みずいろ ねこねこソフト

2001年4月13日発売
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 通常、ゲームの作品というものは、なににせよ「特徴」を前面に出してくるケースが多いものですが、この『みずいろ』は、発売前から「(ゲーム世界での)普通」をうたっていたという点で、興味を惹かれるとともに、不安感をも抱かされるものでした。前作『銀色』において、手法としてなかなかにおもしろい表現を行っていたソフトハウスだったこともあり、展開それ自体にはさほど不安を持たないでプレイすることになりました。

 なお、今回もまた「ねこ缶」がついてきました(^_^;

シナリオ・ゲームデザイン

 主人公・片瀬健二(下の名前のみ変更可能)は、幼少時にともに過ごしたことのある女の子たちと、さまざまな形で接していくことになる。「普通の街」を舞台にし、「普通の学園」に通う、「普通のキャラ」による「普通の学園物語」。

 

 ゲームのスタイルとしては、序盤に「過去のキャラとの関係」が説明され、そこでの選択によって「現在のヒロイン」が決定される、というものとなっています。本編にあたる現在の部分では、選択肢によるシナリオの分岐はほとんどありません。私はどのヒロインとのシナリオも一発でクリアできましたが、終盤近くで出てくる非常識な選択肢を選ばないかぎり、まず問題ないでしょう。ゲーム性は序盤の分岐のみといってよいので、難易度はかなり低い方です。

 

 「普通」を表に出す(というより、アピールしている)作品ではありますが、それはあくまでも「ゲームの中で用いられる展開としての“普通”」であって、「日常性」ではありません。もちろん「ゲーム世界」における「日常」を考えればよい、といわれればそれまでではありますが。

 このゲームを特徴づける点はいくつかありますが、その中でも「むだの排除と明確さ」「目的としての凡庸の実現」「現在を規定するための過去」という点が大きいように思われます。もちろん、これ以外にもポイントはあるのでしょうが、「普通」を標榜するゲームとしての2番目、それを用意するための1番目、組み立てるための3番目、として、これに絞って見てみます。

 

 まず最初の「無駄の排除と明確さ」ですが、設定されているプロットのパターンをさほど多くは用意せず、それらは演出として繰り返されること、そして張っている伏線の数を絞り込むことで、矛盾を生じさせないという工夫がしてある、といえます。このため、消化不良を起こすことなく、また「その場限りのプロット」と「結論を導くための伏線」との区別が明確であるため、ストーリー展開の理解が容易になっています。さらに、プロット自体だけでなく、展開それ自体もきちんと構成されているため、「そろそろさっきの展開に基づいてこういうことが起こるのではないか」と思えば、その通りのタイミングで発生する、など、「展開」自体も「普通」をトレースしているといってよいでしょう。

 また、口癖・アクションなどを各キャラごとに特定化し、それを繰り返させることによって各キャラを特徴づける、という手法も採られています。これは「普通」というよりは定番的手法にすぎませんが、ちょっとくどすぎる(特に某ポンコツなど、口癖の比率が異常に高い)ため、「キャラの魅力」という言葉で綴られるプラスイメージ(これも保留なしに用いるのは危険なのですが、いったんおいておきます)とは直結せず、むしろ「キャラのタイプ」を説明するという方向に働いているのが実情です。

 しかし、完全燃焼のガスバーナーの炎よりも、スス出しまくりの蝋燭の炎の方がはるかに「見るもの」に与える印象は強い…という比喩が的確かどうかはわかりませんが、私には「矛盾がない」ことは、むしろシナリオから生気を失わせ、徹底的に機械的・デジタル的な役割を与える結果になっているように感じられました。これは、単に「伏線が明確であるために先が読めてしまう」というだけではなく、「先が読めるような伏線を配置すること」自体の作為性を感じさせることで、消費の対象であるところの「物語」から「(疑似)オリジナリティ」を排除し、最終的には「凡庸さの忠実なトレース」を感じさせる効果をもたらしています。

 わかりやすさが安心感をもたらしているのも事実ですが、それゆえに冷静に、また淡々と進むことになってしまいました。

 

