Sense Off otherwise

2000年8月18日発売
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 「理系出身者(特に数学)」「SFネタに強い」「感情より理詰めであることに引かれる」といった向きには良い、と聞いていたため、どれひとつとして当てはまるもののない私は無視を決め込んでいたのですが、複数の方から薦められるにおよび、思い切ってプレイすることにしたしだいです。

 なお、パッケージやタイトル画面では「Sense Off」、ゲームのタイトルバーには「sense off」、マニュアルの中では「Sense off」と表示されています。どれが正式表記なのかはわかりませんが、一応ここでは「Sense Off」で統一します。しかし、このタイトルの意味がいまひとつピンとこないのですが。

シナリオ

 主人公・杜浦直弥(変更可能)は、ひょんな事故を契機に小さな研究施設で「研究協力者」として生活を送ることになる。彼はそこで、旧知の幼なじみを含む少女たちと出会う。擬似的な学園生活を送る中で、彼女たちとの接触が、彼らを徐々に変えていくことになる。

 

 脚本担当は、元長柾木氏。

 シナリオの構成は、『ONE』(Tactics)を彷彿とさせる…というより、そっくりです。毎朝幼なじみが起こしにくるあたりなど、半ば確信犯的に行ったとしか見えません。よって「パクリ」として済ませることも可能ですが(意識していないといっても説得力はまるでないでしょう)、それに留まらないものを確実に見せています。もっとも、質的に「超えている・超えていない」といった見方で終えるべきでもなく、むしろどのように意図的に差異化を行ったのか、という視点で見る方が建設的でしょうね。もっとも私は「差異化」という点で見るよりは、いわば本歌取り的に「『ONE』的叙述に対する挑戦」と考えるべき作品と感じましたが。

 それはともかく、各キャラクターとも、取っつき部分についてはかなり定型的なパターンを使っており、第一印象からして意外、というタイプはいません。

 

 あらかじめ世界観をかなり限定可能な形で呈示しており、その世界観の中で主人公とヒロインとがどのような運命をたどるのか、というスタイルで進みます。この「世界観」自体が、終盤に差し掛かるあたりで一気に出されていき、そこで悲劇あるいは悲劇につながるような出来事と落ち合うことになります。

 

 テキストには、かなり抽象的な用語が飛び交いますが、基本的には各用語とも辞書的な定義でフォロー可能な範囲ですし、抽象概念を曖昧にボカしたままで強引に進むことはなく、比較的読みやすく書かれています。特に主人公のモノローグがおもしろく、自分の理解している概念を言葉で整理しながら状況を把握していこうというさまがうかがえます。センテンス単位では論理的であるように見せつつ、実際には先を読めない形で綴っているのがいいですね。説明口調を排しているのもよし。

 

 主人公の語り口やルートに入った各ヒロインの行動などが「論理的に説明されている」ために、彼らの行動自体が物語を「作る」のではなく、すでに作られている「世界」の中の「部品」として動いていることが明確です。そこでは、プレイヤーによってレディメイドされた「物語世界」が通用しません。その結果、中盤までの日常的なパートと、「世界」の独自性が極度に強くなるエンディングパートとの断絶が大きくなるため、プレイヤーサイドは当惑を覚えるわけですが、これ自体は悪くないと思います。

 特に珠希シナリオなどで顕著ですが、合理的とはとうてい言えないながらも、それなりに論理的な展開が行われているため、エンディングが近づくまでは、割とすんなりとついていくことができます。

 テキストに用いられているロジックもさほど複雑なものではありません。ストーリーの展開のために強引に用意された設定が都合よく並んでいる観はありますが、それはむしろ、世界がフィクションである面を強調する方向に働くものであって、「世界」があることを確認させるものとなっていたと思います。

 このため、その「世界」自体には、大して共感することも反発することもなかったものの、それなりに「ふんふん」と読み進むことはできました。

 

 しかし、エンディングの唐突さは、それまでに積み上げられてきた世界を一気に転倒させるものとなっています。この「一気なる転倒」は、いわば「論理」の整合性に慣れてきたプレイヤーの視点を急に変化させるものであり、それはそれで演出としての面もあるのでしょうが、私にはさっぱり理解できませんでした。エンディングそれ自体に対して、解釈なり説明なりを施すことはそれなりに可能でしょうが、しかしそこまでに作られてきた「世界」の基盤を一気に掌握不可能な形にする方法は、どうにもわかりません。いわば「ノリ」が暴走したような感じもします。

