青い鳥 -L'Oiseau Bleu- PANDA HOUSE

2001年1月26日発売

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 従来、「Melody」あるいは「Cat’s Pro」というブランドからリリースされてきたゲームが、「ぱんだはうす」という新ブランドとしてリリースされると発表されたのが、2000年後半。その後、Cat’s Proの『SPARK!』と系統的に近いと思われる本作品に注目……していたのですが、諸般の事情から購入もプレイも一日送りにし、さらにコンプリートしたのは発売後3年以上経過してからというものでした。

 これは、単純に「楽しくて思わずハマった」というわけではなく、かといって「詰まらないのでしばらく放置した」というわけでもありません。精神状態が安定していなかったり、極度に多忙だったりしては、このゲームにはついていけないためです。ある程度余裕がある状態でのプレイをお勧めします。

 なお、このレビューでは、数個所で『SPARK!』との比較を行っています。取っつきやすさという点では『SPARK!』のほうが確実に上と思われますので、興味を持たれたかたは『SPARK!』を先にプレイされるほうがいいかもしれません。

シナリオ・ゲームデザイン

あらすじ

 主人公・河合コマスケ(変更可能)は、とある街でのんきなその日暮らしをする。幸せの青い鳥は、果たしてどこに、どんな形で現れるのだろうか。

 ……と、これだけでは、何がなんだかさっぱりわからないと思いますが、これ以上のことは書けません。だって、そもそも“ストーリー”が存在しないんですから。

 シナリオ担当は、渡部雅弘氏。

此処はうつつかまぼろしか

 ぱんだはうすの過去のゲームでもうかがえることですが、この『青い鳥』では、ゲームの中で示されているシーンが、現実なのか、夢なのか、物理を超越した時空なのか、はたまた時間軸さえも関係ないどこかなのか、そういったことが、よくわかりません。そして、最後の最後にいたるまで、どこまでが現実で、そして描かれてきたものがどの程度リアルなものなのか、それがわかりにくいものになっています。現実−夢という二項対立は、このゲームでは意味を持ちません。しいていえば、現実または夢その1−現実または夢その2−現実または夢その3−…という格好になっている、といえましょうか。

 こう書いても、抽象的ではなはだわかりにくいかと思いますが、要するに、不合理で何だかわからない「選択肢」によって行動する主人公、そしてその結果発生するイベントに、いちいち不条理な雰囲気が非常に強く、とてもではありませんが、現実とは思えないのです。一応、朝から始まり夜に寝ることで1つのシーンが終わるのですが、だからといって時系列を後へと進めているという実感があるわけでもない。むしろ、よくわからないままに、その場をなかなか把握できないままにプレイすることになります。いわば、無重力状態で放り出されたままにストーリーが進んでいくような面があるため、軸足を定めてプレイする感覚になれない、といえます。

 一方、特定のキャラクターを基準として“事実”をくみ上げていくことを前提としてプレイしても、混乱するだけで、何がなんだかわからないでしょう。詳細は後述しますが、主人公とほかのキャラクターたち――この両者の間には、厳然とした断絶が存在します――の関係が、シーン単位ではなかなか把握できません。このため、おそらく最初のエンディングに到達するまでは、そもそもどこへ向かっていくのか見当もつかないと思われます。その結果、プレイしている“自分”が何をやっているのか、その目的に関して目隠しをさせられているような状態になります。

 さらに、ストーリーそのものには躍動感といえるものがほとんどなく、むしろ他律的に流されていくといった色合いが濃いため、ともすれば、茫漠とした中の不安定さがさらに増す傾向が強いといえます。

 主人公を座標軸の原点にしても、軸の方角が固定されていないというスタイルが徹底しているわけです。この不安定さを、前述の無重力状態のごとく楽しむことができるか、何の目印も触るものもない状態で目隠しプレイさせられるように感じるか。このゲームの受け止め方は、そこで大きく分かれるといえます。

