未来は僕らの手のなかに Shape Shifter

2001年2月16日発売
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 発売日前から注目しているソフトというのは別段珍しくもなんともないのですが、このゲームだけは、最近珍しいことに、広告で表示されているCGを見て「なんかいいなぁ〜」と思ったものです。そのCGというのが、「巫女服着て金属バット持って赤い顔して当惑していて、その脇で双子の脳天気姉妹がやんややんやと楽しんでいる」という、何がなんだかさっぱりわからないグラフィックだったり(^^;) 女の子の表情もなかなか好みにあっていたので、これは買いかな、と思っていたうえ、シェイプシフターのWebサイトにてアップされていた冒頭部のストーリー紹介を見て、「これは買うしか!」と格上げになったしだい。

 そんなこんなで、久々の発売日購入(正確には、公式発売日前にフライングゲット)したゲームでありますが、いろいろ諸般の事情につき精神状態が荒れている私にとっては、いい薬になった感じがします。

 実は、シェイプシフターというメーカーの前作も目にはしていたのですが、原画が「きれいながらも好みに合わない」という理由で回避していました。他サイトにおける『Partner』などのレビュー(SHEOさんのサイトなど)を拝見するかぎり、妥当な判断だったように思えます(^^;

シナリオ

 主人公・暮里耕介(固定)の通う七美学園は、旧校舎の「十三段階段」と、それにまつわる鏡の呪いという伝説が、代々の生徒たちによって伝えられてきた。そんなある夜、ドジで抜けている先輩の女の子につきあって旧校舎に行く羽目になった主人公は、まさにその鏡を前にした彼女が、まさに「呪い」と呼ぶにふさわしい妙な現象に遭うのを見届けてしまう。しかし、彼女の口からでたセリフは、わたしもしかして、呪われちゃった、のかな?というものだった。あまりにも脳天気な彼女に溜息をつきつつも、その後、同級生たちも巻き込んだ「七美学園怪奇探偵団」は、怪奇現象解明に日々いそしむことになる。

 

 シナリオ担当は「冬寂」氏。

 ゲーム紹介には「コミカルタッチの学園マジカルミステリー」とありますが、ミステリーとして期待できる点はまずない、と断言しておきます。謎解き的な要素がないのはもちろんのこと、サスペンスタッチのシーンも緊張感を長く維持させるものというよりは、そこを乗り切ったときのほのぼの感を出させるための演出となっているようなものです。むしろ、「不思議な事件をめぐってのドタバタ学園コメディ」と捉えた方が適切でしょう。

 また、「未来は僕らの手のなかに」などという壮大なタイトルがついていますけれど、別段主人公たちが未来を切り拓くわけでもなんでもなく、ハッキリいえば実のあるタイトルでも何でもありません。

 学園ドタバタものとしては、ほのぼのとした脳天気さを全編に貫きながら、とにかく楽しい会話が続きます。これは、主人公のキャラクターに嫌みがない上に、日々テキトーにすごしている、という面もありますけれど、それ以前に、ヒロインたちの描き方が秀逸です。確かにみんなかわいいし、それぞれいろんな面を見せて楽しませてくれるのでありますが、日々のかけ合いが「退屈」という言葉をみごとに忘れさせてくれます。トロくてドジで徹頭徹尾大ボケの先輩、好奇心旺盛でマスコット的存在の双子の姉妹、ガードは堅いものの押しには弱い同級生と、みなパターンはそれなりの揃え方なのですが、行動や発言の組み合わせ方が絶妙。何らかの元ネタをベースとしたパロディといったものはほとんどありません(注)。

 運動会の直後に学園祭をもってくるなど、かなり強引な展開になっているのも否定はできませんが、「七不思議」などを絡めたドタバタ劇の舞台としては、きちんとしたものになっていると思います。

 

 主人公の友人に男がまったく出てこないのが不思議といえば不思議ですし、主人公が特段(不自然ながら都合のよい)モテモテ君というわけでもないのですが、こういう友人たちがいれば高校生活はずいぶんと楽しかっただろうな、と思わせる展開になっています。もちろん、ちーはーを筆頭に「絶対にこんなヤツいないって」的なヒロインばかり備えている(かろうじてきららあたりがいそうかな?)ので、「それは無理」という気もしますけれど(^^;)

 全体的な雰囲気がノリノリで、主人公がそれに振り回されている、という見方も可能ではありますが、主人公自体そういうノリを楽しんでいるのがよくわかるので、決して「他人に主導権を握られているだけのヘタレ野郎」になっていないのもいいところ。存在感も何もない、といってしまうと身も蓋もないのですが、プレイヤーがシンクロしやすいタイプに描けていることは確かです。

 