 特にエピローグについては、本編との整合性を論理的に考察しようとしても無理でしょう。いや、そこに「不合理」が入り込んでもかまわないのですが、オチとしてなっていないように思えます。

 この手法は、私には「わからない」ことに対して沈黙させ、そこに「合理性」という名の呪文を流し込んで固めているように感じられました。そこまでの展開が論理的に(しかし、決して汎用性のある論理に基づくものではない)なされているだけに、その反動はかなり大きいものがあります。この落とし方を取った点については、どうにも納得がいかないものがあります。

 

 ただし、中盤までの日常パートも、一見「無邪気に楽しめる」ものに見えながら、実はなかなかのクセモノのように思えます。主人公たちは疑似全寮制学校のようなところにいるわけですが、研究所の中に「学校の教室」が設置されていて机とイスがずらりとならび、しかし同学年は4〜5人という状態には、少なからぬ違和感を覚えます。イスがいっぱい空いている教室で4〜5人が授業を受ける風景はなかなか寂しいものがありますしね。これらは、結局、このゲームの中における「世界の当事者」たるキャラクターたちに、生気を感じられないことと無関係ではないでしょう。

 もちろん、彼らのやり取りを見るかぎり、それなりに楽しい「日常生活」を謳歌しているようにも見えますが、しかし「生きている人間」であるがゆえの切迫感というものからはほど遠い描写には、いわば「異常な世界」における仮想的な「意志体」のシミュレーション、という観さえあります。

 

 細かい設定については、純然たる文系畑の私にはさっぱりわからないネタが多く、「はぁ」としか言えないものだらけでしたが、「加速度を微分すると速度になったり」というのはナニ?(^^; あと、「アルファベットじゃなくてギリシャ文字だ」などといってますが、ギリシャ文字だって立派なアルファベットを持ってますって(^^;;;

 おまけに、特に椎子シナリオなど、ライプニッツの使い方に若干の違和感を覚えたこともあって(私にとっては「微分積分の創始者」よりも「モナド論・予定調和」を先に連想させる人物ですので)軽く流して進めてしまいました(^^;

 

 テーマとしては、「認識」が世界を変える、という説明がところどころにあります。詳細に関して踏み込むのは控えますが、そこに「恋愛」を関係の一形態として絡めた場合、実は、近代認識論批判の紋切り型パターンのひとつとなっているように思えます。すなわち、「認識」を<体験>という地平から見るという方法はフッサール現象学の方法論の特徴のひとつでしょうし(かなり単純化した乱暴な論ですが)、それは、ポストモダンという潮流(の残滓?)とも重なり得る「知の消費者」たる「評論家」への痛烈な皮肉のようにも思えます。

 ちょっとうがちすぎかも知れませんけれどね(^^; ゲームのレビューを書く者として、こんなことも考えてみたりするのは、自家撞着かいな?

ゲームデザイン

 選択肢によって各ヒロインごとのルートへ分岐していくタイプのアドベンチャーゲームです。ヒロインに狙いを絞っていけばそう難しくはありませんが、エンディングフラグ方式が取られていること、またヒロイン間で優先順位があることが注意点でしょうか。

 各ヒロインごとのエンディングは、それぞれ2段階に分かれており、別々のサウンドが流れます。このあたりも『ONE』を強く意識していると感じました。

 各ヒロインをクリアする順序ですが、例えば美凪などを最初の方にクリアしてしまうと、成瀬などがわりと白けてしまうのではないかと思います。5人の主要ヒロインのうち、成瀬は最初にして、美凪・透子を後に回すのがよいでしょう。ちなみに私は、成瀬→椎子→珠季→依子→美凪→透子→少女A(厳密には違うけど)の順にクリアしました。

不具合・修正ファイル

 私がプレイしたところでは、不具合などは何も起こっていません。

操作性など

 対応OSは、Windows95/98/2000ですが、WindowsXPでも問題なく動作しました。

 CD-ROM1枚です。複数枚CDが常態化している中、コンパクトに収めているのは個人的には好感を持ちました。

 インストールの際に必要なHDD容量は150MBほどと、これまたHDDにやさしいスペックとなっており、空き容量にさほど気を使う必要がありません。

 ゲームの起動自体にはCD-ROMは不要ですが、BGMがCD-DAで演奏されるため、プレイには実質的にCD-ROMが必要です。操作法はビジュアルアーツ標準仕様といってよく、マウス操作が基本、キーボード操作も可能となっています。コンフィグなどのメニューはすべてマウス右クリックで行います。終了やタイトル戻りも任意の位置で可能です。