シーンカットの絶妙なコントラスト

 シナリオを作っていく1つ1つのシーンは、単発でごく短いものになっています。主人公が何らかのアクションを取ると、そこで偶然女性キャラ(単数の場合が多いが複数の場合も。プラス男性キャラとなることも)と出会い、いろいろなアホ問答を繰り返していくことになります。この個別のシーンは完全に独立しており、のちの展開に直接影響を及ぼすことはありません。この点は、やはりシーン積み上げ方式だった『SPARK!』と、大きく異なります。

 漫才的なドタバタが多いのですが、今となっては多少ネタが古いかもしれません。ただし、ストーリー作成とはまったく関係ない選択肢の用語センスは、いい意味でぶっ飛んでいます。何の関係もなさそうな異なる要素をつなぎあわせることによって得られるおかしさをビジュアルで出す(選択肢は横に並んだ形で出てきます)ことで、緊張感のカケラもない世界が延々と続くのに、一役買っているといえましょう。

キャラクターとの微妙な距離感

 それぞれのシーンは比較的コミカルなのですが、なにぶん世界が茫漠としてわからないうえ、“わからない”ことをプレイヤーが半強制的に認識させられた状態でプレイを開始する羽目になっているため、いわば「身構えてプレイする」ことになります。このため、主人公とほかのキャラクターの間には、一種の溝が生成されています。

 『SPARK!』では、いろいろと(あまり意味もなく)フレンドリーに接してくるいろんなキャラクターがいて、彼ら・彼女らが主人公を巻き込んだ世界を作っていました(これは、ラストの集合写真を見ればわかるでしょう)。しかし『青い鳥』では、キャラクターにそういった親密性はありません。主人公がよそ者扱いされているわけではないのですが、ナカマによるセカイを作りえない程度に切り離されている(英語のisolatedに近いニュアンス)わけです。

 その結果として、ヒロインとの関係もうまく把握できないため、終盤になってHシーンが入ってきても、何で突然、という印象になる可能性が高いのは難点。なにせ、終盤になってもすべての攻略対象キャラが入れ替わり立ち替わり出てくるので、本当に何も考えずに最後までプレイすると「どうしてこうなる?」と思うこと確実です。

 ところで、野郎キャラの姓が「河合」「代々木」「駿河台」なんですが、1990年代初頭に予備校生だった経験を持つ私としては、後2者はむしろ逆のほうがイメージ的に合うように思うのですけれど。

ゲームデザイン

 「シナリオ」の項で説明したとおり、イベントを積み上げていきながら、後半の選択肢でエンディングに到達するタイプのアドベンチャーゲームです。

 最初はひたすら街の中で話が進み、中盤になるとところどころで現実または夢その1/現実または夢その2の切り替えが発生します。ここまでは、1ターンにつき主人公の行動によって直後のイベントが決まり、イベント中の選択肢(出ないことも多い)を選びます。終盤になると、メビウスの輪のごときループとなり、一定の条件を満たすとそこから出ます。エンディングはヒロインごとに1つずつ用意されているほか、共通エンドもあります。一度選んだ選択肢には、それを選ぶことで出会えるヒロインのチップキャラが表示されるので、すべてのイベントを発生させるのはなかなかたいへんですが、各エンディングに到達するだけなら楽勝でしょう。

不具合・修正ファイル

 私の環境では、進行に支障があるような不具合は確認していません。

デモ・体験版

 デモムービーが、ぱんだはうすの公式Webサイトで公開されています。

操作性など

 一般版の対応OSは、Windows95/98/Me/2000/NTで、WindowsXPでも問題なく動作します。CD-ROM1枚組で、プレイ時にはCD-ROMが必須です。インストール時に消費するHDD容量は約300MBと、フルボイスのゲームとしてはかなりのコンパクト設計になっています。

 基本的に、操作はマウスをクリックして進めていきますが、基本的な操作はキーボードでも可能です。ただし、シナリオ関連の設定はあまり豊富ではなく、メッセージスキップがメニューまたは「Ctrl」押下で可能なものの、既読/未読の区別がありません。また、メッセージ読み返し機能もないため、うっかりすっ飛んでしまったテキストを読み返すすべがあります。ぶっ飛んでいるテキストがこのゲームの魅力であるだけに、これはちと痛い。

