天藍の夏 U・Me SOFT

2000年3月31日発売
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 東京生まれの私にとっては、「田舎」と言われても単に「地方」と同義語にしか感じられず、お盆や正月などに大汗かきかき帰省する人に対して、自分がそうする必要がないことを安堵しつつ、また淋しさをかこったことも何度かあります。そんなノスタルジーを、「安心できるあったかさ(クソ暑さ?(^^;)」をもって綴ってくれたのが、この『天藍の夏』でありました。もちろん、「帰還する場所」としての憧憬をこめた「田舎」は、現実に存在するものではあり得ず、架空の存在を実際の存在の上に当てはめている、無い物ねだりであることは百も承知の上ではありますが。

 U・Me SOFTのゲームとしては、過去に『いまじねぃしょん・LOVE』をプレイしたことがあったものの、今度はずいぶんと健全なノリ(笑)なので、原画の雰囲気とユーザーインタフェース以外はほとんど共通点はないようなものでありましょう。

 また、これはプレイして初めて知ったのですが、ミニゲームがなかなか充実しておりまして、これだけでもなかなか楽しむことができます(^^)

シナリオ

 主人公・薬院海里(変更不可)は、温泉で有名な田舎町出身の大学生で、父親の事故によって夏休みの間宿の手伝いをするために帰郷することになる。半年ぶりの故郷にほっとしながら、そこで出会った人の表情はいかに。

 

 スタッフロールによると、「企画・脚本・スクリプト K3さんによく似てる」。

 基本的に、イベントをこなしながら各キャラとのラブラブな展開を満喫…といってしまえばそれまでですし、実際それ以上の表現は特に見当たらないのでありますが(^^;)、この個別のイベントが、わりときちんとできています。

 また、キャラクターの描写に関しても、一見したところ定番どころを揃えておきながら(約1名、ちょっと違った意味で「すごいキャラ」がいますが(^^;)、微妙に展開のパターンをシフトさせることで、後の展開に期待することができるような、なかなか憎いつくりになっています。的確な表現をすることは難しいのですが、こういうキャラならこうするだろう、と思った場合でも、「やっぱりね」という方向ではなく、かといって「なんでやねん」ともならない、いわば「誤差の範囲内で射程をずらしている」とでもいえましょう。キャラクターの数からいっても、偶然とは思えませんから、おそらくは意図的に行ったのでしょう。強烈なインパクトを受けることはないものの、なかなかできることではないと思います。

 もっとも、恋愛ものとしてみると、各キャラとの間に用意された設定は、そう大仰なものではなく、むしろヒロインとのコミュニケーションそれ自体をていねいに扱った結果、逆に設定自体が矮小化(極小化?)されているようにさえ見えます。キャラ自体の記号化は、上記のとおり「微妙なズレ」という手法を用いた結果、極力表面化しないようになっており、したがって「萌え」の対象としてのキャラの存在感はかなり希薄であると思います。キャラの(見た目上の)パターンは定番、表情は豊か、会話も豊富、にも関わらず萌えに直結しないのは、おそらくこれが理由でしょう。そしてまたこれこそが、このゲームが地味な存在足らざるを得ない原因の1つなのでありましょうけれど。

 

 さらに、テキストも非常に質が高いものと言えます。設定をダラダラ説明文調で垂れ流すことなく、隠されていた背景を出すタイミング、そして、情報をプレイヤーにとって理解可能な形に表現する手法は、なかなかのものです。イベントの際に「ぢつはこうだったのだー」と「問題集の解法を見せられるような説明」にお目にかかって辟易するゲームも少なくない中で、これは非常に高く評価できます。テキストは簡潔明快がよいとはかぎりませんが(修飾過重ともいうべき濃厚な文体にもそれ相応の魅力が出てきますから)、これは好例といえるのでは。

 会話についても、各キャラによって話しぶりを変えるだけではなく、主人公がヒロインごとに変える姿勢や口振りなどの変化を「自然に」書いている点がマル。会う人ごとに豹変されても困りますが、誰に対しても同じように対応する単純八方美人では、逆に嫌みな度合いが増すばかりですが、その点については心配ありません。

 基本的にはコミカルなタッチでの流れが続きます。Hシーンにまでギャグが入ってくるもんなぁ(^^;

 

 そして、全体を俯瞰してみた場合、キャラとのコミュニケーションが楽しいのは上で触れたとおりですが、これを重ねていく結果、「ちょっといい話」の集合体になっている、と見るべきでしょう。このため、どのシナリオを見ても、明白に「取って付けたような傍系シナリオ」とか「こっちにとってあっちが邪魔」といったことがなく、安心できるものになっています。

 しかし、裏を返せば、伝承や奇譚やといった題材が各シナリオごとに分散化されているため、トータルでのパワーがどうにも出ることなく、このためにシナリオ全体における牽引力が大幅に減退しているのは間違いありません。主人公の過ごしているこの「田舎」で発生する共通設定が不明確であるために、各シナリオ間の共通設定が希薄であるのは、もったいない話です。