 これは、第2点である「目的としての凡庸の実現」に、そのまま直結するともいえましょう。

 すなわち、緻密さによって「アソビ」を取り除き、それによって「凡庸なるもの」を眼前に突き出している、ともいえましょうか。さらにいえば、「物語」の上で「予定されている可能性」については、それを確実に「実現」しつつ、そうでないものはそもそも取り上げない、そんな潔さもあります。

 裏を返せば、「雑音のない物語」を提示することで、物語消費という行為を再考させる契機にもなっているとも言えましょう。作者の意図がそこにないことは明白ですが、いわば「小説を拒否した物語」ともいうべき本作品が見せる「凡庸さ」は、「普通」という(多義的であり定義困難である)用語を浮かび上がらせていることもまた、明白でしょう。

 

 ついで、第3点の「現在を規定するための過去」ですが、この作品での重要選択肢は過去(の選別)のみであること、その選別によって各キャラクターの性格も変わる(某キャラの変貌は特に激しい)ことから、過去における「ちょっとしたイタズラ(←別にあんなことやこんなことじゃないですよ)」が現在を左右していることを強く意識させます。これは、逆にいえば、現在の「状況」を作り上げている「原因」として、「過去」が措定されているといえます。

 しかし、現在を構築するために措定された(あるいは、遡及的に設置された)「過去」が、ごく些細な変動によっては「現在」を左右しうるだけの力を帯びていないケースが多いのも、また事実のように思われます。詳細に踏み込むのは控えますが、「幼少時の対応が現在に対して及ぼす影響」として過去編と本編とを見比べた場合、針小棒大ともいえるほどに「差異の拡大」のみが行われているように感じます。説得力の大きいのは進藤ルートでしょうが、キャラの位置づけのみならず性格の変貌まで考えれば、かなり無理がある点は否定できません。

 そしてまた、この「過去と現在」という設定自体は、「普通」どころか、作品制作にはごく当然のように出てくる手法のひとつではありますが、過去編と本編とにおける対比を、この作品のような形で提示することに関しては、「普通」の一言で済ませるわけにはいかないでしょう。やはり、ここの部分での強引さについては、「そういうものなのだ」で終えるべきものとは思えません。

 

 Hシーンについては、少なくとも本編のそれに限っていえば、悪くはないけれど、といった印象。ヒロインとの関係上盛り上がったときにこうなる、といえばそれまでですが、(建前上はともかく実質的には)高校生程度の年齢のキャラ(であると想定することを前提としているであろうキャラ)の行動の帰結として見た場合、あまりにもスマートすぎる観があります。ギャルゲー色の濃いアダルトゲームの「お約束」は、ことHシーンのタイミングについては確立されているとは言い難い以上、「普通」を掲げるゲームとしては難しかったのは確かでしょうが、もっと暴走するような「不器用さ」がほしかった、というのは欲が深すぎるでしょうか?

 各ヒロインをクリアすると、それぞれの「Afterえちぃストーリー」に入ることができますが……その、何というか、各キャラを(主人公ではなく作者が)おもちゃとして扱っているように見えたのは私だけかな。本編とのギャップという点には別段問題を感じなかったのですが、この「濃さ」を本編から切り離す必然性は、私には特に見いだせませんでした。

 なお、着衣Hシーンが非常に多く、体液描写がなかなか濃いので、そういうのがお好きな方はどうぞ。

 

 なお、前作同様、おまけシナリオも充実しています。

不具合・修正ファイル

 いろいろな不具合があるようで、ねこねこソフトのサイトに修正ファイルがアップされています。

 なお、デフォルト指定先以外のディレクトリにインストールした場合、アンインストールの際に、環境によってはインストール先ディレクトリの2つ上の階層のデータまでごっそり消去してしまうケースがあるそうです。8月25日現在、ねこねこソフトの方では再現していないということなので、特に対応はなされていませんが、インストール先の指定、およびアンインストールする際のデータ待避には注意が必要のようです。なお、私はアンインストールしても、インストール時に生成したフォルダが消えるのみで、特に問題といえるほどのことは起こりませんでした。

