マーメイドの季節 GAME VILLAGE

2001年3月16日発売
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 うるんだ瞳のヒロインが興を惹くパッケージイラストが魅力的で、発売日当時は店頭に大量のポスターが満ちあふれるなど、かなりの意気込みを感じたゲームでしたが、その後聞こえてくるのはバグに対する怨嗟の声ばかりというのが、なんとも困ったものでありました。それを差し引いて良いものが残るのであれば、それはそれでよかったのでしょうが…。

※このゲームは、年齢制限のない一般ゲームです。

シナリオ

 主人公は、南平市に住む高校2年生。時は夏休み、彼はバイトをしながらのんびりと過ごしていたが、ある謎めいたHPとひょんなことから出会い、「マーメイド」についての謎を解き明かしていくことになる。謎を解いていきながら、ヒロインたちとの物語が新しい形で広がっていく。

 

 シナリオ担当は、山田桜丸氏。

 以下で書いている内容は、バージョン1.03(最新修正ファイルを用いた状態)についてのものです。初回発売分をそのままプレイした状態では、イベント発生やストーリー進行などがまるで違います(「不具合・修正ファイル」欄にて詳述)。ご注意ください。

 

 人間以外の存在を扱い、またこれまではブラックボックス的に扱われてきた「開発」というプロセスに焦点が当てられている設定となっています。これを見て、例えばなし崩しに無邪気なヒューマニズム礼賛へと直結させている『To Heart』のマルチシナリオへの挑戦のような内容を期待すること自体は、さほど無理ではないでしょう。

 しかし、シリアスな設定と恋愛モノとの中途半端な折衷が、まず困ったもので、謎を解くのが先なのか恋愛を進めるのが先なのかがよくわからなくなってきます。謎解き自体が単なるルーティンワークと化しており、また全貌がかなり早いうちから明らかになるため謎解きがどうでもいいものになってしまっています。

 「調査」ひとつにしても、まるで公式インタビューを各人に敢行しているという雰囲気であり、緊張感が皆無。そこから「真実」を探りあてようという演出がまったくない平板な質問に対し、これまた答える方も警戒感なしにべらべらしゃべってくれます。これで「謎解き」をした気分になれる人は、学校教科書以外の小説をまったく読んだこともないという人ぐらいでしょうね。

 

 恋愛モノとしてみるとしても、これまたパッとしません。キャラクターは、窓を伝って毎朝起こしにきて食事を作ってくれる幼なじみをはじめ、定番どころを揃えていますが、本来であれば萌えを喚起させるはずの各イベントのパワーが弱いうえに断片的で、相互のリンクがうまく取れていません。夏菜の「カフスボタン」の扱いを例に取ってみても、本来はキーとなるイベントが分断され、しかも間をおいて出され、その間に日常的なほのぼのイベントがえんえんと挿入されたりするので、シリアスとなるべきシーンで盛り上がらず、「そういえばそんな伏線あったねえ」と流しておしまいとなっています。

 

 さらに、本来であれば軽く流してしまっていいとはいえない設定が、伏線としてまったくいかされていません。マーメイドの製造および企業戦略(詳細は伏せます)にしても、組織としての行動と個人としての行動とが混在しているうえ、そもそも(以下ネタバレのため白字化)「マーメイドの回収や処分」と「マーメイドの実体の隠蔽」とを両立させようとすれば、殺人や拉致といった凶悪犯罪の嫌疑が拭えないわけで、その「汚れ役」を何らかの形で設定する必要が絶対にあったと思うのですが、それがない。単に企業倫理レベルで済まされるはずはなく、地域唯一の上場企業における疑惑となれば、地域ぐるみでの「黒い霧」が蔓延していてしかるべきでしょうに、従業員の暴走といった文脈でのみとらえているため、上滑りもいいところになっています。

 これにとどまらず、根幹をなすはずの「マーメイド」の扱いがおざなりで、とてもじゃありませんが読むに耐えません。謎が残るといっても、それが「理解できないことを前提としての心理」を扱っているのなら問題ないでしょうが、設定の上に成り立つ人間関係がまずあり、そこにはじめて萌えなり感動なりが生まれるというスタイルになっているだけに、やっつけ仕事で書いたシナリオという印象が拭えません。

 また、オチが非常にありきたりで、中途で見せられる設定を眺めて「まさかこんな終え方にはしないだろうし、どうまとめるのかなワクワク」と思いつつプレイしていくと、終盤で白けること間違いなし。ひねりも何もない展開というのは悪くはないのですが、「重い設定」を無神経に扱ってスカスカにしています。