 ただし、このゲームを恋愛ゲームとしてみると、はなはだ薄味で適当に作られたもの、としか思えません。主人公やヒロインたちがやんややんやと賑やかなコトをやっている中で、相手が気になっていく、というのはわかるのですが、そのプロセスがかなり雑で、いきなり告白してカップルに、という展開さえあります。唐突なのはある程度認めるにせよ、前後の楽しいイベントの中にすっかり取り込まれてしまっており、「2人の物語」が見えてこない、という難点が指摘できます。「告白→カップル」という流れが終盤に近いヒロインの場合はまだいいのですが、そうでないキャラの場合、「友達」とつるんでいるイベントとの書き分けがやや薄くなっているのです。このへんは、主人公がわりと脳天気なタイプで、告白イベントにしても、いつか言わなきゃいけないと思っていたことを、はずみですんなりと言ってしまった、といったスタイルにしているので、淡泊でもいいのかな、とも思いますけれど、もう少しベタベタなところを濃いめに書いてほしかったところ。

 ただ、どのシナリオにしても、オチの付け方はわりときちんとしていたとは思います。「くっついてハイおしまい」というのではなく、イベントを必ず最後に絡ませるようにしているのはよかったところでしょう。

 

 挿入されているネタには、文学関係のものが結構入っていました。プルーストの『失われた時を求めて』が出てきた瞬間、私は大学2年生時の授業という悪夢(第2外国語がフランス語だったので)を思い出したり(^^;) さすがに、一連の少女小説の群れにすべてついていくことはできませんでしたが、それでも雰囲気を感じるのに支障はありませんでした。

 

 また、テキスト自体も、「ほのぼの」とした雰囲気をうまく作り出すのに一役買っています。ギャグをベースとしたゲームシナリオのテキストでは、やたらとハイテンションで読む方が疲れる、というケースがわりと多いのですが、このゲームではそういう心配はありません。実際のテキストは、シェイプシフターのWebサイトにアップされている、冒頭部のテキストをお読みいただければだいたい雰囲気はつかめると思います。

 1回のメッセージの長さもきちんと計算されており、1つの文がメッセージウィンドウに収まりきらないということはありません。また、セリフとセリフのつなぎ方もなかなかキッチリしており、「どうしてそこでそういう話に…」といった強引さを感じることもありませんでした。

 誤字が多少あったものの、抽象的な言い回しを無理に多用して自爆するということもなく、安心して読めるテキストだった点は、高評価に値しましょう。

 

注:1個所発見。いらっしゃいませ〜! 七美学園怪奇探偵団へようこそ!!直後に「それはパクリだ」と主人公がツッコミを入れているあたり、確信犯ですな。元ネタは、いうまでもなく『Piaキャロットへようこそ!!2』のオープニング。

ゲームデザイン

 中途の選択肢と、移動選択で会うこととによって好感度が上下し、ヒロインが決定されるタイプの、ごくオーソドックスなアドベンチャーゲームです。発生するイベントの詳細は、各ヒロインによってかなり違ってきますが、シナリオの流れ自体は基本的に一本道で、選択肢によってシナリオが分岐するということはありません。

 序盤ですでにヒロインの絞り込みが行われるので、プレイ当初から狙いを絞っていけば、まずイベントの見落としなどは心配無用という程度の難易度です。

 シナリオの長さは、1回のプレイで3時間程度。イベントは重複部分が多いので、2回目以降はスキップしがちですが、このゲームに関しては何度やっても楽しい…かな。まぁこのあたりは人それぞれですが。なお、ひなこはラストに回すのが良いでしょう。

不具合・修正プログラム

 私の環境では、インストール先を「E:\」に指定(私はEドライブをゲーム専用ドライブにしています)すると、正常なインストールは行われませんでした。インストーラーがデフォルトで指定するパス(C:\Program Files\)にインストールすると、正常にデータがコピーされて起動可能となるので実害はありませんが、あまり気持ちのいいものではありませんね。

デモ・体験版

 デモは、各キャラクターの紹介と一枚絵CGが流れるという、ごくオーソドックスなものですが、デモの中で流れるテキストが判読できなかったのが困ったところです。

操作性など

 インストールで必要なHDD空き容量は123MBでした。パッケージ記載の「100MB」よりは確実に多いのでご注意下さい。インストールは1とおりです。

 ユーザーインターフェースは実にシンプルで、ツールバーのメニューには「ファイル−終了」「環境設定−スクリーン/フォント」「メッセージスキップ」だけ、右クリックで呼び出せるメニューも「メッセージウィンドウを消す/タイトルに戻る/セーブ/ロード」だけです。これだけシンプルに決められると、マニュアルははっきりいって不要です。アクティブのゲームのように必要な機能を多彩に取り込んだり、アイルのゲームのようにカスタマイズをさまざまに可能にしたりというのも1つの方法ですが、読ませていくタイプのゲームとしては、これだけでほぼ必要なものをカバー可能でしょう。

