られるようなスタイルとは別個の次元で描かれることが十分にわかるとおり、本当に出てくるヒロインたちが「いきいき」しています。アクションや言動の使い方も、各キャラクターの「説明」へとうまくつながっており、また最初から最後まで「少しずつ」出されていくため、ダレを感じさせることがなかったのがよい点でしょう。

 反面、ポンポン続く波状攻撃(^^;)が最初から最後まで貫徹しているので、序盤で合わなければ最後まで疲れることは必定かと思います。また、ユーザーインターフェースがタコであるため、意地になっても最後までプレイしてやる、という気になりにくいのも問題(否、最大の問題点)でしょう。

 やっぱり、締めは、この一節につきましょう。

ビバ、バカ!! バカよ、永遠なれ!!!

個人評価 ★★★★★ ★★★☆☆
2000年5月3日
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