 この点と、イベントごとの間の開き方(後述)とによって、どうにも「テンポよく軽快に進む」というわけにはいかず、イベントは楽しいはずなのに、なんだか暑苦しい雰囲気が先に印象に焼き付くという気がしてなりませんでした。

 

 どーでもいーけど、「石舞台古墳」て、奈良県明日香村にある、例のデカブツ以外にあるんでしょうかね? いや、確かにあれの中は空洞で暗くて涼しくて、何するにも(ナニするにも?)恰好の舞台だとは思うけどヾ(^^;

ゲームデザイン

 1か月の期間内に、場所移動とコマンド選択とでイベント発生・好感度アップを行うことで対象を絞り込むタイプのアドベンチャーゲームです。各場所に誰がいるのかはマップ上での表示があるため、ある程度は見当がつきますし、難易度はそう高い方ではないでしょう。

 惜しむらくは、おそらくは難易度調整のせいでしょうが、各イベントごとの間が開いてしまい、手持ちぶさたになってダレることが多い点でしょうか。シナリオの内容からして、緊迫感や焦燥感といったものはさほど強くないため、この傾向はさらに強くなるようで、特にオンリープレイで進めると、「次に彼女に会えるのはいつの日か〜」状態になります(^^;

 また1回ゲームをクリアすると(たぶん)、トップメニューからミニゲームに入ることが可能になります。荷物を二次元上で上下左右に移動させるもので、「倉庫番」といえばおわかりいただけるでしょうか。

不具合・修正プログラム

 私のプレイ環境では、特に不具合の類は発生していません。

操作性など

 インストール先ディレクトリは、任意に変更可能で、フルインストールを行うと、CD-ROMなしでのプレイが可能となります。

 ゲームは、スタートメニューに登録されるプログラムグループから起動可能で、強制フルスクリーンになります。ウィンドウ表示への切り替えは不可。「Alt」+「Tab」での切り替えは可能です。

 操作の基本はマウスですが、キーボードでの操作も可能になっており、またキーの割り当てをある程度カスタマイズすることが可能です。

 グラフィックは、基本的に640×480ドット全画面表示で、下部に半透明のメッセージウィンドウが表示されます。

 セーブは日付の変わり目で行うことが可能で、12個所まで行うことができます。分岐の激しいゲームではないので、セーブするときには困ることはありませんでしたが、ロードするときに必ず1日の最初から始まるのがちょっとうっとうしかったですね。ロードは任意の位置で可能です。

 不満点としては、上記の画像モード切り替え不可のほかに、メッセージスキップが「Ctrl」キー押しっぱなしであるうえ、既読・未読の区別がないことでしょう。これはちょっと辛かった。

 CGモードは、サムネイル表示されます。Hシーン再生モードあり。BGMモードもありますが、曲名は表示されません。

サウンド

 サウンド担当は、北川雅弘(教授)氏。なかなか雰囲気のいい、暑苦しい(笑)曲から軽快な曲までバリエーションをよく揃えていました。

 また、音声の質が非常に高いですね。声優は、アクティブのクレジットでよく見かける「江崎プロダクション」で、キャラのイメージとみごとにマッチしています。演技力自体もさることながら、おそらく設定そのほかをうまく演技に取り込めるような環境になっていたのでしょう。

グラフィック

 原画担当は、『いまじねぃしょん・LOVE』と同じ「まるごと林檎」氏。タレ目で、肉付きがよくてぽっちゃりした感じの女の子がいいですね。ただ、やっぱりこの人は、同い年または年下キャラが向いているなぁ。年上だとどうしてもイメージギャップが出ます(^^;)

 また背景画像も、そう特徴があるわけではないのですが、なかなかきれいですね。

お気に入り

 メインヒロインである「渡瀬 夏生」ですね。上で書いた「微妙なズレ」をうまく使っていることもあって、パターン外ながら無理もなく、それでいてゲームのヒロインとしてきちんとした役割を演じきっています。

関連リンク先

 SHEOさん、兄貴さん(閉鎖)のサイトにレビューがあります。おおむね好意的な評価ですね。

総評

 おもしろい、というよりは、小粒で楽しいシナリオをそれなりに、というゲームと言えましょうか。パターン化したシナリオを定型的に組み上げるマスプロ的製品ではなく、基本に忠実な、しかし個別のパーツを大事にしてできた作品のように思えます。

 しかしその一方、シナリオ全体でのパワー不足、そして地味さは否めず、「楽しさ」も、単発的なものの集合に留まってしまっているように感じられたのも確かです。

 確かに、楽しいゲームですし、ミニゲームなど「あそび」も含んだいいゲームとは思いますが、後々に至る印象を濃く残すだけの力を持った作品には至っていない、そう考えます。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆
2001年3月17日
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