 残念なのは、メッセージ読み返し機能がないことと、メッセージスキップの既読・未読の判別がないことぐらいでしょうか。個々のテキスト自体なかなか楽しめるものの、メッセージウィンドウ表示方式なので、一文一文が短いところでは、前に戻りたくなることもしばしばでした。また、メッセージスキップはなかなか高速なのはいいものの、2回目以降のプレイでは、初見のイベントも情け容赦なくすっ飛ばしてくれるので、止めるタイミングが大変だったりします。また、メッセージ表示速度の調整はできませんが、メッセージが流れている途中にエンターキー押下または左クリックで、瞬間表示可能です。

 アクションは、キーボードまたはマウスで可能ですが、マップ移動画面はマウスのみ対応です。

 表示は、640×480とフルスクリーンから選択可能で、下部の半透明メッセージウィンドウにテキストが表示されます。フォントはWindowsにインストールされているトゥルータイプフォントを任意に選択できます。

 セーブ&ロードは、マップ移動画面以外の任意の位置で、10個所まで可能です。いまどき10個所というのは少ないように見えますが、分岐タイプのゲームではなく、セーブ&ロードによる絨毯爆撃を必要とするゲームでもなく、ヒロインの数もそう多くないので、これで十分でしょう。セーブ時の実日時が記録されます。

 CGモードは、1回エンディングに到達することで、タイトルメニューから入れるようになります。各ヒロインごとにサムネイル表示されます。Hシーン回想モードはありません。なお、BGMモードはありませんが、このBGMを聴けば…そりゃ無理もないかな。また、「ある条件を満たすと、上記(最初から始める/続きから始める/CGモード)以外の項目が出現します」(マニュアルより)とありますが、それが何かはまたのお楽しみということで。

サウンド

 BGMは、MIDIで演奏されますが、さほどパッとしたものではありません。グラフィックとは異なり、演出面ではあまり期待しない方がよいでしょう。効果音はまずまずですが。

 音声はありませんが、残念と思う反面、この掛け合いのテンポの良さをどの程度演技可能か、と考えると、無理に入れなくてもよかったかな、と思えます。うー、でも、キャラの数は少ないし、しかしセリフは多いし、なので、やっぱりあったほうが…うーむ。

グラフィック

 「ケンスケ」「黒木雅弘」両氏の原画担当。一枚絵CGは、女の子がとてもかわいく描けていて、なかなかいい感じです。コミカルなシーンでの画面の使い方も、オーソドックスながらわりといいですね。

 立ちCGは、全員妙な「逆S字」形の姿勢で突っ立っていて、表情変化は首から上だけです。顔の部分での変化はそれなりにあるし、汗を流したり怒りマークが出たりとそれなりに楽しいのですが、姿勢がまったく変わらないのが残念。手の組み方などもいつも同じなので、ちょっと寂しいという印象があります。また、腕が妙に細い、というのも、少し気にかかるところ。もっとも、双子の姉妹が同じようなアクションを繰り返すのが楽しいので、さほど気にはなりません。

 背景はやや貧弱なのが悲しいのですが、立ちグラも一枚絵に比べれば寂しいので、引き立て役にはなっているかな。

 塗りは…これまた一枚絵と一般シーンとの差がけっこうありますが、軒並みいいと思います。

お気に入り

 みんなかわいいです。誰か1人を選べ、となったら、うーん、きららかな。態度の変わり方がなかなかいいし、やっぱし巫女バットがヾ(^^;オイオイ

関連リンク先

 そとみち.さんのサイトにレビューがあります。

総評

 コミカルなシーンがこれでもかと続きますが、基本的に演出面への依存が低く、テキストと、イベントシーンでのグラフィックとだけでもっているので、かなり地味な印象はあります。素っ気ないユーザーインタフェースも相まって、かなり無愛想なゲームと見えるのは致し方ないでしょう。しかし、ストーリーの作り方、組み立て方には、肩の力が抜けた自然体ゆえに出てきた「楽しさ」が垣間見え、プレイを重ねることがまったく苦になりませんでした。

 各キャラクターの描写もそれなりにきちんとできていますし、ほのぼのとした日常会話シーンを楽しみたい、という方にはお勧めできます。ただ、らぶらぶ度やエッチ度という尺度を適用すると、このゲームの評価はぐんと下がることもまた間違いありません。シナリオ自体も、壮大な展開を示しているというわけではなく、わりと「のほほん」とした空気が最後まで途切れない安心感をベースにしているので、それだけでは物足りない、と感じるかもしれません。

個人評価 ★★★★★ ★★☆☆☆
2001年2月16日
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