「設定は悪くないけれど」というのが、アドベンチャーゲームの枕詞になった場合であっても、イベントでの会話が楽しいとか何とか、どこかにゲームをプレイしていて「楽しい」と思わせてくれれば、それでいいわけですが、「楽しさ」を感じられない場合、どうにもやりきれない気持ちが残ります。『シンクロ』は、まさにそんなゲームでした。
「設定は悪くないけれど」というのが、アドベンチャーゲームの枕詞になった場合であっても、イベントでの会話が楽しいとか何とか、どこかにゲームをプレイしていて「楽しい」と思わせてくれれば、それでいいわけですが、「楽しさ」を感じられない場合、どうにもやりきれない気持ちが残ります。『シンクロ』は、まさにそんなゲームでした。
演劇部に所属する少女・梓(変更不可)は、夢の中で、ある少女が暗い部屋の中で鎖に繋がれ、そして陵辱されているのを見る。夢の中の少女は何者なのか。自分が見ている夢はいったい何か。そして、現実世界で行方不明になっている人物の運命は。
シナリオ担当は、猫柳まんぼ氏。
大きく分けて、2つのシナリオからなります。2つのシナリオには基本的に何のつながりもなく、ただ登場人物が共通しているにすぎません。2つのシナリオからなるオムニバス形式のアドベンチャーゲームといえましょう。
選択肢を間違えるとすぐにゲームオーバーになりますが、その日の最初に戻ってリプレイすることが可能になります。親切設計ということもできますが、選択肢の内容とその結果とのつながりがまったく取れておらず、単に「こっちがマル、こっちがペケ」として作られているにすぎません。選択肢の設定に芸がない、というのは、アドベンチャーゲームでは致命傷です。
「悪夢」を媒介としてゲーム世界をのぞかせるという設定は、名作『痕』ほか、わりとあちこちで見かけるものですが、この『シンクロ』では、そもそも主人公が世界の中でどう振る舞っているのか、そして自分にとって理解できない世界にどう対処していくのか、その描写が決定的に欠けています。
不気味な夢を見ても、学校で「にゅ〜」と言いながら、大した疑問も不安も焦燥も感じることなく、流されるように生活を続けるだけの主人公。主人公のセリフやモノローグも「(悪い意味で)何も考えていない」ことが明らかである上、ほかのキャラとの会話も、あたかも「台本を読んでおります」と言わんばかりの平板さ。誤字などもかなりあり、読み進めるのはなかなかに苦痛でした。
「女性主人公」というだけあって、彼女が何らかの「受け身」となることで初めて明らかになるものがあるのか、そう考えてもみましたが、ほとんどそういった記述もなく、実に淡々と話が進みます。また、シナリオ自体も浅薄このうえありません。時折、電波の入ってる妙なフレーズがざらーっと流れるなど、画面効果を合わせたテキスト表示の技法それ自体で目を引くことはありますが、シナリオの起伏はないわ、テキストに芸はないわ、では、「読む」こと自体が作業と化します。
この結果、ひたすら義務的にマウスクリックを続けた結果、やっとエンディング、ふぅ終わったな、それだけのことです。オチもはっきりしたものではなく、「終わった」というだけに過ぎません。
画面の背景が、特に意味もなくうねうねと曲がりくねり、揺れるケースがありました。DirectXに問題があったのかどうか、いったんゲームを終了して再起動すれば問題ありませんでしたが、不規則にこの現象が発生します。立ちCGやメッセージウィンドウなどは動かないため、初めは「ずいぶん目に悪そうな演出だな」と思ったのですが。なお、修正プログラムの存在は確認していません。
インストール先ディレクトリは変更可能です。操作の基本はマウスですが、キーボードでの操作も可能になっており、マウスカーソルがウィンドウ上にある場合は、エンターキー押下で左クリック代替になっているようです。
グラフィックは、基本的に800×600ドット全画面表示で、左下部にフェイスウィンドウが、右下部に半透明のメッセージウィンドウが表示されます。画面は、ウィンドウ表示とフルスクリーンとの切り替えが可能。
セーブ&ロードは任意の位置で行えますが、実際にはゲームオーバーになると前に戻ってリプレイ可能なので、あまりあわてる必要はないでしょう。メッセージスキップあり。フォント変更可能。
CGモードは、キャラクターごとにサムネイル表示されます。
何か鳴っていたような気がしますが、BGMとしてほとんど耳に残っていません。また、ゲーム中に効果がある音が出ていたという記憶がそもそも残っていません。
音声はなし。このゲームで音声があったとしても全然嬉しくないので、別にかまいませんが。
キャラ原画は、渡辺浩二氏ほか。立ちCGは1人につき1パターンのみ、表情変化はすべてフェイスウィンドウで表示されますが、あまり生気がなく、人の顔というよりは似顔絵を見ているような印象です。また、フェイスウィンドウでの顔と立ちキャラの顔とがどうも一致しないように見えることもしばしばあります。
また、背景の塗りもていねいとは見えず、本当にハイカラーなのか、と思えるような彩色です。
ただ、画面切り替えの際の効果(テレビの荒れる画面など)は、なかなかよかったと感じます。
そんなものありません。そもそも、キャラクターの名前をほとんど覚えられませんでしたし。
何をウリにしているのか、よくわからないゲームです。Hシーンの大半が陵辱シーンということもあり、そこに期待するのなら少しは代金を回収できるでしょうが、ゲームの設定から、シナリオのしかけをあれこれと期待しても、ほとんど何も得られないでしょう。抽象的な言い回しを使っている部分もあるものの、テキスト表現自体も稚拙で、盛り上がりようがありません。