 エンディングの締めそのものも急転直下で、余韻もナニもなし。過酷な事実などなかったかのように「2人の世界」を作られても、はあさよけ、で終わってしまいます。

 駒として扱われている個別キャラも、かなり適当なモンなので、うまくいけばウザいヤツが痛い目に遭うといった程度です。勧善懲悪が素直に徹底しているのならまだともかく(個人的には好きではありませんが)、悪役の行動原理が安直そのもの。

 素直に、めるへんちっくなファンタジーとして進めた方がよかっただろうに、ヘタにシリアスな設定を出してしまった時点で自爆は明らかだったのかもしれませんが。

 

 どうでもいいことですが、主人公が住んでいるのは大都市圏郊外のニュータウンと踏んでいたのですが、説明に妙なところが多いですね。近年開発が進んだ住宅地の中に「簡易郵便局」があったり、まだ宵の口といえる午後8時の時点で「終電がとっくに終わ」ったりというのは無理がありすぎ。

ゲームデザイン

 この項目も、やはりバージョン1.03をもとにした記述です。初回発売分とはゲームデザインがかなり違っています。

 

 移動先マップ(キャラがチップ表示されるのでどこに誰がいるのかはわかります)で目当てのキャラと会い(1日3回)、会話を重ねてイベントを発生させていくタイプのアドベンチャーゲームです。攻略対象キャラクターは4人で、選択肢などのトラップはとくにありません。

 また、謎解きのきっかけとなる情報を提示してくれるキャラクターに対しては、会話を重ねることで謎を解明していく必要があります。解明度は百分率で表示されますが、数字表記はわりといい加減で、その気になればけっこう早いうちに埋まってしまいます。完全に解明されないまま最終日に至ると、バッドエンドになります。しかし、CG回収以外の目的でバッドエンドを見ることもないでしょうし、難易度は低くなっています。

 また、ハッピーエンドを見ると、トップメニューの「おまけ」からキャラ別のアフターストーリーに入れます。別段どうということもない程度のものではありますが。

 

 このほか「ネットワークモード」というものがあり、仮想ネット空間における情報把握が可能となっている……というお題目になっていますが、見なくても展開にはあまり影響なさそうですし、そもそも各ヒロインの「HP」(ゲーム中の表記。今なら「サイト」というのが通常でしょうに)をチェックしたからといって楽しいこともなく、ただ面倒なだけ。チャットやメールでのコミュニケーションがあるわけでもなく、無意味といってよいでしょう。

 

 これはシナリオ面に関わってくることですが、バッドエンドの中途半端さには参りました。調査をいっさい行わずに進めるとバッドエンドになるのですが、この終わり方が唐突である上、どうしてバッドなシナリオになるのか、そして具体的にどういう悲劇が起こったのかまったくわからず、「ハァ?」の一言で終わってしまう締め方になっています。ハッピーエンドに到達しないとシナリオがわからない、というのは当然なので、説明不足だのなんだのというのは筋違いですが、「これはバッドエンドですマル」と終わられても困ります。バッドエンドを見ないことを前提とするのであれば、そもそも各ヒロインごとのバッドエンドなど用意しなくてもよかったでしょうに。

不具合・修正ファイル

 初回版そのままでは、インストールおよび起動は可能、回避不能な強制終了もなく(古い修正ファイルを用いた場合には強制終了する不具合が新たに発生するそうです)アンインストールも正常に行えます。しかし、それをのぞけば、これでもかといわんばかりの大量の不具合そのほか(苦笑)があります。

 私はデュアルOS環境を持っていたため、複数のWindows上で両バージョンをプレイしてみましたが、旧バージョンをプレイしても何がなんだかさっぱりわかりません。ゲーム中発生しているはずのイベントが起こらないままに先に進んだり、テキスト表示と画面表示とが一致しなかったり、パラメータが一定以上絶対に上がらなかったり(したがってハッピーエンド到達は不可能)、あるキャラのシナリオで進めていても突然ほかのルートにワープさせられたり、まだほかにもあったかもしれませんが、ここまで壮絶なモノは近年珍しいですね。