 画面構成は、640×480とフルスクリーンから選択可能で、グラフィックは全画面表示、テキストは基本的に半透明メッセージウィンドウ内に表示され、消去(右クリックメニューから選択)・不透明度と色の変更・移動が可能です。ごく一部、全画面ビジュアル表示になるところもあります。

 テキスト表示速度の設定変更も可能で、「Ctrl」キー押下中強制スキップ、右クリックから「メッセージ早送り」で既読スキップ可能です。なお、既読・未読の判定は自動で行われます。メッセージ読み返し機能はぜひともほしかったところですが、ついていません。

 セーブ・ロードは任意の位置で、16個所まで可能です。セーブ時の実日時とゲーム中の日付とが記録されます。

 CGモード(各ヒロインごとのサムネイル表示)・BGMモード(曲名から選択する方式)も装備されています。

サウンド

 音楽担当は、M's(Ecnemuse)、BIGMADE、桜恵司(Unison Sound Team)、FUDE_R(同左)、折戸伸治の各氏。特に、エンディング前にかかる「コズミック・ラン」は秀逸です。やや煙に巻かれた感のあるエンディングの中でこれがかかると、ふっと頭が休まるような気になりました。これにかぎらず、シチュエーションに応じてバラエティに富んだBGMが用意されており、それらが非常に効果的に使われていたと感じます。

 一方で、オープニングとエンディングとでそれぞれかかる主題歌(ヴォーカル入り。担当:I've)は、個人的にはあまり好きになれませんでした。特にエンディングの「birthday eve」は、一昔前のダンスミュージックを思い起こさせる曲なのですが、リズムを人工的に作り出しているような感じがして、このゲームのエンディングに合うようには感じられませんでした。もっとも、このタイプの曲が、私の好みから外れているのは確かなので、そこは割り引いて考えるべきなのでしょうが。

 音声・効果音はともにありません。音声なしは一向に構わないのですが、なんら効果音がないのはちょっと残念でした。

グラフィック

 原画担当は「ゆうろ」氏。縦長の目が特徴的で、なかなかかわいい絵ではありますが、「美しい」という感じではないですね(^^; 立ちCGでの表情の変化がなかなかに楽しく、赤くなって照れている顔はどのキャラもかわいいですね。ルートに入った後の珠季などサイコーです。

 一枚絵CGは、割とユニークなアングルから描かれているものが多く、主人公とヒロインとを入れた写真をある一点から撮っているような感じを受けました。これはこれでいいかと思いますが、あまり記憶に残るシーンがなかったのもまた事実です。

 塗りがややパッとせず、ビジュアル面では地味という印象がどうしても拭えません。

お気に入り

 椎子ちゃんがいいな☆ いじょ。

関連リンク先

 らまひすとさんのサイト(閉鎖)、SHEOさんのサイトのレビューを挙げておきます。一般的にかなり評判はいいようなので、私の評価はかなり特殊みたいですね(^^;

総評

 かなり大仰な展開を緻密にセッティングしている点は評価できますし、また適宜「不合理」要素を混入させることであれこれと突っ込ませるような展開にしているため、流れに乗れれば充分に楽しめるでしょう。しかし、私には、会話の流れこそ楽しかったものの、展開自体が淡々と「つき合う」以上のものとは思えず、このためにさしてワクワクすることもなく、したがってツッコミを入れる気もそれほど起こりませんでした。

 さらにいえば、これを「ゲームというメディアで出す」ことの意味も、私にはどうにもうまく掴めませんでした。確かに「マルチエンドにする」という効果はあるでしょうが、しかし「参加」感覚を伴う「ゲーム」として「楽しむ」ことについては、それを最初から放棄しているような感じさえします。

 序盤から中盤にかけての楽しさ、そしてまた独特の語り口などに魅力を感じられれば、それなりに楽しむことは可能ですが、あまり大きな期待を抱かない方がいいでしょうね。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
2001年11月18日
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