夜想夢 Melody/ぱんだはうす

2000年6月9日発売
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 ぱんだはうすといえば、サウンドに定評があり、また斬新なゲームデザインを大胆に取り入れてくるソフトハウス、というイメージがあります。そんなぱんだはうすからリリースされた『夜想夢』、このパッケージがまたずいぶんと地味で、しかも相当売れなかったと見えて、私が発売数か月後に購入したときには、新品で1,980円だったのでありました(^^;)

 インストール後、オープニングでの雰囲気、そして枝分かれするというスタイルなどを見ると、『暗闇3』とでもいいたくなる体裁を取っていますが、各シナリオごとに分岐した後には、シチュエーションや背景などすべての面において共通点がないことから、このタイトルを避け、大して意味のないタイトルに落ち着いたのでは、と思います。展開によっては、まさに「暗闇」というキーワードを当てはめてもおかしくはないものはあったのですが(スタート地点も夜ですし)、「閉ざされた空間」という『暗闇』シリーズとの共通点を残していないので、『暗闇』というタイトルを回避したのは正解だったろう、と考えます。

シナリオ

 学校帰りの夜の公園。そこから始まる、夢ともうつつともつかない物語。時の流れも人の動きも、それが何物かもわからぬ世界に迷い込む。幸せな結末が待つのか悪夢に至るのか、それは主人公の行動しだい。

 

 スタイル的に『暗闇2』とよく似た体裁を取っています。

 『暗闇2』と比較して第一に感じるのが、各シナリオ内部での分岐が大きいことです。『暗闇2』では、基本的に各シナリオの中での流れは1本ないし2本に集約されており、分岐ごとに展開が極端に変わるという例はさほどなかったのですが、この『夜想夢』では、各シナリオの中でもかなり雰囲気が異なる展開になるケースが多くなっています。これは、バッドエンドも多く揃えることでバリエーションを増やしている、と見ることも可能ですが、各シナリオ自体の統一性が低い、すなわち単体での完成度が低い状態にある、と指摘することが可能です。多岐にわかれる展開というのは、多くのストーリーを楽しむためには良い材料を提供していると考えるのが自然ですが、個々のストーリーに対する印象自体が希薄になっては、意味がありません。オムニバス形式を取っていながら、各シナリオの「集合体」というよりは「寄せ集め」という印象が強くなってしまったのは、この点によるものと感じます。せめて、共通の舞台である「公園」を主軸にしていれば、またイメージも違ってきたのでは、と思うのですが。

 

 また、選択肢の設定にかなり無理なものが多い、と感じたのも確かです。選択肢とそれを選んだ結果との間に、明確な因果関係を必ず用意しなくてはならない、ということはないと思いますし、「分岐のために選択肢を用意する」ということ自体を否定するつもりはありませんが、各シナリオごとに「選択肢」の意味合いが微妙に違っているように感じますし、何よりも、分岐に関わる選択肢とそうでない選択肢との違いがバラバラになっている点は、どうにも誉められたものではありません。『暗闇2』では、このあたりは許容範囲であると感じたものですが、この『夜想夢』では、シナリオ自体の分岐がわりと激しいものが多いこともあって、無理がより表面化しています。

 

 各シナリオ間の量的・質的なバラツキが大きかった点も、挙げておくべきでしょう。物語展開の嗜好という点で見れば、多種多様のベクトルを指すことはむしろ好ましいともいえますが、この『夜想夢』における7つのシナリオの場合、各シナリオ内部で込められているテーマや展開、描写などへの工夫の濃淡がかなりハッキリと分かれています。「陽炎の館」などは、なかなか力が入っていて展開もそれなりにていねい(単体で見ると、やはり急ぎすぎという感は拭えませんが)に描かれていますが、「ボクのプロファイル」などは、伏線を消化しきれず流されていくような展開に思えました。手抜きをしたというわけではないにせよ、主人公の置かれた環境が何らかの形で変化していくというシナリオという点ではどれも同様なのですから、これを基準としてみた場合に大きな濃淡が生じるのはいかがなものか、と思うしだいです。

 

 ストーリーや展開によっても異なりますが、Hシーンの入れ方にも、やや違和感を覚えました。シナリオの中にエロがどう入っているか、というのは非常に重要なことですが、このゲームの場合、Hシーンの前後にどういうシナリオがあるか、という形で作られているようにさえ感じます。Hシーンのテキスト自体はさほど濃いものではないのに、妙にHへとなだれこむのが速いし。『暗闇2』の場合は、現実とは思えない悪夢の果てのような「おぞましさ」を、Hシーンの中から感じることができましたが、このゲームではそういう印象を受けませんでした。