 ゲームヴィレッジのサイトに修正ファイルがアップされていますが、26個所におよぶ修正項目(重複のぞく)には、怒りを通り越して笑いが出てきます。

 なお、ゲームデザインを根本的に直している模様で、従来のセーブデータとの互換性はありません。このため、まっとうにプレイしたいのであれば、修正パッチを当ててからプレイしましょう。旧バージョンのすごさをネタとして体験したい方は、別環境で確認されることをおすすめします(←私の例(^^;)。もっとも、現在の修正ファイルはすでに3つ目で、しかもタイムスタンプを見るかぎり作成日は発売から1か月半を経ていますから、この新バージョンを待たずにプレイを放棄した人はかなりいたのではないでしょうか。

操作性など

 対応OSは、Windows95/98/Me/2000ですが、WindowsXPでも動作します。

 私が購入した初回限定版はCD-ROM4枚組で、インストールCDが2枚(!)とゲームCDが1枚、あと「ドラマチックCD-ROM」が1枚という構成になっています。なお、ゲームCDの中身はほとんどが16bit/44KHzのWAVEファイルが占めていますが、どうしてCD-DAにしなかったのか、不可解。また、設定資料集が同梱されています。

 必要なHDD容量は、約300MB(最小インストール時には音声なしになります)〜1.3GB。ボイス入りゲームとしては最近珍しくもない量ではありますが、ある程度の覚悟は必要です。

 通常画面はフルスクリーンとウィンドウ表示とを切り替え可能で、グラフィックが全画面表示、下部に半透明のメッセージウィンドウが表示されます。テキストは基本的に白文字で表示されますが、キーワードとなるタームについては、文字色が変わって下線が引かれ、そこをクリックすると説明表示が出ます。要はWebブラウザのようになっているわけですが、背景色と文字色とが重なって非常に読みにくくなることがたびたびあります。

 スキップは既読・未読の区別があるようにコンフィグメニューで設定可能となっていますが、実際には既読・未読の区別はしていないようです(そもそも、「見た文章を早く」ってナニよ…)。メッセージ速度表示切り替え機能もあります。

 また、キーボード操作だけでもマップ移動以外の操作は可能となっています。マウスカーソルは基本的に右下部に自動移動しますが、かえってわずらわしいだけでした。

 BGM・効果音・音声の音量調整が可能で、特に音声は全キャラクターについて個別に設定できるのはよし。ただ、マウスをクリックすると、テキストをただ読むだけでもいちいち効果音が入るので、これがうっとうしいという場合は効果音をMINに設定するのがよいでしょう。

 セーブ&ロードは、任意の位置で8個所まで可能です。プレイ実日時・ゲーム中の日時が記録されます。

 オープニング、およびスタッフロール(ハッピーエンド後)は、マウスクリックでスキップ可能です。

 CGモードでは、各ヒロインごとにサムネイル表示されます。BGMモードでは、各曲名をクリックすることで選択する方式です。

サウンド

 BGMは、PCMで演奏されます。悪くはないのですが、どうにもキンキンした感じの音が多く、やや耳についた気がします。オープニングなどにボーカル曲が使われています(バリエーションはけっこう多い)けれど、唄についてはノーコメントとしておきましょう。

 主人公をのぞきフルボイスとなっており、演技はまずまずです。夏菜の「マーくん」の声には、ゲームをプレイしてささくれだった気持ちを一時的に冷却してくれる効果がありました(苦笑)。

グラフィック

 キャラデザ担当は、成瀬ちさと氏。一枚絵CGはなかなかいいのですが、立ちグラに精彩が欠けている印象です。表情の変化はそれなりにあるのですが、それが心理状態や周囲の状況などとうまく対応していません。具体的には、「照れて赤くなる」というテキストが出ているのにCGがそれに対応しない、など、グラフィックが持っている「武器」を活用できていません。これで萌えろといわれてもね。

お気に入り

 キャラ1人を上げるなら、夏菜になるでしょうか。でも、あのシナリオを見た後に萌えるのは無理ですな。

 シーンとしては………そんなもんないです(苦笑)

関連リンク先

 身の回りに被害者は発見できず。喜ぶべきかイジけるべきか。

総評

 バグだらけのゲームという面を差し引いても、シナリオがめちゃめちゃ甘い上に、万事中途半端。どう見ても「習作」レベルというものに対し、1万2,800円という価格設定をつけているだけで、勘弁してくれ、というしかありません。キャラの造形は決して悪くなく、設定も使い方いかんによってはおもしろいものに仕上げられそうなのに、適当に作られてしまったシロモノに留まっています。

 このゲームはPSに移植されたそうですが、まっとうにプレイできるシロモノとしてリリースされたのかどうか、他人事ながら気にかかるものです。

個人評価 ★★★☆☆ ☆☆☆☆☆
2001年12月15日
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