操作性など

 CD-ROM3枚組となっており、うち1枚がMIX-CDになっており、プレイ時にCD-DAを再生する場合には必須です。インストールは、標準・最大から選択可能で、最大の場合に必要なHDD空き容量は約1.22GBと、なかなか豪快ですので、インストール前の空き容量確認をお忘れなく。

 画面構成は、640×480とフルスクリーンから選択可能で、グラフィックが全画面表示、右上部に日付・曜日、下部に半透明のメッセージウィンドウが表示されます。

 プルダウンメニューから選択可能なものは、「画面(サイズ)」「フォント」「文字速度(3段階で切り替え可能)」「WAVE(オン・オフ)」「選択肢まで進む(既読・未読の区別はなし)」「オートモード」「CD-DA(オン・オフ)」「バージョン情報」「終了」です。また、右クリックメニューから、テキストの読み返しも可能となっています。

 アクションは、キーボードまたはマウスで可能です。

 セーブ&ロードは、任意の位置で20個所まで可能です。難易度は高くないのでこれで十分でしょう。セーブ時の実日時も記録されます。

 CGモードは、タイトルメニューから入れるようになります。各ヒロインごとにサムネイル表示されます。また、シーン回想モードもあり、各ヒロインごと・各シーンごと(Hシーンに限りません)にイベント名を選択することで入ることができます。BGMモードも当然搭載されています。

サウンド

 オープニングを含めて2曲のボーカル曲があります。オープニングの「みずいろ」は、なかなか透明感のある曲で個人的にはそこそこ好きではありますが、特筆するほどでもないようにも思えたり(^^;

 BGMはCD-DAで演奏され、比較的穏やかな感じの曲が多いようですね。ヒロイン別の曲が用意されているのはよし…って、ゲームのスタイルからすればこれは当然か(^^;

 音声は、本編での女性キャラのみフルボイスとなっています。比較的無難な演技といった感じですが、ほかのキャラルートでの進藤の演技が個人的には好み。しかし、細かい口癖にまでいちいち音声をつけるのは、カンベンしてほしかった。声つきで「…じぃー」って、耳元でセミが鳴いているように感じたものです。

グラフィック

 キャラクター原画は「秋乃武彦」氏。目の色に特徴があるのは前作同様で、多少人を選ぶであろう図柄ではありますが、パッケージ絵を見て気にならなければ大丈夫でしょう。また、前作ではものすごく固そうでガチガチの服でしたが、今回はやや柔らかくなっています(それでもノリがよく効いているようですけれど(^^;)。表情変化のパターンもそれなりに多いのはいいですね。

 また、背景が非常にきれいで、塗りがていねいでいいですね(^^)

お気に入り

 特にありません。割と白けてプレイしていましたので。攻略したいと思ったのはほかのキャラルートでの進藤なのですが、あのモードは不可ですか。むぅ…

関連リンク先

 比較的好意的なレビューとして、SHEOさんのサイトがあります。また「普通」というフレーズについて突き詰めたレビューとして横山堂さんのサイトを挙げておきます。

総評

 「ウリ」でもある「普通」を、どう評価するかによって、このゲームに対する評価の仕方は大きく異なってくるでしょう。本当に「ごく普通の学園もの」と考えた場合、この作品の「むだのない精緻な組み立て」が心地よいと感じられればそれでよし、そうでなければ淡々と進めることになると思います。

 しかし、各イベントごとの作りを見れば、キチンとしたものになってはいるので、多少のダレや退屈感があったにせよ、中途で投げ出すことはたぶんないでしょう。また、あれこれ考えながらプレイする必要などはまったくないので、気楽にプレイすることはできます。その点では、少なくとも多くを期待しなければ、それなりに楽しむことは充分に可能でしょう。

個人評価 ★★★★★ ☆☆☆☆☆
2001年8月12日
(8月26日、「不具合・修正ファイル」および「関連リンク先」に加筆・修正)
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