ゲームデザイン

 序盤に出てくる3〜4の選択によって、7とおりのシナリオに分岐するという、オムニバス形式のアドベンチャーゲームとなっています。各シナリオは、いずれも選択肢によってかなり細かく分岐し、シナリオによってはCG回収のためにかなり複雑なセーブを繰り返す必要が出てきます。『暗闇2』に比べると、分岐条件自体はわかりやすいものの、分岐自体はさらに激しくなっているようです。このため、わりと難易度は高めに感じます。トゥルーエンドを終えるとスタッフロールが流れた後に「終」という文字が出ます。バッドエンドの場合は、スタッフロールは出ず、「未完」という文字が出てきます。

 また、各シナリオを貫く共通点というものはまったくありません。エンディングフラグ方式なども採られていないようですので、最初から任意のエンディングに到達することが可能です。

不具合・修正プログラム

 私の環境では、特に不具合などは発生していません。

操作性など

 CD-ROM1枚で、インストール方法は1とおりのみです。

 マウスのほか、キーボードでも操作可能となっています。テンキーだけでも大半の操作が可能になっています。

 画像表示は、640×480とフルスクリーンとを切り替えることが可能で、基本的には全画面表示、下部に半透明のメッセージウィンドウが重なるというスタイルを取ります。

 メッセージ表示は、「普通/速い」から選択可能で、また「Ctrl」キー押下でメッセージスキップ可能です。既読・未読の区別はありません。また、演出速度を「普通/速い/瞬間」から選択できます。

 セーブ&ロードは、任意の位置で20個所まで可能で、セーブの際にはセーブ時の実日時と見ているシナリオ名が記録され、またプレイヤーが任意にメモを取ることも可能です。『暗闇2』では、複雑な分岐を伴いながらプレイヤーがセーブすることができないという異常な仕様だっただけに、内心おっかなびっくりだったのですが、セーブがどこでも可能になるだけでこれだけプレイが楽になるとは、と思ったものです。

 このほか、いろいろな操作一般に関しては、インストール先ディレクトリの「help.htm」ファイルに記載があるので、任意に参照可能です(スタートメニューにも登録されます)。

 トップメニューの「追憶」を選択すると、「追憶」「画像編」「音楽編」が出てきます。「追憶」を選択すると、「終」エンディング後に流れるスタッフロールが再生されます。「画像編」からCGモードに入ることができ、各ヒロインごとに一枚絵CGがサムネイル表示されます。面白いのは、あるCGを見ている状態で、マウスを左クリックすると、次のCGが表示されること。1枚1枚を順々に見ていきたい場合でも、いちいちサムネイル表示画面に戻る必要がないわけで、なかなか親切な設計と思えます。「音楽編」からは音楽モードになり、曲名を選択することでBGMを再生可能です。

 なお、ゲーム中に見たCGは、各シナリオを最後まで進めないとCGモードには登録されません(オンラインヘルプの記述による)ので、こまめにセーブをしながら、CG回収のために最後までプレイをする必要があります。

サウンド

 PANDA氏がBGMを担当されています。雰囲気はいいのですが、かなり地味な曲が多く、また効果音に比べて音量が小さいこともあって、プレイ中の印象はさほど強くありません。

 効果音の使い方も、なかなかいきていると感じます(夜の虫の声が印象的)が、セミの鳴き声など、『メロディ』のものとそっくり、と感じたのは、気のせいでしょうか。

 音声はありません。『暗闇2』では音声ありだったので、このゲームも音声つきかと思っていたんですが。

グラフィック

 7つのシナリオに対して、原画を担当されている方は6人なので、まるで雰囲気が違ってきます。個人的には、東岡忍さんの絵が良いですね。

 全体的に、やや陰のかかったような印象の塗りが目立ちます。特に背景は、油絵を思わせる、やや重ための塗りになっています。

 細かい点ですが、モザイクが妙に汚く、かかっていない部分とのバランスが崩れていて見苦しいように思います。ごくオーソドックスなモザイクで十分だと思うのですけれど。

お気に入り

 特にありません。

総評

 『暗闇2』で見せたような、バラエティに富ませるという「狙い」が、もはやこのゲームではプラス面での働きをさして示してはおらず、むしろ寄せ集めゆえのバラバラ感を残しているのみ、という印象が強くなっています。各シナリオを個別で見た場合には、ボリュームの少なさこそあれ可もなく不可もなく、と見えますが、これらが総体として何を作っているか、と問うと、不統一感と答えるしかないのが実のところです。徹底的にエロにこだわっているかというと、そういうシナリオもないですし。

 整合性にこだわる必要などないと思いますが、全体に漂う不統一感――「不安定感」であれば、むしろそれをもとにプレイヤーを惹きつけることは可能なはず――は、各シナリオを見ることを「作業」化させていると感じます。

 シナリオの数を増やすのはいいのですが、各シナリオの印象がほとんど残らないのでは仕方がありません。あくまでも、各シナリオを終えた後、何らかの印象をプレイヤーに残す、これがストーリーには必要でしょう。

 プレイして楽しいとかおもしろいとか、そういう「ウリ」がなければ、凡作に名を連ねてしまう結果となる、という、ごく当たり前のことを実際に示したゲームになっています。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
2000年11月20日
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