 画面表示は、800×600表示で、ウィンドウとフルスクリーンを切り替えられます。BGM、ボイス、画面エフェクトのオン/オフの切り替え、フォント変更、ボリューム調整が可能です。セーブ&ロードは、任意の位置で10個所まで可能で、プレイ時の実日時とシーン名が記録されます。

 画面はグラフィックが640×480全画面表示で、ウィンドウ表示とフルスクリーン表示とを切り替えられます。下部にメッセージウィンドウが表示されます。セーブ&ロードは、任意の個所で87まで可能で、セーブ時の実日時とスクリーンショットが記録されます。

 トップメニューでは、「LOAD」「START」「PRESENT」の各項目が表示され、「PRESENT」をクリックすると、「MEMORY」(Hシーン回想モード)、「GALERRY」(CGモード:サムネイル表示)、「MUSIC」(BGMを曲名から選択して再生)、「DATA」(シナリオデータ初期化)から選択できます。

サウンド

 サウンド担当は、おなじみPANDA氏。ポップな調子の曲が耳に残りますが、特にジャズ調のアレンジが絶妙と感じました。なお、OPとEDにはボーカル曲が使われており、このうちOPの「踊ってスカイ、余裕でブルー」は、いわば静的な無重力世界たるこのゲームによく調和していたと思います。EDの「あおいとり」は、このゲーム世界を総括するようなものなので、やや毛色が違うのですが、単独で聴くにはやや弱いか。

 音声は、主人公以外男性も含めてフルボイスです。イチローの声が渋くてよろしい……けど、女性陣の声はいまひとつ覚えていません。あれれ?

グラフィック

 原画担当は、福永ユミさん。どことなく子どもっぽい――ロリっぽいという意味ではありません、念のため――デザインですが、まずは無難な絵かと思います。ただし、着ている服が基本的にノーマルなので、『SPARK!』的なわけのわからなさを期待すると、少し外すかと思います。あと、怪しさふんぷんたる背景が、なかなか楽しいのですが、これまた中途半端に生活感がないのは、狙っているのかどうなのか。

お気に入り

 お気に入りキャラは………うーん、いません。いや、特定の誰かとどうのこうのするのが印象に残ったわけではなく、シーンごとの切り替わりが楽しかったので。

総評

 『SPARK!』のように、劇中に妙な生々しさとばかばかしさが同居し、その世界そのものが一大活劇にして一大喜劇になっていれば、もっとすんなり、受容されやすいものになっていたでしょう。しかし、この『青い鳥』は、そのタイトルのごとく、エンディングに“原点回帰”というニュアンスがあるため、そこにいたるまでの過程が、静的なものにならざるをえません。そういった、いわばテーマ上の必然――そしてまた同時に、制限――ゆえに、ゲーム内部に“動き”があまりなく、それゆえにパッションと連動した楽しさといったものが、どうにも感じられませんでした。

 キャラクターを媒介とせず、徹底的に座標軸の原点のみを用いて世界をつくり、最終的に「歴史の始まり」へと導いていく手法は、特に後半の擬似無限ループなどの採用によって、なかなか興味深いものでした。しかし、表現手法としては一定の評価を与えられるといってよい反面、ゲームの中でプレイヤーキャラクターが相手をしている“対象”に目を向けると、絶対位置があるものとしても相対位置は定め得ないという状態なので、距離感をつかむことができず、結果として、淡々と進めていかざるを得ませんでした。

 デジタルポエムを実現するための一手法として、おもしろい実験とは思います。しかしエンターテインメント商品としては、高い評価を与えるには抵抗を覚える、そんな作品と感じています。好き嫌いだけでいえば、大好きな部類に入りますし、こういうゲームを作ってくれるのも、このメーカーしかないので、こういう形の“評価”に落ち着かせるのもどうかな、という気もするのではありますが…。

個人評価 ★★★★★ ★☆☆☆☆

2004年10月3日

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